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     4. Sattavassānubandhasuttaṃ  
      語根 品詞 語基 意味  
      Satta     
      vassa  vṛṣ a 男中 依(処) 雨、安居、年  
      anubandha  anu-bandh 過分 a 依(属) 随結した、従った、追跡した?  
      suttaṃ  sīv a 経、糸  
    訳文                
     「七年追随経」(『相応部』4-24  
    メモ                
     ・anubandhaは本来「随縛、束縛」を意味する男性名詞だが、経中を見るに「付きまとった」という過去分詞anubaddhaの異体とおぼしき用いられかたをしているようなので、そのように訳してみた。  
                       
                       
                       
    160-1.                
     160. Evaṃ me sutaṃ –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Evaṃ me sutaṃ – (159-1.)  
    訳文                
     私はこのように聞いた。  
                       
                       
                       
    160-2.                
     ekaṃ samayaṃ bhagavā uruvelāyaṃ viharati najjā nerañjarāya tīre ajapālanigrodhe.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ekaṃ    代的 副対 一、とある  
      samayaṃ  saṃ-i a 副対  
      bhagavā    ant 世尊  
      uruvelāyaṃ    ā 地名、ウルヴェーラー  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      viharati  vi-hṛ 住する  
      語根 品詞 語基 意味  
      najjā    ī  
      nerañjarāya    ā 地名、ネーランジャラー  
      tīre    a  
      ajapāla    a 固有名詞、アジャパーラ(山羊飼いの意)  
      nigrodhe.    a 植物名、ニグローダ  
    訳文                
     あるとき世尊はウルヴェーラーのネーランジャラー河の岸にあるアジャパーラ・ニグローダ樹に住しておられた。  
                       
                       
                       
    160-3.                
     Tena kho pana samayena māro pāpimā sattavassāni bhagavantaṃ anubandho hoti otārāpekkho otāraṃ alabhamāno.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Tena    代的 副具 それ、彼、それによって、それゆえ  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      pana    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      samayena    a 副具  
      māro  mṛ a 魔、死魔  
      pāpimā    ant 悪しき者  
      satta     
      vassāni  vṛṣ a 雨、安居、年  
      bhagavantaṃ    ant 世尊  
      anubandho  anu-bandh 過分 a 随結した、従った、追跡した?  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      hoti  bhū ある、なる、存在する  
      語根 品詞 語基 意味  
      otāra  ava-tṝ a 有(属) 降下、接近、機会  
      apekkho  apa-īkṣ ā 女→男 期待、希望、欲求  
      otāraṃ  ava-tṝ a 降下、接近、機会  
      alabhamāno.  a-labh 現分 a 得ない  
    訳文                
     さてその時、悪魔が七年間、付け入ろうと欲しつつ、付け入ることができずに、世尊に付きまとっていた。  
    メモ                
     ・勤苦六年および成道後の一年と『註』はいう。成道後も悪魔が居たという記述は興味深い。  
                       
                       
                       
    160-4.                
     Atha kho māro pāpimā yena bhagavā tenupasaṅkami;   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha kho māro pāpimā yena bhagavā tenupasaṅkami; (159-49.)  
    訳文                
     そこで悪魔は、世尊へ近づいた  
                       
                       
                       
    160-5.                
     upasaṅkamitvā bhagavantaṃ gāthāya ajjhabhāsi –   
      語根 品詞 語基 意味  
      upasaṅkamitvā bhagavantaṃ gāthāya ajjhabhāsi – (159-50.)  
    訳文                
     近づいて、世尊へ偈をもって語りかけた。  
                       
                       
                       
    160-6.                
     ‘‘Sokāvatiṇṇo nu vanamhi jhāyasi,  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Soka  śuc a 依(対) 愁、憂、うれい  
      avatiṇṇo  ava-tṝ 過分 a 入った、下った  
      nu    不変 いったい、たぶん、〜かどうか、〜ではないか  
      vanamhi    a 森、林  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      jhāyasi,  dhyai 静慮する、禅定をなす  
    訳文                
     「♪そなたが林で禅定をなすのは、愁いに陥ってのことか。  
                       
                       
                       
    160-7.                
     Vittaṃ nu jīno uda patthayāno;  
      語根 品詞 語基 意味  
      Vittaṃ  vid 名形 a 財産、富、喜んだ、幸福な  
      nu    不変 いったい、たぶん、〜かどうか、〜ではないか  
      jīno  ji 受 過分 a 失った  
      uda    不変 あるいは  
      patthayāno;  pra-arth 現分 a 欲求する、希求する  
    訳文                
     ♪あるいは、幸福を失って希求しているのか。  
    メモ                
     ・諸訳は「財」と訳すが、今ひとつ意味が通じないので「幸福」としてみたが、よく分からないという点では大差ないか。  
                       
                       
                       
    160-8.                
     Āguṃ nu gāmasmimakāsi kiñci,  
      語根 品詞 語基 意味  
      Āguṃ    u 罪悪、犯罪  
      nu    不変 いったい、たぶん、〜かどうか、〜ではないか  
      gāmasmim    a  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      akāsi  kṛ なす  
      語根 品詞 語基 意味  
      kiñci,    代的 何らかの、何者であれ  
    訳文                
     ♪村で何らかの罪悪をなしたのではないか。  
                       
                       
                       
    160-9.                
     Kasmā janena na karosi sakkhiṃ;  
      語根 品詞 語基 意味  
      Kasmā    代的 何、誰  
      janena    a  
      na    不変 ない  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      karosi  kṛ なす  
      語根 品詞 語基 意味  
      sakkhiṃ;    ī 友情、友愛  
    訳文                
     ♪なにゆえ、人と友情をなさないのか。  
                       
                       
                       
    160-10.                
     Sakkhī na sampajjati kenaci te’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Sakkhī    ī 友情、友愛  
      na    不変 ない  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      sampajjati  saṃ-pad 起こる、なる、成功する  
      語根 品詞 語基 意味  
      kenaci    代的 何らかの、何者であれ  
      te’’    代的 あなた  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ♪そなたには、いかなる者とも友情が起こらないのか」と。  
                       
                       
                       
    160-11.                
     ‘‘Sokassa mūlaṃ palikhāya sabbaṃ,  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Sokassa  śuc a 愁、憂、うれい  
      mūlaṃ    a  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      palikhāya  pali-khaṇ 掘り出す  
      語根 品詞 語基 意味  
      sabbaṃ,    名形 代的 すべて  
    訳文                
     〔世尊曰く〕「♪あらゆる愁いの根を掘り出し、  
                       
                       
                       
    160-12.                
     Anāgu jhāyāmi asocamāno;  
      語根 品詞 語基 意味  
      Anāgu    u 罪悪なき  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      jhāyāmi  dhyai 静慮する、禅定をなす  
      語根 品詞 語基 意味  
      asocamāno;  a-śuc 現分 a 愁えない  
    訳文                
     ♪私は罪悪なく、愁いなく禅定をなす。  
                       
                       
                       
    160-13.                
     Chetvāna sabbaṃ bhavalobhajappaṃ,  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      Chetvāna  chid 切る、切断する  
      語根 品詞 語基 意味  
      sabbaṃ    名形 代的 中→女 すべて  
      bhava  bhū a 依(与) 有、存在、生存、幸福、繁栄  
      lobha    a 貪、貪欲  
      jappaṃ,  jalp ā 熱望、貪求  
    訳文                
     ♪あらゆる〈有〉への貪欲と熱望を切断して、  
                       
                       
                       
    160-14.                
     Anāsavo jhāyāmi pamattabandhū’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Anāsavo    a 漏なき  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      jhāyāmi  dhyai 静慮する、禅定をなす  
      語根 品詞 語基 意味  
      pamatta  pra-mad a 依(属) 放逸な  
      bandhū’’    u 親類、縁者  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ♪私は漏なく禅定をなすのだ、放逸者の縁者よ」  
                       
                       
                       
    160-15.                
     ‘‘Yaṃ vadanti mama yidanti, ye vadanti mamanti ca;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Yaṃ    代的 (関係代名詞)  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      vadanti  vad 言う、説く  
      語根 品詞 語基 意味  
      mama    代的  
      idan    代的 これ  
      ti,    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      ye    代的 (関係代名詞)  
      vadanti  同上  
      maman    代的  
      ti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      ca;    不変 と、また、そして、しかし  
    訳文                
     〔悪魔曰く〕「♪およそ人々が『これは我がものだ』というようなもの。またおよそ『我がもの』と言うような者たち。  
                       
                       
                       
    160-16.                
     Ettha ce te mano atthi, na me samaṇa mokkhasī’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Ettha    不変 ここに  
      ce    不変 もし、たとえ  
      te    代的 あなた  
      mano  man as  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      atthi,  as ある、なる  
      語根 品詞 語基 意味  
      na    不変 ない  
      me    代的  
      samaṇa  śram a 沙門  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      mokkhasī’’  muc 脱する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ♪もしそなたの意がそこに存在するのであれば、沙門よ、私から逃れることは叶うまい」  
                       
                       
                       
    160-17.                
     ‘‘Yaṃ vadanti na taṃ mayhaṃ, ye vadanti na te ahaṃ;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Yaṃ    代的 (関係代名詞)  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      vadanti  vad 言う、説く  
      語根 品詞 語基 意味  
      na    不変 ない  
      taṃ    代的 それ  
      mayhaṃ,    代的  
      ye    代的 (関係代名詞)  
      vadanti  同上  
      na    不変 ない  
      te    代的 それら、彼ら  
      ahaṃ;    代的  
    訳文                
     〔世尊曰く〕「♪私には、人々が〔『我がもの』と〕言うようなそれは存在しない。私は〔『我がもの』と〕言うような者たちではない。  
                       
                       
                       
    160-18.                
     Evaṃ pāpima jānāhi, na me maggampi dakkhasī’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Evaṃ    不変 このように、かくの如き  
      pāpima    ant 悪しき者  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      jānāhi,  jñā 知る  
      語根 品詞 語基 意味  
      na    不変 ない  
      me    代的  
      maggam    a  
      pi    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      dakkhasī’’  dṛś 見る  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ♪悪しき者よ、そなたはそのように知るべし。そなたは私の道を、見てすらいない」  
                       
                       
                       
    160-19.                
     ‘‘Sace maggaṃ anubuddhaṃ, khemaṃ amatagāminaṃ;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Sace    不変 もし  
      maggaṃ    a 男(中)  
      anubuddhaṃ,  anu-budh 過分 a 随覚された  
      khemaṃ    名形 a 安穏  
      amata  a-mṛ 名過分 a 依(属) 不死  
      gāminaṃ;  gam 名形 in 男→中 行く、導くもの  
    訳文                
     〔悪魔曰く〕「♪もし、安穏なる、不死へ導く道が随覚されたにしても、  
                       
                       
                       
    160-20.                
     Apehi gaccha tvameveko, kimaññamanusāsasī’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Api    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ehi  i いざ、行け、来い  
      gaccha  gam 行く  
      語根 品詞 語基 意味  
      tvam    代的 あなた  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      eko,    代的 一、とある  
      kim    代的 副対 何、なぜ、いかに  
      aññam    代的 他の、異なる  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      anusāsasī’’  anu-śās 教誡する、訓誡する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ♪いざそなたはただ一人行け。なぜ他者を教誡するのか」  
                       
                       
                       
    160-21.                
     ‘‘Amaccudheyyaṃ pucchanti, ye janā pāragāmino;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Amaccu  a-mṛ u 依(属) 不死の  
      dheyyaṃ  ud-dhā 名未分 a 領域、布置  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pucchanti,  prach 問う  
      語根 品詞 語基 意味  
      ye    代的 (関係代名詞)  
      janā    a  
      pāra    名形 a 依(対) 彼岸、他の  
      gāmino;  gam 名形 in 行く、導くもの  
    訳文                
     〔世尊曰く〕「♪彼岸へ至る〔であろう〕人々が、不死の領域を問うゆえに、  
    メモ                
     ・『註』の「彼岸へ行くであろう者たち、彼岸へ行くことを欲する者たち、彼らもまたpāragāminoである」Yepi pāraṃ gacchissanti, yepi pāraṃ gantukāmā, tepi pāragāmino.という説明に従い補訳した。  
                       
                       
                       
    160-22.                
     Tesāhaṃ puṭṭho akkhāmi, yaṃ saccaṃ taṃ nirūpadhi’’nti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Tesaṃ    代的 それら、彼ら  
      ahaṃ    代的  
      puṭṭho  praci 過分 a 問われた  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      akkhāmi,  ā-khyā 告げる、話す  
      語根 品詞 語基 意味  
      yaṃ    代的 (関係代名詞)  
      saccaṃ    a 真実  
      taṃ    代的 それ  
      nirūpadhi’’n  nir-upa-dhā i 所依なき、生存の素因なき  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ♪問われた私はその者たちへ告げるのである。『〔道〕諦、それは生存の素因の無である』と」  
    メモ                
     ・なぜかsaccaṃを『原始』は「境地」、『南伝』は「涅槃」としている。ここでは『パーリ』の「諦」という訳にしたがい、さらに「道」が主題となっている文脈を加味して補訳してみたが、これはやや勇み足であるかもしれない。  
                       
                       
                       
    160-23.                
     ‘‘Seyyathāpi, bhante, gāmassa vā nigamassa vā avidūre pokkharaṇī.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Seyyathā    不変 その如き、たとえば  
      pi,    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      bhante,  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、大徳よ  
      gāmassa    a  
          不変 あるいは  
      nigamassa    a  
          不変 あるいは  
      avidūre    不変 遠からず、近くに  
      pokkharaṇī.    ī 蓮池  
    訳文                
     〔悪魔曰く〕「尊者よ、たとえば村あるいは町の近くに蓮池があるとします。  
    メモ                
     ・以下は『中部』35「小サッチャカ経」にパラレル。  
                       
                       
                       
    160-24.                
     Tatrassa kakkaṭako.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Tatra    不変 そこで、そこに、そのとき、そのなかで  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      assa  as ある、なる  
      語根 品詞 語基 意味  
      kakkaṭako.    a  
    訳文                
     そこに蟹がいるとします。  
                       
                       
                       
    160-25.                
     Atha kho, bhante, sambahulā kumārakā vā kumārikāyo vā tamhā gāmā vā nigamā vā nikkhamitvā yena sā pokkharaṇī tenupasaṅkameyyuṃ;   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また、そこに  
      kho,    不変 じつに、たしかに  
      bhante,  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、大徳よ  
      sambahulā    a 衆多の  
      kumārakā    a 童子  
          不変 あるいは  
      kumārikāyo    a 童女  
          不変 あるいは  
      tamhā    代的 それ、彼  
      gāmā    a  
          不変 あるいは  
      nigamā    a  
          不変 あるいは  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      nikkhamitvā  nis-kram 出る、出離する  
      語根 品詞 語基 意味  
      yena    代的 (関係代名詞、〜tenaで「〜の所に」)  
          代的 それ、彼女  
      pokkharaṇī    ī 蓮池  
      tena    代的 それ、彼、それによって、それゆえ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upasaṅkameyyuṃ;  upa-saṃ-kram 近づく  
    訳文                
     尊者よ、ときに多くの童子たち、あるいは童女たちが、その村あるいは町から出て、その蓮池へ近づきます。  
                       
                       
                       
    160-26.                
     upasaṅkamitvā taṃ kakkaṭakaṃ udakā uddharitvā thale patiṭṭhapeyyuṃ.   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upasaṅkamitvā  upa-saṃ-kram 近づく  
      語根 品詞 語基 意味  
      taṃ    代的 それ  
      kakkaṭakaṃ    a  
      udakā    a  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      uddharitvā  ud-dhṛ 揚げる、引き上げる  
      語根 品詞 語基 意味  
      thale    a 陸地  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      patiṭṭhapeyyuṃ.  prati-sthā 使 定立する、確立させる  
    訳文                
     近づいて、その蟹を水から引き揚げて陸地へ立たせます。  
                       
                       
                       
    160-27.                
     Yaṃ yadeva hi so, bhante, kakkaṭako aḷaṃ abhininnāmeyya taṃ tadeva te kumārakā vā kumārikāyo vā kaṭṭhena vā kathalāya vā sañchindeyyuṃ sambhañjeyyuṃ sampalibhañjeyyuṃ.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Yaṃ    代的 (関係代名詞)  
      yad    代的 (関係代名詞)  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      hi    不変 じつに、なぜなら  
      so,    代的 それ、彼  
      bhante,  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、大徳よ  
      kakkaṭako    a  
      aḷaṃ    a はさみ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      abhininnāmeyya  abhi-ni-nam 使 向ける、転じさせる  
      語根 品詞 語基 意味  
      taṃ    代的 それ  
      tad    代的 それ  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      te    代的 それら、彼ら  
      kumārakā    a 童子  
          不変 あるいは  
      kumārikāyo    a 童女  
          不変 あるいは  
      kaṭṭhena    a 薪、木片  
          不変 あるいは  
      kathalāya    ā 小石  
          不変 あるいは  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      sañchindeyyuṃ  saṃ-chid 切断、破壊する  
      sambhañjeyyuṃ  saṃ-bhañj 破壊する、裂く  
      sampalibhañjeyyuṃ.  saṃ-pari-bhañj 破壊する  
    訳文                
     尊者よ、その蟹がそれぞれのはさみを向けたならば、彼ら童子たちあるいは童女たちは、そのそれぞれを、木片あるいは小石で切断し、裂き、破壊してしまうでしょう。  
    メモ                
     ・「小サッチャカ経」ではkathalenaであった。この語は辞書類でも男性名詞とされているが、ここではなぜか女性形であるようだ。こうした微細な差異はどこから生じるのであろうか。  
                       
                       
                       
    160-28.                
     Evañhi so, bhante, kakkaṭako sabbehi aḷehi sañchinnehi sambhaggehi sampalibhaggehi abhabbo taṃ pokkharaṇiṃ otarituṃ.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Evañ    不変 このように、かくの如き  
      hi    不変 じつに、なぜなら  
      so,    代的 それ、彼  
      bhante,  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、大徳よ  
      kakkaṭako    a  
      sabbehi    名形 代的 中→男 すべて  
      aḷehi    a はさみ  
      sañchinnehi  saṃ-chid 過分 a 切断された  
      sambhaggehi  saṃ-bhañj 過分 a 裂かれた  
      sampalibhaggehi  saṃ-pari-bhañj 過分 a 破壊された  
      abhabbo  a-bhū a 不可能な  
      taṃ    代的 それ  
      pokkharaṇiṃ    ī 蓮池  
      otarituṃ.  ava-tṝ 不定 入ること  
    訳文                
     尊者よ、そのようにその蟹は、すべてのはさみを切断され、裂かれ、破壊されたゆえ、蓮池に入ることができなくなってしまいます。  
                       
                       
                       
    160-29.                
     Evameva kho, bhante, yāni kānici visūkāyikāni [yāni visukāyikāni (sī. pī. ka.)] visevitāni vipphanditāni, sabbāni tāni [kānici kānici sabbāni (sī. pī. ka.)] bhagavatā sañchinnāni sambhaggāni sampalibhaggāni.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Evam    不変 このように、かくの如き  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      kho,    不変 じつに、たしかに  
      bhante,  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、大徳よ  
      yāni    代的 (関係代名詞)  
      kānici    代的 何らかの、何者であれ  
      visūkāyikāni    名過分 a 曲説  
      visevitāni  vi-sev? 過分 a 相違の、奸計の、歪んだ  
      vipphanditāni,  vi-spand 過分 a ねじれた、曲がった、もだえた  
      sabbāni    名形 代的 すべて  
      tāni    代的 それら  
      bhagavatā    ant 世尊  
      sañchinnāni  saṃ-chid 過分 a 切断された  
      sambhaggāni  saṃ-bhañj 過分 a 裂かれた  
      sampalibhaggāni.  saṃ-pari-bhañj 過分 a 破壊された  
    訳文                
     尊者よ、まさにそのように、いかなる歪み、ねじれた曲説であれ、それらはすべて世尊によって切断され、裂かれ、破壊されました。  
    メモ                
     ・visūkāyikaは、「小サッチャカ経」でそうであったようなvisūkāyitaの異体あるいは誤記とみなした。  
                       
                       
                       
    160-30.                
     Abhabbo dānāhaṃ, bhante, puna bhagavantaṃ upasaṅkamituṃ yadidaṃ otārāpekkho’’ti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Abhabbo  a-bhū 未分 a 不可能な  
      dāni    不変 今、いまや  
      ahaṃ,    代的  
      bhante,  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、大徳よ  
      puna    不変 さらに、ふたたび  
      bhagavantaṃ    ant 世尊  
      upasaṅkamituṃ  upa-saṃ-kram 不定 近づくこと  
      yadidaṃ    不変 すなわち  
      otāra  ava-tṝ a 有(属) 降下、接近、機会  
      upekkho’’  apa-īkṣ ā 女→男 期待、希望、欲求  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     尊者よ、いまや私は、付け入ろうと欲すとも、ふたたび世尊へ近づくことが不可能となりました」  
                       
                       
                       
    160-31.                
     Atha kho māro pāpimā bhagavato santike imā nibbejanīyā gāthāyo abhāsi –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また、そこに  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      māro  mṛ a 魔、死魔  
      pāpimā    ant 悪しき者  
      bhagavato    ant 世尊  
      santike    a 付近、面前  
      imā    代的 これら  
      nibbejanīyā  nir-vid 未分 a 厭うべき  
      gāthāyo    ā 偈、歌  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      abhāsi –  bhāṣ 語る、話す  
    訳文                
     そして悪魔は世尊の面前で、これらの厭わしげな諸偈を発した。  
    メモ                
     ・『パーリ』は「厭わしい」、『原始』は「気落ちしたことを示す」、『南伝』は「気落ちせる」としている。一般論として厭わしいのか、悪魔が厭わしく感じているのかでは大分ニュアンスが異なる。ここでは一応、偈の中の文言を鑑み、後者で訳した。  
                       
                       
                       
    160-32.                
     ‘‘Medavaṇṇañca pāsāṇaṃ, vāyaso anupariyagā;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Meda    a 有(属) 脂肪  
      vaṇṇañ    a 色、容色  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      pāsāṇaṃ,    a 岩、石  
      vāyaso    a カラス  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      anupariyagā;  anu-pari-gam 遊歴、遍歴する  
    訳文                
     「♪脂肪の色をした岩を、カラスが探り回る。  
                       
                       
                       
    160-33.                
     Apettha muduṃ vindema, api assādanā siyā.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Api    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      ettha    不変 ここに  
      muduṃ    u 柔らかい、鈍い  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      vindema,  vid 知らせる、見いださせる、所有させる  
      語根 品詞 語基 意味  
      api    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      assādanā  ā-svad ā 楽味、快楽  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      siyā.  as ある、なる  
    訳文                
     ♪『我等はここに柔らかいものを見いだそう。楽味があるであろう』〔と〕。  
                       
                       
                       
    160-34.                
     ‘‘Aladdhā tattha assādaṃ, vāyasetto apakkame;  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ‘‘Aladdhā  a-labh 得ずして  
      語根 品詞 語基 意味  
      tattha    不変 そこで、そこに、そのとき、そのなかで  
      assādaṃ,  ā-svad a 楽味  
      vāyaso    a カラス  
      etto    不変 これから、ここから  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      apakkame;  apa-kram 去りゆく  
    訳文                
     ♪カラスはそこで楽味を得られず、そこから去りゆく。  
                       
                       
                       
    160-35.                
     Kākova selamāsajja, nibbijjāpema gotamā’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Kāko    a カラス  
      iva    不変 ごとく  
      selam    名形 a 岩、岩山  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      āsajja,  ā-sad 使 近くに、接近して、任意に、喜んで、叱責して  
      nibbijja  nir-vid 厭悪する、厭離する  
      apema  apa-i 離去する、消失する  
      語根 品詞 語基 意味  
      gotamā’’    a 人名、ゴータマ  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ♪カラスが岩に近づいて〔する〕如く、我々はゴータマから厭い離れる」と。  
    メモ                
     ・nibbijja-apemaと単語分解したが、nir-vidの使役形nibbijjāpemaの可能性もあろうか。次経のnibbijjāpethaも同様。  
                       
                       
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