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     9. Candimasuttaṃ  
      語根 品詞 語基 意味  
      Candima    as, ā 男女 依(属)  
      suttaṃ  sīv a 経、糸  
    訳文                
     「月経」(『相応部』2-9  
    メモ                
     ・「チャンディマー」「スーリヤ」という固有名詞ではなく「月」「日」とした。蝕を起こすという阿修羅ラーフに囚われているという記述からである。  
                       
                       
                       
    90-1.                
     90. Sāvatthinidānaṃ.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Sāvatthinidānaṃ. (88-1.)  
    訳文                
     サーヴァッティーでのことである。  
                       
                       
                       
    90-2.                
     Tena kho pana samayena candimā devaputto rāhunā asurindena gahito hoti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Tena    代的 副具 それ、彼、それによって、それゆえ  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      pana    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      samayena    a 副具  
      candimā    as, ā 男女  
      deva    a 依(属) 天、神、陛下  
      putto    a 息子  
      rāhunā    u 神名、ラーフ、羅睺  
      asura    a 依(属) アスラ、阿修羅  
      indena    a インドラ、帝王、王  
      gahito  grah 過分 a 取られた  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      hoti.  bhū ある、なる、存在する  
    訳文                
     さてそのとき、月天子がアスラの王ラーフに囚われていた。  
                       
                       
                       
    90-3.                
     Atha kho candimā devaputto bhagavantaṃ anussaramāno tāyaṃ velāyaṃ imaṃ gāthaṃ abhāsi –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また、そこに  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      candimā    as, ā 男女  
      deva    a 依(属) 天、神、陛下  
      putto    a 息子  
      bhagavantaṃ    ant 世尊  
      anussaramāno  anu-smṛ 現分 a 随念する、憶念する  
      tāyaṃ    代的 それ、彼女  
      velāyaṃ    ā  
      imaṃ    代的 これ  
      gāthaṃ    ā  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      abhāsi –  bhāṣ 語る、話す  
    訳文                
     ときに月天子は、世尊を随念して、そのときこの偈を発した。  
    メモ                
     ・いわゆる「仏随念」であろうか。  
                       
                       
                       
    90-4.                
     ‘‘Namo te buddha vīratthu, vippamuttosi sabbadhi;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Namo  nam as 南無、礼拝  
      te    代的 あなた  
      buddha  budh 名過分 a 仏陀、覚者  
      vīra    a 英雄、勇士  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      atthu,  as ある、なる  
      語根 品詞 語基 意味  
      vippamutto  vi-pra-muc 過分 a 脱した、自由となった  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      asi  as ある、なる  
      語根 品詞 語基 意味  
      sabbadhi;    不変 一切処に、あらゆる場合に、あらゆる点で  
    訳文                
     「♪仏陀よ、雄者よ、汝に礼拝す。汝は一切に対し解脱せり。  
    メモ                
     ・前半、直訳するなら「汝のための礼拝あれかし」か。  
                       
                       
                       
    90-5.                
     Sambādhapaṭipannosmi, tassa me saraṇaṃ bhavā’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Sambādha  saṃ-bādh 使 a 依(処) 障碍、繁雑  
      paṭipanno  prati-pad 過分 a 行道した  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      asmi,  as ある、なる  
      語根 品詞 語基 意味  
      tassa    代的 それ、彼  
      me    代的  
      saraṇaṃ  sṛ a 帰依処  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      bhavā’’  bhū ある、なる  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ♪私は障碍のうちに行道する。汝はその私の帰依処となり給え」と。  
                       
                       
                       
    90-6.                
     Atha kho bhagavā candimaṃ devaputtaṃ ārabbha rāhuṃ asurindaṃ gāthāya ajjhabhāsi –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また、そこに  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      bhagavā    ant 世尊  
      candimaṃ    as, ā 男女  
      deva    a 依(属) 天、神、陛下  
      puttaṃ    a 息子  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ārabbha  ā-rabh 始める、出発する、励む、関して  
      語根 品詞 語基 意味  
      rāhuṃ    u 神名、ラーフ、羅睺  
      asura    a 依(属) アスラ、阿修羅  
      indaṃ    a インドラ、帝王、王  
      gāthāya    ā  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ajjhabhāsi –  adhi-bhāṣ 話しかける、語る  
    訳文                
     そこで世尊は月天子について、アスラの王ラーフへ偈をもって語りかけられた。  
                       
                       
                       
    90-7.                
     ‘‘Tathāgataṃ arahantaṃ, candimā saraṇaṃ gato;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Tathāgataṃ  tathā-(ā-)gam a 如来  
      arahantaṃ,  arh 名現分 ant 阿羅漢、応供  
      candimā    as, ā 男女  
      saraṇaṃ  sṛ a 帰依処  
      gato;  gam 過分 a 行った →帰依した  
    訳文                
     「♪月〔天子〕は如来、阿羅漢へ帰依した。  
                       
                       
                       
    90-8.                
     Rāhu candaṃ pamuñcassu, buddhā lokānukampakā’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Rāhu    u 神名、ラーフ、羅睺  
      candaṃ    ā  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pamuñcassu,  pra-muc 脱する、解放する  
      語根 品詞 語基 意味  
      buddhā  budh 名過分 a 仏陀  
      loka    a 依(処) 世界、世間  
      anukampakā’’  anu-kamp a 同情ある、憐愍ある  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ♪ラーフは月〔天子〕を解き放つべし。諸仏は世における憐愍者なり」と。  
    メモ                
     ・あるいは単数奪格で「仏陀は世の憐愍者なれば」か。  
                       
                       
                       
    90-9.                
     Atha kho rāhu asurindo candimaṃ devaputtaṃ muñcitvā taramānarūpo yena vepacitti asurindo tenupasaṅkami;   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また、そこに  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      rāhu    u 神名、ラーフ、羅睺  
      asura    a 依(属) アスラ、阿修羅  
      indo    a インドラ、帝王、王  
      candimaṃ    as, ā 男女  
      deva    a 依(属) 天、神、陛下  
      puttaṃ    a 息子  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      muñcitvā  muc 自由になる、放す  
      語根 品詞 語基 意味  
      taramāna  tvar 現分 a 有(持) 急ぐ  
      rūpo    a 中→男 色、物質、肉体、形相  
      yena    代的 (関係代名詞、〜tenaで「〜の所に」)  
      vepacitti    i 神名、ヴェーパチッティ  
      asura    a 依(属) アスラ、阿修羅  
      indo    a インドラ、帝王、王  
      tena    代的 それ、彼、それによって、それゆえ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upasaṅkami;  upa-saṃ-kram 近づいた  
    訳文                
     そこでアスラの王ラーフは、大慌ての姿で月〔天子〕を解き放つと、アスラの王ヴェーパチッティのもとへ近づいた。  
    メモ                
     ・ヴェーパチッティの名は『長部』20「大集会経」に出る。  
                       
                       
                       
    90-10.                
     upasaṅkamitvā saṃviggo lomahaṭṭhajāto ekamantaṃ aṭṭhāsi.   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upasaṅkamitvā  upa-saṃ-kram 近づく  
      語根 品詞 語基 意味  
      saṃviggo  saṃ-vij 過分 a 驚怖した、宗教心を起こした  
      loma    an 依(属)  
      haṭṭha  hṛṣ 過分 a 依(対) 竪立した  
      jāto  jan 過分 a 生まれた  
      ekamantaṃ    不変 一方に  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      aṭṭhāsi.  sthā 立つ  
    訳文                
     近づいて、恐懼し、毛を逆立てながら一方へ立った。  
                       
                       
                       
    90-11.                
     Ekamantaṃ ṭhitaṃ kho rāhuṃ asurindaṃ vepacitti asurindo gāthāya ajjhabhāsi –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Ekamantaṃ    不変 一方に  
      ṭhitaṃ  sthā 過分 a 立った、とどまった  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      rāhuṃ    u 神名、ラーフ、羅睺  
      asura    a 依(属) アスラ、阿修羅  
      indaṃ    a インドラ、帝王、王  
      vepacitti    i 神名、ヴェーパチッティ  
      asura    a 依(属) アスラ、阿修羅  
      indo    a インドラ、帝王、王  
      gāthāya    ā  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ajjhabhāsi –  adhi-bhāṣ 話しかける、語る  
    訳文                
     一方へ立ったアスラの王ラーフへ、アスラの王ヴェーパチッティは偈をもって語りかけた。  
                       
                       
                       
    90-12.                
     ‘‘Kiṃ nu santaramānova, rāhu candaṃ pamuñcasi;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Kiṃ    代的 副対 何、なぜ、いかに  
      nu    不変 いったい、たぶん、〜かどうか、〜ではないか  
      santaramāno  saṃ-tvar 現分 a 急ぐ  
      eva,    不変 まさに、のみ、じつに  
      rāhu    u 蝕、羅喉  
      candaṃ    a  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pamuñcasi;  pra-muc 脱する、解放する  
    訳文                
     「♪ラーフよ、なぜ汝は大慌てで月〔天子〕を解放したのか。  
                       
                       
                       
    90-13.                
     Saṃviggarūpo āgamma, kiṃ nu bhītova tiṭṭhasī’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Saṃvigga  saṃ-vij 過分 a 有(持) 驚怖した、宗教心を起こした  
      rūpo    a 中→男 色、物質、肉体、形相  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      āgamma,  ā-gam 来る、由りて、よって  
      語根 品詞 語基 意味  
      kiṃ    代的 何、なぜ、いかに  
      nu    不変 いったい、たぶん、〜かどうか、〜ではないか  
      bhīto  bhī 過分 a 怖れた、恐怖の  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      tiṭṭhasī’’  sthā 立つ  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ♪恐懼の姿でやって来て、いったい何を怖れて立っているのか」と。  
                       
                       
                       
    90-14.                
     ‘‘Sattadhā me phale muddhā, jīvanto na sukhaṃ labhe;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Sattadhā    不変 七種に、七樣に  
      me    代的  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      phale  phal 破れる、避ける、熟する  
      語根 品詞 語基 意味  
      muddhā,    an 頭、頂上  
      jīvanto  jīv 現分 ant 生きる、生存する  
      na    不変 ない  
      sukhaṃ    名形 a  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      labhe;  labh 能反 得る  
    訳文                
     〔ラーフ曰く〕「♪私の頭は七つに割れてしまうところであった。私は生きて楽を得ることが叶わないところであった。  
                       
                       
                       
    90-15.                
     Buddhagāthābhigītomhi, no ce muñceyya candima’’nti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Buddha  budh 名過分 a 依(具) 仏陀、覚者  
      gāthā    ā  
      abhigīto  abhi-gay 過分 a 歌唱した、誦した  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      amhi,  as ある、なる  
      語根 品詞 語基 意味  
      no    不変 ない、否  
      ce    不変 もし、たとえ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      muñceyya  muc 脱する、放つ  
      語根 品詞 語基 意味  
      candima’’n    as, ā 男女  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ♪もしも私が仏陀に偈を誦されていながら、月〔天子〕を解放しなかったならば」  
                       
                       
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