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     5. Ujjhānasaññisuttaṃ  
      語根 品詞 語基 意味  
      Ujjhāna  ud-dhyai/kṣai a 依(属) 不満、嫌責  
      saññi  saṃ-jñā in 依(属) 想の、有想の  
      suttaṃ  sīv a 経、糸  
    訳文                
     「不満想経」(『相応部』1-35  
    メモ                
     ・PTS辞書のujjhāyatiの項にはud + jhāyati1 or perhaps more likely jhāyati2 とあるので語根には二種を並記した。  
                       
                       
                       
    35-1.                
     35. Ekaṃ samayaṃ bhagavā sāvatthiyaṃ viharati jetavane anāthapiṇḍikassa ārāme.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Ekaṃ    代的 副対 一、とある  
      samayaṃ  saṃ-i a 副対  
      bhagavā    ant 世尊  
      sāvatthiyaṃ    ī 地名、サーヴァッティー  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      viharati  vi-hṛ 住する  
      語根 品詞 語基 意味  
      jetavane    a 地名、ジェータ林、祇樹、祇園  
      anāthapiṇḍikassa    a 人名、アナータピンディカ、給孤独  
      ārāme.    a  
    訳文                
     あるとき世尊はサーヴァッティーのジェータ林、アナータピンディカ園に住しておられた。  
                       
                       
                       
    35-2.                
     Atha kho sambahulā ujjhānasaññikā devatāyo abhikkantāya rattiyā abhikkantavaṇṇā kevalakappaṃ jetavanaṃ obhāsetvā yena bhagavā tenupasaṅkamiṃsu;   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また、そこに  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      sambahulā    a 多くの、衆多の  
      ujjhāna  ud-dhyai/kṣai a 依(属) 不満、嫌責  
      saññikā  saṃ-jñā a 想の、有想の  
      devatāyo    ā 神々、女神、地祇  
      abhikkantāya  abhi-kram 過分 a 過ぎ去った、進んだ、超えた、素晴らしい  
      rattiyā    i  
      abhikkanta  abhi-kram 過分 a 有(持) 過ぎ去った、進んだ、超えた、素晴らしい  
      vaṇṇā    a 男→女 色、容色  
      kevalakappaṃ    不変 全面に  
      jetavanaṃ    a 地名、ジェータ林、祇樹、祇園  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      obhāsetvā  ava-bhās 使 照らす  
      語根 品詞 語基 意味  
      yena    代的 (関係代名詞、〜tenaで「〜の所に」)  
      bhagavā    ant 世尊  
      tena    代的 それ、彼、それによって、それゆえ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upasaṅkamiṃsu;  upa-saṃ-kram 能反 近づいた  
    訳文                
     ときに、すぐれた容色をもった、不満の想ある神々が、夜更けに、ジェータ林を全面に照らしながら、世尊のもとへ近づいた。  
                       
                       
                       
    35-3.                
     upasaṅkamitvā vehāsaṃ aṭṭhaṃsu.   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upasaṅkamitvā  upa-saṃ-kram 近づく  
      語根 品詞 語基 意味  
      vehāsaṃ    a 空、虚空  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      aṭṭhaṃsu.  sthā 立つ  
    訳文                
     近づいて、虚空へ立った。  
                       
                       
                       
    35-4.                
     Vehāsaṃ ṭhitā kho ekā devatā bhagavato santike imaṃ gāthaṃ abhāsi –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Vehāsaṃ    a 空、虚空  
      ṭhitā  sthā 過分 a 立った  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      ekā    代的 一、とある  
      devatā    ā 神々、女神、地祇  
      bhagavato    ant 世尊  
      santike    a 付近、面前  
      imaṃ    代的 これ  
      gāthaṃ    ā  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      abhāsi –  bhāṣ 語る、話す  
    訳文                
     虚空へ立ったとある神霊が、世尊の面前でこの偈を発した。  
                       
                       
                       
    35-5.                
     ‘‘Aññathā santamattānaṃ, aññathā yo pavedaye;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Aññathā    不変 他の方法で、異なって  
      santam  as 現分 ant ある、なる  
      attānaṃ,    an 自己、我  
      aññathā    不変 他の方法で、異なって  
      yo    代的 (関係代名詞)  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pavedaye;  pra-vid 使 知らせる、説く  
    訳文                
     「♪自己を〔実際の〕有りかたとは別様に説く者。  
                       
                       
                       
    35-6.                
     Nikacca kitavasseva, bhuttaṃ theyyena tassa taṃ.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Nikacca    i 詐欺、欺瞞  
      kitavassa    a 賭博者、詐欺師  
      iva,    不変 ごとく  
      bhuttaṃ  bhuj 過分 a 食した、受用した  
      theyyena    a 盗心、盗み  
      tassa    代的 それ、彼  
      taṃ.    代的 それ  
    訳文                
     ♪その者の受用は、欺瞞により、盗みによる、詐欺師のそれの如くである。  
                       
                       
                       
    35-7.                
     ‘‘Yañhi kayirā tañhi vade, yaṃ na kayirā na taṃ vade;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Yañ    代的 (関係代名詞)  
      hi    不変 じつに、なぜなら  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      kayirā  kṛ 受 なされる  
      語根 品詞 語基 意味  
      tañ    代的 それ  
      hi    不変 じつに、なぜなら  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      vade,  vad いう  
      語根 品詞 語基 意味  
      yaṃ    代的 (関係代名詞)  
      na    不変 ない  
      kayirā  同上  
      na    不変 ない  
      taṃ    代的 それ  
      vade;  同上  
    訳文                
     ♪できることを語るべきである。できないことを語るべきではない。  
                       
                       
                       
    35-8.                
     Akarontaṃ bhāsamānānaṃ, parijānanti paṇḍitā’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Akarontaṃ  a-kṛ 現分 ant 属絶 なさない  
      bhāsamānānaṃ,  bhāṣ 現分 a 属絶 話す  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      parijānanti  pra-jñā 暁了する、遍知する  
      語根 品詞 語基 意味  
      paṇḍitā’’    a 賢い  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ♪できもせずに語ったとしても、賢者たちは知り抜く」と。  
                       
                       
                       
    35-9.                
     ‘‘Na yidaṃ bhāsitamattena, ekantasavanena vā;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Na    不変 ない  
      yidaṃ    代的 これ  
      bhāsita  bhāṣ 名過分 a 言った  
      mattena,    a のみ、だけ、程度の  
      ekanta    a 一向の、単一の  
      savanena  śru a 耳、聞、聴聞  
      vā;    不変 あるいは  
    訳文                
     〔釈尊曰く〕「♪これは語られたことのみによって、あるいは一方的に聞いたことによって、  
                       
                       
                       
    35-10.                
     Anukkamitave sakkā, yāyaṃ paṭipadā daḷhā;  
      語根 品詞 語基 意味  
      Anukkamitave  anu-kram 不定? 従うこと、随順すること、進むこと  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      sakkā,  śak できる、可能である  
      語根 品詞 語基 意味  
          代的 (関係代名詞)  
      ayaṃ    代的 これ  
      paṭipadā  prati-pad ā  
      daḷhā;    a 堅固な  
    訳文                
     ♪進むことはできない。すなわちかの堅固な道、  
    メモ                
     ・Anukkamitaveは語形の理解に苦しみ、sakkāに呼応する不定詞Anukkamituの異体とした。  
                       
                       
                       
    35-11.                
     Yāya dhīrā pamuccanti, jhāyino mārabandhanā.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Yāya    代的 (関係代名詞)  
      dhīrā    名形 a 賢い  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pamuccanti,  pra-muc 受 解放される  
      語根 品詞 語基 意味  
      jhāyino  dhyai 名形 in 禅定者、静慮者  
      māra  mṛ a 依(属) 魔、死魔  
      bandhanā.  bandh a 捕縛、拘束、結節  
    訳文                
     ♪そこにおいて賢明な静慮者たちが死魔の拘束から解放されるところの〔道は〕。  
                       
                       
                       
    35-12.                
     ‘‘Na ve dhīrā pakubbanti, viditvā lokapariyāyaṃ;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Na    不変 ない  
      ve    不変 じつに  
      dhīrā    名形 a 賢い  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pakubbanti,  pra-kṛ 行う、作る、準備する  
      viditvā  vid 知る  
      語根 品詞 語基 意味  
      loka    a 依(対) 世界、世間  
      pariyāyaṃ;  pari-i a 法門、理趣  
    訳文                
     ♪賢者たちは世間のことわりを知り、〔悪業を〕作らない。  
    メモ                
     ・『原始』によった補訳。  
                       
                       
                       
    35-13.                
     Aññāya nibbutā dhīrā, tiṇṇā loke visattika’’nti.  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      Aññāya  ā-jñā よく知る  
      語根 品詞 語基 意味  
      nibbutā  nir-vā? 過分 a 寂滅した、涅槃に達した  
      dhīrā,    名形 a 賢い  
      tiṇṇā  tṛ 過分 a 渡った、度脱した、超えた  
      loke    a 世界、世間  
      visattika’’n    ā 執着、愛着  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ♪よく知り、寂滅して、賢者たちは世における執着を度脱した」  
                       
                       
                       
    35-14.                
     Atha kho tā devatāyo pathaviyaṃ patiṭṭhahitvā bhagavato pādesu sirasā nipatitvā bhagavantaṃ etadavocuṃ –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また、そこに  
      kho    不変 じつに、たしかに  
          代的 それら、彼女ら  
      devatāyo    ā 神々、女神、地祇  
      pathaviyaṃ    ī  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      patiṭṭhahitvā  prati-ud-sthā 起き上がる  
      語根 品詞 語基 意味  
      bhagavato    ant 世尊  
      pādesu    a  
      sirasā    as 男中  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      nipatitvā  ni-pat 倒れる、倒礼する  
      語根 品詞 語基 意味  
      bhagavantaṃ    ant 世尊  
      etad    代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      avocuṃ –  vac いう  
    訳文                
     そこでその神々は地へ降り立ち、世尊へ頭面礼足し、世尊へこう言った。  
                       
                       
                       
    35-15.                
     ‘‘accayo no, bhante, accagamā yathābālaṃ yathāmūḷhaṃ yathāakusalaṃ [yathābālā yathāmūḷhā yathāakusalā (sabbattha)], yā mayaṃ bhagavantaṃ āsādetabbaṃ amaññimhā.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘accayo  ati-i a 過失、罪過  
      no,    代的 私たち  
      bhante,  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、大徳よ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      accagamā  ati-gam 過ぎゆく、超える  
      語根 品詞 語基 意味  
      yathā    不変 〜のごとくに、〜のように  
      bālaṃ    a 単(複) 愚かな  
      yathā    不変 〜のごとくに、〜のように  
      mūḷhaṃ  muh 過分 a 単(複) 愚昧の、昏迷した  
      yathā    不変 〜のごとくに、〜のように  
      akusalaṃ,    a 単(複) 不善の  
          代的 (関係代名詞)  
      mayaṃ    代的 私たち  
      bhagavantaṃ    ant 世尊  
      āsādetabbaṃ  ā-sad 使 未分 a 打たれるべき、攻撃されるべき  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      amaññimhā.  man 考える、思う、思量する  
    訳文                
     「尊者よ、我々は無知のまま、愚昧のまま、不善のまま、罪過を犯しました。我々は、世尊を攻撃されるべき者だと考えておりました。  
    メモ                
     ・『長部』25「ウドゥンバリカー経」に‘‘Saccaṃ, bhante, bhāsitā me esā vācā, yathābālena yathāmūḷhena yathāakusalenā’’ti. という文があることからyathābālaṃ yathāmūḷhaṃ yathāakusalaṃnoにかかっているべきものの筈である。異版の形もそのことを意識したものであろうが、accayo no accagamāという構文の場合noは対格なので、『相応部』16-6「教誡経」のようにyathābāle yathāmūḷhe yathāakusaleとするのが正しいのではあるまいか。  
                       
                       
                       
    35-16.                
     Tāsaṃ no, bhante, bhagavā accayaṃ accayato paṭiggaṇhātu āyatiṃ saṃvarāyā’’ti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Tāsaṃ    代的 それら、彼女ら  
      no,    代的 私たち  
      bhante,  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、大徳よ  
      bhagavā    ant 世尊  
      accayaṃ  ati-i a 過失、罪過  
      accayato  ati-i a 過失、罪過  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      paṭiggaṇhātu  prati-grah 受け取る、受納する  
      語根 品詞 語基 意味  
      āyatiṃ    i 副対 未来に  
      saṃvarāyā’’  saṃ-vṛ a 防護  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     尊者よ、世尊は、未来の防護のため、その我々の過ちを過ちとして受け入れてくださいますよう」と。  
                       
                       
                       
    35-17.                
     Atha kho bhagavā sitaṃ pātvākāsi.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また、そこに  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      bhagavā    ant 世尊  
      sitaṃ  smi 名過分 a 微笑した、微笑み  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pātvākāsi.  pātu-kṛ 明らかにする、あらわす  
    訳文                
     ときに世尊は微笑を明らかにされた。  
    メモ                
     ・『註』は「伝えによれば、かの神々は誠心より謝罪しておらず」Tā kira devatā na sabhāvena khamāpenti, とあるので、その内心を見抜いて、謝罪を受け入れないことを表明する微笑だったということになろうか。  
                       
                       
                       
    35-18.                
     Atha kho tā devatāyo bhiyyosomattāya ujjhāyantiyo vehāsaṃ abbhuggañchuṃ.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また、そこに  
      kho    不変 じつに、たしかに  
          代的 それら、彼女ら  
      devatāyo    ā 神々、女神、地祇  
      bhiyyoso    不変 より多くの  
      mattāya  a 副具  
      ujjhāyantiyo  ud-dhyai/kṣai 現分 ant 嫌責する、不満をなす  
      vehāsaṃ    a 空、虚空  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      abbhuggañchuṃ.  abhi-ud-gam 昇る、あがる  
    訳文                
     そこでその神々は、より多くの不満をなして虚空へ上昇した。  
                       
                       
                       
    35-19.                
     Ekā devatā bhagavato santike imaṃ gāthaṃ abhāsi –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Ekā devatā bhagavato santike imaṃ gāthaṃ abhāsi – (35-4.)  
    訳文                
     とある神霊は、世尊の面前でこの偈を発した。  
                       
                       
                       
    35-20.                
     ‘‘Accayaṃ desayantīnaṃ, yo ce na paṭigaṇhati;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Accayaṃ  ati-i a 過失、罪過  
      desayantīnaṃ,  diś 使 現分 ant 示す、懺悔する  
      yo    代的 (関係代名詞)  
      ce    不変 もし、たとえ  
      na    不変 ない  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      paṭigaṇhati;  prati-grah 受け取る、受領する、受納する  
    訳文                
     「♪もし、罪過を懺悔する者たちを受け入れない者があるならば、  
                       
                       
                       
    35-21.                
     Kopantaro dosagaru, sa veraṃ paṭimuñcatī’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Kopa  kup a 有(持) 忿恨、憤怒、怒気  
      antaro    名形 a 中→男 内の、中間の  
      dosa    a 有(持) 瞋恚  
      garu,    名形 u 重い、尊重  
      sa    代的 それ、彼  
      veraṃ    a 怨恨、敵意  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      paṭimuñcatī’’  prati-muc 縛る、放つ、得る、到達する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ♪内なる忿怒あり、重い瞋恚あるその者は、怨恨を〔世に〕解き放つ」と。  
                       
                       
                       
    35-22.                
     ‘‘Accayo ce na vijjetha, nocidhāpagataṃ [nocīdha apahataṃ (syā. kaṃ.), nocidhāpakataṃ (?)] siyā;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Accayo  ati-i a 過失、罪過  
      ce    不変 もし、たとえ  
      na    不変 ない  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      vijjetha,  vid 受 見いだされる、知られる、存在する  
      語根 品詞 語基 意味  
      no    不変 ない、否  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      idha    不変 ここに、この世で、いま、さて  
      apagataṃ  apa-gam 過分 a 去った、離れた、死去した  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      siyā;  as ある、なる  
    訳文                
     〔世尊曰く〕「♪もし罪過が認められないのであれば、その場合、〔罪過からの〕離去はありえない。  
    メモ                
     ・諸訳はこれを神霊の偈の続きとしているが、前文がtiで終わっていることからして、ここでは釈尊の返歌とした。問答の流れとしては、「謝罪を受け入れないようならば怨むぞ」という偈にたいし「内心で罪過を認めていないのなら、その懺悔は本物ではない。恨みがあるというならどうして善き者になれるというのか」と返歌でやり込め、消沈・反省した神々が「では真に罪過なく懺悔の要なき者は居るのか」と問い、釈尊は「仏陀がそうである。(反省したようだし、確かに怨みを生むのは本意ではないから)ここで懺悔を受け入れよう」と返した、というものと解した。何とか文脈をつかもうとしての解釈だが、これでよいのかどうか。  
     ・前文のpaṭimuñcatiを「〔世に〕解き放つ」と訳したのはこの解釈の上でのものである。  
     ・また、諸訳は『註』のaparādhoという換言に基づいて「過失」としているが、ここでは上の解釈から「離去」とした。  
                       
                       
                       
    35-23.                
     Verāni na ca sammeyyuṃ, kenīdha [verāni ca sammeyyuṃ, tenidha (sī.)] kusalo siyā’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Verāni    a 怨恨、敵意  
      na    不変 ない  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      sammeyyuṃ,  śam 静まる、寂止する  
      語根 品詞 語基 意味  
      kena    代的 何、誰  
      idha    不変 ここに、この世で、いま、さて  
      kusalo    a 良き、善巧の、巧みな  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      siyā’’  as ある、なる  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ♪また諸々の怨みが静まっていないのならば、その場合、どうして善き者となるというのか」  
                       
                       
                       
    35-24.                
     ‘‘Kassaccayā na vijjanti, kassa natthi apāgataṃ;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Kassa    代的 何、誰  
      accayā  ati-i a 過失、罪過  
      na    不変 ない  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      vijjanti,  vid 受 見出される、知られる、存在する  
      語根 品詞 語基 意味  
      kassa    代的 何、誰  
      na    不変 ない  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      atthi  as ある、なる  
      語根 品詞 語基 意味  
      apāgataṃ;  apa-gam 過分 a 去った、離れた、死去した  
    訳文                
     〔神霊曰く〕「♪誰ならば諸々の罪過が認められず、誰ならば離去〔の必要〕がないのか。  
    メモ                
     ・apāgataṃは韻律のための長音化か。  
                       
                       
                       
    35-25.                
     Ko na sammohamāpādi, ko ca dhīro [kodha dhīro (syā. kaṃ.)] sadā sato’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Ko    代的 何、誰  
      na    不変 ない  
      sammoham  saṃ-muh a 迷妄、迷乱  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      āpādi,  ā-pad 来る、遭う、至る  
      語根 品詞 語基 意味  
      ko    代的 何、誰  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      dhīro    名形 a 賢い  
      sadā    不変 常に  
      sato’’  smṛ 過分 a 憶念した、念の、念のある、具念、正念の  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ♪誰が、迷乱に至らないのか。また誰が、賢者として常に正念ある者なのか」  
                       
                       
                       
    35-26.                
     ‘‘Tathāgatassa buddhassa, sabbabhūtānukampino;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Tathāgatassa  tathā-(ā-)gam a 如来  
      buddhassa,  budh 名過分 a 仏陀、覚者  
      sabba    名形 代的 すべて  
      bhūta  bhū 過分 a 依(与) 存在した、生類  
      anukampino;  anu-kamp in 憐愍ある  
    訳文                
     〔世尊曰く〕「♪如来、仏陀、一切生類の憐愍者。  
                       
                       
                       
    35-27.                
     Tassaccayā na vijjanti, tassa natthi apāgataṃ;  
      語根 品詞 語基 意味  
      Tassa    代的 それ、彼  
      accayā na vijjanti, tassa natthi apāgataṃ; (35-24.)  
    訳文                
     ♪彼には諸々の罪過が認められず、彼には離去〔の必要〕がない。  
                       
                       
                       
    35-28.                
     So na sammohamāpādi, sova [sodha (syā. kaṃ.)] dhīro sadā sato’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      So    代的 それ、彼  
      na sammohamāpādi, sova dhīro sadā sato’’ti. (35-25.)  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
    訳文                
     ♪彼は迷乱に至らない。彼こそは、賢者として常に正念ある者である。  
                       
                       
                       
    35-29.                
     ‘‘Accayaṃ desayantīnaṃ, yo ce na paṭigaṇhati;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Accayaṃ desayantīnaṃ, yo ce na paṭigaṇhati; (35-20.)  
    訳文                
     ♪もし、罪過を懺悔する者たちを受け入れない者があるならば、  
                       
                       
                       
    35-30.                
     Kopantaro dosagaru, sa veraṃ paṭimuñcati;  
      語根 品詞 語基 意味  
      Kopantaro dosagaru, sa veraṃ paṭimuñcati; (35-21.)  
    訳文                
     ♪内なる忿怒あり、重い瞋恚あるその者は、怨恨を〔世に〕解き放つ。  
                       
                       
                       
    35-31.                
     Taṃ veraṃ nābhinandāmi, paṭiggaṇhāmi voccaya’’nti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Taṃ    代的 それ  
      veraṃ    a 怨恨、敵意  
      na    不変 ない  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      abhinandāmi,  abhi-nand 大いに喜ぶ、歓喜する  
      paṭiggaṇhāmi  prati-grah 受け取る、受領する、受納する  
      語根 品詞 語基 意味  
      vo    代的 あなたたち  
      accaya’’n  ati-i a 過失、罪過  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ♪その怨みを私は喜ばない。私はあなたがたの罪過〔の懺悔〕を受け入れよう」  
                       
                       
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