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     Saṃsandanakathā  
      語根 品詞 語基 意味  
      Saṃsandana  saṃ-syand ā 依(属) 合流、適用、結合  
      kathā   ā 説、話、論、物語  
    訳文                
     【交流の話】  
                       
                       
                       
    550-1.                
     550. ‘‘Taṃ kiṃ maññasi, vāseṭṭha, kinti te sutaṃ brāhmaṇānaṃ vuddhānaṃ mahallakānaṃ ācariyapācariyānaṃ bhāsamānānaṃ, sapariggaho vā brahmā apariggaho vā’’ti?   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Taṃ    代的 それ、彼、彼女  
      kiṃ    不変 何、どう  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      maññasi,  man 考える  
      語根 品詞 語基 意味  
      vāseṭṭha,    a 人名、ヴァーセッタ  
      kin    不変 なぜ、いかに  
      ti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      te    代的 あなた  
      sutaṃ  śru 名過分 a 聞かれた  
      brāhmaṇānaṃ  bṛh a 属絶 婆羅門  
      vuddhānaṃ  vṛdh 過分 a 属絶 耆宿の、長老、年長の、増上の  
      mahallakānaṃ    a 属絶 老練の、老大、高齢の  
      ācariya  a-car a  
      pācariyānaṃ  pra-ā-car a 属絶 大阿闍梨、師中の師、大先生  
      bhāsamānānaṃ,  bhāṣ 現分 a 属絶 いう  
      sapariggaho  sa-pari-grah 過分 a 財産を有する、妻を有する、執着ある  
          不変 あるいは  
      brahmā  bṛh 名形 an(特) 梵天  
      apariggaho  a-pari-grah 過分 a 無妻、独身、執着なき  
      vā’’    不変 あるいは  
      ti?    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ヴァーセッタよ、これをどう考えますか。あなたは、年長、高齢の婆羅門たち、師や大師が語っているとき、どう聞きましたか。梵天は執着ある者でしょうか、あるいは執着なき者でしょうか」  
    メモ                
     ・『註』は「Sapariggahoとは、女性への執着による執着ある者かと問うたのである」itthipariggahena sapariggahoti pucchati とし、おそらくこれをうけて『パーリ』、『原始』も妻帯の意味で解している。ただpariggahaには妻だけでなく遍取、執持、執着、摂受、所有物、財産といった多義があり、以下の文脈からは、女性へのそれに限定されない、より包括的な執着の有無が問われているとも解せる(現に『南伝』は「愛着」とする)ため、ここではそのようにした。  
                       
                       
                       
    550-2.                
     ‘‘Apariggaho, bho gotama’’.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Apariggaho,  sa-pari-grah 過分 a 無妻、独身、執着なき  
      bho  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      gotama’’.    a 人名、ゴータマ  
    訳文                
     「尊者ゴータマよ、執着なき者です」  
                       
                       
                       
    550-3.                
     ‘‘Saveracitto vā averacitto vā’’ti?   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Savera    a 有(持) 怨ある、有怨の  
      citto  cit a 中→男  
          不変 あるいは  
      avera    a 有(持) 怨なき、無怨の  
      citto  cit a 中→男  
      vā’’    不変 あるいは  
      ti?    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「怨みのある心の者でしょうか、あるいは怨みなき心の者でしょうか」  
                       
                       
                       
    550-4.                
     ‘‘Averacitto, bho gotama’’.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Avera    a 有(持) 怨なき、無怨の  
      citto,  cit a 中→男  
      bho  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      gotama’’.    a 人名、ゴータマ  
    訳文                
     「尊者ゴータマよ、怨みなき心の者です」  
                       
                       
                       
    550-5.                
     ‘‘Sabyāpajjacitto vā abyāpajjacitto vā’’ti?   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Sabyāpajja  sa-vi-ā-pad a 有(持) 瞋ある、有瞋の  
      citto  cit a 中→男  
          不変 あるいは  
      abyāpajja  a-vi-ā-pad 名未分 a 中→男 有(持) 瞋なき、無瞋の  
      citto  cit a 中→男  
      vā’’    不変 あるいは  
      ti?    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「瞋ある心の者でしょうか、あるいは瞋なき心の者でしょうか」  
                       
                       
                       
    550-6.                
     ‘‘Abyāpajjacitto, bho gotama’’.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Abyāpajja  a-vi-ā-pad 名未分 a 有(持) 瞋なき、無瞋の  
      citto,  cit a 中→男  
      bho  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      gotama’’.    a 人名、ゴータマ  
    訳文                
     「尊者ゴータマよ、瞋なき心の者です」  
                       
                       
                       
    550-7.                
     ‘‘Saṃkiliṭṭhacitto vā asaṃkiliṭṭhacitto vā’’ti?   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Saṃkiliṭṭha  saṃ-kliś 過分 a 有(持) 汚染された、己染の、雑染の  
      citto  cit a 中→男  
          不変 あるいは  
      asaṃkiliṭṭha  a-saṃ-kliś 過分 a 有(持) 汚染なき、不己染の、不雑染の  
      citto  cit a 中→男  
      vā’’    不変 あるいは  
      ti?    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「汚れある心の者でしょうか、あるいは汚れなき心の者でしょうか」  
    メモ                
     ・saṃkiliṭṭhasaṅkiliṭṭhaの異体であろう。  
                       
                       
                       
    550-8.                
     ‘‘Asaṃkiliṭṭhacitto, bho gotama’’.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Asaṃkiliṭṭha  a-saṃ-kliś 過分 a 有(持) 汚染なき、不己染の、不雑染の  
      citto,  cit a 中→男  
      bho  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      gotama’’.    a 人名、ゴータマ  
    訳文                
     「尊者ゴータマよ、汚れなき心の者です」  
                       
                       
                       
    550-9.                
     ‘‘Vasavattī vā avasavattī vā’’ti?   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Vasavattī    in 自在力ある  
          不変 あるいは  
      avasavattī    in 自在力なき  
      vā’’    不変 あるいは  
      ti?    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「自在力ある者でしょうか、あるいは自在力なき者でしょうか」  
                       
                       
                       
    550-10.                
     ‘‘Vasavattī, bho gotama’’.  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Vasavattī,    in 自在力ある  
      bho  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      gotama’’.   a 人名、ゴータマ  
    訳文                
     「尊者ゴータマよ、自在力ある者です」  
    メモ                
     ・『註』は、以上の無執着、無怨、無瞋、無雑染、自在力という五つの徳目を、五蓋それぞれの無に順次対応したものと説く。しかし結果、瞋〔蓋〕byāpādaの無は無怨averaに対応し、いっぽう無瞋abyāpajjoに対応するのは惛眠〔蓋〕Thinamiddhaの無ということになっており、後から強引に関連づけたとの感は否めない。  
                       
                       
                       
    550-11.                
     ‘‘Taṃ kiṃ maññasi, vāseṭṭha, sapariggahā vā tevijjā brāhmaṇā apariggahā vā’’ti?   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Taṃ    代的 それ、彼、彼女  
      kiṃ    不変 何、どう  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      maññasi,  man 考える  
      語根 品詞 語基 意味  
      vāseṭṭha,    a 人名、ヴァーセッタ  
      sapariggahā  sa-pari-grah 過分 a 財産を有する、妻を有する、執着ある  
          不変 あるいは  
      te    有(帯)  
      vijjā  vid ā 女→男 明、智、呪、学問、魔術  
      brāhmaṇā  bṛh a 婆羅門  
      apariggahā  a-pari-grah 過分 a 無妻、独身、執着なき  
      vā’’    不変 あるいは  
      ti?    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「ヴァーセッタよ、これをどう考えますか。三明をそなえた婆羅門たちは、執着ある者たちでしょうか、あるいは執着なき者たちでしょうか」  
                       
                       
                       
    550-12.                
     ‘‘Sapariggahā, bho gotama’’.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Sapariggahā,  sa-pari-grah 過分 a 財産を有する、妻を有する、執着ある  
      bho  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      gotama’’.    a 人名、ゴータマ  
    訳文                
     「尊者ゴータマよ、執着ある者たちです」  
                       
                       
                       
    550-13.                
     ‘‘Saveracittā vā averacittā vā’’ti?   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Savera    a 有(持) 怨ある、有怨の  
      cittā  cit a 中→男  
          不変 あるいは  
      avera    a 有(持) 怨なき、無怨の  
      cittā  cit a 中→男  
      vā’’    不変 あるいは  
      ti?    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「怨みのある心の者たちでしょうか、あるいは怨みなき心の者たちでしょうか」  
                       
                       
                       
    550-14.                
     ‘‘Saveracittā, bho gotama’’.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Savera    a 有(持) 怨ある、有怨の  
      cittā,  cit a 中→男  
      bho  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      gotama’’.    a 人名、ゴータマ  
    訳文                
     「尊者ゴータマよ、怨みある心の者たちです」  
                       
                       
                       
    550-15.                
     ‘‘Sabyāpajjacittā vā abyāpajjacittā vā’’ti?   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Sabyāpajja  sa-vi-ā-pad a 有(持) 瞋ある、有瞋の  
      cittā  cit a 中→男  
          不変 あるいは  
      abyāpajja  a-vi-ā-pad 名未分 a 有(持) 瞋なき、無瞋の  
      cittā  cit a 中→男  
      vā’’    不変 あるいは  
      ti?    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「瞋ある心の者たちでしょうか、あるいは瞋なき心の者たちでしょうか」  
                       
                       
                       
    550-16.                
     ‘‘Sabyāpajjacittā, bho gotama’’.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Sabyāpajja  sa-vi-ā-pad a 有(持) 瞋ある、有瞋の  
      cittā,  cit a 中→男  
      bho  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      gotama’’.    a 人名、ゴータマ  
    訳文                
     「尊者ゴータマよ、瞋ある心の者たちです」  
                       
                       
                       
    550-17.                
     ‘‘Saṃkiliṭṭhacittā vā asaṃkiliṭṭhacittā vā’’ti?   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Saṃkiliṭṭha  saṃ-kliś 過分 a 有(持) 汚染された、己染の、雑染の  
      cittā  cit a 中→男  
          不変 あるいは  
      asaṃkiliṭṭha  a-saṃ-kliś 過分 a 有(持) 汚染なき、不己染の、不雑染の  
      cittā  cit a 中→男  
      vā’’    不変 あるいは  
      ti?    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「汚れある心の者たちでしょうか、あるいは汚れなき心の者たちでしょうか」  
                       
                       
                       
    550-18.                
     ‘‘Saṃkiliṭṭhacittā, bho gotama’’.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Saṃkiliṭṭha  saṃ-kliś 過分 a 有(持) 汚染された、己染の、雑染の  
      cittā,  cit a 中→男  
      bho  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      gotama’’.    a 人名、ゴータマ  
    訳文                
     「尊者ゴータマよ、汚れある心の者たちです」  
                       
                       
                       
    550-19.                
     ‘‘Vasavattī vā avasavattī vā’’ti?   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Vasavattī    in 自在力ある  
          不変 あるいは  
      avasavattī    in 自在力なき  
      vā’’    不変 あるいは  
      ti?    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「自在力ある者たちでしょうか、あるいは自在力なき者たちでしょうか」  
                       
                       
                       
    550-20.                
     ‘‘Avasavattī, bho gotama’’.  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Avasavattī,    in 自在力なき  
      bho  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      gotama’’.   a 人名、ゴータマ  
    訳文                
     「尊者ゴータマよ、自在力なき者たちです」  
                       
                       
                       
    551-1.                
     551. ‘‘Iti kira, vāseṭṭha, sapariggahā tevijjā brāhmaṇā apariggaho brahmā.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Iti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      kira,    不変 伝え言う、〜という話だ  
      vāseṭṭha,    a 人名、ヴァーセッタ  
      sapariggahā  sa-pari-grah 過分 a 財産を有する、妻を有する、執着ある  
      te    有(帯)  
      vijjā  vid ā 女→男 明、智、呪、学問、魔術  
      brāhmaṇā  bṛh a 婆羅門  
      apariggaho  a-pari-grah 過分 a 無妻、独身、執着なき  
      brahmā.  bṛh 名形 an(特) 梵天  
    訳文                
     「ヴァーセッタよ、こういうことですね。三明をそなえた婆羅門たちは執着ある者たちであり、梵天は執着なき者である、と。  
                       
                       
                       
    551-2.                
     Api nu kho sapariggahānaṃ tevijjānaṃ brāhmaṇānaṃ apariggahena brahmunā saddhiṃ saṃsandati sametī’’ti?   
      語根 品詞 語基 意味  
      Api    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      nu    不変 いったい、たぶん、〜かどうか、〜ではないか  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      sapariggahānaṃ  sa-pari-grah 過分 a 財産を有する、妻を有する、執着ある  
      te    有(帯)  
      vijjānaṃ  vid ā 女→男 明、智、呪、学問、魔術  
      brāhmaṇānaṃ  bṛh a 婆羅門  
      apariggahena  a-pari-grah 過分 a 無妻、独身、執着なき  
      brahmunā  bṛh 名形 an(特) 梵天  
      saddhiṃ    不変 共に、一緒に(具格支配)  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      saṃsandati  saṃ-syand 交流する、合流する  
      sametī’’  saṃ-i 一致する、集合する、交際する、会う、知る、同意する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti?    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ではいったい、執着ある三明をそなえた婆羅門たちには、執着なき梵天と交流し、交際する〔ということがあるの〕でしょうか」  
    メモ                
     ・主語のない構文につき、補訳した。  
                       
                       
                       
    551-3.                
     ‘‘No hidaṃ, bho gotama’’.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘No    不変 ない、否  
      hi    不変 じつに、なぜなら  
      idaṃ,    代的 これ  
      bho  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      gotama’’.   a 人名、ゴータマ  
    訳文                
     「尊者ゴータマよ、じつにそれは否です」  
                       
                       
                       
    551-4.                
     ‘‘Sādhu, vāseṭṭha, te vata, vāseṭṭha, sapariggahā tevijjā brāhmaṇā kāyassa bhedā paraṃ maraṇā apariggahassa brahmuno sahabyūpagā bhavissantī’’ti, netaṃ ṭhānaṃ vijjati.  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Sādhu,    u よきかな、なにとぞ  
      vāseṭṭha,    a 人名、ヴァーセッタ  
      te    代的 それら、彼ら  
      vata,    不変 じつに  
      vāseṭṭha,    a 人名、ヴァーセッタ  
      sapariggahā  sa-pari-grah 過分 a 財産を有する、妻を有する、執着ある  
      te    有(帯)  
      vijjā  vid ā 女→男 明、智、呪、学問、魔術  
      brāhmaṇā  bṛh a 婆羅門  
      kāyassa    a 体、身体  
      bhedā  bhid a 破壊、不和合、離間、種類、区分  
      paraṃ    代的 副対 更に、他に、超えて  
      maraṇā  mṛ a 死 →死後に  
      apariggahassa  a-pari-grah 過分 a 無妻、独身、執着なき  
      brahmuno  bṛh 名形 an(特) 梵天  
      sahabya    a 依(対) 共住、友誼  
      upagā  upa-gam a 至る、達する、経験する、属する  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      bhavissantī’’  bhū ある、なる、存在する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti,    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      na    不変 ない  
      etaṃ    代的 これ  
      ṭhānaṃ  sthā a 場所、住処、状態、点、理由、原因、道理  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      vijjati. vid 受 見出される、知られる、存在する  
    訳文                
     「ヴァーセッタよ、よきかな。ヴァーセッタよ、じつに、彼ら執着ある三明をそなえた婆羅門たちが、身破れて死後、執着なき梵天との共住に至る者となるという、この道理は存在しません。  
                       
                       
                       
    551-5.                
     ‘‘Iti kira, vāseṭṭha, saveracittā tevijjā brāhmaṇā, averacitto brahmā…pe…   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Iti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      kira,    不変 伝え言う、〜という話だ  
      vāseṭṭha,    a 人名、ヴァーセッタ  
      savera    a 有(持) 怨ある、有怨の  
      cittā  cit a 中→男  
      te    有(帯)  
      vijjā  vid ā 女→男 明、智、呪、学問、魔術  
      brāhmaṇā,  bṛh a 婆羅門  
      avera    a 有(持) 怨なき、無怨の  
      citto  cit a 中→男  
      brahmā  bṛh 名形 an(特) 梵天  
      …pe…    (略)  
    訳文                
     〔また〕ヴァーセッタよ、こういうことですね。三明をそなえた婆羅門たちは怨みある心の者たちであり、梵天は怨みなき心の者である、と。……(略)  
                       
                       
                       
    551-6.                
     sabyāpajjacittā tevijjā brāhmaṇā abyāpajjacitto brahmā…   
      語根 品詞 語基 意味  
      sabyāpajja  sa-vi-ā-pad a 有(持) 瞋ある、有瞋の  
      cittā  cit a 中→男  
      te    有(帯)  
      vijjā  vid ā 女→男 明、智、呪、学問、魔術  
      brāhmaṇā  bṛh a 婆羅門  
      abyāpajja  a-vi-ā-pad 名未分 a 有(持) 瞋なき、無瞋の  
      citto  cit a 中→男  
      brahmā…  bṛh 名形 an(特) 梵天  
    訳文                
     三明をそなえた婆羅門たちは怨みある心の者たちであり、梵天は怨みなき心の者である……  
                       
                       
                       
    551-7.                
     saṃkiliṭṭhacittā tevijjā brāhmaṇā asaṃkiliṭṭhacitto brahmā…   
      語根 品詞 語基 意味  
      saṃkiliṭṭha  saṃ-kliś 過分 a 有(持) 汚染された、己染の、雑染の  
      cittā  cit a 中→男  
      te    有(帯)  
      vijjā  vid ā 女→男 明、智、呪、学問、魔術  
      brāhmaṇā  bṛh a 婆羅門  
      asaṃkiliṭṭha  a-saṃ-kliś 過分 a 有(持) 汚染されざる、不己染の、不雑染の  
      citto  cit a 中→男  
      brahmā…  bṛh 名形 an(特) 梵天  
    訳文                
     三明をそなえた婆羅門たちは汚れある心の者たちであり、梵天は汚れなき心の者である……  
                       
                       
                       
    551-8.                
     avasavattī tevijjā brāhmaṇā vasavattī brahmā, api nu kho avasavattīnaṃ tevijjānaṃ brāhmaṇānaṃ vasavattinā brahmunā saddhiṃ saṃsandati sametī’’ti?   
      語根 品詞 語基 意味  
      avasavattī    in 自在力なき  
      te    有(帯)  
      vijjā  vid ā 女→男 明、智、呪、学問、魔術  
      brāhmaṇā  bṛh a 婆羅門  
      vasavattī    in 自在力ある  
      brahmā,  bṛh 名形 an(特) 梵天  
      api    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      nu    不変 いったい、たぶん、〜かどうか、〜ではないか  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      avasavattīnaṃ    in 自在力なき  
      te    有(帯)  
      vijjānaṃ  vid ā 女→男 明、智、呪、学問、魔術  
      brāhmaṇānaṃ  bṛh a 婆羅門  
      vasavattinā    in 自在力ある  
      brahmunā  bṛh 名形 an(特) 梵天  
      saddhiṃ    不変 共に、一緒に(具格支配)  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      saṃsandati  saṃ-syand 交流する、合流する  
      sametī’’  saṃ-i 一致する、集合する、交際する、会う、知る、同意する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti?    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     三明をそなえた婆羅門たちは自在力なき者たちであり、梵天は自在力ある者である。ではいったい、自在力なき三明をそなえた婆羅門たちには、自在力ある梵天と交流し、交際する〔ということがあるの〕でしょうか」  
                       
                       
                       
    551-9.                
     ‘‘No hidaṃ, bho gotama’’.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘No hidaṃ, bho gotama’’. (551-3.)  
    訳文                
     「尊者ゴータマよ、じつにそれは否です」  
                       
                       
                       
    551-10.                
     ‘‘Sādhu, vāseṭṭha, te vata, vāseṭṭha, avasavattī tevijjā brāhmaṇā kāyassa bhedā paraṃ maraṇā vasavattissa brahmuno sahabyūpagā bhavissantī’’ti, netaṃ ṭhānaṃ vijjati.  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Sādhu, vāseṭṭha, te vata, vāseṭṭha, avasavattī tevijjā brāhmaṇā kāyassa bhedā paraṃ maraṇā vasavattissa brahmuno sahabyūpagā bhavissantī’’ti, netaṃ ṭhānaṃ vijjati. (551-4.)  
      avasavattī    in 自在力なき  
      vasavattissa    in 自在力ある  
    訳文                
     「ヴァーセッタよ、よきかな。ヴァーセッタよ、じつに、彼ら自在力なき三明をそなえた婆羅門たちが、身破れて死後、自在力ある梵天との共住に至る者となるという、この道理は存在しません。  
                       
                       
                       
    552-1.                
     552. ‘‘Idha kho pana te, vāseṭṭha, tevijjā brāhmaṇā āsīditvā [ādisitvā (ka.)] saṃsīdanti, saṃsīditvā visāraṃ [visādaṃ (sī. pī.), visattaṃ (syā.)] pāpuṇanti, sukkhataraṃ [sukkhataraṇaṃ (ka.)] maññe taranti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Idha    不変 ここに、この世で、いま、さて  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      pana    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      te,    代的 それら、彼ら  
      vāseṭṭha,    a 人名、ヴァーセッタ  
      te    有(帯)  
      vijjā  vid ā 女→男 明、智、呪、学問、魔術  
      brāhmaṇā  bṛh a 婆羅門  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      āsīditvā  ā-sad 近坐する、近づく、得る、攻撃する、襲う  
      saṃsīdanti,  saṃ-sad 沈む、悄沈する、行き止まる  
      saṃsīditvā  saṃ-sad 沈む、悄沈する、行き止まる  
      語根 品詞 語基 意味  
      visāraṃ  vi-sṛ a ? 散乱、拡散  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pāpuṇanti,  pra-āp 得る、達する、到達する  
      語根 品詞 語基 意味  
      sukkhataraṃ  śuṣ a より乾いた  
      maññe  man 不変 わたくし思うに、確かに(一人称単数より)  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      taranti.  tr 渡る  
    訳文                
     じつに、ここなるかれら三明をそなえた婆羅門たちは、〔邪道という砂漠に〕近づいては沈み、沈んでは〔身体の〕散乱に至るのです。わたくし思うに、激しく乾いた〔地〕を渡る〔ようなものです〕。  
    メモ                
     ・visāraなる語はPTS辞書にしか見えず、性も出ていない。  
     ・sukkhataraṃは形容詞sukkhaに比較級接尾辞taraが付いたものとみなした。  
     ・『註』に曰く「『近づいて』とは、まさに邪道であるものを『正道だ』と近づいて、である。『沈む』とは、『平地だ』と考えて、泥地へ陥って入ってしまうことである。『沈んで拡散に至る』とは、そのような泥地に沈んで、拡散すなわち肢体それぞれの破壊に至るということである」。  
     ・その原文。Āsīditvāti amaggameva ‘‘maggo’’ti upagantvā. Saṃsīdantīti ‘‘samatala’’nti saññāya paṅkaṃ otiṇṇā viya anuppavisanti. Saṃsīditvā visāraṃ pāpuṇantīti evaṃ paṅke viya saṃsīditvā visāraṃ aṅgamaṅgasaṃbhañjanaṃ pāpuṇanti.  
     ・いちおうこの『註』の解釈に基づいたが、泥地の話の後に乾燥地のようだというのも妙である。また次文でも不毛の地、荒野にたとえられていることも鑑み、邪道の喩えとして「泥土」ではなく「砂漠」を用いて補訳した。  
                       
                       
                       
    552-2.                
     Tasmā idaṃ tevijjānaṃ brāhmaṇānaṃ tevijjāiriṇantipi vuccati, tevijjāvivanantipi vuccati, tevijjābyasanantipi vuccatī’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Tasmā    代的 それ、彼  
      idaṃ    代的 これ  
      te    有(帯)  
      vijjānaṃ  vid ā 女→男 明、智、呪、学問、魔術  
      brāhmaṇānaṃ  bṛh a 婆羅門  
      te     
      vijjā vid ā 明、智、呪、学問、魔術  
      iriṇan    a 砂漠、不毛の土地  
      ti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      pi    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      vuccati,  vac 受 いわれる  
      語根 品詞 語基 意味  
      te     
      vijjā  vid ā 明、智、呪、学問、魔術  
      vivanan    a 荒れ地、広野、林野  
      ti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      pi    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      vuccati,  同上  
      te     
      vijjā  vid ā 明、智、呪、学問、魔術  
      byasanan    a 喪失、不幸、厄難  
      ti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      pi    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      vuccatī’’  同上  
      ti.   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     それゆえ、かれら三明をそなえた婆羅門たちのそれ(三明)は、三明なる砂漠ともいわれ、三明なる荒野ともいわれ、三明なる厄難ともいわれるのです」  
                       
                       
                       
    553-1.                
     553. Evaṃ vutte, vāseṭṭho māṇavo bhagavantaṃ etadavoca – ‘‘sutaṃ metaṃ, bho gotama, samaṇo gotamo brahmānaṃ sahabyatāya maggaṃ jānātī’’ti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Evaṃ    不変 このように、かくの如き  
      vutte,  vac 過分 a 男中 いわれた  
      vāseṭṭho    a 人名、ヴァーセッタ  
      māṇavo    a 学童、青年、若い婆羅門  
      bhagavantaṃ    ant 世尊  
      etad    代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      avoca –  vac いう  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘sutaṃ  śru 過分 a 聞かれた  
      me    代的  
      etaṃ,    代的 これ  
      bho  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      gotama,    a 人名、ゴータマ  
      samaṇo  śram a 沙門  
      gotamo    a 人名、ゴータマ  
      brahmānaṃ  bṛh 名形 an(特) 梵天  
      sahabyatāya    ā 共住、友誼  
      maggaṃ    a 道、正道  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      jānātī’’  jñā 知る  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     このようにいわれて、ヴァーセッタ青年は世尊へこういった。「尊者ゴータマよ、私はこう聞きました。『沙門ゴータマは、梵天との共住への道を知る』と」  
                       
                       
                       
    553-2.                
     ‘‘Taṃ kiṃ maññasi, vāseṭṭha.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Taṃ    代的 それ、彼、彼女  
      kiṃ    不変 何、どう  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      maññasi,  man 考える  
      語根 品詞 語基 意味  
      vāseṭṭha.    a 人名、ヴァーセッタ  
    訳文                
     「ヴァーセッタよ、これをどう考えますか。  
                       
                       
                       
    553-3.                
     Āsanne ito manasākaṭaṃ, na ito dūre manasākaṭa’’nti?   
      語根 品詞 語基 意味  
      Āsanne  ā-sad 過分 a 男中 近い、近づかれた  
      ito    不変 これより、ここより  
      manasākaṭaṃ,    a 地名、マナサーカタ  
      na    不変 ない  
      ito    不変 これより、ここより  
      dūre    a 男中 遠い、遠隔の  
      manasākaṭa’’n    a 地名、マナサーカタ  
      ti?    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     マナサーカタはここから近くにありますね。マナサーカタはここから遠くはありませんね」  
                       
                       
                       
    553-4.                
     ‘‘Evaṃ, bho gotama, āsanne ito manasākaṭaṃ, na ito dūre manasākaṭa’’nti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Evaṃ,    不変 このように、かくの如き  
      bho  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      gotama,    a 人名、ゴータマ  
      āsanne ito manasākaṭaṃ, na ito dūre manasākaṭa’’nti. (553-3.)  
    訳文                
     「尊者ゴータマよ、その通りです。マナサーカタはここから近くにあります。マナサーカタはここから遠くはありません」  
                       
                       
                       
    554-1.                
     554. ‘‘Taṃ kiṃ maññasi, vāseṭṭha, idhassa puriso manasākaṭe jātasaṃvaddho.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Taṃ    代的 それ、彼、彼女  
      kiṃ    不変 何、どう  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      maññasi,  man 考える  
      語根 品詞 語基 意味  
      vāseṭṭha,    a 人名、ヴァーセッタ  
      idha    不変 ここに、この世で、いま、さて  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      assa  as ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      puriso    a 人、男  
      manasākaṭe    a 地名、マナサーカタ  
      jāta  jan 過分 a 生まれた  
      saṃvaddho.  saṃ-vṛdh 過分 a 育成した、増大した  
    訳文                
     「ヴァーセッタよ、これをどう考えますか。ここに、マナサーカタで生まれ育った男がいるとしましょう。  
                       
                       
                       
    554-2.                
     Tamenaṃ manasākaṭato tāvadeva avasaṭaṃ manasākaṭassa maggaṃ puccheyyuṃ.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Tamenaṃ    不変 ただちに、やがて  
      manasākaṭato    a 地名、マナサーカタ  
      tāva    不変 それだけ、それほど、まず  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      avasaṭaṃ  ava-sṛ 過分 a 退いた、訪問した、外教に入った  
      manasākaṭassa    a 地名、マナサーカタ  
      maggaṃ    a 道、正道  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      puccheyyuṃ.  prach たずねた  
    訳文                
     まさにマナサーカタから出たばかりの〔彼〕へ、すぐに〔人々が〕マナサーカタへの道をたずねたとしましょう。  
                       
                       
                       
    554-3.                
     Siyā nu kho, vāseṭṭha, tassa purisassa manasākaṭe jātasaṃvaddhassa manasākaṭassa maggaṃ puṭṭhassa dandhāyitattaṃ vā vitthāyitattaṃ vā’’ti?   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      Siyā  as ある、なる  
      語根 品詞 語基 意味  
      nu    不変 いったい、たぶん、〜かどうか、〜ではないか  
      kho,    不変 じつに、たしかに  
      vāseṭṭha,    a 人名、ヴァーセッタ  
      tassa    代的 属絶 それ、彼  
      purisassa    a 属絶 人、男  
      manasākaṭe    a 地名、マナサーカタ  
      jāta  jan 過分 a 生まれた  
      saṃvaddhassa  saṃ-vṛdh 過分 a 属絶 育成した、増大した  
      manasākaṭassa    a 地名、マナサーカタ  
      maggaṃ    a 道、正道  
      puṭṭhassa  prach 過分 a 属絶 問われた  
      dandhāyitattaṃ    a 愚鈍、遅鈍  
          不変 あるいは  
      vitthāyitattaṃ  vi-tras a 困惑、躊躇  
      vā’’    不変 あるいは  
      ti?    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ヴァーセッタよ、いったい、マナサーカタで生まれ育ったその男が、マナサーカタへの道を問われて、〔答えるのに〕もたついたり、躊躇したりすることがあるでしょうか。  
                       
                       
                       
    554-4.                
     ‘‘No hidaṃ, bho gotama’’.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘No hidaṃ, bho gotama’’. (551-3.)  
    訳文                
     「尊者ゴータマよ、じつにそれは否です」  
                       
                       
                       
    554-5.                
     ‘‘Taṃ kissa hetu’’?   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Taṃ    代的 それ  
      kissa    代的 何、誰、なぜ  
      hetu’’?  hi u 副対 因、原因、理由  
    訳文                
     「それはなぜでしょうか」  
                       
                       
                       
    554-6.                
     ‘‘Amu hi, bho gotama, puriso manasākaṭe jātasaṃvaddho, tassa sabbāneva manasākaṭassa maggāni suviditānī’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Amu    代的 それ、あれ  
      hi,    不変 じつに、なぜなら(tena hiで「しからば」)  
      bho  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      gotama,    a 人名、ゴータマ  
      puriso    a 人、男  
      manasākaṭe    a 地名、マナサーカタ  
      jāta  jan 過分 a 生まれた  
      saṃvaddho,  saṃ-vṛdh 過分 a 育成した、増大した  
      tassa    代的 それ、彼  
      sabbāni    名形 代的 すべて  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      manasākaṭassa    a 地名、マナサーカタ  
      maggāni    a 男(中) 道、正道  
      suviditānī’’  su-vid 過分 a よく知られた  
      ti.   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「尊者ゴータマよ、なぜなら、マナサーカタで生まれ育ったその男は、そのマナサーカタへの全ての道をよく知っているからです」  
    メモ                
     ・なぜかmaggaが中性化している。  
                       
                       
                       
    554-7.                
     ‘‘Siyā kho, vāseṭṭha, tassa purisassa manasākaṭe jātasaṃvaddhassa manasākaṭassa maggaṃ puṭṭhassa dandhāyitattaṃ vā vitthāyitattaṃ vā, na tveva tathāgatassa brahmaloke vā brahmalokagāminiyā vā paṭipadāya puṭṭhassa dandhāyitattaṃ vā vitthāyitattaṃ vā.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Siyā kho, vāseṭṭha, tassa purisassa manasākaṭe jātasaṃvaddhassa manasākaṭassa maggaṃ puṭṭhassa dandhāyitattaṃ vā vitthāyitattaṃ vā, (554-3.)  
      na    不変 ない  
      tv    不変 しかし  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      tathāgatassa  tathā-(ā-)gam a 属絶 如来  
      brahma  bṛh 名形 an(特) 依(属) 梵、梵天、尊貴の、神聖の  
      loke    a 世、世界、世間  
          不変 あるいは  
      brahma  bṛh 名形 an(特) 依(属) 梵、梵天、尊貴の、神聖の  
      loka    a 依(対) 世、世界、世間  
      gāminiyā  gam in 男→女 行くもの、行かせるもの、導くもの  
          不変 あるいは  
      paṭipadāya  prati-pad a 道、行道、道跡  
      puṭṭhassa  prach 過分 a 属絶 問われた  
      dandhāyitattaṃ    a 愚鈍、遅鈍  
          不変 あるいは  
      vitthāyitattaṃ  vi-tras a 困惑、躊躇  
      vā.    不変 あるいは  
    訳文                
     ヴァーセッタよ、じつに、マナサーカタで生まれ育ったその男が、マナサーカタへの道を問われて、〔答えるのに〕もたついたり、躊躇したりすることは、〔悪魔の誘惑などによる特殊な場合には〕あるかもしれません。しかし如来は、〔そのような場合でも〕梵天界に関して、あるいは梵天界へと至る道に関して問われて、〔答えるのに〕もたついたり、躊躇したりすることはありません。  
    メモ                
     ・『註』に曰く「悪魔の誘惑などによって」mārāvaṭṭanādivasena。一時的混乱や物忘れなどであろう。  
                       
                       
                       
    554-8.                
     Brahmānaṃ cāhaṃ, vāseṭṭha, pajānāmi brahmalokañca brahmalokagāminiñca paṭipadaṃ, yathā paṭipanno ca brahmalokaṃ upapanno, tañca pajānāmī’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Brahmānaṃ  bṛh 名形 an(特) 梵、梵天、尊貴の、神聖の  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      ahaṃ,    代的  
      vāseṭṭha,    a 人名、ヴァーセッタ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pajānāmi  pra-jñā 知る、了知する  
      語根 品詞 語基 意味  
      brahma  bṛh 名形 an(特) 依(属) 梵、梵天、尊貴の、神聖の  
      lokañ    a 世、世界、世間  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      brahma  bṛh 名形 an(特) 依(属) 梵、梵天、尊貴の、神聖の  
      loka    a 依(対) 世、世界、世間  
      gāminiñ  gam in 男→女 行くもの、行かせるもの、導くもの  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      paṭipadaṃ,  prati-pad a 道、行道、道跡  
      yathā    不変 〜のごとくに、〜のように  
      paṭipanno  prati-pad 過分 a 行道した、向道の、行者  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      brahma  bṛh 名形 an(特) 依(属) 梵、梵天、尊貴の、神聖の  
      lokaṃ    a 世、世界、世間  
      upapanno,  upa-pad 過分 a 再生した、往生した  
      tañ    代的 それ  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      pajānāmī’’  同上  
      ti.   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ヴァーセッタよ、私は梵天たちについて、また梵天と梵天界へ至る道を、よく知っています。行道し、梵天界へ生まれ変わったもののごとく、それを知っているのです」  
                       
                       
                       
    555-1.                
     555. Evaṃ vutte, vāseṭṭho māṇavo bhagavantaṃ etadavoca – ‘‘sutaṃ metaṃ, bho gotama, samaṇo gotamo brahmānaṃ sahabyatāya maggaṃ desetī’’ti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Evaṃ vutte, vāseṭṭho māṇavo bhagavantaṃ etadavoca – ‘‘sutaṃ metaṃ, bho gotama, samaṇo gotamo brahmānaṃ sahabyatāya maggaṃ (553-1.)  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      desetī’’  diś 使 示す  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     このようにいわれて、ヴァーセッタ青年は世尊へこういった。「尊者ゴータマよ、私はこう聞きました。『沙門ゴータマは、梵天との共住への道を示す』と。  
                       
                       
                       
    555-2.                
     ‘‘Sādhu no bhavaṃ gotamo brahmānaṃ sahabyatāya maggaṃ desetu ullumpatu bhavaṃ gotamo brāhmaṇiṃ paja’’nti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Sādhu    不変 よきかな、なにとぞ  
      no    代的 私たち  
      bhavaṃ  bhū 名現分 ant(特) 尊師、尊者  
      gotamo    a 人名、ゴータマ  
      brahmānaṃ  bṛh 名形 an(特) 梵天  
      sahabyatāya    ā 共住、友誼  
      maggaṃ    a 道、正道  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      desetu  diś 示す  
      ullumpatu  ud-lup 取り上げる、助ける、救済する  
      語根 品詞 語基 意味  
      bhavaṃ  bhū 名現分 ant(特) 尊師、尊者  
      gotamo    a 人名、ゴータマ  
      brāhmaṇiṃ  bṛh ī 婆羅門女  
       paja’’n  pra-jan ā 人々 →この世代の婆羅門たち  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     なにとぞ、尊者ゴータマは我々に、梵天との共住への道を示したまえ。尊者ゴータマはこの世代の婆羅門たちを救いたまえ」と。  
    メモ                
     ・brāhmaṇī pajā についてはthis generation of brāhmaṇasというPTS辞書の解説を採った。『註』はこれについて「婆羅門の子」brāhmaṇadārakaṃ としている。  
                       
                       
                       
    555-3.                
     ‘‘Tena hi, vāseṭṭha, suṇāhi;   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Tena    代的 それ、彼、それによって、それゆえ  
      hi,    不変 じつに、なぜなら →しからば  
      vāseṭṭha,    a 人名、ヴァーセッタ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      suṇāhi;  śru 聞く  
    訳文                
     「ヴァーセッタよ、それではよく聞き、  
                       
                       
                       
    555-4.                
     sādhukaṃ manasi karohi;   
      語根 品詞 語基 意味  
      sādhukaṃ    a 副対 よい、十分に  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      manasikarohi;  man, kṛ 注意する、作意する  
    訳文                
     よく注意してください。  
                       
                       
                       
    555-5.                
     bhāsissāmī’’ti.   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      bhāsissāmī’’  bhāṣ 話す、語る  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     私は語ることにしましょう」  
                       
                       
                       
    555-6.                
     ‘‘Evaṃ bho’’ti kho vāseṭṭho māṇavo bhagavato paccassosi.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Evaṃ    不変 このように、かくの如き  
      bho’’  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      ti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      vāseṭṭho    a 人名、ヴァーセッタ  
      māṇavo    a 学童、青年、若い婆羅門  
      bhagavato    ant 世尊  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      paccassosi.  prati-śru 同意する、応諾する、答える  
    訳文                
     「尊者よ、そのように」と、じつにヴァーセッタ青年は、世尊へ応諾した。  
                       
                       
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