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     Abhisaññānirodhakathā  
      語根 品詞 語基 意味  
      Abhisaññā  abhi-saṃ-jñā ā 依(属) 増上想、想  
      nirodha  ni-rudh 受 a 依(属)  
      kathā   ā 論、説、話、物語  
    訳文                
     【想滅の話】  
    メモ                
     ・『註』は「abhiとは、単なる接頭辞である」abhīti upasaggamattaṃ とする。これにならって「増上想」という漢訳語はここでは用いない。  
     ・『原始』は、「梵網経」の「有想論」云々での場合と同じように、ここでのsaññāも、五蘊の一ではなく心作用全般の意であると解する。ここでも同じく、その解釈を妥当としつつも(『註』も「想滅についてとは、心の滅について、である」Saññānirodheti cittanirodheとしている)、「想」という伝統的なタームで訳しておく。  
                       
                       
                       
    411-1.                
     411. Evaṃ vutte poṭṭhapādo paribbājako bhagavantaṃ etadavoca –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Evaṃ    不変 このように、かくの如き  
      vutte  vac 受 過分 a 男中 いわれた  
      poṭṭhapādo    a 人名、ポッタパーダ  
      paribbājako  pari-vraj a 遍歴者、遊行者  
      bhagavantaṃ    ant 世尊  
      etad    代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      avoca –  vac いう  
    訳文                
     このようにいわれて、遍歴行者ポッタパーダは世尊へこういった。  
                       
                       
                       
    411-2.                
     ‘‘tiṭṭhatesā, bhante, kathā, yāya mayaṃ etarahi kathāya sannisinnā.   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ‘‘tiṭṭhatu sthā 立つ、止まる、存続する  
      語根 品詞 語基 意味  
      esā,    代的 これ  
      bhante,  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、大徳よ  
      kathā,    ā 論、説、話、物語  
      yāya    代的 (関係代名詞)  
      mayaṃ    代的 私たち  
      etarahi    不変 いま、現在  
      kathāya    ā 論、説、話、物語  
      sannisinnā.  saṃ-ni-sad 過分 a 共に坐る  
    訳文                
     「尊者よ、我々が今、その話のため共に坐っていた話、その話は差し置かれたい。  
                       
                       
                       
    411-3.                
     Nesā, bhante, kathā bhagavato dullabhā bhavissati pacchāpi savanāya.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Na    不変 ない  
      esā,    代的 これ  
      bhante,  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、大徳よ  
      kathā    ā 論、説、話、物語  
      bhagavato    ant 世尊  
      dullabhā  dur-labh a 得がたい  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      bhavissati  bhū ある、なる  
      語根 品詞 語基 意味  
      pacchā    不変 後に、西に  
      pi    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      savanāya.  śru a 耳、聞、聴聞  
    訳文                
     尊者よ、世尊にとってその話は、後日であっても、耳にしがたいということはありますまい。  
    メモ                
     ・「よくある雑談に過ぎない」という趣旨であろう。  
                       
                       
                       
    411-4.                
     Purimāni, bhante, divasāni purimatarāni, nānātitthiyānaṃ samaṇabrāhmaṇānaṃ kotūhalasālāya sannisinnānaṃ sannipatitānaṃ abhisaññānirodhe kathā udapādi –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Purimāni,    a 副対 前の、古い、最初の  
      bhante,  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、大徳よ  
      divasāni    a 男(中) 副対 日、日中  
      purimatarāni,    a 副対 より前の  
      nānā    不変 種々に、異なって  
      titthiyānaṃ    a 属絶 外道の、異学の  
      samaṇa  śram a 沙門  
      brāhmaṇānaṃ  bṛh a 属絶 婆羅門  
      kotūhala   a 依(与) 興奮、さわぎ、祭典、会式  
      sālāya    ā 会場、講堂、家屋、小屋  
      sannisinnānaṃ  saṃ-ni-sad 過分 a 属絶 共に坐った  
      sannipatitānaṃ  saṃ-ni-pat 過分 a 属絶 集まった、集合した  
      abhisaññā  abhi-saṃ-jñā ā 依(属) 増上想、想  
      nirodhe  ni-rudh 受 a  
      kathā    ā 論、説、話、物語  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      udapādi –  ud-pad 起こる、生ずる、発生する  
    訳文                
     尊者よ、先日のこと、種々の異学の沙門婆羅門たちが祭堂で共に坐って集まっていたとき、想滅に関する話がもちあがりました。  
    メモ                
     ・purimāni divasāni purimatarāni は「マハーリ経」364-2.にパラレル。divasāniの性の問題はじめ、すべてそちらに準拠して訳した。  
                       
                       
                       
    411-5.                
     ‘kathaṃ nu kho, bho, abhisaññānirodho hotī’ti?   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘kathaṃ    不変 いかに、なぜに  
      nu    不変 いったい、たぶん、〜かどうか、〜ではないか  
      kho,    不変 じつに、たしかに  
      bho,  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      abhisaññā  abhi-saṃ-jñā ā 依(属) 増上想、想  
      nirodho  ni-rudh 受 a  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      hotī’  bhū ある、存在する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti?    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「じつに友よ、いったい想滅は、いかに起こるのであろうか」と。  
                       
                       
                       
    411-6.                
     Tatrekacce evamāhaṃsu –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Tatra    不変 そこで、そこに、そのとき、そのなかで  
      ekacce    代的 ある、一類の  
      evam    不変 このように、かくの如き  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      āhaṃsu –  ah いう  
    訳文                
     そのうち、ある者たちは、このようにいいました。  
                       
                       
                       
    411-7.                
     ‘ahetū appaccayā purisassa saññā uppajjantipi nirujjhantipi.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘ahetū  a-hi u 男→女 無因  
      appaccayā  a-prati-i a 中→女 無縁  
      purisassa    a 人、男  
      saññā  saṃ-jñā ā  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      uppajjanti  ud-pad 起こる、生ずる、発生する  
      語根 品詞 語基 意味  
      pi    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      nirujjhanti  ni-rudh 受 滅ぶ、滅する  
      語根 品詞 語基 意味  
      pi.    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
    訳文                
     『人の諸々の想は、因なく、縁なくして生じ、また滅する。  
    メモ                
     ・動詞の活用語尾から、saññā が複数形であることがわかる。purisassa は単数だから、個人のうちに想が複数あることになる。これも、ここでのsaññāが「想蘊」でけでなく「諸々の心作用」を意味していることの傍証であろうか。  
                       
                       
                       
    411-8.                
     Yasmiṃ samaye uppajjanti, saññī tasmiṃ samaye hoti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Yasmiṃ    代的 (関係代名詞)  
      samaye    a  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      uppajjanti,  ud-pad 起こる、生ずる、発生する  
      語根 品詞 語基 意味  
      saññī  saṃ-jñā in 有想の  
      tasmiṃ    代的 それ、彼  
      samaye    a  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      hoti.  bhū ある、存在する  
    訳文                
     〔諸々の想が〕生じるそのとき、〔人は〕有想者となる。  
                       
                       
                       
    411-9.                
     Yasmiṃ samaye nirujjhanti, asaññī tasmiṃ samaye hotī’ti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Yasmiṃ    代的 男中 (関係代名詞)  
      samaye    a  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      nirujjhanti,  ni-rudh 受 滅ぶ、滅する  
      語根 品詞 語基 意味  
      asaññī  a-saṃ-jñā in 無想の  
      tasmiṃ    代的 それ、彼  
      samaye    a  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      hotī’  bhū ある、存在する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     〔諸々の想が〕滅するそのとき、〔人は〕無想者となるのである』と。  
                       
                       
                       
    411-10.                
     Ittheke abhisaññānirodhaṃ paññapenti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Ittha    不変 ここに  
      eke    代的 一、とある  
      abhisaññā  abhi-saṃ-jñā ā 依(属) 増上想、想  
      nirodhaṃ  ni-rudh 受 a  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      paññapenti. pra-jñā 使 知らしめる、告知する、施設する、用意する  
    訳文                
     ある者たちは、このように想滅を説明しました。  
    メモ                
     ・Itthaを「このように」、paññapentiを「説明する」としたのは諸訳によったもの。  
                       
                       
                       
    411-11.                
     ‘‘Tamañño evamāha –   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Tam    代的 それ  
      añño    代的  
      evam    不変 このように、かくの如き  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      āha –  ah いう  
    訳文                
     それに対し、別の者はこのようにいいました。  
                       
                       
                       
    411-12.                
     ‘na kho pana metaṃ [na kho nāmetaṃ (sī. pī.)], bho, evaṃ bhavissati.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘na    不変 ない  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      pana    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      me    代的  
      etaṃ    代的 これ  
      bho,  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      evaṃ    不変 このように、かくの如き  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      bhavissati.  bhū ある、存在する  
    訳文                
     『しかし友よ、私〔の理論〕によっては、それ(想滅の説明)はそのようにはならないであろう。  
                       
                       
                       
    411-13.                
     Saññā hi, bho, purisassa attā.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Saññā  saṃ-jñā ā  
      hi,    不変 じつに、なぜなら(tena hiで「しからば」)  
      bho,  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      purisassa    a 人、男  
      attā.    an 我、アートマン  
    訳文                
     なんとなれば友よ、想は人の我だからである。  
    メモ                
     ・次文でで受けられていることから、ここでのSaññāは単数ということになる。先の論者の想のイメージがいわゆる「心所」的であるのに対し、こちらでは「心王」のイメージということであろうか。  
                       
                       
                       
    411-14.                
     Sā ca kho upetipi apetipi.   
      語根 品詞 語基 意味  
          代的 それ、彼女  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upeti  upa-i 近づく、至る  
      語根 品詞 語基 意味  
      pi    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      apeti  apa-i 離去する、消失する  
      語根 品詞 語基 意味  
      pi.    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
    訳文                
     じつにそれ(想)は、来たり、また離れる。  
                       
                       
                       
    411-15.                
     Yasmiṃ samaye upeti, saññī tasmiṃ samaye hoti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Yasmiṃ samaye upeti, saññī tasmiṃ samaye hoti. (411-8.)  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upeti,  upa-i 近づく、至る  
    訳文                
     〔想が〕来たるそのとき、〔人は〕有想者となる。  
                       
                       
                       
    411-16.                
     Yasmiṃ samaye apeti, asaññī tasmiṃ samaye hotī’ti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Yasmiṃ samaye apeti, asaññī tasmiṃ samaye hotī’ti.  (411-9.)  
    訳文                
     〔想が〕離れるそのとき、〔人は〕無想者となるのである』と。  
                       
                       
                       
    411-17.                
     Ittheke abhisaññānirodhaṃ paññapenti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Ittheke abhisaññānirodhaṃ paññapenti. (411-10.)  
    訳文                
     ある者たちは、このように想滅を説明しました。  
                       
                       
                       
    411-18.                
     ‘‘Tamañño evamāha –   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Tamañño evamāha – (411-11.)  
    訳文                
     それに対し、別の者はこのようにいいました。  
                       
                       
                       
    411-19.                
     ‘na kho pana metaṃ, bho, evaṃ bhavissati.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘na kho pana metaṃ, bho, evaṃ bhavissati.  (411-12.)  
    訳文                
     『しかし友よ、私〔の理論〕によっては、それ(想滅の説明)はそのようにはならないであろう。  
                       
                       
                       
    411-20.                
     Santi hi, bho, samaṇabrāhmaṇā mahiddhikā mahānubhāvā.   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      Santi  as ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      hi,    不変 じつに、なぜなら(tena hiで「しからば」)  
      bho,  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      samaṇa  śram a 沙門  
      brāhmaṇā  bṛh a 婆羅門  
      mahā    ant 有(持)  
      iddhikā    a 神通の  
      mahā    ant 有(持)  
      anubhāvā.  anu-bhū a 威力、神力、勢力  
    訳文                
     なんとなれば友よ、大神通、大威力ある沙門婆羅門たちがいるからである。  
                       
                       
                       
    411-21.                
     Te imassa purisassa saññaṃ upakaḍḍhantipi apakaḍḍhantipi.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Te    代的 それら、彼ら  
      imassa    代的 これ  
      purisassa    a 人、男  
      saññaṃ  saṃ-jñā ā  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upakaḍḍhanti  upa-kṛṣ 引く、引きつける  
      語根 品詞 語基 意味  
      pi    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      apakaḍḍhanti  apa-kṛṣ 引き去る、取り去る  
      語根 品詞 語基 意味  
      pi.    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
    訳文                
     彼らは、その人のもつ〔我としての〕想を、引き付け、また取り去る〔ことができる〕。  
    メモ                
     ・imassa purisassa saññaṃなので「その」は「想」でなく「人」にかかっている。このばあい、先の「想=我」論に出た人を指しているのであろう。  
     ・個人のアートマンはその生死によるのみでなく、他者の神通によっても出入りされうるのだということか。先の「想=我」論の亜種ということであろうか。  
                       
                       
                       
    411-22.                
     Yasmiṃ samaye upakaḍḍhanti, saññī tasmiṃ samaye hoti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Yasmiṃ samaye upakaḍḍhanti, saññī tasmiṃ samaye hoti. (411-8.)  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upeti,  upa-i 近づく、至る  
    訳文                
     〔沙門婆羅門たちがその人の想を〕引き付けるそのとき〔にも〕、〔人は〕有想者となる。  
                       
                       
                       
    411-23.                
     Yasmiṃ samaye apakaḍḍhanti, asaññī tasmiṃ samaye hotī’ti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Yasmiṃ samaye apakaḍḍhanti, asaññī tasmiṃ samaye hotī’ti.  (411-9.)  
    訳文                
     〔沙門婆羅門たちがその人の想を〕取り去るそのとき〔にも〕、〔人は〕無想者となるのである』と。  
                       
                       
                       
    411-24.                
     Ittheke abhisaññānirodhaṃ paññapenti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Ittheke abhisaññānirodhaṃ paññapenti. (411-10.)  
    訳文                
     ある者たちは、このように想滅を説明しました。  
                       
                       
                       
    411-25.                
     ‘‘Tamañño evamāha –   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Tamañño evamāha – (411-11.)  
    訳文                
     それに対し、別の者はこのようにいいました。  
                       
                       
                       
    411-26.                
     ‘na kho pana metaṃ, bho, evaṃ bhavissati.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘na kho pana metaṃ, bho, evaṃ bhavissati.  (411-12.)  
    訳文                
     『しかし友よ、私〔の理論〕によっては、それ(想滅の説明)はそのようにはならないであろう。  
                       
                       
                       
    411-27.                
     Santi hi, bho, devatā mahiddhikā mahānubhāvā.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Santi hi, bho, devatā mahiddhikā mahānubhāvā.  (411-20.)  
      devatā    ā 女神、地祇、神々  
    訳文                
     なんとなれば友よ、大神通、大威力ある神霊たちがいるからである。  
                       
                       
                       
    411-28.                
     Tā imassa purisassa saññaṃ upakaḍḍhantipi apakaḍḍhantipi.   
      語根 品詞 語基 意味  
          代的 それら、彼女ら  
      imassa purisassa saññaṃ upakaḍḍhantipi apakaḍḍhantipi. (411-21.)  
    訳文                
     その者たち〔も〕、その人のもつ〔我としての〕想を、引き付け、また取り去る〔ことができる〕。  
                       
                       
                       
    411-29.                
     Yasmiṃ samaye upakaḍḍhanti, saññī tasmiṃ samaye hoti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Yasmiṃ samaye upakaḍḍhanti, saññī tasmiṃ samaye hoti. (411-22.)  
    訳文                
     〔神霊たちがその人の想を〕引き付けるそのとき〔にも〕、〔人は〕有想者となる。  
                       
                       
                       
    411-30.                
     Yasmiṃ samaye apakaḍḍhanti, asaññī tasmiṃ samaye hotī’ti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Yasmiṃ samaye apakaḍḍhanti, asaññī tasmiṃ samaye hotī’ti.  (411-23.)  
    訳文                
     〔神霊たちがその人の想を〕取り去るそのとき〔にも〕、〔人は〕無想者となるのである』と。  
                       
                       
                       
    411-31.                
     Ittheke abhisaññānirodhaṃ paññapenti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Ittheke abhisaññānirodhaṃ paññapenti. (411-10.)  
    訳文                
     ある者たちは、このように想滅を説明しました。  
                       
                       
                       
    411-32.                
     ‘‘Tassa mayhaṃ, bhante, bhagavantaṃyeva ārabbha sati udapādi –   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Tassa    代的 それ、彼  
      mayhaṃ,    代的  
      bhante,  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、大徳よ  
      bhagavantaṃ    ant 世尊  
      yeva    不変 まさに、のみ、じつに  
      ārabbha    不変 関して(ā-rabhの連続体より)  
      sati    i 念、憶念、記憶、正念  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      udapādi –  ud-pad 起こる、生ずる、発生する  
    訳文                
     尊者よ、〔そのとき〕この私に、世尊に関する憶念が生じたのです。  
                       
                       
                       
    411-33.                
     ‘aho nūna bhagavā, aho nūna sugato, yo imesaṃ dhammānaṃ sukusalo’ti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘aho    不変 ああ(感嘆詞)  
      nūna    不変 たしかに、〜ならばいかに  
      bhagavā,    ant 世尊  
      aho    不変 ああ(感嘆詞)  
      nūna    不変 たしかに、〜ならばいかに  
      sugato,  su-gam 名過分 a よく行ったもの、善逝  
      yo    代的 (関係代名詞)  
      imesaṃ    代的 男中 これら  
      dhammānaṃ    a 男中 法、教法、真理、正義、もの、一切法  
      sukusalo’    a 熟達した、精通した  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     『ああ、これらの諸法に通暁した世尊がいたならば。ああ、善逝がいたならば』と。  
    メモ                
     ・PTS辞書はsukusalaについてhighly skilledとしている。   
                       
                       
                       
    411-34.                
     Bhagavā, bhante, kusalo, bhagavā pakataññū abhisaññānirodhassa.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Bhagavā,    ant 世尊  
      bhante,  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、大徳よ  
      kusalo,    a よき、巧みな  
      bhagavā    ant 世尊  
      pakataññū  pra-kṛ-jñā? ū 自然になされたこと(自性、本性、性質)を知る  
      abhisaññā  abhi-saṃ-jñā ā 依(属) 増上想、想  
      nirodhassa.  ni-rudh 受 a  
    訳文                
     尊者よ、世尊は想滅に関し、巧みなかた、性質を熟知しておられるかたです。  
    メモ                
     ・辞書類にはPakataññūの語は見られない(PTS辞書にapakataññūの語が「恩知らず」の意味で載っているが、これはここには関係あるまい)。『註』は「行じた自在力によって自然を、自性を知る」 ciṇṇavasitāya pakatiṃ sabhāvaṃ jānātīとする。『南伝』は「熟知者」、『パーリ』は「自性を知られ」、『原始』は「本質を熟知された」としている。これらに従って訳した。  
                       
                       
                       
    411-35.                
     Kathaṃ nu kho, bhante, abhisaññānirodho hotī’’ti?  
      語根 品詞 語基 意味  
      Kathaṃ nu kho, bhante, abhisaññānirodho hotī’’ti? (411-5.)  
      bhante,  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、大徳よ  
    訳文                
     じつに尊者よ、いったい想滅は、いかに起こるのでしょうか」と。  
                       
                       
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