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     Sāmaññaphalapucchā  
      語根 品詞 語基 意味  
      Sāmañña śram a 依(属) 沙門性、沙門位、沙門法  
      phala phal a 依(属) 果、果実  
      pucchā prach ā 問い、質問  
    訳文                
     【沙門の果報の問い】  
                       
                       
                       
    160-1.                
     160. Atha kho rājā māgadho ajātasattu vedehiputto yāvatikā nāgassa bhūmi nāgena gantvā, nāgā paccorohitvā, pattikova [padikova (syā.)] yena maṇḍalamāḷassa dvāraṃ tenupasaṅkami; upasaṅkamitvā jīvakaṃ komārabhaccaṃ etadavoca –  
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      rājā    an  
      māgadho    a マガダ国の  
      ajātasattu  a-jan u 人名、アジャータサットゥ  
      vedehi   ī 依(属) 人名、ヴェーデーヒー  
      putto    a 息子  
      yāvatikā    ā である限りの、それだけの  
      nāgassa    a 竜、蛇、象  
      bhūmi    i 地、土地、大地、国土、階位  
      nāgena    a 竜、蛇、象  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      gantvā,  gam 行く  
      語根 品詞 語基 意味  
      nāgā    a 竜、蛇、象  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      paccorohitvā,  prati-ava-ruh おりる  
      語根 品詞 語基 意味  
      pattiko   a 歩行者、歩兵  
      eva     不変 まさに、のみ、じつに  
      yena    代的 (関係代名詞)  
      maṇḍala   a 曼荼羅、円  
      māḷassa    a 天幕、房、堂  
      dvāraṃ    a 門、戸  
      tena   代的 それ、彼  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upasaṅkami;  upa-saṃ-kram 近づいた  
      upasaṅkamitvā  upa-saṃ-kram 近づいて  
      語根 品詞 語基 意味  
      jīvakaṃ    a 人名、ジーヴァカ  
      komārabhaccaṃ    a 人名、コーマーラバッチャ  
      etad   代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      avoca – vac いう  
    訳文                
     ときにマガダ国の王、ヴェーデーヒーの息子アジャータサットゥは、象のため〔許される〕限りの場所を象によって行き、象からおりると、歩いて円房の門へ近づき、ジーヴァカ・コーマーラバッチャへこう言った。  
    メモ                
     ・yena ……tenupasaṅkami; upasaṅkamitvāを受けるのは対格でなく主格である。従ってここでのdvāraṃもまた主格である。  
     ・『増支部』3-15「サチェータナ経」のように、yāvatikāを受けるtāvatikaṃがあるように訳した。  
                       
                       
                       
    160-2.                
      ‘‘kahaṃ pana, samma jīvaka, bhagavā’’ti?   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘kahaṃ    不変 どこに  
      pana,    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      samma    不変 友よ  
      jīvaka,  jīv a 人名  
      bhagavā’’   ant 世尊  
      ti?    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「友ジーヴァカよ、世尊はどちらにいらっしゃるのか」と。  
                       
                       
                       
    160-3.                
     ‘‘Eso, mahārāja, bhagavā; eso, mahārāja, bhagavā majjhimaṃ thambhaṃ nissāya puratthābhimukho nisinno purakkhato bhikkhusaṅghassā’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Eso,    代的 これ、彼  
      mahā   ant 大きい、偉大な  
      rāja,    an  
      bhagavā;    ant 世尊  
      eso, mahārāja, bhagavā (同上)  
      majjhimaṃ    a 中の  
      thambhaṃ    a  
      nissāya  ni-śri 不変 依って(nissayatiの連続体より)  
      purattha   不変 前方、東方  
      abhimukho    a 対面した、向かった  
      nisinno  ni-sad 過分 a すわった  
      purakkhato  puras-kṛ 過分 a 前に置かれた、尊敬された  
      bhikkhu bhikṣ u 依(属) 比丘、(特に男性の)出家者  
      saṅghassā’’ saṃ-hṛ a 僧伽、(特に仏教の)教団  
      ti.   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「大王よ、彼が世尊です。大王よ、かの世尊は中央の柱によりかかり、前を向いて比丘僧伽の前に坐っておられます」  
    メモ                
     ・puratthaを諸訳は「東」の意味で訳しているが、ここではうつむいたりきょろきょろしたりしていない様子と解して「前」の意味で訳してみた。  
                       
                       
                       
    161-1.                
     161. Atha kho rājā māgadho ajātasattu vedehiputto yena bhagavā tenupasaṅkami; upasaṅkamitvā ekamantaṃ aṭṭhāsi.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      rājā    an  
      māgadho    a マガダ国の  
      ajātasattu  a-jan u 人名、アジャータサットゥ  
      vedehi   ī 依(属) 人名、ヴェーデーヒー  
      putto    a 息子  
      yena    代的 (関係代名詞)  
      bhagavā    ant 世尊  
      tena   代的 それ、彼  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upasaṅkami;  upa-saṃ-kram 近づいた  
      upasaṅkamitvā  upa-saṃ-kram 近づいて  
      語根 品詞 語基 意味  
      ekamantaṃ    不変 一方に  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      aṭṭhāsi.  sthā 立つ  
    訳文                
     ときにマガダ国の王、ヴェーデーヒーの息子アジャータサットゥは世尊へ近づいて一方にたたずんだ。  
                       
                       
                       
    161-2.                
     Ekamantaṃ ṭhito kho rājā māgadho ajātasattu vedehiputto tuṇhībhūtaṃ tuṇhībhūtaṃ bhikkhusaṅghaṃ anuviloketvā rahadamiva vippasannaṃ udānaṃ udānesi –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Ekamantaṃ    不変 一方に  
      ṭhito  sthā 過分 a 住す  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      rājā    an  
      māgadho    a マガダ国の  
      ajātasattu    u 人名、アジャータサットゥ  
      vedehi   ī 依(属) 人名、ヴェーデーヒー  
      putto    a 息子  
      tuṇhī   不変 沈黙して、黙って  
      bhūtaṃ  bhū 過分 a あった、なった →沈黙した  
      tuṇhī   不変 沈黙して、黙って  
      bhūtaṃ  bhū 過分 a あった、なった →沈黙した  
      bhikkhu bhikṣ u 依(属) 比丘、(特に男性の)出家者  
      saṅghaṃ  saṃ-hṛ a 僧伽、(特に仏教の)教団  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      anuviloketvā  anu-vi-lok 観察する、見渡す  
      語根 品詞 語基 意味  
      rahadam   a 湖、池、沼  
      iva    不変 如く  
      vippasannaṃ  vi-pra-sad 過分 a 浄まった、喜んだ、信じた  
      udānaṃ    a 自説、感興語  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      udānesi –    発音する、発話する  
    訳文                
     じつに、一方にたたずんだマガダ国の王、ヴェーデーヒーの息子アジャータサットゥは、清浄な湖の如くにおのおの沈黙をたたえた比丘僧伽を見渡し、感嘆の声を発した。  
                       
                       
                       
    161-3.                
     ‘‘iminā me upasamena udayabhaddo [udāyibhaddo (sī. pī.)] kumāro samannāgato hotu, yenetarahi upasamena bhikkhusaṅgho samannāgato’’ti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘iminā    代的 これ  
      me    代的  
      upasamena    a 寂静、寂止、止息、休息  
      udayabhaddo  ud-i a 人名、ウダヤバッダ(生起した吉瑞の意)  
      kumāro    a 童子  
      samannāgato  saṃ-anu-ā-gam a 具足した  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      hotu,  bhū ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      yena   代的 (関係代名詞)  
      etarahi    不変 いま、現在  
      upasamena    a 寂静、寂止、止息、休息  
      bhikkhu bhikṣ u 依(属) 比丘、(特に男性の)出家者  
      saṅgho  saṃ-hṛ a 僧伽、(特に仏教の)教団  
      samannāgato’’ saṃ-anu-ā-gam a 具足した  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「いま比丘僧伽がそなえているこの静けさ、その静けさを、我が子ウダヤバッダもそなえてほしいものだ」と。  
    メモ                
     ・『註』は、王のこの感興は、父殺しが繰り返される事を恐れて発されたものだとするが、結局同じ命運がたどられ「じつに彼(アジャータサットゥ)を息子(ウダヤバッダ)が殺すこととなる」Atha kho naṃ putto ghātessatiyeva という伝承を付す。  
                       
                       
                       
    161-4.                
     ‘‘Agamā kho tvaṃ, mahārāja, yathāpema’’nti.   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ‘‘Agamā  gam ゆく  
      語根 品詞 語基 意味  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      tvaṃ,    代的 あなた  
      mahā   ant 大きい、偉大な  
      rāja,    an  
      yathā   不変 その如く  
      pema’’n   a 愛情  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「大王よ、じつに、そのような愛情があなたに生じたのですね」  
    メモ                
     ・agamāが一〜三人称のいずれとも取れ、tvaṃpemaṃがいずれも主格にも対格にもとれるため、「あなたが」「愛情へ」行ったとも、その逆とも読める。『註』および『南伝』、『パーリ』は前者のように解する。ここでは逆に解してみた。『原始』はやや特殊で、yathāpemaを「愛情のままに」ととり、「あなたは愛情のままに生きて来ましたか」と訳す。  
     ・今ひとつ文脈のわからない会話だが、『註』は独語して黙り込んでしまった王に、釈尊から水を向けたのだとしている。  
                       
                       
                       
    161-5.                
     ‘‘Piyo me, bhante, udayabhaddo kumāro.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Piyo    a 可愛、所愛  
      me,    代的  
      bhante,  bhū 名現分 ant(特) 大徳よ  
      udayabhaddo  ud-i a 人名  
      kumāro.    a 童子  
    訳文                
     「尊者よ、私には愛する息子ウダヤバッダがおります。  
                       
                       
                       
    161-6.                
     Iminā me, bhante, upasamena udayabhaddo kumāro samannāgato hotu yenetarahi upasamena bhikkhusaṅgho samannāgato’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Iminā me, (161-3.)  
      bhante,  bhū 名現分 ant(特) 大徳よ  
      upasamena udayabhaddo kumāro samannāgato hotu yenetarahi upasamena bhikkhusaṅgho samannāgato’’ti. (161-3.)  
    訳文                
     尊者よ、いま比丘僧伽がそなえているこの静けさ、その静けさを、我が子ウダヤバッダもそなえてほしいものです」  
                       
                       
                       
    162-1.                
     162. Atha kho rājā māgadho ajātasattu vedehiputto bhagavantaṃ abhivādetvā, bhikkhusaṅghassa añjaliṃ paṇāmetvā, ekamantaṃ nisīdi.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      rājā    an  
      māgadho    a マガダ国の  
      ajātasattu  a-jan u 人名、アジャータサットゥ  
      vedehi   ī 依(属) 人名、ヴェーデーヒー  
      putto    a 息子  
      bhagavantaṃ    ant 世尊  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      abhivādetvā,  abhi-vad 使 敬礼する、礼拝する  
      語根 品詞 語基 意味  
      bhikkhu bhikṣ u 依(属) 比丘、(特に男性の)出家者  
      saṅghassa  saṃ-hṛ a 僧伽、(特に仏教の)教団  
      añjaliṃ    i 合掌  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      paṇāmetvā,  pra-nam 向ける、さし出す、閉じる  
      語根 品詞 語基 意味  
      ekamantaṃ    不変 一方に  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      nisīdi.  ni-sad 坐る  
    訳文                
     ときにマガダ国の王、ヴェーデーヒーの息子アジャータサットゥは世尊へ礼拝し、比丘僧伽へ合掌を向けて、一方に坐った。  
                       
                       
                       
    162-2.                
     Ekamantaṃ nisinno kho rājā māgadho ajātasattu vedehiputto bhagavantaṃ etadavoca –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Ekamantaṃ    不変 一方に  
      nisinno  ni-sad 過分 a すわった  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      rājā    an  
      māgadho    a マガダ国の  
      ajātasattu  a-jan u 人名、アジャータサットゥ  
      vedehi   ī 依(属) 人名、ヴェーデーヒー  
      putto    a 息子  
      bhagavantaṃ    ant 世尊  
      etad   代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      avoca –  vac いう  
    訳文                
     じつに、一方へ坐ったマガダ国の王、ヴェーデーヒーの息子アジャータサットゥは、世尊へこういった。  
                       
                       
                       
    162-3.                
     ‘‘puccheyyāmahaṃ, bhante, bhagavantaṃ kiñcideva desaṃ [kiñcideva desaṃ lesamattaṃ (syā. kaṃ. ka.)]; sace me bhagavā okāsaṃ karoti pañhassa veyyākaraṇāyā’’ti.   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ‘‘puccheyyāmi prach 問う、質問する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ahaṃ,    代的  
      bhante,  bhū 名現分 ant(特) 大徳よ  
      bhagavantaṃ    ant 世尊  
      kiñci   代的 何らかの、何者であれ  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      desaṃ  diś a 点、地点、地方、地域  
      lesa   a 依(属) 類似  
      mattaṃ    a 量、小量の、程度の、だけ、のみ、だけで  
      sace    不変 もし  
      me    代的  
      bhagavā    ant 世尊  
      okāsaṃ  ava-kāś a 空間、場所、機会、聴許  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      karoti  kṛ なす、作る  
      語根 品詞 語基 意味  
      pañhassa    a 問い、質問  
      veyyākaraṇāyā’’ vi-ā-kṛ a 解答、解説、記説、記別、授記  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「尊者よ、もし私のため、世尊が質問の解答の機会を作って下さるならば、私は世尊に、〔いまのあなたの問いと〕似た程度の、ある一点のみを問いたく存じます」と。  
    メモ                
     ・以下の物語の展開で、王が六師外道に「沙門〔修行〕の成果を述べよ」という(簡単なはずの)問いを問うたところ、的外れな解答ばかりで失望した、という過去が述べられる。そこでここでは、タイ版などにあるlesamattaṃの語を含めることで、釈尊が挨拶代わりに問うた「愛する者のことを考えていたのですね」という質問と同じくらい簡単な質問を一点だけするから、はぐらかさず答えてみせよ、と言ったものと解した。こう解釈すれば、前の会話が置かれた意図が理解できるように思われる。  
                       
                       
                       
    162-4.                
     ‘‘Puccha, mahārāja, yadākaṅkhasī’’ti.  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ‘‘Puccha,  prach 問う  
      語根 品詞 語基 意味  
      mahā   ant 大きい、偉大な  
      rāja,    an  
      yadi   不変 もし  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ākaṅkhasī’’ ā-khāṅkṣ 希望する、意欲する、願う  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「大王よ、もし望むならば、お尋ねなさい」  
                       
                       
                       
    163-1.                
     163. ‘‘Yathā nu kho imāni, bhante, puthusippāyatanāni,   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Yathā    不変 その如く  
      nu    不変 〜かどうか、〜ではないか  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      imāni,    代的 これら  
      bhante,  bhū 名現分 ant(特) 大徳よ  
      puthu   u 個々の、別々の、広い、多数の  
      sippa   a 有(属) 技術、技芸、工巧、職技、職人  
      āyatanāni,    a 処 →技能  
    訳文                
     「尊者よ、じつに、かくのごときこれら多くの技能をもったものたちがいるではありませんか。  
                       
                       
                       
    163-2.                
     seyyathidaṃ – hatthārohā assārohā rathikā dhanuggahā celakā calakā piṇḍadāyakā uggā rājaputtā pakkhandino mahānāgā sūrā cammayodhino dāsikaputtā āḷārikā kappakā nhāpakā [nahāpikā (sī.), nhāpikā (syā.)] sūdā mālākārā rajakā pesakārā naḷakārā kumbhakārā gaṇakā muddikā,   
      語根 品詞 語基 意味  
      seyyathidaṃ –    不変 たとえば、その如き  
      hatthi   in 依(属)  
      ārohā  ā-ruh a 登攀、高さ、乗り手  
      assa   a 依(属)  
      ārohā  ā-ruh a 登攀、高さ、乗り手  
      rathikā    a 車兵、乗車者  
      dhanu   u 有(属)  
      gahā    a 中→男 家 →弓兵  
      celakā    a 着衣者、裁縫師、旗手  
      calakā    a 参謀  
      piṇḍa   a 依(属) 丸いもの、球、団食、食物、集団  
      dāyakā  dā? a 施者、施与者 →食料部隊、輜重兵  
      uggā    a 偉大な、高級な(武官)、激しい  
      rāja   an 有(属)  
      puttā    a 息子 →王族の  
      pakkhandino  pra-skand in 突撃兵  
      mahā    ant 有(持) 大きい、偉大な  
      nāgā   a 竜、蛇、象  
      sūrā  śū a 勇士  
      camma   a 依(属) 皮膚、皮革、盾  
      yodhino    名形 in 戦士 →胸甲兵  
      dāsika   ā 依(属) 奴隷女、婢女  
      puttā    a 息子  
      āḷārikā    a 料理人  
      kappakā  klp a 理髪師  
      nhāpakā  snā 使 a 助浴者、浴僕  
      sūdā    a 菓子職人  
      mālā   ā 依(属) 華鬘、花輪  
      kārā  kṛ a 行為、所作、文字、作者  
      rajakā  raj a 染工、洗濯人  
      pesakārā  piś, kṛ a 織工  
      naḷa   a 依(属)  
      kārā  kṛ a 行為、所作、文字、作者 →葦細工師  
      kumbha   a 依(属) つぼ  
      kārā  kṛ a 行為、所作、文字、作者 →陶工  
      gaṇakā    a 計算師、主計官  
      muddikā,    名形 a 契印の  
    訳文                
     たとえば、象兵、騎兵、戦車兵、弓兵、旗手、参謀、輜重兵、王族の高級武官、突撃兵、象使いの勇士、胸甲兵、奴隷女の子、料理人、理髪師、浴僕、菓子職人、華鬘職人、洗濯人、葦細工師、陶工、主計官、契印師〔といったような〕。  
    メモ                
     ・mahānāgāを諸訳は「巨象の如き戦士」と解する(おそらく『註』に準じて)が、ここで列挙されているのは職業・技能なので、mahānāgāsūrāにかかる有財釈とみて上記のように解した。   
     ・dāsikaputtāも職業や技能とはいえないが、『複註』が「生まれながらの兵士」antojātayodhaとするので、そのようなイディオムなのかもしれない。あるいは職業兵士の列挙は「胸甲兵」までで終わり、これはただの「奴隷」の意である可能性もあろう。  
     ・典拠を見つけられなかった(辞書類や『註』には料理人としかない)が、諸訳に従いsūdaは菓子職人とする。  
     ・『註』はmuddikāを指算師とし、『原始』、『パーリ』もこれに従うが、ここでは水野辞書や『南伝』の解釈に従った。  
                       
                       
                       
    163-3.                
     yāni vā panaññānipi evaṃgatāni puthusippāyatanāni, te diṭṭheva dhamme sandiṭṭhikaṃ sippaphalaṃ upajīvanti;   
      語根 品詞 語基 意味  
      yāni    代的 (関係代名詞)  
          不変 あるいは  
      pana   不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      aññāni   代的 別の、他の  
      pi    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      evaṃ   不変 このように、かくの如き  
      gatāni  gam 過分 a 行った、関係した、様子、姿  
      puthu   u 個々の、別々の、広い、多数の  
      sippa   a 有(属) 技術、技芸、工巧、職技、職人  
      āyatanāni,    a 処 →技能  
      te    代的 それら、彼ら  
      diṭṭhe dṛś 過分 a 男中 見られた、見、所見  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      dhamme  dhṛ a 男中 法、教法、真理、正義、もの →現法、現世  
      sandiṭṭhikaṃ  saṃ-dṛś a 現世の、現に見られた、現証の、自見の  
      sippa   a 依(属) 技術、技芸、工巧、職技、職人  
      phalaṃ  phal a 果、果実  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upajīvanti;  upa-jīv よって生きる  
    訳文                
     あるいはまた、他のかくの如き様々な技能をもったものたちもおりましょうが、かれらはまさしく現法において目に見える技能の成果によって生活しています。  
                       
                       
                       
    163-4.                
     te tena attānaṃ sukhenti pīṇenti [pīnenti (katthaci)], mātāpitaro sukhenti pīṇenti, puttadāraṃ sukhenti pīṇenti, mittāmacce sukhenti pīṇenti, samaṇabrāhmaṇesu [samaṇesu brāhmaṇesu (ka.)] uddhaggikaṃ dakkhiṇaṃ patiṭṭhapenti sovaggikaṃ sukhavipākaṃ saggasaṃvattanikaṃ.   
      語根 品詞 語基 意味  
      te    代的 それら、彼ら  
      tena    代的 それ、彼  
      attānaṃ    an 我、自己、自分  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      sukhenti    幸福とする、幸福となる、喜ぶ、楽しむ  
      pīṇenti    喜ばす、満足させる  
      語根 品詞 語基 意味  
      mātā   ā  
      pitaro    ar  
      sukhenti  同上  
      pīṇenti,  同上  
      putta   a 息子  
      dāraṃ    a  
      sukhenti  同上  
      pīṇenti,  同上  
      mitta   a  
      amacce    a 同僚、知己  
      sukhenti  同上  
      pīṇenti,  同上  
      samaṇa śram a 沙門  
      brāhmaṇesu  bṛh a 婆羅門  
      uddhaggikaṃ    a 高い、目的(平安)を目指した  
      dakkhiṇaṃ    ā 施、施物、供養  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      patiṭṭhapenti  prati-sthā 使 確立させる、建立する、定立する  
      語根 品詞 語基 意味  
      sovaggikaṃ    a 天の、生天の因  
      sukha   名形 a 有(属)  
      vipākaṃ  vi-pac a 男→女 異熟  
      sagga   a 依(対)  
      saṃvattanikaṃ.  saṃ-vṛt a 作用する、与える、導く、至らしめる  
    訳文                
     彼らはそれによって、自分を安んじ喜ばせ、父母を安んじ喜ばせ、妻子を安んじ喜ばせ、友人知人を安んじ喜ばせ、沙門婆羅門たちに対し、生天の因であり、楽の異熟をもたらし、天へ至らしめる高邁な供養を確立させています。  
                       
                       
                       
    163-5.                
     Sakkā nu kho, bhante, evameva diṭṭheva dhamme sandiṭṭhikaṃ sāmaññaphalaṃ paññapetu’’nti?  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      Sakkā  śak 可能である  
      語根 品詞 語基 意味  
      nu    不変 〜かどうか、〜ではないか  
      kho,    不変 じつに、たしかに  
      bhante,  bhū 名現分 ant(特) 大徳よ  
      evam   不変 このように、かくの如き  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      diṭṭhe dṛś 過分 a 男中 見られた、見、所見  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      dhamme  dhṛ a 男中 法、教法、真理、正義、もの →現法、現世  
      sandiṭṭhikaṃ  saṃ-dṛś a 現世の、現に見られた、現証の、自見の  
      sāmañña śram a 依(属) 沙門性、沙門位、沙門法  
      phalaṃ  phal a 果、果実  
      paññapetu’’n pra-jñā  不定 知らしめること、告知・施設・用意すること  
      ti?   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     尊者よ、じつにあなたはこのような、まさしく現法において目に見える沙門であることの果報を説明することがかないましょうか」と。  
                       
                       
                       
    164-1.                
     164. ‘‘Abhijānāsi no tvaṃ, mahārāja, imaṃ pañhaṃ aññe samaṇabrāhmaṇe pucchitā’’ti?   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ‘‘Abhijānāsi  abhi-jñā  証知する、自証する  
      語根 品詞 語基 意味  
      no    不変 ない、否/〜かどうか  
      tvaṃ,    代的 あなた  
      mahā   ant 大きい、偉大な  
      rāja,    an  
      imaṃ    代的 これ  
      pañhaṃ    a 問い、質問  
      aññe    代的 別の、他の  
      samaṇa śram a 沙門  
      brāhmaṇe  bṛh a 婆羅門  
      pucchitā’’ prach ar 質問者  
      ti?    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「大王よ、あなたは、この質問を他の沙門婆羅門たちに問うたことを憶えておられますか」  
                       
                       
                       
    164-2.                
     ‘‘Abhijānāmahaṃ, bhante, imaṃ pañhaṃ aññe samaṇabrāhmaṇe pucchitā’’ti.   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ‘‘Abhijānāmi abhi-jñā  証知する、自証する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ahaṃ,    代的  
      bhante,  bhū 名現分 ant(特) 大徳よ  
      imaṃ    代的 これ  
      pañhaṃ    a 問い、質問  
      aññe    代的 別の、他の  
      samaṇa śram a 沙門  
      brāhmaṇe  bṛh a 婆羅門  
      pucchitā’’ prach ar 質問者  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「尊者よ、私は、この質問を他の沙門婆羅門たちに問うたことを憶えています」  
                       
                       
                       
    164-3.                
     ‘‘Yathā kathaṃ pana te, mahārāja, byākariṃsu, sace te agaru bhāsassū’’ti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Yathā    不変 〜のごとくに、〜のように  
      kathaṃ    ā 話、説、論  
      pana    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      te,    代的 それら、彼ら  
      mahā   ant 大きい、偉大な  
      rāja,    an  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      byākariṃsu,  vi-ā-kṛ 解答した、受記した  
      語根 品詞 語基 意味  
      sace    不変 もし  
      te    代的 あなた  
      agaru    u 重くない、重要でない、さしつかえない  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      bhāsassū’’ bhāṣ 話す  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「しからば大王よ、もしあなたにとって差し支えなければ、彼らが答えたとおりの説をお話し下さい」  
                       
                       
                       
    164-4.                
     ‘‘Na kho me, bhante, garu, yatthassa bhagavā nisinno, bhagavantarūpo vā’’ti [cāti (sī. ka.)].   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Na    不変 ない  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      me,    代的  
      bhante,  bhū 名現分 ant(特) 大徳よ  
      garu,    名形 u 重き、重要なる、尊重すべき、師  
      yattha   不変 凡そ〜のところ(処格の関係代名詞)  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      assa  as ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      bhagavā    ant 世尊  
      nisinno,  ni-sad 過分 a すわった  
      bhagavanta   ant 有(属) 世尊  
      rūpo    a 中→男 色,物質,肉体,形相,容姿,相、像、人形  
      vā’’   不変 あるいは  
      ti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「じつに尊者よ、世尊あるいは世尊の如き御方の坐したる所に、私に差し支えなどありましょうか」  
    メモ                
     ・bhagavantbhagavantaなのは、おそらく-at語基は複合語前分の時-ataとなるため(要確認)。  
     ・bhagavantarūpoを諸訳にならって訳したが、rūpaを「像」の意味でとって「世尊の像」とする解釈はありうるか(むろん釈尊在世中に仏像は存在しないのだが)。  
                       
                       
                       
    164-5.                
     ‘‘Tena hi, mahārāja, bhāsassū’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Tena    代的 それ、彼  
      hi,    不変 じつに、なぜなら →しからば  
      mahā   ant 大きい、偉大な  
      rāja,    an  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      bhāsassū’’ bhāṣ 話す  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「大王よ、それでは、お話し下さい」  
                       
                       
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