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     Komārabhaccajīvakakathā  
      語根 品詞 語基 意味  
      Komārabhaccaṃ    a 人名、コーマーラバッチャ  
      jīvaka jīv a 依(属) 人名、ジーヴァカ(「命ある」の意、耆婆)  
      kathā   ā 論、説、話、物語  
    訳文                
     【ジーヴァカ・コーマーラバッチャの話】  
    メモ                
     ・komārabhaccajīvakaの順序が前章と逆。ジーヴァカ・コーマーラバッチャで統一した。  
                       
                       
                       
    157-1.                
     157. Tena kho pana samayena jīvako komārabhacco rañño māgadhassa ajātasattussa vedehiputtassa avidūre tuṇhībhūto nisinno hoti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Tena    代的 副具 それ、彼  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      pana    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      samayena    a 副具  
      jīvako  jīv a 人名、ジーヴァカ  
      komārabhacco    a 人名、コーマーラバッチャ  
      rañño    an  
      māgadhassa    a マガダ国の  
      ajātasattussa  a-jan u 人名、アジャータサットゥ  
      vedehi   ī 依(属) 人名、ヴェーデーヒー  
      puttassa    a 息子  
      avidūre    不変 遠くないところに、近くに  
      tuṇhī   不変 沈黙して、黙って  
      bhūto  bhū 過分 a 存在 →沈黙した  
      nisinno  ni-sad 過分 a すわった  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      hoti.  bhū ある、存在する  
    訳文                
     さて、じつにその時、ジーヴァカ・コーマーラバッチャはマガダ国の王、ヴェーデーヒーの息子アジャータサットゥの近くに黙ってすわっていた。  
                       
                       
                       
    157-2.                
     Atha kho rājā māgadho ajātasattu vedehiputto jīvakaṃ komārabhaccaṃ etadavoca –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      rājā    an  
      māgadho    a マガダ国の  
      ajātasattu  a-jan u 人名、アジャータサットゥ  
      vedehi   ī 依(属) 人名、ヴェーデーヒー  
      putto    a 息子  
      jīvakaṃ    a 人名、ジーヴァカ  
      komārabhaccaṃ   a 人名、コーマーラバッチャ  
      etad   代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      avoca –  vac いう  
    訳文                
     ときに、マガダ国の王、ヴェーデーヒーの息子アジャータサットゥは、ジーヴァカ・コーマーラバッチャへこういった。  
                       
                       
                       
    157-3.                
     ‘‘tvaṃ pana, samma jīvaka, kiṃ tuṇhī’’ti?   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘tvaṃ    代的 あなた  
      pana,    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      samma    不変 友よ  
      jīvaka,    a 人名、ジーヴァカ  
      kiṃ    代的 副対  
      tuṇhī’’   不変 沈黙して、黙って  
      ti?    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「友ジーヴァカよ、お前は何を黙っているのか」と。  
                       
                       
                       
    157-4.                
     ‘‘Ayaṃ, deva, bhagavā arahaṃ sammāsambuddho amhākaṃ ambavane viharati mahatā bhikkhusaṅghena saddhiṃ aḍḍhateḷasehi bhikkhusatehi.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Ayaṃ,    代的 これ  
      deva,    a 天、神、王、陛下  
      bhagavā    ant 世尊  
      arahaṃ  arh 名現分 ant 阿羅漢、応供  
      sammā   不変 正しい、正しく  
      sambuddho  saṃ-budh 名過分 a 等覚者  
      amhākaṃ    代的 私たち  
      amba   a 依(属) マンゴー  
      vane    a 森、林  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      viharati  vi-hṛ 住する  
      語根 品詞 語基 意味  
      mahatā    ant 大きな、偉大な  
      bhikkhu bhikṣ u 依(属) 比丘、(特に男性の)出家者  
      saṅghena  saṃ-hṛ a 僧伽、(特に仏教の)教団  
      saddhiṃ    不変 共に、一緒に(具格支配)  
      aḍḍhateḷasehi    a 十二ヶ半  
      bhikkhu bhikṣ u 比丘  
      satehi.    a  
    訳文                
     「陛下、かの世尊、応供、正等覚が、私どものマンゴー林に、一二五〇人の比丘たちからなる大比丘僧伽と共に滞在しておられます」と。  
                       
                       
                       
    157-5.                
     Taṃ kho pana bhagavantaṃ [bhagavantaṃ gotamaṃ (sī. ka. pī.)] evaṃ kalyāṇo kittisaddo abbhuggato –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Taṃ    代的 それ、彼、彼女  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      pana    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      bhagavantaṃ    ant 世尊  
      gotamaṃ    a 人名、ゴータマ  
      evaṃ    不変 このように、かくの如き  
      kalyāṇo    a 善い  
      kitti   i, ī 依(属) 称讃、名声  
      saddo    a 音、声、語  
      abbhuggato –  abhi-ud-gam 過分 a あがる、昇る  
    訳文                
     しかるに、その世尊ゴータマへ、かくの如き善き称讃の声があがっております。  
                       
                       
                       
    157-6.                
     ‘itipi so bhagavā arahaṃ sammāsambuddho vijjācaraṇasampanno sugato lokavidū anuttaro purisadammasārathi satthā devamanussānaṃ buddho bhagavā’ti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘iti   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      pi    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      so    代的 それ、彼  
      bhagavā    ant 世尊  
      arahaṃ  arh 名現分 ant 阿羅漢、応供  
      sammā   不変 正しい、正しく  
      sambuddho  saṃ-budh 名過分 a 等覚者  
      vijjā vid ā 明、智、呪,陀羅尼、学術、魔術  
      caraṇa car a 依(具) 行、行為、実践、徳行  
      sampanno  saṃ-pad 過分 a 具足した、成就した →明行足  
      sugato  su-gam 名過分 a よく行ったもの、善逝  
      loka   a 依(属) 世間、世界  
      vidū  vid ū 賢い、知者 →世間解  
      anuttaro    代的 この上ない、無上士  
      purisa   a 人、男  
      damma dam 未分 a 依(属) ならされるべき  
      sārathi    i 御者 →調御丈夫  
      satthā  śās ar 師、先生  
      deva   a 天、神、王、陛下  
      manussānaṃ    a 人間 →天人師  
      buddho  budh 名過分 a 仏陀、覚者  
      bhagavā’   ant 世尊  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     『かくのごとく、彼は世尊なり。応供、正等覚、明行足、善逝、世間解、無上士、調御丈夫、天人師、仏、世尊なり』と。  
    メモ                
     ・purisadammasārathidammaが前のpurisaに持業釈でかかり、それらが属格依主釈でsārathiにかかるという複合とみた。  
     ・『註』はitipiを、「このような〔根拠によって〕また」と解し、仏の十号の多様な語義解釈(「〔欲から〕遠離するゆえārakattā阿羅漢なりarahaṃ」と行ったぐあいのもの。『南伝』の『清浄道論』1393ページに列挙)をあらわすものとみる。ここでは半ば虚辞として処理した。  
                       
                       
                       
    157-7.                
     Taṃ devo bhagavantaṃ payirupāsatu.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Taṃ    代的 それ、彼、彼女  
      devo    a 天、神、王、陛下  
      bhagavantaṃ  pṝ a 世尊  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      payirupāsatu.  pari-upa-ās 尊敬する、承事する、敬奉する、訪ねる  
    訳文                
     陛下はかの世尊へ参詣なさいませ。  
                       
                       
                       
    157-8.                
     Appeva nāma devassa bhagavantaṃ payirupāsato cittaṃ pasīdeyyā’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Appeva    不変 apieva) おそらく  
      nāma    an 副対 とは、じつに →多分、〜すればよいだろう  
      devassa    a 属絶 天、神、王、陛下  
      bhagavantaṃ  pṝ ant 世尊  
      payirupāsato  pari-upa-ās 現分 ant 男中 属絶 訪ねた  
      cittaṃ  cit a  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pasīdeyyā’ pra-sad 浄まる、喜ぶ、信じる  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     世尊へ参詣すれば、陛下のお心は浄まることでしょう」  
                       
                       
                       
    158-1.                
     158. ‘‘Tena hi, samma jīvaka, hatthiyānāni kappāpehī’’ti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Tena    代的 それ、彼  
      hi,    不変 じつに、なぜなら →しからば  
      samma    不変 友よ  
      jīvaka,    a 人名  
      hatthi   in  
      yānāni    a 車、乗り物  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      kappāpehī’’ klp 使 なす、営む、整える、準備する、馬具をとりつける  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「しからば友ジーヴァカよ、乗象を支度させよ」  
                       
                       
                       
    158-2.                
     ‘‘Evaṃ, devā’’ti kho jīvako komārabhacco rañño māgadhassa ajātasattussa vedehiputtassa paṭissuṇitvā pañcamattāni hatthinikāsatāni kappāpetvā rañño ca ārohaṇīyaṃ nāgaṃ, rañño māgadhassa ajātasattussa vedehiputtassa paṭivedesi –   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Evaṃ,    不変 このように、かくの如き  
      devā’’   a 天、神、王、陛下  
      ti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      jīvako  jīv a 人名、ジーヴァカ  
      komārabhacco    a 人名、コーマーラバッチャ  
      rañño    an  
      māgadhassa    a マガダ国の  
      ajātasattussa  a-jan u 人名、アジャータサットゥ  
      vedehi   ī 依(属) 人名、ヴェーデーヒー  
      puttassa    a 息子  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      paṭissuṇitvā  prati-śru 同意する、応諾する、答える  
      語根 品詞 語基 意味  
      pañca    
      mattāni    a 量、小量の、程度の、だけ、のみ  
      hatthinikā   ā 牝象  
      satāni    a  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      kappāpetvā  klp 使 なす、営む、整える、準備する、馬具をとりつける  
      語根 品詞 語基 意味  
      rañño    an  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      ārohaṇīyaṃ  ā-ruh 未分 a 上がられるべき、乗られるべき  
      nāgaṃ,    a 竜、蛇、象  
      rañño    an  
      māgadhassa    a マガダ国の  
      ajātasattussa  a-jan u 人名、アジャータサットゥ  
      vedehi   ī 依(属) 人名、ヴェーデーヒー  
      puttassa    a 息子  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      paṭivedesi –  prati-vid 使 知らせる、述べる  
    訳文                
     「陛下、そのように」とジーヴァカ・コーマーラバッチャはマガダ国の王、ヴェーデーヒーの息子アジャータサットゥへ答え、五百頭ほどの雌象と、王のための騎乗用の雄象を支度させて、マガダ国の王、ヴェーデーヒーの息子アジャータサットゥへ告げた。  
    メモ                
     ・ārohaṇīyaṃ という語形は辞書類に見つけられなかったが、PTS辞書ではāroha“a rider”としているので、そこから類推して訳した。  
                       
                       
                       
    158-3.                
     ‘‘kappitāni kho te, deva, hatthiyānāni, yassadāni kālaṃ maññasī’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘kappitāni  klp 使 過分 a 支度された  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      te,    代的 あなた  
      deva,    a 天、神、王、陛下  
      hatthi   in  
      yānāni,    a 車、乗り物  
      yassa   代的 (関係代名詞)  
      dāni    不変 いまや  
      kālaṃ    a  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      maññasī’’ man 考える  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「陛下、あなたのための乗象が支度されました。あなたが、いまや時を〔参詣の適時だと〕お考えならば〔そのように〕」と。  
    メモ                
     ・yassadāni kālaṃ maññasīについて、『南伝』は「いざ、御意のままに挙措あらせ給え」、『原始』は「いまが〔御出立の〕時とお考え下さい」、「御意のままになされますように」とする。これらは『註』にならったものであろうか。  
     ・『註』は「そのうちyassa dāni kālaṃ maññasīというこれは、かりそめにたてられた言葉である。言われたのはこうである。『あなたに命じられたことを私はなした。いまやあなたが行くのか、あるいは行かないのか時を考える、それを自らの意欲によってなされよ』と」。Tattha yassa dāni kālaṃ maññasīti upacāravacanametaṃ. Idaṃ vuttaṃ hoti – ‘‘yaṃ tayā āṇattaṃ, taṃ mayā kataṃ, idāni tvaṃ yassa gamanassa vā agamanassa vā kālaṃ maññasi, tadeva attano ruciyā karohī’’ti. とする。  
                       
                       
                       
    159-1.                
     159. Atha kho rājā māgadho ajātasattu vedehiputto pañcasu hatthinikāsatesu paccekā itthiyo āropetvā ārohaṇīyaṃ nāgaṃ abhiruhitvā ukkāsu dhāriyamānāsu rājagahamhā niyyāsi mahaccarājānubhāvena, yena jīvakassa komārabhaccassa ambavanaṃ tena pāyāsi.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      rājā    an  
      māgadho    a マガダ国の  
      ajātasattu    u 人名、アジャータサットゥ  
      vedehi   ī 依(属) 人名、ヴェーデーヒー  
      putto    a 息子  
      pañcasu     
      hatthinikā   ā 牝象  
      satesu    a  
      paccekā    a 独一の、単一の  
      itthiyo    iī  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      āropetvā  ā-ruh 使 上らせる、上げる、与える、用意する、示す  
      語根 品詞 語基 意味  
      ārohaṇīyaṃ  ā-ruh 未分 a 上がられるべき、乗られるべき  
      nāgaṃ    a 竜、蛇、象  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      abhiruhitvā  abhi-ruh 上がる、昇る  
      語根 品詞 語基 意味  
      ukkāsu    ā 処絶 松明  
      dhāriyamānāsu  dhṛ 受 現分 ā 処絶 持たれつつある  
      rājagahamhā    a 地名、ラージャガハ(王舎城)  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      niyyāsi  nir-yā 出発する、発足する  
      語根 品詞 語基 意味  
      mahacca   ant 大きい、偉大な  
      rāja   an 依(属)  
      anubhāvena,  anu-bhū a 威力、勢力、威神力  
      yena    代的 (関係代名詞)  
      jīvakassa  jīv a 人名、ジーヴァカ  
      komārabhaccassa    a 人名、コーマーラバッチャ  
      amba    a 依(属) マンゴー  
      vanaṃ   a 森、林  
      tena    代的 それ、彼  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pāyāsi. pra-ā-yā 出発する、出て行く  
    訳文                
     ときに、マガダ国の王、ヴェーデーヒーの息子アジャータサットゥは五百頭の雌象へ一人ずつ女たちをのせ、騎乗用の雄象に乗って、松明の掲げられるなか、ジーヴァカ・コーマーラバッチャのマンゴー林へ向かう王の大勢力をもって王舎城を出立した。  
    メモ                
     ・『註』はRājānubhāvoは王の神通といわれる。では何が王の神通であろうか。三百ヨージャナの二大国を主宰する吉祥〔の力〕である。なんとなればその日、王は「如来に近づくだろう」という事前の準備がなかったけれど、その刹那にじつに五百人の女たちに男装させて、ターバンを結び、肩に刀をかけ、宝石、杖、槍を持たせて出立したからである。それが密意によって「一人ずつ女たちをのせて」といわれたのである。Rājānubhāvo vuccati rājiddhi. Kā panassa rājiddhi? Tiyojanasatānaṃ dvinnaṃ mahāraṭṭhānaṃ issariyasirī. Tassa hi asukadivasaṃ rājā tathāgataṃ upasaṅkamissatīti paṭhamataraṃ saṃvidahane asatipi taṅkhaṇaññeva pañca itthisatāni purisavesaṃ gahetvā paṭimukkaveṭhanāni aṃse āsattakhaggāni maṇidaṇḍatomare gahetvā nikkhamiṃsu. Yaṃ sandhāya vuttaṃ – ‘‘paccekā itthiyo āropetvā’’ti. としている。  
     ・この『註』は、王の権力や財力を神通力に喩えていったものであろう(あるいは本当に超常の力で女官たちをそろえたと解したか?)。しかしここでは「マンゴー林へ向かう」という文節が、関係代名詞によってrājānubhāvenaにかかっているのだから、「力」ではなく「大人数」「大勢」「軍勢」というニュアンスで解すべきではなかろうか。  
                       
                       
                       
    159-2.                
     Atha kho rañño māgadhassa ajātasattussa vedehiputtassa avidūre ambavanassa ahudeva bhayaṃ, ahu chambhitattaṃ, ahu lomahaṃso.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      rañño    an  
      māgadhassa    a マガダ国の  
      ajātasattussa  a-jan u 人名、アジャータサットゥ  
      vedehi   ī 依(属) 人名、ヴェーデーヒー  
      puttassa    a 息子  
      avidūre    不変 遠くないところに、近くに  
      amba   a 依(属) マンゴー  
      vanassa    a 森、林  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ahu bhū あった  
      語根 品詞 語基 意味  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      bhayaṃ,  bhī a 恐れ、恐怖  
      ahu  同上  
      chambhitattaṃ,    a 硬直、恐怖  
      ahu  同上  
      loma   an 依(属)  
      haṃso.  hṛṣ a 逆立つ  
    訳文                
     時に、マンゴー林にほど近いところで、マガダ国の王、ヴェーデーヒーの息子アジャータサットゥに恐怖が、身のすくみが、身の毛のよだちが生じた。  
    メモ                
     ・ahudevadは連声による挿入とみた。  
                       
                       
                       
    159-3.                
     Atha kho rājā māgadho ajātasattu vedehiputto bhīto saṃviggo lomahaṭṭhajāto jīvakaṃ komārabhaccaṃ etadavoca –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      rājā    an  
      māgadho    a マガダ国の  
      ajātasattu    u 人名、アジャータサットゥ  
      vedehi   ī 依(属) 人名、ヴェーデーヒー  
      putto    a 息子  
      bhīto  bhī 過分 a 恐れた  
      saṃviggo  saṃ-vij 過分 a 驚怖した  
      loma   an 依(属)  
      haṭṭha hṛṣ 過分 a 有(持) 逆立ち  
      jāto  jan 過分 a 生じた  
      jīvakaṃ  jīv a 人名、ジーヴァカ  
      komārabhaccaṃ    a 人名、コーマーラバッチャ  
      etad   代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      avoca –  vac いう  
    訳文                
     時に、マガダ国の王、ヴェーデーヒーの息子アジャータサットゥは恐れ、おののき、総毛立ってジーヴァカ・コーマーラバッチャへこういった。  
    メモ                
     ・haṭṭhajātoを形容詞が後ろからかかる持業釈の有財釈化したものとみたが、果たしてこれでよいか。  
                       
                       
                       
    159-4.                
     ‘‘kacci maṃ, samma jīvaka, na vañcesi?   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘kacci    不変 (疑問詞)  
      maṃ,    代的  
      samma    不変 友よ  
      jīvaka,  jīv a 人名  
      na    不変 ない  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      vañcesi?  vañc 使 だます、偽る  
    訳文                
     「友ジーヴァカよ、お前は私を騙したのではないのか。  
                       
                       
                       
    159-5.                
     Kacci maṃ, samma jīvaka, na palambhesi?   
      語根 品詞 語基 意味  
      Kacci maṃ, samma jīvaka, na (159-4.)  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      palambhesi?  pra-labh 使 だます、偽る  
    訳文                
     友ジーヴァカよ、お前は私を偽ったのではないのか。  
                       
                       
                       
    159-6.                
     Kacci maṃ, samma jīvaka, na paccatthikānaṃ desi?   
      語根 品詞 語基 意味  
      Kacci maṃ, samma jīvaka, na (159-4.)  
      paccatthikānaṃ    a  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      desi?  与える  
    訳文                
     友ジーヴァカよ、お前は私を敵どもに引き渡すのではないのか。  
                       
                       
                       
    159-7.                
     Kathañhi nāma tāva mahato bhikkhusaṅghassa aḍḍhateḷasānaṃ bhikkhusatānaṃ neva khipitasaddo bhavissati, na ukkāsitasaddo na nigghoso’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Kathañ   不変 如何に、何故に  
      hi    不変 じつに、なぜなら  
      nāma    an 副対 と、という名の、じつに →一体どういう訳で  
      tāva    不変 それだけ、それほど、まず  
      mahato    ant 大きな、偉大な  
      bhikkhu bhikṣ u 依(属) 比丘、(特に男性の)出家者  
      saṅghassa  saṃ-hṛ a 僧伽、(特に仏教の)教団  
      aḍḍhateḷasānaṃ    a 十二ヶ半  
      bhikkhu bhikṣ u 比丘  
      satānaṃ    a  
      neva    不変 じつになし(na-eva)、すらもなし  
      khipita kṣip 過分 a 依(属) 投げ捨てられた、嘔吐、くしゃみ  
      saddo    a 音、声、語  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      bhavissati,  bhū ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      na    不変 ない  
      ukkāsita ud-kās 過分 a 依(属) 咳払いした  
      saddo    a 音、声、語  
      na    不変 ない  
      nigghoso’’ ni-ghus a 音、声、評判、宣言/声のない、静かな  
      ti.   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     一体どういう訳で、これほどの、比丘一二五〇人もの大比丘僧伽にあって、くしゃみの音、咳払いの音、話し声すらもないのか」と。  
    メモ                
     ・bhavissatiは未来形だが、未来形や願望法はしばしば実現していない動作全般をあらわすので、ここでは現在形のように訳した。  
                       
                       
                       
    159-8.                
     ‘‘Mā bhāyi, mahārāja, mā bhāyi, mahārāja.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Mā    不変 〜なかれ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      bhāyi,  bhī 恐れる  
      語根 品詞 語基 意味  
      mahā   ant 大きい、偉大な  
      rāja,    an  
      mā bhāyi, mahārāja. (同上)  
    訳文                
     「大王よ、恐れめさるな、大王よ、恐れめさるな。  
                       
                       
                       
    159-9.                
     Na taṃ deva, vañcemi; na taṃ, deva, palambhāmi; na taṃ, deva, paccatthikānaṃ demi.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Na    不変 ない  
      taṃ    代的 あなた  
      deva,    a 天、神、王、陛下  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      vañcemi;  vañc 使 だます、偽る  
      語根 品詞 語基 意味  
       na taṃ, deva, (同上)  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      palambhāmi;  pra-labh 使 だます、偽る  
      語根 品詞 語基 意味  
      na taṃ, deva, (同上)  
      paccatthikānaṃ    a  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      demi.  与える  
    訳文                
     陛下、私はあなたを騙してはおりません。陛下、私はあなたを偽ってはおりません。陛下、私はあなたを敵たちに引き渡したりはいたしません。  
                       
                       
                       
    159-10.                
     Abhikkama, mahārāja, abhikkama, mahārāja, ete maṇḍalamāḷe dīpā [padīpā (sī. syā.)] jhāyantī’’ti.  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      Abhikkama,  abhi-kram 進む  
      語根 品詞 語基 意味  
      mahā   ant 大きい、偉大な  
      rāja,    an  
      abhikkama, mahārāja, (同上)  
      ete    代的 この  
      maṇḍala   a 曼荼羅、円  
      māḷe    a 天幕、房、堂  
      dīpā dīp a 灯明  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      jhāyantī’’ kṣai 燃える、焼ける  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     大王よ、進まれよ、大王よ、進まれよ。円房にこれらの灯明がともっております」  
                       
                       
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