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     5. Sānusuttaṃ  
      語根 品詞 語基 意味  
      Sānu    u 依(属) 人名、サーヌ  
      suttaṃ  sīv a 経、糸  
    訳文                
     「サーヌ経」(『相応部』10-5  
                       
                       
                       
    239-1.                
     239. Ekaṃ samayaṃ bhagavā sāvatthiyaṃ viharati jetavane anāthapiṇḍikassa ārāme.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Ekaṃ    代的 副対 一、とある  
      samayaṃ  saṃ-i a 副対  
      bhagavā    ant 世尊  
      sāvatthiyaṃ    ī 地名、サーヴァッティー  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      viharati  vi-hṛ 住する  
      語根 品詞 語基 意味  
      jetavane    a 地名、ジェータ林、祇樹、祇園  
      anāthapiṇḍikassa    a 人名、アナータピンディカ、給孤独  
      ārāme.    a  
    訳文                
     あるとき世尊はサーヴァッティーのジェータ林、アナータピンディカ園に住しておられた。  
                       
                       
                       
    239-2.                
     Tena kho pana samayena aññatarissā upāsikāya sānu nāma putto yakkhena gahito hoti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Tena    代的 副具 それ、彼、それによって、それゆえ  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      pana    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      samayena    a 副具  
      aññatarissā    代的 とある  
      upāsikāya    ā 優婆夷  
      sānu    u 人名、サーヌ  
      nāma    an 副対 と、という名の、じつに  
      putto    a 息子  
      yakkhena    a 夜叉  
      gahito  grah 過分 a 取られた  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      hoti.  bhū ある、なる、存在する  
    訳文                
     さてそのとき、とある優婆夷のサーヌという名の息子が、夜叉に憑依されていた。  
    メモ                
     ・正しくはaññatarassāではないか。  
                       
                       
                       
    239-3.                
     Atha kho sā upāsikā paridevamānā tāyaṃ velāyaṃ imā gāthāyo abhāsi –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また、そこに  
      kho    不変 じつに、たしかに  
          代的 それ、彼女  
      upāsikā    ā 優婆夷  
      paridevamānā  pari-div 現分 a なく、悲泣する  
      tāyaṃ    代的 それ、彼女  
      velāyaṃ    ā  
      imā    代的 これら  
      gāthāyo    ā 偈、歌  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      abhāsi –  bhāṣ 語る、話す  
    訳文                
     ときにその優婆夷は悲泣し、そのときこの偈をとなえた。  
                       
                       
                       
    239-4.                
     ‘‘Cātuddasiṃ pañcadasiṃ, yā ca pakkhassa aṭṭhamī;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Cātuddasiṃ    ī 十四日  
      pañcadasiṃ,    ī 十五日  
          代的 (関係代名詞)  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      pakkhassa    a 翼、側、党、半月  
      aṭṭhamī;    ī 第八の  
    訳文                
     「♪『半月の八日、十四日、十五日に、  
    メモ                
     ・この関係代名詞はどういう機能をもったものかよく理解できなかった。音韻上の関係で挿入されたものか。  
                       
                       
                       
    239-5.                
     Pāṭihāriyapakkhañca, aṭṭhaṅgasusamāgataṃ.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Pāṭihāriya  prati-hṛ 名形 a 依(属) 神通、神変、示導、奇跡  
      pakkhañ    a 翼、側、半月、党  
      ca,    不変 と、また、そして、しかし  
      aṭṭha     
      aṅga    a 依(対) 肢体、支分  
      susamāgataṃ.  su-saṃ-ā-gam 過分 a よく具えた、よく具備した  
    訳文                
     ♪また神変の半月に、八支をよく具えた、  
    メモ                
     ・「神変の半月」Pāṭihāriyapakkhaとは、『註』によれば七日と九日など布薩の前後の日をいうらしい。  
                       
                       
                       
    239-6.                
     ‘‘Uposathaṃ upavasanti, brahmacariyaṃ caranti ye;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Uposathaṃ  upa-vas a 布薩、斎戒  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upavasanti,  upa-vas 近住する、布薩に入る  
      語根 品詞 語基 意味  
      brahmacariyaṃ  bṛh, car a 梵行  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      caranti  car 行ずる  
      語根 品詞 語基 意味  
      ye;    代的 (関係代名詞)  
    訳文                
     ♪布薩へ入り、梵行をなすような者たち、  
                       
                       
                       
    239-7.                
     Na tehi yakkhā kīḷanti, iti me arahataṃ sutaṃ;  
      語根 品詞 語基 意味  
      Na    不変 ない  
      tehi    代的 それら、彼ら  
      yakkhā    a ヤッカ、夜叉  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      kīḷanti,  krīd 遊ぶ、戯れる  
      語根 品詞 語基 意味  
      iti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      me    代的  
      arahataṃ  arh 名現分 ant 阿羅漢、応供  
      sutaṃ;  śru 名過分 a 所聞、聞かれた  
    訳文                
     ♪その者たちに、夜叉たちが戯れることはない』という阿羅漢たちの〔所説を〕、私は聞いた。  
                       
                       
                       
    239-8.                
     Sā dāni ajja passāmi, yakkhā kīḷanti sānunā’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
          代的 それ、彼女  
      dāni    不変 今、いまや  
      ajja    不変 今日、今  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      passāmi,  paś 見る  
      語根 品詞 語基 意味  
      yakkhā    a ヤッカ、夜叉  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      kīḷanti  krīd 遊ぶ、戯れる  
      語根 品詞 語基 意味  
      sānunā’’    u 人名、サーヌ  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ♪〔しかし〕その私はたったいま見ている。夜叉たちがサーヌに戯れているではないか」  
                       
                       
                       
    239-9.                
     ‘‘Cātuddasiṃ pañcadasiṃ, yā ca pakkhassa aṭṭhamī;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Cātuddasiṃ pañcadasiṃ, yā ca pakkhassa aṭṭhamī; (239-4.)  
    訳文                
     〔夜叉女曰く〕「♪『半月の八日、十四日、十五日に、  
    メモ                
     ・『註』のいうとおり、この偈はyakkhinīの発したものとした。  
                       
                       
                       
    239-10.                
     Pāṭihāriyapakkhañca, aṭṭhaṅgasusamāgataṃ;  
      語根 品詞 語基 意味  
      Pāṭihāriyapakkhañca, aṭṭhaṅgasusamāgataṃ; (239-5.)  
    訳文                
     ♪また神変の半月に、八支をよく具えた、  
                       
                       
                       
    239-11.                
     Uposathaṃ upavasanti, brahmacariyaṃ caranti ye.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Uposathaṃ upavasanti, brahmacariyaṃ caranti ye. (239-6.)  
    訳文                
     ♪布薩へ入り、梵行をなすような者たち、  
                       
                       
                       
    239-12.                
     ‘‘Na tehi yakkhā kīḷanti, sāhu te arahataṃ sutaṃ;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Na tehi yakkhā kīḷanti, sāhu te arahataṃ sutaṃ; (239-7.)  
      sāhu    u よき、十分な  
      te    代的 あなた  
    訳文                
     ♪その者たちに、夜叉たちが戯れることはない』という阿羅漢たちの〔所説を〕、そなたははよく聞いている。  
                       
                       
                       
    239-13.                
     Sānuṃ pabuddhaṃ vajjāsi, yakkhānaṃ vacanaṃ idaṃ;  
      語根 品詞 語基 意味  
      Sānuṃ    u 人名、サーヌ  
      pabuddhaṃ  pra-budh 過分 a 目を覚ました  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      vajjāsi,  vad 言う  
      語根 品詞 語基 意味  
      yakkhānaṃ    a 夜叉、ヤッカ  
      vacanaṃ  vac a 言葉  
      idaṃ;    代的 これ  
    訳文                
     ♪目覚めたサーヌに、そなたはこの夜叉たちの言葉を告げる〔べし〕。  
                       
                       
                       
    239-14.                
     Mākāsi pāpakaṃ kammaṃ, āvi vā yadi vā raho.  
      語根 品詞 語基 意味  
          不変 なかれ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      akāsi  kṛ なす  
      語根 品詞 語基 意味  
      pāpakaṃ    a 悪しき  
      kammaṃ,  kṛ an 業、行為  
      āvi    不変 明瞭な、明顕に  
          不変 あるいは  
      yadi    不変 もし  
          不変 あるいは  
      raho.  rah as 副対 独処、静処  
    訳文                
     ♪『露わにも、また密かにも、そなたは悪しき行為をなすなかれ。  
    メモ                
     ・これはつまりサーヌが布薩の日にひそかに斎戒を破っていたので夜叉につけ込まれたという話なのであろう。  
                       
                       
                       
    239-15.                
     ‘‘Sace ca [saceva (syā. kaṃ. pī. ka.), yañceva (sī.)] pāpakaṃ kammaṃ, karissasi karosi vā;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Sace    不変 もし  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      pāpakaṃ    a 悪しき  
      kammaṃ,  kṛ an 業、行為  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      karissasi  kṛ なす  
      karosi  kṛ なす  
      語根 品詞 語基 意味  
      vā;    不変 あるいは  
    訳文                
     ♪もしそなたが悪しき行為をなすようならば、あるいは現になすならば、  
                       
                       
                       
    239-16.                
     Na te dukkhā pamutyatthi, uppaccāpi palāyato’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Na    不変 ない  
      te    代的 あなた  
      dukkhā    名形 a  
      pamuty  pra-muc i 解脱、自由pamuttyの異体か  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      atthi,  as ある、なる  
      uppacca  upa-pat 飛び上がる  
      語根 品詞 語基 意味  
      api    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      palāyato’’  palāy 現分 ant 逃げる  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ♪飛び上がって逃げようとも、そなたに苦からの解放はない』と」  
                       
                       
                       
    239-17.                
     ‘‘Mataṃ vā amma rodanti, yo vā jīvaṃ na dissati;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Mataṃ  mṛ 過分 a 死んだ  
          不変 あるいは  
      amma    不変 母よ、女性への呼びかけ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      rodanti,  rud 泣く、嘆く  
      語根 品詞 語基 意味  
      yo    代的 (関係代名詞)  
          不変 あるいは  
      jīvaṃ  jīv 現分 ant 生きた  
      na    不変 ない  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      dissati;  dṛś 受 見られる  
    訳文                
     〔目覚めたサーヌ曰く〕「♪母よ、人々は、死者に対し、あるいは生きていても見ることができない者〔に対し〕嘆くものだ。  
                       
                       
                       
    239-18.                
     Jīvantaṃ amma passantī, kasmā maṃ amma rodasī’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Jīvantaṃ  jīv 名過分 a 生きた  
      amma    不変 母よ、女性への呼びかけ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      passantī,  paś 見る  
      語根 品詞 語基 意味  
      kasmā    代的 何、誰  
      maṃ    代的  
      amma    不変 母よ、女性への呼びかけ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      rodasī’’  rud 泣く、嘆く  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ♪母よ、人々は、生きた私を見ることができる。母よ、なにゆえ嘆くのか」  
                       
                       
                       
    239-19.                
     ‘‘Mataṃ vā putta rodanti, yo vā jīvaṃ na dissati;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Mataṃ vā putta rodanti, yo vā jīvaṃ na dissati; (239-17.)  
      putta    a 息子  
    訳文                
     〔母曰く〕「♪息子よ、人々は、死者に対し、あるいは生きていても見ることができない者〔に対し〕嘆く。  
                       
                       
                       
    239-20.                
     Yo ca kāme cajitvāna, punarāgacchate idha;  
      語根 品詞 語基 意味  
      Yo    代的 (関係代名詞)  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      kāme    a 男中  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      cajitvāna,  tyaj 捨てる  
      語根 品詞 語基 意味  
      punar    不変 さらに、ふたたび  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      āgacchate  ā-gam 来る  
      語根 品詞 語基 意味  
      idha;    不変 ここに、この世で、いま、さて  
    訳文                
     ♪しかして、諸欲を捨てながら再びこの世へやってくるような者、  
                       
                       
                       
    239-21.                
     Taṃ vāpi putta rodanti, puna jīvaṃ mato hi so.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Taṃ    代的 それ  
          不変 あるいは  
      pi    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      putta    a 息子  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      rodanti,  rud 泣く、嘆く  
      語根 品詞 語基 意味  
      puna    不変 さらに、ふたたび  
      jīvaṃ  jīv 現分 ant 生きた  
      mato  mṛ 過分 a 死んだ  
      hi    不変 じつに、なぜなら  
      so.    代的 それ、彼  
    訳文                
     ♪息子よ、その者をも人々は嘆く。なぜならその者は、生きて、再び死者となるからだ。  
    メモ                
     ・諸訳は「生けるも死せるが如く」などと訳すが、ここでは輪廻による再生と再死をいったものと解してみた。  
                       
                       
                       
    239-22.                
     ‘‘Kukkuḷā ubbhato tāta, kukkuḷaṃ [kukkuḷe (sī.)] patitumicchasi;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Kukkuḷā    a 熱灰、灰燼、もえさし  
      ubbhato  ud-dhṛ 過分 a 上げられた、取り除かれた、引き抜かれた  
      tāta,    不変 (男性への愛称)  
      kukkuḷaṃ    a 熱灰、灰燼、もえさし  
      patitum  pat 不定 落ちること、倒れること、とまること  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      icchasi;  iṣ 望む  
    訳文                
     ♪きみよ、熱灰から引き上げられたものが熱灰へ落ちることをあなたは望んでいる。  
    メモ                
     ・pamuty-atthiと分解し、前分をpamuttiの異体と見た。  
                       
                       
                       
    239-23.                
     Narakā ubbhato tāta, narakaṃ patitumicchasi.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Narakā    a 地獄、奈落  
      ubbhato tāta, narakaṃ patitumicchasi. (239-22.)  
      narakaṃ    a 地獄、奈落  
    訳文                
     ♪きみよ、地獄から引き上げられたものが地獄へ落ちることをあなたは望んでいる。  
                       
                       
                       
    239-24.                
     ‘‘Abhidhāvatha bhaddante, kassa ujjhāpayāmase;  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ‘‘Abhidhāvatha  abhi-dhāv 走る、急ぐ  
      語根 品詞 語基 意味  
      bhaddante,    a 尊者、大徳  
      kassa    代的 何、誰  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ujjhāpayāmase;    嫌恨する、嫌責する、不機嫌となる  
    訳文                
     ♪ご立派な者よ、そなたは〔勝手に〕走り行け。我々は誰を恨もうか。  
    メモ                
     ・諸訳はbhaddantebhaddan teとして「そなたに幸いあれ」などとしている。いずれにせよ皮肉のニュアンスであろうか。  
                       
                       
                       
    239-25.                
     Ādittā nīhataṃ [nibbhataṃ (syā. kaṃ. ka.), nibhataṃ (pī. ka.)] bhaṇḍaṃ, puna ḍayhitumicchasī’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Ādittā  ā-dīp 過分 a 点火した、燃えた  
      nīhataṃ  nir-hṛ 過分 a 取り出された、除去された  
      bhaṇḍaṃ,    a 品物、財貨  
      puna    不変 さらに、ふたたび  
      ḍayhitum  dah 不定 焼くこと  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      icchasī’’  iṣ 欲する、求める  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ♪燃える〔炎〕から取り出された財貨を、そなたは再び焼こうと望んでいる」  
                       
                       
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