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     10. Nānātitthiyasāvakasuttaṃ  
      語根 品詞 語基 意味  
      Nānā    不変 種々の  
      titthiya    a 依(属) 外道、異学  
      sāvaka  śru a 依(属) 声聞、弟子  
      suttaṃ  sīv a 経、糸  
    訳文                
     「種々異学徒経」(『相応部』2-30  
                       
                       
                       
    111-1.                
     111. Evaṃ me sutaṃ –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Evaṃ    不変 このように、かくの如き  
      me    代的  
      sutaṃ –  śru 名過分 a 所聞、聞かれた  
    訳文                
     私は、このように聞いた。  
                       
                       
                       
    111-2.                
     ekaṃ samayaṃ bhagavā rājagahe viharati veḷuvane kalandakanivāpe.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ekaṃ    代的 副対 一、とある  
      samayaṃ  saṃ-i a 副対  
      bhagavā    ant 世尊  
      rājagahe    a 地名、ラージャガハ、王舎城  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      viharati  vi-hṛ 住する  
      語根 品詞 語基 意味  
      veḷuvane    a 竹林  
      kalandakanivāpe.  ni-vap a 地名、カランダカニヴァーパ(リスの餌場)  
    訳文                
     あるとき世尊はラージャガハの竹林、カランダカニヴァーパに住しておられた。  
                       
                       
                       
    111-3.                
     Atha kho sambahulā nānātitthiyasāvakā devaputtā asamo ca sahali [sahalī (sī. syā. kaṃ. pī.)] ca nīko [niṅko (sī. pī.), niko (syā. kaṃ.)] ca ākoṭako ca vegabbhari ca [veṭambarī ca (sī. syā. kaṃ. pī.)] māṇavagāmiyo ca abhikkantāya rattiyā abhikkantavaṇṇā kevalakappaṃ veḷuvanaṃ obhāsetvā yena bhagavā tenupasaṅkamiṃsu;   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また、そこに  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      sambahulā    a 多くの、衆多の  
      nānā    不変 種々の  
      titthiya    a 依(属) 外道、異学  
      sāvakā  śru a 弟子、声聞  
      deva    a 依(属) 天、神、陛下  
      puttā    a 息子  
      asamo    a 神名、アサマ  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      sahali    i 神名、サハリ  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      nīko    a 神名、ニーカ  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      ākoṭako    a 神名、アーコータカ  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      vegabbhari    i 神名、ヴェーガッバリ  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      māṇavagāmiyo    a 神名、マーナヴァガーミヤ  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      abhikkantāya  abhi-kram 過分 a 過ぎ去った、進んだ、超えた、素晴らしい  
      rattiyā    i  
      abhikkanta  abhi-kram 過分 a 有(持) 過ぎ去った、進んだ、超えた、素晴らしい  
      vaṇṇā    a 色、容色  
      kevalakappaṃ    不変 全面に  
      veḷuvanaṃ    a 竹林  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      obhāsetvā  ava-bhās 使 照らす  
      語根 品詞 語基 意味  
      yena    代的 (関係代名詞、〜tenaで「〜の所に」)  
      bhagavā    ant 世尊  
      tena    代的 それ、彼、それによって、それゆえ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upasaṅkamiṃsu;  upa-saṃ-kram 能反 近づいた  
    訳文                
     ときに、すぐれた容色をもった、種々の異学徒たる幾多の天子たち、アサマ、サハリ、ニーカ、アーコータカ、ヴェーガッバリ、マーナヴァガーミヤが、夜更けに、ジェータ林を全面に照らしながら、世尊のもとへ近づいた。  
                       
                       
                       
    111-4.                
     upasaṅkamitvā bhagavantaṃ abhivādetvā ekamantaṃ aṭṭhaṃsu.   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upasaṅkamitvā  upa-saṃ-kram 近づく  
      語根 品詞 語基 意味  
      bhagavantaṃ    ant 世尊  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      abhivādetvā  abhi-vad 使 敬礼する、礼拝する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ekamantaṃ    不変 一方に  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      aṭṭhaṃsu.  sthā 立つ  
    訳文                
     近づいて、世尊へ礼拝し、一方へ立った。  
                       
                       
                       
    111-5.                
     Ekamantaṃ ṭhito kho asamo devaputto pūraṇaṃ kassapaṃ ārabbha bhagavato santike imaṃ gāthaṃ abhāsi –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Ekamantaṃ    不変 一方に  
      ṭhito  sthā 過分 a 立つ  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      asamo    a 神名、アサマ  
      deva    a 依(属) 天、神、陛下  
      putto    a 息子  
      pūraṇaṃ  pṝ a 人名、プーラナ  
      kassapaṃ    a 人名、カッサパ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ārabbha  ā-rabh 関して  
      語根 品詞 語基 意味  
      bhagavato    ant 世尊  
      santike    a 付近、面前  
      imaṃ    代的 これ  
      gāthaṃ    ā  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      abhāsi –  bhāṣ 語る、話す  
    訳文                
     一方へ立ったアサマ天子は、プーラナ・カッサパに関し、世尊の面前でこの偈を発した。  
                       
                       
                       
    111-6.                
     ‘‘Idha chinditamārite, hatajānīsu kassapo;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Idha    不変 ここに、この世で、いま、さて  
      chindita  chid 過分 a 切られた?  
      mārite,  mṛ 使 過分 a 殺された  
      hata  han 過分 a 殺害された、破壊された  
      jānīsu    i 女(男中) 損失、強奪  
      kassapo;    a 人名、カッサパ  
    訳文                
     「♪この世で、切り、殺した者のうちに、打ち、奪った者たちのうちに、カッサパは、  
    メモ                
     ・奇妙な構文である。「沙門果経」の記述及びTattha chinditamāriteti chindite ca mārite ca. Hatajānīsūti pothane ca dhanajānīsu ca.という『註』の説明を踏まえて意訳した。  
     ・chidの過去分詞はchinnaの筈である。  
                       
                       
                       
    111-7.                
     Na pāpaṃ samanupassati, puññaṃ vā pana attano;  
      語根 品詞 語基 意味  
      Na    不変 ない  
      pāpaṃ    名形 a  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      samanupassati,  saṃ-anu-paś 見る、みなす、考える  
      語根 品詞 語基 意味  
      puññaṃ    a 福徳、功徳  
          不変 あるいは  
      pana    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      attano;    an 自己、我  
    訳文                
     ♪悪を、またあるいは自己の功徳を認めない。  
                       
                       
                       
    111-8.                
     Sa ve vissāsamācikkhi, satthā arahati mānana’’nti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Sa    代的 それ、彼  
      ve    不変 じつに  
      vissāsam  vi-śvas a 信頼、親厚  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ācikkhi,  ā-khyā 強 告げる、述べる、宣説する  
      語根 品詞 語基 意味  
      satthā  śās ar  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      arahati  arh 値する  
      語根 品詞 語基 意味  
      mānana’’n    a 尊敬、敬意  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ♪彼は信頼〔しうること〕を述べた。師は敬意に相応しい」と。  
                       
                       
                       
    111-9.                
     Atha kho sahali devaputto makkhaliṃ gosālaṃ ārabbha bhagavato santike imaṃ gāthaṃ abhāsi –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また、そこに  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      sahali    i 神名、サハリ  
      devaputto makkhaliṃ gosālaṃ ārabbha bhagavato santike imaṃ gāthaṃ abhāsi – (111-5.)  
      makkhaliṃ    i 人名、マッカリ  
      gosālaṃ    a 人名、ゴーサーラ  
    訳文                
     そこでサハリ天子は、マッカリ・ゴーサーラに関し、世尊の面前でこの偈を発した。  
                       
                       
                       
    111-10.                
     ‘‘Tapojigucchāya susaṃvutatto,  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Tapo  tap as 男中 苦行  
      jigucchāya  gup ā 厭離、忌避  
      susaṃvuta  su-saṃ-vṛ 過分 a 有(持) よく防護、抑制された  
      atto,    a 自分  
    訳文                
     「♪苦行と厭離によって自己をよく防護し、  
                       
                       
                       
    111-11.                
     Vācaṃ pahāya kalahaṃ janena;  
      語根 品詞 語基 意味  
      Vācaṃ  vac ā 言葉、語  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pahāya  pra-hā 捨断する  
      語根 品詞 語基 意味  
      kalahaṃ    名(形) a 男→女 争論、闘争、不和  
      janena;    a  
    訳文                
     ♪人との不和の言葉を捨て、  
    メモ                
     ・kalahaṃを形容詞化したものとみた。「言葉」と「不和」を別とみるなら、次文の「真実を語る」と合致しなくなるからである。  
                       
                       
                       
    111-12.                
     Samosavajjā virato saccavādī,  
      語根 品詞 語基 意味  
      Samosa    a 偽りある  
      vajjā  vad 未分 a 言われるべき、所言、語  
      virato  prati-vi-ram 過分 a 離れた  
      sacca    a 依(属) 真実、真理、諦  
      vādī,  vad in 説、語、論ある  
    訳文                
     ♪偽りある語を離れて、真実を語る者となる。  
                       
                       
                       
    111-13.                
     Na hi nūna tādisaṃ karoti [na ha nuna tādī pakaroti (sī. syā. kaṃ.)] pāpa’’nti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Na    不変 ない  
      hi    不変 じつに、なぜなら  
      nūna    不変 たしかに  
      tādisaṃ    a 副対 その如き  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      karoti  kṛ なす  
      語根 品詞 語基 意味  
      pāpa’’n    名形 a  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ♪そのように、彼は悪をなさない」と。  
    メモ                
     ・マッカリはしばしば「無因論者」などと言われるが、この偈はその思想にそぐわないようにも思われる。  
                       
                       
                       
    111-14.                
     Atha kho nīko devaputto nigaṇṭhaṃ nāṭaputtaṃ [nāthaputtaṃ (sī.)] ārabbha bhagavato santike imaṃ gāthaṃ abhāsi –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha kho nīko devaputto nigaṇṭhaṃ nāṭaputtaṃ ārabbha bhagavato santike imaṃ gāthaṃ abhāsi – (111-9.)  
      nīko    a 神名、ニーカ  
      nigaṇṭhaṃ    a 人名、ニガンタ、ジャイナ教徒  
      nāṭaputtaṃ    a 人名、ナータプッタ  
    訳文                
     そこでニーカ天子は、ニガンタ・ナータプッタに関し、世尊の面前でこの偈を発した。  
                       
                       
                       
    111-15.                
     ‘‘Jegucchī nipako bhikkhu, cātuyāmasusaṃvuto;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Jegucchī  gup 意 in 嫌悪する、嫌悪ある  
      nipako    名形 a 賢明な、慎重な  
      bhikkhu,  bhikṣ u 比丘  
      cātu     
      yāma  yam a 有(持) 禁制、夜分  
      susaṃvuto;  su-saṃ-vṛ 過分 a よく防護、抑制された  
    訳文                
     「♪比丘は厭離し、賢明に、四部分をよく防護し、  
                       
                       
                       
    111-16.                
     Diṭṭhaṃ sutañca ācikkhaṃ, na hi nūna kibbisī siyā’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Diṭṭhaṃ  dṛś 過分 a 見られた、所見  
      sutañ  śru 名過分 a 所聞、聞かれた  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      ācikkhaṃ,  ā-khyā 強 現分 ant 告げる、述べる、宣説する  
      na    不変 ない  
      hi    不変 じつに、なぜなら  
      nūna    不変 たしかに  
      kibbisī    in 罪垢ある、罪過ある  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      siyā’’  as ある、なる  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ♪見たこと、聞いたこと〔のみ〕を説く。彼が罪過ある者となろうはずもない」と。  
                       
                       
                       
    111-17.                
     Atha kho ākoṭako devaputto nānātitthiye ārabbha bhagavato santike imaṃ gāthaṃ abhāsi –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha kho ākoṭako devaputto nānātitthiye ārabbha bhagavato santike imaṃ gāthaṃ abhāsi – (111-9.)  
      ākoṭako    a 神名、アーコータカ  
      nānā    不変 種々の  
      titthiye    a 外道、異学  
    訳文                
     そこでアーコータカ天子は、種々の異学に関し、世尊の面前でこの偈を発した。  
                       
                       
                       
    111-18.                
     ‘‘Pakudhako kātiyāno nigaṇṭho,  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Pakudhako    a 人名、パクダカ  
      kātiyāno    a 人名、カーティヤーナ  
      nigaṇṭho,    a 人名、ニガンタ、ジャイナ教徒  
    訳文                
     「♪パクダカ・カーティヤーナ、ニガンタ、  
                       
                       
                       
    111-19.                
     Ye cāpime makkhalipūraṇāse;  
      語根 品詞 語基 意味  
      Ye    代的 (関係代名詞)  
          不変 と、また、そして、しかし  
      pi    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      ime    代的 これら  
      makkhali    i 人名、マッカリ  
      pūraṇāse;    a 人名、プーラナ  
    訳文                
     ♪またマッカリ、プーラナたちといった彼らは、  
                       
                       
                       
    111-20.                
     Gaṇassa satthāro sāmaññappattā,  
      語根 品詞 語基 意味  
      Gaṇassa    a 会衆  
      satthāro  śās ar  
      sāmañña    a 依(対) 沙門法  
      pattā,  pra-āp 過分 a 得た、得達の  
    訳文                
     ♪会衆の師たちであり、沙門たることを得た者たちである。  
                       
                       
                       
    111-21.                
     Na hi nūna te sappurisehi dūre’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Na    不変 ない  
      hi    不変 じつに、なぜなら  
      nūna    不変 たしかに  
      te    代的 それら、彼ら  
      sappurisehi    a 善人、善士、正士  
      dūre’’    a 男中 遠い  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ♪彼らは善人たちより遠からず」と。  
                       
                       
                       
    111-22.                
     Atha kho vegabbhari devaputto ākoṭakaṃ devaputtaṃ gāthāya paccabhāsi –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また、そこに  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      vegabbhari    i 神名、ヴェーガッバリ  
      deva    a 依(属) 天、神、陛下  
      putto    a 息子  
      ākoṭakaṃ    a 神名、アーコータカ  
      deva    a 依(属) 天、神、陛下  
      puttaṃ    a 息子  
      gāthāya    ā  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      paccabhāsi –  prati-bhāṣ 応答する、答弁する  
    訳文                
     そこでヴェーガッバリ天子は、アーコータカ天子に対し、偈をもって応答した。  
                       
                       
                       
    111-23.                
     ‘‘Sahācaritena [sahāravenāpi (ka. sī.), sagāravenāpi (pī.)] chavo sigālo [siṅgālo (ka.)],  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Saha    不変 〜と共に  
      ācaritena  ā-car 過分 a 行われた  
      chavo    a 卑しい、哀れな  
      sigālo,    a ジャッカル、野干  
    訳文                
     「♪行いによろうと、ジャッカルは卑しい。  
    メモ                
     ・『南伝』は「吼ゆるも」、『原始』は「重んぜられていても」、『パーリ』は「行動もろとも」と諸訳も解釈が定まらない。  
     ・(追記)はじめsahasataと見間違え、「百の行いによって〔も〕」としていたため、sahācaritenāti saha caritamattena. と述べる『註』も参照して訳を改めてみた。しかしこれではやはり、「出自でなく行為によって清浄となる」という仏教教義とは相容れないようにも感ぜられる。要検討。  
                       
                       
                       
    111-24.                
     Na kotthuko sīhasamo kadāci;  
      語根 品詞 語基 意味  
      Na    不変 ない  
      kotthuko    a ジャッカル、野干  
      sīha    a 依(属) 獅子  
      samo    a 同じ、等しい  
      kadāci;    不変 いつか  
    訳文                
     いつになろうと、ジャッカルが獅子と等しくなることはない。  
                       
                       
                       
    111-25.                
     Naggo musāvādī gaṇassa satthā,  
      語根 品詞 語基 意味  
      Naggo    a 裸の  
      musā    不変 虚妄に、偽って  
      vādī  vad in 説、語、論ある →妄語の  
      gaṇassa    a 会衆  
      satthā,  śās ar  
    訳文                
     ♪裸形の、妄語をなす衆師、  
                       
                       
                       
    111-26.                
     Saṅkassarācāro na sataṃ sarikkho’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Saṅkassara    a 有(持) 疑念をおこさせる、邪悪の  
      ācāro  ā-car a  
      na    不変 ない  
      sataṃ  as 現分 ant ある、なる、善き  
      sarikkho’’    a 同様、類似  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ♪疑わしき行者は、善人たちの同類ではない」と。  
                       
                       
                       
    111-27.                
     Atha kho māro pāpimā begabbhariṃ devaputtaṃ anvāvisitvā bhagavato santike imaṃ gāthaṃ abhāsi –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha kho māro pāpimā begabbhariṃ devaputtaṃ anvāvisitvā bhagavato santike imaṃ gāthaṃ abhāsi – (111-9.)  
      māro  mṛ a 魔、死魔  
      pāpimā    ant 悪しき者  
      begabbhariṃ    i 神名、ベーガッバリ  
      deva    a 依(属) 天、神、陛下  
      puttaṃ    a 息子  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      anvāvisitvā  anu-ā-viś 入る、魅入る、訪ねる  
    訳文                
     ときに、悪魔がベーガッバリ天子へ憑依し、世尊の面前でこの偈を発した。  
                       
                       
                       
    111-28.                
     ‘‘Tapojigucchāya āyuttā, pālayaṃ pavivekiyaṃ;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Tapo  tap as 男中 苦行  
      jigucchāya  gup ā 厭離、忌避  
      āyuttā,  ā-yuj 過分 a 軛された、熱心な  
      pālayaṃ   使 現分 ant 守る  
      pavivekiyaṃ;  pra-vi-vic a 遠離の  
    訳文                
     「♪苦行と厭離に熱心となり、遠離を守る者たちは、  
    メモ                
     ・『註』はpālayaṃpālayantāと換言している。  
                       
                       
                       
    111-29.                
     Rūpe ca ye niviṭṭhāse, devalokābhinandino;  
      語根 品詞 語基 意味  
      Rūpe    a 中(男) 色、物質、肉体、形相  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      ye    代的 (関係代名詞)  
      niviṭṭhāse,  ni-viś 過分 a 住立した、執着した  
      deva    a 依(属) 天、神、陛下  
      loka    a 依(対) 世界、世間  
      abhinandino;  abhi-nand in 歓喜する  
    訳文                
     ♪諸々の〈色〉に執着し、天界を歓喜する者たちである。  
                       
                       
                       
    111-30.                
     Te ve sammānusāsanti, paralokāya mātiyā’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Te    代的 それら、彼ら  
      ve    不変 じつに  
      sammā    不変 正しい、正しく  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      anusāsanti,  anu-śās 教誡する、訓誡する  
      語根 品詞 語基 意味  
      para    代的 他の  
      lokāya    a 世界、世間  
      mātiyā’’  mṛ 名未分 中(男) 死すべき、人間  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ♪かの人々は、他界のため、正しく教誡する」と。  
                       
                       
                       
    111-31.                
     Atha kho bhagavā, ‘māro ayaṃ pāpimā’ iti viditvā, māraṃ pāpimantaṃ gāthāya paccabhāsi –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また、そこに  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      bhagavā,    ant 世尊  
      ‘māro  mṛ a 魔、死魔  
      ayaṃ    代的 これ  
      pāpimā’    ant 悪しき者  
      iti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      viditvā,  vid 知る  
      語根 品詞 語基 意味  
      māraṃ  mṛ a 魔、悪魔  
      pāpimantaṃ    ant 悪しき者  
      gāthāya    ā  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      paccabhāsi –  prati-bhāṣ 応答する、答弁する  
    訳文                
     そこで世尊は「これは悪魔である」と知り、悪魔へ偈をもって応答された。  
                       
                       
                       
    111-32.                
     ‘‘Ye keci rūpā idha vā huraṃ vā,  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Ye    代的 (関係代名詞)  
      keci    代的 何らかの、何者であれ  
      rūpā    a 中(男) 色、物質、肉体、形相  
      idha    不変 ここに、この世で、いま、さて  
          不変 あるいは  
      huraṃ    不変 他界に、他世に  
      vā,    不変 あるいは  
    訳文                
     「♪何であれ、この世の、あるいはあの世の諸々の〈色〉、  
                       
                       
                       
    111-33.                
     Ye cantalikkhasmiṃ pabhāsavaṇṇā;  
      語根 品詞 語基 意味  
      Ye    代的 (関係代名詞)  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      antalikkhasmiṃ    a 空間、虚空  
      pabhāsa  pra-bhās a 光輝、美麗  
      vaṇṇā;    a 色、容色  
    訳文                
     ♪また虚空のうちの光輝や彩色、  
                       
                       
                       
    111-34.                
     Sabbeva te te namucippasatthā,  
      語根 品詞 語基 意味  
      Sabbe    名形 代的 中→男 すべて  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      te    代的 それら、彼ら  
      te    代的 それら、彼ら  
      namuci    i 依(属) 悪魔、ナムチ  
      pasatthā,  pra-śaṃs 過分 a 称讃された  
    訳文                
     ♪そのそれぞれはすべて、ナムチによって称讃され、  
                       
                       
                       
    111-35.                
     Āmisaṃva macchānaṃ vadhāya khittā’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Āmisaṃ    a 財、食、味、利益  
      iva    不変 ごとく  
      macchānaṃ    a  
      vadhāya    a 殺戮、殺害  
      khittā’’  kṣip 過分 a 投げられた  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ♪魚の殺戮のための餌の如く投げられたのである」と。  
                       
                       
                       
    111-36.                
     Atha kho māṇavagāmiyo devaputto bhagavantaṃ ārabbha bhagavato santike imā gāthāyo abhāsi –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha kho māṇavagāmiyo devaputto bhagavantaṃ ārabbha bhagavato santike imā gāthāyo abhāsi – (111-9.)  
      māṇavagāmiyo    a 神名、マーナヴァガーミヤ  
      bhagavantaṃ    ant 世尊  
      imā    代的 これら  
      gāthāyo    ā 偈、歌  
    訳文                
     そこでマーナヴァガーミヤ天子は、世尊に関し、世尊の面前でこれらの諸偈を発した。  
                       
                       
                       
    111-37.                
     ‘‘Vipulo rājagahīyānaṃ, giriseṭṭho pavuccati;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Vipulo    a 地名、ヴィプラ  
      rājagahīyānaṃ,    a ラージャガハの  
      giri    i 依(属)  
      seṭṭho    a 最上の、最勝の、殊勝の  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pavuccati;  pra-vac 受 いわれる  
    訳文                
     「♪ヴィプラはラージャガハの山のうちで最上と言われる。  
    メモ                
     ・rājagahīyānaṃの語については類推。  
                       
                       
                       
    111-38.                
     Seto himavataṃ seṭṭho, ādicco aghagāminaṃ.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Seto    a 地名、セータ  
      himavataṃ    ant 地名、ヒマヴァント  
      seṭṭho,    a 最上の、最勝の、殊勝の  
      ādicco    a 太陽  
      agha    as 依(処) 無蓋、空  
      gāminaṃ.  gam 名形 in 行く、導くもの  
    訳文                
     ♪ヒマヴァントのうちではセータが、虚空を行くもののうちでは太陽が最上である。  
    メモ                
     ・セータとは「白」の意で、『註』によればカイラス山のことをいったものである。  
                       
                       
                       
    111-39.                
     ‘‘Samuddo udadhinaṃ seṭṭho, nakkhattānañca candimā [nakkhattānaṃva candimā (ka.)];  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Samuddo    a  
      udadhinaṃ    i 海、海洋  
      seṭṭho,    a 最上の、最勝の、殊勝の  
      nakkhattānañ    a  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      candimā;    as, ā 男女  
    訳文                
     ♪海のうちでは大洋が、星のうちでは月が最上である。  
                       
                       
                       
    111-40.                
     Sadevakassa lokassa, buddho aggo pavuccatī’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Sadevakassa    a 天ある  
      lokassa,    a 世、世界、世間  
      buddho  budh 名過分 a 仏陀、覚者  
      aggo    a 最上、第一、首位  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pavuccatī’’  pra-vac 受 いわれる  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ♪天を含む世界のうちで、仏陀が最上と言われる」と。  
                       
                       
                       
     Nānātitthiyavaggo tatiyo.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Nānā    不変 種々の  
      titthiya    a 依(属) 外道、異学  
      vaggo    a 章、品  
      tatiyo.    a 第三の  
    訳文                
     〔『相応部』「有偈篇」「天子相応」〕第三〔品〕「種々異学品」〔おわり〕。  
                       
                       
                       
     Tassuddānaṃ –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Tassa    代的 それ、彼  
      uddānaṃ –  ud-dā a 摂頌  
    訳文                
     その摂頌は、  
                       
                       
                       
     Sivo khemo ca serī ca, ghaṭī jantu ca rohito;  
      語根 品詞 語基 意味  
      Sivo    a 神名、シヴァ  
      khemo    a 神名、ケーマ  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      serī    in 神名、セーリン  
      ca,    不変 と、また、そして、しかし  
      ghaṭī    ī 瓶、鉢  
      jantu    u 神名、ジャントゥ  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      rohito;    a 赤い  
    訳文                
     ♪「シヴァ〔経〕」、「ケーマ〔経〕」、「セーリン〔経〕」、「陶〔工経〕」、「ジャントゥ〔経〕」、「ローヒタ〔ッサ経〕」、  
                       
                       
                       
     Nando nandivisālo ca, susimo nānātitthiyena te dasāti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Nando  nand a 神名、ナンダ  
      nandivisālo  nand a 神名、ナンディヴィサーラ  
      ca,    不変 と、また、そして、しかし  
      susimo    a 神名、スシマ  
      nānā    不変 種々の  
      titthiyena    a 外道、異学  
      te    代的 それら、彼ら  
      dasā     
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ♪「ナンダ〔経〕」、「ナンディヴィサーラ〔経〕」、「スシマ〔経〕」、「種々異学〔徒経〕」、それら十である。  
                       
                       
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