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     6. Ariṭṭhasuttaṃ  
      語根 品詞 語基 意味  
      Ariṭṭha    a 依(属) 人名、アリッタ  
      suttaṃ  sīv a 経、糸  
    訳文                
     「アリッタ経」(『相応部』54-6  
                       
                       
                       
    982-1.                
     982. Sāvatthinidānaṃ.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Sāvatthi    ī 有(処) 地名、サーヴァッティー、舎衛城  
      nidānaṃ.    a 因縁、因由  
    訳文                
     サーヴァッティーでのことである。  
                       
                       
                       
    982-2.                
     Tatra kho bhagavā…pe…   
      語根 品詞 語基 意味  
      Tatra    不変 そこで、そこに、そのとき、そのなかで  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      bhagavā…pe…    ant 世尊  
    訳文                
     ときに世尊は……  
                       
                       
                       
    982-3.                
     etadavoca –   
      語根 品詞 語基 意味  
      etad    代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      avoca –  vac いう  
    訳文                
     ……こう仰った。  
                       
                       
                       
    982-4.                
     ‘‘bhāvetha no tumhe bhikkhave, ānāpānassati’’nti?   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ‘‘bhāvetha  bhū 使 修習する  
      語根 品詞 語基 意味  
      no    不変 ない、否/〜かどうか  
      tumhe    代的 あなたたち  
      bhikkhave,  bhikṣ u 比丘  
      ānāpāna  an, apa-an a 依(属) 出入息  
      sati’’n  smṛ i 念、憶念、正念  
      ti?    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「比丘たちよ、あなたがたは出入息念を修習しているでしょうか」と。  
                       
                       
                       
    982-5.                
     Evaṃ vutte āyasmā ariṭṭho bhagavantaṃ etadavoca –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Evaṃ    不変 このように、かくの如き  
      vutte  vac 受 過分 a いわれた  
      āyasmā    ant 尊者、具寿  
      ariṭṭho    a 人名、アリッタ  
      bhagavantaṃ    ant 世尊  
      etad    代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      avoca –  vac いう  
    訳文                
     そのようにいわれて、尊者アリッタは世尊へこういった。  
                       
                       
                       
    982-6.                
     ‘‘ahaṃ kho, bhante, bhāvemi ānāpānassati’’nti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘ahaṃ    代的  
      kho,    不変 じつに、たしかに  
      bhante,  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、大徳よ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      bhāvemi  bhū 使 修習する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ānāpāna  an, apa-an a 依(属) 出入息  
      sati’’n  smṛ i 念、憶念、正念  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「尊者よ、私は出入息念を修習しています」と。  
                       
                       
                       
    982-7.                
     ‘‘Yathā kathaṃ pana tvaṃ, ariṭṭha, bhāvesi ānāpānassati’’nti?   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Yathā    不変 〜のごとくに、〜のように  
      kathaṃ    不変 いかに、なぜに  
      pana    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      tvaṃ,    代的 あなた  
      ariṭṭha,    a 人名、アリッタ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      bhāvesi  bhū 使 修習する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ānāpāna  an, apa-an a 依(属) 出入息  
      sati’’n  smṛ i 念、憶念、正念  
      ti?    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「しからばアリッタよ、あなたはどのように出入息念を修習しているのでしょうか」  
                       
                       
                       
    982-8.                
     ‘‘Atītesu me, bhante, kāmesu kāmacchando pahīno, anāgatesu me kāmesu kāmacchando vigato, ajjhattabahiddhā [ajjhattaṃ bahiddhā (syā. kaṃ. pī. ka.)] ca me dhammesu paṭighasaññā suppaṭivinītā.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Atītesu  ati-i 名形 a 過去の、過ぎ去った  
      me,    代的  
      bhante,  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、大徳よ  
      kāmesu    a 男中 欲、欲楽  
      kāma    a 男中 依(属) 欲、欲楽  
      chando    a 欲、意欲、志欲 →欲貪  
      pahīno,  pra-hā 過分 a 捨断された  
      anāgatesu  an-ā-gam a 男中 未来の  
      me    代的  
      kāmesu    a 男中 欲、欲楽  
      kāma    a 男中 依(属) 欲、欲楽  
      chando    a 欲、意欲、志欲 →欲貪  
      vigato,  vi-gam 過分 a 去る、消失する、減少する  
      ajjhatta    a 自らの、内の  
      bahiddhā    不変 外に、外部に  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      me    代的  
      dhammesu  dhṛ a 男中  
      paṭigha  prati-han a 男中 瞋、障碍、有対  
      saññā  saṃ-jñā ā 想、想念、概念、表象  
      suppaṭivinītā.  su-prati-vi-nī 過分 a よく駆逐された、よく征服された  
    訳文                
     「尊者よ、私の過去の諸欲に対する欲貪は捨断され、私の未来の欲貪に対する貪欲は消失し、私の内外の諸法に対する有対想はよく取り除かれています。  
                       
                       
                       
    982-9.                
     So [sohaṃ (?)] satova assasissāmi, satova passasissāmi.   
      語根 品詞 語基 意味  
      So    代的 それ、彼  
      sato  smṛ 過分 a 憶念した、念の、念のある、具念、正念の  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      assasissāmi,  ā-śvas 出息する、呼吸する、蘇生する  
      語根 品詞 語基 意味  
      sato  smṛ 過分 a 憶念した、念の、念のある、具念、正念の  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      passasissāmi.  pra-śvas 入息する、出息する  
    訳文                
     その私は、念をそなえて出息し、念をそなえて入息することでしょう。  
                       
                       
                       
    982-10.                
     Evaṃ khvāhaṃ, bhante, bhāvemi ānāpānassati’’nti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Evaṃ    不変 このように、かくの如き  
      khvāhaṃ, bhante, bhāvemi ānāpānassati’’nti. (982-6.)  
    訳文                
     尊者よ、私はそのように出入息念を修習しています」  
                       
                       
                       
    982-11.                
     ‘‘‘Atthesā, ariṭṭha, ānāpānassati, nesā natthī’ti vadāmi.   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ‘‘‘Atthi  as ある、なる  
      語根 品詞 語基 意味  
      esā,    代的 これ  
      ariṭṭha,    a 人名、アリッタ  
      ānāpāna  an, apa-an a 依(属) 出入息  
      sati,  smṛ i 念、憶念、正念  
      na    不変 ない  
      esā    代的 これ  
      na    不変 ない  
      atthī’  同上  
      ti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      vadāmi.  vad 言う  
    訳文                
     「アリッタよ、それは出入息念ではあります。『それは出入息念ではない』とは、私は言いません。  
                       
                       
                       
    982-12.                
     Api ca, ariṭṭha, yathā ānāpānassati vitthārena paripuṇṇā hoti taṃ suṇāhi, sādhukaṃ manasi karohi;   
      語根 品詞 語基 意味  
      Api    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      ca,    不変 と、また、そして、しかし  
      ariṭṭha,    a 人名、アリッタ  
      yathā    不変 〜のごとくに、〜のように  
      ānāpāna  an, apa-an a 依(属) 出入息  
      sati  smṛ i 念、憶念、正念  
      vitthārena  vi-stṛ 使 a 副具 広説すれば、詳細には  
      paripuṇṇā  pari-pṝ 過分 a 完全となった、完成した  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      hoti  bhū ある、なる、存在する  
      語根 品詞 語基 意味  
      taṃ    代的 それ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      suṇāhi,  śru 聞く  
      語根 品詞 語基 意味  
      sādhukaṃ    a 副対 よい、十分に  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      manasi karohi;  man, kṛ 注意する、作意する  
    訳文                
     しかしアリッタよ、出入息念が詳説されて完全なものとなるような〔説明があります〕。それを聞き、よく作意して下さい。  
    メモ                
     ・『原始』は「呼吸による思念が広く満たされたものとなるよう」としている。しかしここではvitthārenaの通例から、上記のように出入息念そのものではなく、その説明が(アリッタのそれと比較して)完全になると、いうニュアンスで補訳した。  
                       
                       
                       
    982-13.                
     bhāsissāmī’’ti.   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      bhāsissāmī’’  bhāṣ 話す、語る  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     私は語ることにしましょう」  
                       
                       
                       
    982-14.                
     ‘‘Evaṃ, bhante’’ti kho āyasmā ariṭṭho bhagavato paccassosi.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Evaṃ,    不変 このように、かくの如き  
      bhante’’  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、大徳よ  
      ti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      āyasmā    ant 尊者、具寿  
      ariṭṭho    a 人名、アリッタ  
      bhagavato    ant 世尊  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      paccassosi.  prati-śru 応諾する、同意する、応える  
    訳文                
     「そのように、尊者よ」と尊者アリッタは世尊へ応えた。  
                       
                       
                       
    982-15.                
     Bhagavā etadavoca –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Bhagavā    ant 世尊  
      etad    代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      avoca –  vac いう  
    訳文                
     世尊はこう仰った。  
                       
                       
                       
    982-16.                
     ‘‘Kathañca, ariṭṭha, ānāpānassati vitthārena paripuṇṇā hoti?   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Kathañ    不変 いかに、なぜに  
      ca, ariṭṭha, ānāpānassati vitthārena paripuṇṇā hoti? (982-12.)  
    訳文                
     「ではアリッタよ、出入息念〔の説明〕は、いかに詳説されて完全なものとなるのでしょうか。  
                       
                       
                       
    982-17.                
     Idha, ariṭṭha, bhikkhu araññagato vā rukkhamūlagato vā suññāgāragato vā nisīdati pallaṅkaṃ ābhujitvā ujuṃ kāyaṃ paṇidhāya parimukhaṃ satiṃ upaṭṭhapetvā.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Idha,    不変 ここに、この世で、いま、さて  
      ariṭṭha,    a 人名、アリッタ  
      bhikkhu  bhikṣ u 比丘  
      arañña    a 依(対) 林野、空閑処  
      gato  gam 過分 a 行った  
          不変 あるいは  
      rukkha    a 依(属) 樹木  
      mūla    a 依(対) 根、根本  
      gato  gam 過分 a 行った  
          不変 あるいは  
      suñña    名形 a 空の、空  
      agāra    a 依(対)  
      gato  gam 過分 a 行った  
          不変 あるいは  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      nisīdati  ni-sad 坐る  
      語根 品詞 語基 意味  
      pallaṅkaṃ    a 椅子、寝台、跏趺  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ābhujitvā  ā-bhuj 組む、結ぶ、曲げる  
      語根 品詞 語基 意味  
      ujuṃ    不変 正しい、まっすぐ  
      kāyaṃ    a  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      paṇidhāya  pra-ni-dhā 定置する、思考する、願う  
      語根 品詞 語基 意味  
      parimukhaṃ    a 副対 面前の、前に  
      satiṃ  smṛ i  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upaṭṭhapetvā.  upa-sthā 使 起こす  
    訳文                
     アリッタよ、ここに比丘がいる〔とします〕。かれは林野へ行き、樹の根へ行き、あるいは空き家へ行って、身をまっすぐに定置し、前面に念を起こして結跏趺坐します。  
                       
                       
                       
    982-18.                
     So satova assasati, satova passasati.   
      語根 品詞 語基 意味  
      So    代的 それ、彼  
      sato  smṛ 過分 a 具念の、憶念した、正念の  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      assasati,  ā-śvas 出息する、呼吸する、蘇生する  
      語根 品詞 語基 意味  
      sato  smṛ 過分 a 具念の、憶念した、正念の  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      passasati.  pra-śvas 入息する、出息する  
    訳文                
     彼は、念をそなえて出息し、念をそなえて入息します。  
                       
                       
                       
    982-19.                
     Dīghaṃ vā assasanto ‘dīghaṃ assasāmī’ti pajānāti…pe…   
      語根 品詞 語基 意味  
      Dīghaṃ    a 副対 長く  
          不変 あるいは  
      assasanto  ā-śvas 現分 ant 出息する  
      ‘dīghaṃ    a 副対 長く  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      assasāmī’  ā-śvas 出息する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pajānāti…pe…  pra-jñā 知る、了知する  
    訳文                
     長く出息しながら『私は長く出息している』と了知し……  
                       
                       
                       
    982-20.                
     ‘paṭinissaggānupassī assasissāmī’ti sikkhati, ‘paṭinissaggānupassī passasissāmī’ti sikkhati.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘paṭinissagga  prati-ni-sṛj a 依(対) 捨遺、定棄  
      anupassī  anu-paś in 随観する  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      assasissāmī’  ā-śvas 出息する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      sikkhati,  śak 意 学ぶ、学得する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘paṭinissagga  prati-ni-sṛj a 依(対) 捨遺、定棄  
      anupassī  anu-paś in 随観する  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      passasissāmī’  pra-śvas 入息する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      sikkhati.  同上  
    訳文                
     ……『私は捨棄を随観して出息しよう』と修練し、『私は捨棄を随観して入息しよう』と修練します。  
                       
                       
                       
    982-21.                
     Evaṃ kho, ariṭṭha, ānāpānassati vitthārena paripuṇṇā hotī’’ti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Evaṃ    不変 このように、かくの如き  
      kho,    不変 じつに、たしかに  
      ariṭṭha, ānāpānassati vitthārena paripuṇṇā hotī’’ (982-12.)  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     アリッタよ、出入息念〔の説明〕は、このように詳説されて完全なものとなるのです」  
                       
                       
                       
     Chaṭṭhaṃ.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Chaṭṭhaṃ.    a 第六の  
    訳文                
     第六〔経〕。  
                       
                       
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