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     Oṭṭhaddhalicchavīvatthu  
      語根 品詞 語基 意味  
      Oṭṭhaddha   a 人名、オッタッダ  
      licchavī   i 依(属) 種族名、リッチャヴィ  
      vatthu vas us 事、対象、理由、根拠  
    訳文                
     【リッチャヴィ族のオッタッダのこと】  
    メモ                
     ・ヴェーサーリーを首都とするヴァッジー国の種族がリッチャヴィ族とのこと。『註』は、オッタッダをその王としている。  
     ・リッチャヴィは-i語基名詞だが、licchavīとなっているのは連声及び種族名としては複数形を取るということと解したが、その理解で良いかどうか。  
                       
                       
                       
    361-1.                
     361. Oṭṭhaddhopi licchavī mahatiyā licchavīparisāya saddhiṃ yena mahāvanaṃ kūṭāgārasālā yenāyasmā nāgito tenupasaṅkami;   
      語根 品詞 語基 意味  
      Oṭṭhaddho    a 人名、オッタッダ  
      pi    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      licchavī    i 種族名、リッチャヴィ  
      mahatiyā    ī 大きい  
      licchavī    i 依(属) 種族名、リッチャヴィ  
      parisāya    ā 衆、会衆  
      saddhiṃ    不変 共に、一緒に(具格支配)  
      yena    代的 (関係代名詞、〜tenaで「〜の所に」)  
      mahā    ant  
      vanaṃ    a 森、林  
      kūṭa    a 男中 有(属) 尖頂、屋頂、楼、山頂  
      agāra   a 家、舎、家屋、俗家 →二階屋、重閣  
      sālā    ā 会堂、講堂、家屋、小屋  
      yena    代的 (関係代名詞、〜tenaで「〜の所に」)  
      ayasmā    ant 尊者、具寿  
      nāgito    a 人名、ナーギタ  
      tena    代的 それ、彼、それによって、それゆえ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upasaṅkami;  upa-saṃ-kram 近づいた  
    訳文                
     リッチャヴィ族のオッタッダもまた、リッチャヴィ族の大会衆とともに、大きな森にある二階屋の講堂の尊者ナーギタへ近づいた。  
                       
                       
                       
    361-2.                
     upasaṅkamitvā āyasmantaṃ nāgitaṃ abhivādetvā ekamantaṃ aṭṭhāsi.   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upasaṅkamitvā  upa-saṃ-kram 近づく  
      語根 品詞 語基 意味  
      āyasmantaṃ    ant 尊者、具寿  
      nāgitaṃ    a 人名、ナーギタ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      abhivādetvā  abhi-vad 使 敬礼する、礼拝する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ekamantaṃ    不変 一方に  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      aṭṭhāsi.  sthā 立つ  
    訳文                
     近づいて、尊者ナーギタへ礼拝し、いっぽうへ立った。  
                       
                       
                       
    361-3.                
     Ekamantaṃ ṭhito kho oṭṭhaddhopi licchavī āyasmantaṃ nāgitaṃ etadavoca –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Ekamantaṃ    不変 一方に  
      ṭhito  sthā 過分 a 立った  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      oṭṭhaddho    a 人名、オッタッダ  
      pi    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      licchavī    i 種族名、リッチャヴィ  
      āyasmantaṃ    ant 尊者、具寿  
      nāgitaṃ    a 人名、ナーギタ  
      etad    代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      avoca –  vac いう  
    訳文                
     じつに、いっぽうへ立ったリッチャヴィ族のオッタッダもまた、尊者ナーギタへこういった。  
                       
                       
                       
    361-4.                
     ‘‘kahaṃ nu kho, bhante nāgita, etarahi so bhagavā viharati arahaṃ sammāsambuddho, dassanakāmā hi mayaṃ taṃ bhagavantaṃ arahantaṃ sammāsambuddha’’nti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘kahaṃ    不変 どこに  
      nu    不変 いったい、たぶん、〜かどうか、〜ではないか  
      kho,    不変 じつに、たしかに  
      bhante    ant 大徳よ  
      nāgita,    a 人名、ナーギタ  
      etarahi    不変 いま、現在  
      so    代的 それ、彼  
      bhagavā    ant 世尊  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      viharati  vi-hṛ 住する  
      語根 品詞 語基 意味  
      arahaṃ  arh 名現分 ant 阿羅漢、応供  
      sammā    不変 正しい、正しく  
      sambuddho,  saṃ-budh 名過分 a 等覚者  
      dassana  dṛś a 有(属) 見、見ること  
      kāmā    a 男中  
      hi    不変 じつに、なぜなら  
      mayaṃ    代的 私たち  
      taṃ    代的 それ、彼  
      bhagavantaṃ  bhū 名現分 ant(特) 尊師、尊者  
      arahantaṃ  arh 名現分 ant 阿羅漢、応供  
      sammā    不変 正しい、正しく  
      sambuddha’’n  saṃ-budh 名過分 a 等覚者  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「尊者ナーギタよ、いま、阿羅漢にして正等覚者たる、かの尊者ゴータマは、一体どこに住しておられるか。なんとなれば我々は、阿羅漢にして正等覚者たる、かの尊者ゴータマへまみえることを望んでいるのです」と。  
                       
                       
                       
    361-5.                
     ‘‘Akālo kho, mahāli, bhagavantaṃ dassanāya, paṭisallīno bhagavā’’ti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Akālo    a 非時  
      kho,    不変 じつに、たしかに  
      mahāli,    i 人名、マハーリ  
      bhagavantaṃ    ant 世尊  
      dassanāya,  dṛś a 見、見ること  
      paṭisallīno  prati-saṃ-lī 過分 a 宴坐した、独坐した、禅思の、独居の  
      bhagavā’’    ant 世尊  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「マハーリよ、いまは世尊にまみえるための時ではありません。世尊は独座しておられます」  
    メモ                
     ・マハーリはオッタッダの「根本の名」mūlanāmaと『註』はいう。氏族名の類か。あるいはオッタッダとはいわゆる「兎唇」のことであるから、これはあだ名の類であって、マハーリが本名ということであろうか。  
                       
                       
                       
    361-6.                
     Oṭṭhaddhopi licchavī tattheva ekamantaṃ nisīdi –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Oṭṭhaddho    a 人名、オッタッダ  
      pi    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      licchavī    i 種族名、リッチャヴィ  
      tattha    不変 そこで、そこに、そのとき、そのなかで  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      ekamantaṃ    不変 一方に  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      nisīdi –  ni-sad 坐る  
    訳文                
     リッチャヴィ族のオッタッダもまた、そこでいっぽうに坐った。  
                       
                       
                       
    361-7.                
     ‘‘disvāva ahaṃ taṃ bhagavantaṃ gamissāmi arahantaṃ sammāsambuddha’’nti.  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ‘‘disvā  dṛś 見る  
      語根 品詞 語基 意味  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      ahaṃ    代的  
      taṃ    代的 それ、彼  
      bhagavantaṃ    ant 世尊  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      gamissāmi  gam 行く  
      語根 品詞 語基 意味  
      arahantaṃ  arh 名現分 ant 阿羅漢、応供  
      sammā    不変 正しい、正しく  
      sambuddha’’n  saṃ-budh 名過分 a 等覚者  
      ti.   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「じつに私は、阿羅漢にして正等覚者たる、かの世尊へまみえてから行くとしよう」といって。  
                       
                       
                       
    362-1.                
     362. Atha kho sīho samaṇuddeso yenāyasmā nāgito tenupasaṅkami;   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また、そこに  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      sīho    a 人名、シーハ  
      samaṇa  śram a 有(与) 沙門  
      uddeso  ud-diś a 説示、総説、説戒、誦経、素姓、境遇 →沙弥  
      yena    代的 (関係代名詞、〜tenaで「〜の所に」)  
      ayasmā    ant 尊者、具寿  
      nāgito    a 人名、ナーギタ  
      tena    代的 それ、彼、それによって、それゆえ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upasaṅkami;  upa-saṃ-kram 近づいた  
    訳文                
     ときにシーハ沙弥が、尊者ナーギタの所へ近づいた。  
                       
                       
                       
    362-2.                
     upasaṅkamitvā āyasmantaṃ nāgitaṃ abhivādetvā ekamantaṃ aṭṭhāsi.   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upasaṅkamitvā  upa-saṃ-kram 近づく  
      語根 品詞 語基 意味  
      āyasmantaṃ    ant 尊者、具寿  
      nāgitaṃ    a 人名、ナーギタ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      abhivādetvā  abhi-vad 使 敬礼する、礼拝する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ekamantaṃ    不変 一方に  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      aṭṭhāsi.  sthā 立つ  
    訳文                
     近づいて、尊者ナーギタへ礼拝し、いっぽうへ立った。  
                       
                       
                       
    362-3.                
     Ekamantaṃ ṭhito kho sīho samaṇuddeso āyasmantaṃ nāgitaṃ etadavoca –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Ekamantaṃ    不変 一方に  
      ṭhito  sthā 過分 a 立った  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      sīho    a 人名、シーハ  
      samaṇa  śram a 有(与) 沙門  
      uddeso  ud-diś a 説示、総説、説戒、誦経、素姓、境遇 →沙弥  
      āyasmantaṃ    ant 尊者、具寿  
      nāgitaṃ    a 人名、ナーギタ  
      etad    代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      avoca –  vac いう  
    訳文                
     じつにいっぽうへ立って、シーハ沙弥は尊者ナーギタへこういった。  
                       
                       
                       
    362-4.                
     ‘‘ete, bhante kassapa, sambahulā kosalakā ca brāhmaṇadūtā māgadhakā ca brāhmaṇadūtā idhūpasaṅkantā bhagavantaṃ dassanāya;   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘ete,    代的 これら、彼ら  
      bhante    ant 大徳よ  
      kassapa,    a 人名、カッサパ  
      sambahulā    a 多くの、衆多の  
      kosalakā    a コーサラ国の  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      brāhmaṇa  bṛh a 依(属) 婆羅門  
      dūtā    a 使者  
      māgadhakā    a マガダ国の  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      brāhmaṇa  bṛh a 依(属) 婆羅門  
      dūtā    a 使者  
      idha    不変 ここに、この世で、いま、さて  
      upasaṅkantā  upa-saṃ-kram 過分 a 近づいた  
      bhagavantaṃ    ant 世尊  
      dassanāya;  dṛś a 見、見ること  
    訳文                
     「尊者カッサパよ、かの多くのコーサラ国の婆羅門の使者たちとマガダ国の婆羅門の使者たちは、世尊にまみえるため、ここにやってきました。  
    メモ                
     ・カッサパはナーギタの姓gottaであると『註』はいう。  
                       
                       
                       
    362-5.                
     oṭṭhaddhopi licchavī mahatiyā licchavīparisāya saddhiṃ idhūpasaṅkanto bhagavantaṃ dassanāya, sādhu, bhante kassapa, labhataṃ esā janatā bhagavantaṃ dassanāyā’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      oṭṭhaddhopi licchavī mahatiyā licchavīparisāya saddhiṃ (361-1.)  
      idha    不変 ここに、この世で、いま、さて  
      upasaṅkanto  upa-saṃ-kram 過分 a 近づいた  
      bhagavantaṃ    ant 世尊  
      dassanāya,  dṛś a 見、見ること  
      sādhu,    不変 よきかな、なにとぞ  
      bhante    ant 大徳よ  
      kassapa,    a 人名、カッサパ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      labhataṃ  labh 得る  
      語根 品詞 語基 意味  
      esā    代的 これ、彼女  
      janatā    ā 人々、群衆  
      bhagavantaṃ    ant 世尊  
      dassanāyā’’  dṛś a 見、見ること  
      ti.   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     リッチャヴィ族のオッタッダもまた、リッチャヴィ族の大会衆とともに、世尊にまみえるため、ここにやってきました。尊者カッサパよ、なにとぞ、これらの人々が世尊にまみえるための〔機会を〕得られますよう」と。  
                       
                       
                       
    362-6.                
     ‘‘Tena hi, sīha, tvaññeva bhagavato ārocehī’’ti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Tena    代的 それ、彼、それによって、それゆえ  
      hi,    不変 じつに、なぜなら(tena hiで「しからば」)  
      sīha,    a 人名、シーハ  
      tvaññ    代的 あなた  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      bhagavato    ant 世尊  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ārocehī’’  ā-ruc 使 告げる、述べる、話す  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「しからばシーハ、まさにあなたが、世尊へお告げなさい」  
                       
                       
                       
    362-7.                
     ‘‘Evaṃ, bhante’’ti kho sīho samaṇuddeso āyasmato nāgitassa paṭissutvā yena bhagavā tenupasaṅkami;   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Evaṃ,    不変 このように、かくの如き  
      bhante’’  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、大徳よ  
      ti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      sīho    a 人名、シーハ  
      samaṇa  śram a 有(与) 沙門  
      uddeso  ud-diś a 説示、総説、説戒、誦経、素姓、境遇 →沙弥  
      āyasmato    ant 尊者、具寿  
      nāgitassa    a 人名、ナーギタ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      paṭissutvā  prati-śru 同意する、応諾する、答える  
      語根 品詞 語基 意味  
      yena    代的 (関係代名詞、〜tenaで「〜の所に」)  
      bhagavā    ant 世尊  
      tena    代的 それ、彼、それによって、それゆえ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upasaṅkami;  upa-saṃ-kram 近づいた  
    訳文                
     「そのように、尊者よ」と、じつにシーハ沙弥は尊者ナーギタへ応え、世尊の所へ近づいた。  
                       
                       
                       
    362-8.                
     upasaṅkamitvā bhagavantaṃ abhivādetvā ekamantaṃ aṭṭhāsi.   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upasaṅkamitvā  upa-saṃ-kram 近づく  
      語根 品詞 語基 意味  
      bhagavantaṃ    ant 世尊  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      abhivādetvā  abhi-vad 使 敬礼する、礼拝する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ekamantaṃ    不変 一方に  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      aṭṭhāsi.  sthā 立つ  
    訳文                
     近づいて、世尊へ礼拝し、いっぽうへ立った。  
                       
                       
                       
    362-9.                
     Ekamantaṃ ṭhito kho sīho samaṇuddeso bhagavantaṃ etadavoca –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Ekamantaṃ    不変 一方に  
      ṭhito  sthā 過分 a 立った  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      sīho    a 人名、シーハ  
      samaṇa  śram a 有(与) 沙門  
      uddeso  ud-diś a 説示、総説、説戒、誦経、素姓、境遇 →沙弥  
      bhagavantaṃ    ant 世尊  
      etad    代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      avoca –  vac いう  
    訳文                
     いっぽうへ立って、じつにシーハ沙弥は世尊へこういった。  
                       
                       
                       
    362-10.                
     ‘‘ete, bhante, sambahulā kosalakā ca brāhmaṇadūtā māgadhakā ca brāhmaṇadūtā idhūpasaṅkantā bhagavantaṃ dassanāya, oṭṭhaddhopi licchavī mahatiyā licchavīparisāya saddhiṃ idhūpasaṅkanto bhagavantaṃ dassanāya.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘ete, bhante, sambahulā kosalakā ca brāhmaṇadūtā māgadhakā ca brāhmaṇadūtā idhūpasaṅkantā bhagavantaṃ dassanāya, (362-4.)  
      oṭṭhaddhopi licchavī mahatiyā licchavīparisāya saddhiṃ idhūpasaṅkanto bhagavantaṃ dassanāya. (362-5.)  
    訳文                
     「尊者よ、かの多くのコーサラ国の婆羅門の使者たちとマガダ国の婆羅門の使者たちが、世尊にまみえるため、ここにやってきました。リッチャヴィ族のオッタッダもまた、リッチャヴィ族の大会衆とともに、世尊にまみえるため、ここにやってきました。  
                       
                       
                       
    362-11.                
     Sādhu, bhante, labhataṃ esā janatā bhagavantaṃ dassanāyā’’ti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Sādhu, bhante, labhataṃ esā janatā bhagavantaṃ dassanāyā’’ti. (362-5.)  
    訳文                
     尊者よ、なにとぞ、これらの人々が世尊にまみえるための〔機会を〕得られますよう」と。  
                       
                       
                       
    362-12.                
     ‘‘Tena hi, sīha, vihārapacchāyāyaṃ āsanaṃ paññapehī’’ti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Tena    代的 それ、彼、それによって、それゆえ  
      hi,    不変 じつに、なぜなら(tena hiで「しからば」)  
      sīha,    a 人名、シーハ  
      vihāra  vi-hṛ a 依(属) 精舎、僧房  
      pacchāyāyaṃ    ā 日陰、木陰  
      āsanaṃ  ās a  
      語根 品詞 語基 意味  
      paññapehī’’  pra-jñā 使 知らしめる、告知する、施設する、用意する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「シーハよ、しからば、精舎の木陰に座を用意なさい」  
                       
                       
                       
    362-13.                
     ‘‘Evaṃ, bhante’’ti kho sīho samaṇuddeso bhagavato paṭissutvā vihārapacchāyāyaṃ āsanaṃ paññapesi.  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Evaṃ,    不変 このように、かくの如き  
      bhante’’  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、大徳よ  
      ti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      sīho    a 人名、シーハ  
      samaṇa  śram a 有(与) 沙門  
      uddeso  ud-diś a 説示、総説、説戒、誦経、素姓、境遇 →沙弥  
      bhagavato    ant 世尊  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      paṭissutvā  prati-śru 同意する、応諾する、答える  
      語根 品詞 語基 意味  
      vihāra  vi-hṛ a 依(属) 精舎、僧房  
      pacchāyāyaṃ    ā 日陰、木陰  
      āsanaṃ  ās a  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      paññapesi. pra-jñā 使 知らしめる、告知する、施設する、用意する  
    訳文                
     「そのように、大徳よ」と、じつにシーハ沙弥は世尊へ応え、精舎の木陰に座を用意した。  
                       
                       
                       
    363-1.                
     363. Atha kho bhagavā vihārā nikkhamma vihārapacchāyāyaṃ paññatte āsane nisīdi.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また、そこに  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      bhagavā    ant 世尊  
      vihārā  vi-hṛ a 精舎、僧房  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      nikkhamma  nis-kram 出る、出離する、出家する  
      語根 品詞 語基 意味  
      vihāra  vi-hṛ a 依(属) 精舎、僧房  
      pacchāyāyaṃ    ā 日陰、木陰  
      paññatte  pra-jñā 使 過分 a 知らしめられた、告知された、施設された、用意された  
      āsane  ās a  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      nisīdi.  ni-sad 坐る  
    訳文                
     ときに世尊は、僧房を出て、精舎の木陰に用意された座へ坐られた。  
    メモ                
     ・『原始』、『パーリ』訳は『註』に従い、精舎自体の陰と解している。  
                       
                       
                       
    363-2.                
     Atha kho te kosalakā ca brāhmaṇadūtā māgadhakā ca brāhmaṇadūtā yena bhagavā tenupasaṅkamiṃsu;   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また、そこに  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      te    代的 それら、彼ら  
      kosalakā ca brāhmaṇadūtā māgadhakā ca brāhmaṇadūtā (362-4.)  
      yena    代的 (関係代名詞、〜tenaで「〜の所に」)  
      bhagavā    ant 世尊  
      tena    代的 それ、彼、それによって、それゆえ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upasaṅkamiṃsu;  upa-saṃ-kram 能反 近づいた  
    訳文                
     そこで彼らコーサラ国の婆羅門の使者たちとマガダ国の婆羅門の使者たちは世尊の所へ近づいた。  
                       
                       
                       
    363-3.                
     upasaṅkamitvā bhagavatā saddhiṃ sammodiṃsu.   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upasaṅkamitvā  upa-saṃ-kram 近づく  
      語根 品詞 語基 意味  
      bhagavatā    ant 世尊  
      saddhiṃ    不変 共に、一緒に(具格支配)  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      sammodiṃsu.  saṃ-mud 能反 喜ぶ、相喜ぶ、挨拶する  
    訳文                
     近づいて、世尊とともに挨拶した。  
                       
                       
                       
    363-4.                
     Sammodanīyaṃ kathaṃ sāraṇīyaṃ vītisāretvā ekamantaṃ nisīdiṃsu.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Sammodanīyaṃ  saṃ-mud 未分 a よろこばしい  
      kathaṃ    ā 話、説、論  
      sāraṇīyaṃ  saṃ-raj 未分 a 相慶慰すべき、喜ぶべき  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      vītisāretvā  vi-ati-sṛ 使 交わす、交換する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ekamantaṃ    不変 一方に  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      nisīdiṃsu.  ni-sad 坐る  
    訳文                
     喜ばしき慶賀の言葉を交わして、一方へ坐った。  
                       
                       
                       
    363-5.                
     Oṭṭhaddhopi licchavī mahatiyā licchavīparisāya saddhiṃ yena bhagavā tenupasaṅkami;   
      語根 品詞 語基 意味  
      Oṭṭhaddhopi licchavī mahatiyā licchavīparisāya saddhiṃ (361-1.)  
      yena    代的 (関係代名詞、〜tenaで「〜の所に」)  
      bhagavā    ant 世尊  
      tena    代的 それ、彼、それによって、それゆえ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upasaṅkami;  upa-saṃ-kram 近づいた  
    訳文                
     リッチャヴィ族のオッタッダもまた、リッチャヴィ族の大会衆とともに、世尊の所へ近づいた。  
                       
                       
                       
    363-6.                
     upasaṅkamitvā bhagavantaṃ abhivādetvā ekamantaṃ nisīdi.  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upasaṅkamitvā  upa-saṃ-kram 近づく  
      語根 品詞 語基 意味  
      bhagavantaṃ    ant 世尊  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      abhivādetvā  abhi-vad 使 敬礼する、礼拝する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ekamantaṃ    不変 一方に  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      nisīdi. ni-sad 坐る  
    訳文                
     近づいて、世尊へ礼拝し、一方へ坐った。  
                       
                       
                       
    364-1.                
     364. Ekamantaṃ nisinno kho oṭṭhaddho licchavī bhagavantaṃ etadavoca –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Ekamantaṃ    不変 一方に  
      nisinno  ni-sad 過分 a 坐った  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      oṭṭhaddho    a 人名、オッタッダ  
      licchavī    i 種族名、リッチャヴィ  
      bhagavantaṃ    ant 世尊  
      etad    代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      avoca –  vac いう  
    訳文                
     いっぽうに坐って、じつにリッチャヴィ族のオッタッダは、世尊へこういった。  
                       
                       
                       
    364-2.                
     ‘‘purimāni, bhante, divasāni purimatarāni sunakkhatto licchaviputto yenāhaṃ tenupasaṅkami;   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘purimāni,    a 副対 前の、古い、最初の  
      bhante,  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、大徳よ  
      divasāni    a 男(中) 副対 日、日中  
      purimatarāni    a 副対 より前の  
      sunakkhatto    a 人名、スナッカッタ  
      licchavi    i 依(属) 種族名、リッチャヴィ  
      putto    a 息子  
      yena    代的 (関係代名詞、〜tenaで「〜の所に」)  
      ahaṃ    代的  
      tena    代的 それ、彼、それによって、それゆえ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upasaṅkami;  upa-saṃ-kram 近づいた  
    訳文                
     「尊者よ、先日のこと、リッチャヴィ族の〔王〕子スナッカッタが私の所へ近づきました。  
    メモ                
     ・purimāni divasāni purimatarāniを、『原始』、『パーリ』は「先日より何度か(『パーリ』)」、『南伝』は「二三日前」とする。「前の日より前」で「一昨日」とも解せるが、ストックフレーズのようなので、汎用性を鑑み、ここではシンプルに訳した。  
     ・divasaは男性名詞であるにもかかわらず中性複数になっている。有財釈とも思われないため、まれに中性の変化もみせるということにして訳したが、何かほかに理由があるかもしれない。  
     ・スナッカッタは「パーティカ経」にも登場する。  
                       
                       
                       
    364-3.                
     upasaṅkamitvā maṃ etadavoca –   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upasaṅkamitvā  upa-saṃ-kram 近づく  
      語根 品詞 語基 意味  
      maṃ    代的  
      etad    代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      avoca –  vac いう  
    訳文                
     近づいて、私へこのようにいいました。  
                       
                       
                       
    364-4.                
     ‘yadagge ahaṃ, mahāli, bhagavantaṃ upanissāya viharāmi, na ciraṃ tīṇi vassāni, dibbāni hi kho rūpāni passāmi piyarūpāni kāmūpasaṃhitāni rajanīyāni, no ca kho dibbāni saddāni suṇāmi piyarūpāni kāmūpasaṃhitāni rajanīyānī’ti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘yad    代的 (関係代名詞)  
      agge    a 男中 第一、最上、頂点 →それ以来、それより  
      ahaṃ,    代的  
      mahāli,    i 人名、マハーリ  
      bhagavantaṃ    ant 世尊  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upanissāya  upa-ni-śri 依止して、近く、接近して  
      viharāmi,  vi-hṛ 住する  
      語根 品詞 語基 意味  
      na    不変 ない  
      ciraṃ    a 副対 久しく  
      tīṇi     
      vassāni,    a 男中 雨、年  
      dibbāni    a 天の、神の  
      hi    不変 じつに、なぜなら  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      rūpāni    a 色、物質、肉体、形相、容姿、像、相、画、人形  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      passāmi  paś 見る、見出す、知る  
      語根 品詞 語基 意味  
      piya    a 有(持) 可愛の、所愛の  
      rūpāni    a 色、物質、肉体、形相 →喜色  
      kāma    a 男中 依(対)  
      upasaṃhitāni  upa-saṃ-dhā 過分 a 伴った、具えた、関係した  
      rajanīyāni,  raj 未分 a 染まるべき、食染の、染心をあおる  
      no    不変 ない、否/〜かどうか  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      dibbāni    a 天の、神の  
      saddāni    a 男(中) 音、声、語  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      suṇāmi  śru 聞く  
      語根 品詞 語基 意味  
      piya    a 可愛の、所愛の  
      rūpāni    a 色、物質、肉体、形相 →喜色  
      kāma    a 男中 依(対)  
      upasaṃhitāni  upa-saṃ-dhā 過分 a 伴った、具えた、関係した  
      rajanīyānī’  raj 未分 a 染まるべき、食染の、染心をあおる  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     『マハーリよ、私は世尊の近くに住してより久しからず、三年を〔経たのみであるが〕、じつに、可愛の形相あり、欲を伴い、染心をあおる天の色を見る。しかし可愛の形相あり、欲を伴い、染心をあおる天の声を聞いてはいない』と。  
    メモ                
     ・ここでは『南伝』に従って解したが、『原始』、『パーリ』はna ciraṃ tīṇi vassāniを「間もなく三年」と解している。  
     ・ここでのsaddaも、男性名詞のはずがなぜか中性化している。以降も同様である。先のdivasa同様、ときに中性の変化もするものと解した。  
     ・『註』は天眼通、天耳通のことと解する。  
     ・水野文法§62Fでは接頭辞upaを有する語は対格もしくは処格支配になるという。そこでkāmūpasaṃhitāniは対格依主釈とした。  
                       
                       
                       
    364-5.                
     Santāneva nu kho, bhante, sunakkhatto licchaviputto dibbāni saddāni nāssosi piyarūpāni kāmūpasaṃhitāni rajanīyāni, udāhu asantānī’’ti?  
      語根 品詞 語基 意味  
      Santāni as 現分 a ある、存在する  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      nu    不変 いったい、たぶん、〜かどうか、〜ではないか  
      kho,    不変 じつに、たしかに  
      bhante,  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、大徳よ  
      sunakkhatto    a 人名、スナッカッタ  
      licchavi    i 依(属) 種族名、リッチャヴィ  
      putto    a 息子  
      dibbāni    a 天の、神の  
      saddāni    a 音、声、語  
      na    不変 ない  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      assosi  śru 聞く  
      語根 品詞 語基 意味  
      piya   a 有(持) 可愛の、所愛の  
      rūpāni    a 色、物質、肉体、形相 →喜色  
      kāma    a 男中 依(対)  
      upasaṃhitāni  upa-saṃ-dhā 過分 a 伴った、具えた、関係した  
      rajanīyāni,  raj 未分 a 染まるべき、食染の、染心をあおる  
      udāhu    不変 あるいは、または、然らざれば  
      asantānī’’  a-as 現分 ant ない、存在しない  
      ti?   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     尊者よ、いったい、リッチャヴィ族の〔王〕子スナッカッタは、まさしく実在する、可愛の形相あり、欲を伴い、染心をあおる天の声を聞かなかったのでしょうか。それとも〔そのようなものはもともと〕存在しないのでしょうか。  
                       
                       
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