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     Ambaṭṭhavaṃsakathā  
      語根 品詞 語基 意味  
      Ambaṭṭha   a 依(属) 人名、アンバッタ  
      vaṃsa   a 依(属) 竹、竹棒戯、種姓、姓、系統、伝統、歴史  
      kathā   ā 論、説、話、物語  
    訳文                
     【アンバッタの種姓の話】  
                       
                       
                       
    273-1.                
     273. Evaṃ vutte, te māṇavakā unnādino uccāsaddamahāsaddā ahesuṃ –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Evaṃ    不変 このように、かくの如き  
      vutte,  vac 受 過分 a 男中 いわれた  
      te    代的 それら、彼ら  
      māṇavakā    a 学童、青年、若い婆羅門  
      unnādino    in 号叫の、大声の  
      uccā   不変 高く、上に  
      sadda   a  
      mahā   ant 有(持) 大きい  
      saddā    a  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ahesuṃ –  bhū ある  
    訳文                
     このようにいわれて、彼ら青年たちは叫び、高い声、大声を上げた。  
                       
                       
                       
    273-2.                
     ‘‘dujjāto kira, bho, ambaṭṭho māṇavo; akulaputto kira, bho, ambaṭṭho māṇavo; dāsiputto kira, bho, ambaṭṭho māṇavo sakyānaṃ.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘dujjāto  dur-jan a 悪しき生まれの  
      kira,    不変 伝え言う、〜という話だ  
      bho,  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      ambaṭṭho    a 人名、アンバッタ  
      māṇavo;    a 学童、青年、若い婆羅門  
      akula   a 良家ならぬ  
      putto    a 息子、アンバッタ  
      kira,    不変 伝え言う、〜という話だ  
      bho,  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      ambaṭṭho    a 人名、アンバッタ  
      māṇavo;    a 学童、青年、若い婆羅門  
      dāsi   ī 依(属) 女の奴隷、婢女  
      putto    a 息子  
      kira,    不変 伝え言う、〜という話だ  
      bho,  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      ambaṭṭho    a 人名、アンバッタ  
      māṇavo    a 学童、青年、若い婆羅門  
      sakyānaṃ.    a 氏族名、サキャ、釈迦  
    訳文                
     「友よ、アンバッタ青年は悪しき生まれのものらしい。友よ、アンバッタ青年は良家の子息でないらしい。友よ、アンバッタ青年は釈迦族の女奴隷の子孫らしい。  
                       
                       
                       
    273-3.                
     Ayyaputtā kira, bho, ambaṭṭhassa māṇavassa sakyā bhavanti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Ayya   名形 a 高貴の、聖の  
      puttā    a 息子 →主人、旦那  
      kira,    不変 伝え言う、〜という話だ  
      bho,  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      ambaṭṭhassa    a 人名、アンバッタ  
      māṇavassa    a 学童、青年、若い婆羅門  
      sakyā    a 氏族名、サキャ、釈迦  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      bhavanti.  bhū ある  
    訳文                
     友よ、釈迦族はアンバッタ青年の主人であるらしい。  
                       
                       
                       
    273-4.                
     Dhammavādiṃyeva kira mayaṃ samaṇaṃ gotamaṃ apasādetabbaṃ amaññimhā’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Dhamma dhṛ a 依(属)  
      vādiṃ vad in 説者、主張者、論師  
      yeva    不変 まさに、のみ、じつに  
      kira    不変 伝え言う、〜という話だ  
      mayaṃ    代的 私たち  
      samaṇaṃ  śram a 沙門  
      gotamaṃ    a 人名、ゴータマ  
      apasādetabbaṃ  apa-sad 使 未分 a 非難・叱責されるべき  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      amaññimhā’’ man 考える、思う、思量する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     じつに我々は、法説者たる沙門ゴータマを、非難されるべき者だと考えていたようだ」と。  
    メモ                
     ・『南伝』は「沙門矍曇を、他を非難すべき人とは思わざりしなり」とするが、これはアオリストの加増音a- を、否定の接頭辞と取り違えたものではあるまいか。  
                       
                       
                       
    274-1.                
     274. Atha kho bhagavato etadahosi –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      bhagavato    名現分 ant(特) 世尊  
      etad   代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ahosi –  bhū ある、存在する  
    訳文                
     ときに、世尊にはこの〔思いが〕生じた。  
                       
                       
                       
    274-2.                
     ‘‘atibāḷhaṃ kho ime māṇavakā ambaṭṭhaṃ māṇavaṃ dāsiputtavādena nimmādenti, yaṃnūnāhaṃ parimoceyya’’nti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘atibāḷhaṃ    不変 極めて強く、しっかりと、きわめて激しい、甚だしい  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      ime    代的 これら  
      māṇavakā    a 学童、青年、若い婆羅門  
      ambaṭṭhaṃ    a 人名、アンバッタ  
      māṇavaṃ    a 学童、青年、若い婆羅門  
      dāsi   ī 依(属) 女の奴隷、婢女  
      putta   a 依(属) 息子  
      vādena  vad a 説、語、論  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      nimmādenti,  ni-mṛd 砕破する、恥をかかす、侵害する  
      語根 品詞 語基 意味  
      yaṃ   代的 (関係代名詞)  
      nūna   不変 たしかに →いかに〜すべきか、〜したらどうか  
      ahaṃ    代的  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      parimoceyya’’n pari-muc 使 解き放つ  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「じつに、これらの青年たちは、あまりにひどくアンバッタ青年を女奴隷の子孫である話をもって侮辱している。わたしは〔彼を〕解放してやるとしようか」と。  
                       
                       
                       
    274-3.                
     Atha kho bhagavā te māṇavake etadavoca –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      bhagavā    ant 世尊  
      te    代的 それら、彼ら  
      māṇavake    a 学童、青年、若い婆羅門  
      etad   代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      avoca –  vac いう  
    訳文                
     ときに世尊は、彼ら青年たちへこう仰った。  
                       
                       
                       
    274-4.                
     ‘‘mā kho tumhe, māṇavakā, ambaṭṭhaṃ māṇavaṃ atibāḷhaṃ dāsiputtavādena nimmādetha.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘mā    不変 なかれ  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      tumhe,    代的 あなたたち  
      māṇavakā,    a 学童、青年、若い婆羅門  
      ambaṭṭhaṃ    a 人名、アンバッタ  
      māṇavaṃ    a 学童、青年、若い婆羅門  
      atibāḷhaṃ    不変 極めて強く、しっかりと、きわめて激しい、甚だしい  
      dāsi   ī 依(属) 女の奴隷、婢女  
      putta   a 依(属) 息子  
      vādena  vad a 説、語、論  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      nimmādetha.  ni-mṛd 砕破する、恥をかかす、侵害する  
    訳文                
     「じつに青年たちよ、あなた方はアンバッタ青年を、あまりにひどく、女奴隷の子孫である話をもって侮辱してはいけません。  
                       
                       
                       
    274-5.                
     Uḷāro so kaṇho isi ahosi.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Uḷāro    a 偉大な、広大な、すぐれた、富んだ  
      so    代的 それ、彼  
      kaṇho    a 人名、カンハ  
      isi    i 仙人、聖者  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ahosi.  bhū ある、存在する  
    訳文                
     かのカンハは、偉大な仙人だったのです。  
                       
                       
                       
    274-6.                
     So dakkhiṇajanapadaṃ gantvā brahmamante adhīyitvā rājānaṃ okkākaṃ upasaṅkamitvā maddarūpiṃ dhītaraṃ yāci.   
      語根 品詞 語基 意味  
      So    代的 それ、彼  
      dakkhiṇa   名形 代的 右の、南の、巧みな  
      janapadaṃ    a 地方、国、国土  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      gantvā  gam 行く  
      語根 品詞 語基 意味  
      brahma bṛh 名形 an(特) 依(属) 梵、梵天  
      mante    a 呪、経文  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      adhīyitvā  adhi-i 学ぶ、習得する  
      語根 品詞 語基 意味  
      rājānaṃ    an  
      okkākaṃ    a 人名、オッカーカ、甘蔗王  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upasaṅkamitvā  upa-saṃ-kram 近づいて  
      語根 品詞 語基 意味  
      maddarūpiṃ    ī 人名、マッダルーピー  
      dhītaraṃ    ar  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      yāci.  yāc 乞う、求める  
    訳文                
     彼は、南の王国へ赴き、梵天の呪術を習得して、オッカーカ王へ近づき、娘のマッダルーピーを求めました。  
                       
                       
                       
    274-7.                
     Tassa rājā okkāko –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Tassa    代的 それ、彼  
      rājā    an  
      okkāko –    a 人名、オッカーカ、甘蔗王  
    訳文                
     オッカーカ王は彼へ、  
                       
                       
                       
    274-8.                
     ‘ko nevaṃ re ayaṃ mayhaṃ dāsiputto samāno maddarūpiṃ dhītaraṃ yācatī’’’ ti, kupito anattamano khurappaṃ sannayhi [sannahi (ka.)].   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘ko    代的 何、誰  
      nu    不変 いったい、たぶん、〜かどうか、〜ではないか  
      evaṃ    不変 このように、かくの如き  
      re    不変 おい、けしからん  
      ayaṃ    代的 これ  
      mayhaṃ    代的  
      dāsi   ī 依(属) 女の奴隷、婢女  
      putto    a 息子  
      samāno  as 現分 a ある  
      maddarūpiṃ    ī 人名、マッダルーピー  
      dhītaraṃ    ar  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      yācatī’’’  yāc 乞う、求める  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti,    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      kupito  kup 過分 a 怒った  
      anattamano    a 不適意、不悦意、不喜  
      khura   a 剃刀  
      appaṃ    名形 a 少ない →突箭、矢  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      sannayhi  saṃ-nah 結ぶ、付ける、武装する  
    訳文                
     「けしからん、いったいこの者は何だ、私の女奴隷の子でありながら、かくのごとく娘マッダルーピーを求めるとは」と怒り、不快に思い、矢をつがえました。  
                       
                       
                       
    274-9.                
     So taṃ khurappaṃ neva asakkhi muñcituṃ, no paṭisaṃharituṃ.  
      語根 品詞 語基 意味  
      So    代的 それ、彼  
      taṃ    代的 副対 それ、彼、彼女、そのとき(副対)  
      khura   a 剃刀  
      appaṃ    名形 a 少ない →突箭、矢  
      na   不変 ない  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      asakkhi  śak 可能である、できる  
      語根 品詞 語基 意味  
      muñcituṃ,  muc 不定 のがれること、自由になること、放つこと  
      no    不変 ない、否/〜かどうか  
      paṭisaṃharituṃ. prati-saṃ-hṛ 不定 取り去ること、除くこと、すてること  
    訳文                
     〔しかし〕そのとき、じつに彼(オッカーカ王)は矢を放つことも捨てることもできませんでした。  
                       
                       
                       
    274-10.                
     ‘‘Atha kho, māṇavakā, amaccā pārisajjā kaṇhaṃ isiṃ upasaṅkamitvā etadavocuṃ –   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Atha    不変 ときに、また  
      kho,    不変 じつに、たしかに  
      māṇavakā,    a 学童、青年、若い婆羅門  
      amaccā    a 大臣  
      pārisajjā    a 廷臣  
      kaṇhaṃ    a 人名、カンハ  
      isiṃ    i 仙人、聖者  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upasaṅkamitvā  upa-saṃ-kram 近づいて  
      語根 品詞 語基 意味  
      etad   代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      avocuṃ –  vac いう  
    訳文                
     じつに青年たちよ、ときに大臣・廷臣たちはカンハ仙へ近づいてこういいました。  
                       
                       
                       
    274-11.                
     ‘sotthi, bhaddante [bhadante (sī. syā.)], hotu rañño;   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘sotthi,    i 平安、安穏、幸福、吉祥  
      bhaddante    a 尊者、大徳  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      hotu  bhū ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      rañño;    an  
    訳文                
     「尊者よ、王に平穏あれ。  
    メモ                
     ・辞書類によれば、bhaddanteの語はa語基男性名詞の特殊な呼格であるが、「汝に吉祥あれ」bhaddaṃ te に由来するらしい。  
                       
                       
                       
    274-12.                
     sotthi, bhaddante, hotu rañño’ti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      sotthi, bhaddante, hotu rañño (274-11)  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     尊者よ、王に平穏あれ」と。  
                       
                       
                       
    274-13.                
     ‘Sotthi bhavissati rañño, api ca rājā yadi adho khurappaṃ muñcissati, yāvatā rañño vijitaṃ, ettāvatā pathavī undriyissatī’ti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘Sotthi    i 平安、安穏、幸福、吉祥  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      bhavissati  bhū ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      rañño,    an  
      api    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      rājā    an  
      yadi    不変 もし  
      adho    不変 下に  
      khura   a 剃刀  
      appaṃ    名形 a 少ない →突箭、矢  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      muñcissati,  muc 脱す、のがれる、自由になる、放つ  
      語根 品詞 語基 意味  
      yāvatā    不変 それだけの、その限りで  
      rañño    an  
      vijitaṃ,  vi-ji 名過分 a 領土、王国、(過去分詞として)征服した、勝利の、  
      ettāvatā    不変 これだけで、この範囲で  
      pathavī    ī  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      undriyissatī’ ud-dṛ 破れる、破壊する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「もし王が下に矢を放ったならば、王には平安があろうが、王の領有する限りにおいて大地は崩壊するであろう」  
    メモ                
     ・undriyissatiは辞書類にでるudrīyatiの異体とみた。  
                       
                       
                       
    274-14.                
     ‘Sotthi, bhaddante, hotu rañño, sotthi janapadassā’ti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘Sotthi, bhaddante, hotu rañño,  (274-11)  
      sotthi    i 平安、安穏、幸福、吉祥  
      janapadassā’   a 地方、国、国土  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「尊者よ、王に平穏あれ。国土に平穏あれ」  
                       
                       
                       
    274-15.                
     ‘Sotthi bhavissati rañño, sotthi janapadassa, api ca rājā yadi uddhaṃ khurappaṃ muñcissati, yāvatā rañño vijitaṃ, ettāvatā satta vassāni devo na vassissatī’ti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘Sotthi    i 平安、安穏、幸福、吉祥  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      bhavissati  bhū ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      rañño,    an  
      sotthi    i 平安、安穏、幸福、吉祥  
      janapadassa,    a 地方、国、国土  
      api    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      rājā    an  
      yadi    不変 もし  
      uddhaṃ    不変 上に  
      khura   a 剃刀  
      appaṃ    名形 a 少ない →突箭、矢  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      muñcissati,  muc 脱す、のがれる、自由になる、放つ  
      語根 品詞 語基 意味  
      yāvatā    不変 それだけの、その限りで  
      rañño    an  
      vijitaṃ,  vi-ji 名過分 a 領土、王国、(過去分詞として)征服した、勝利の、  
      ettāvatā    不変 これだけで、この範囲で  
      satta     
      vassāni  vṛṣ a 男中 雨、年  
      devo    a 神、天、陛下  
      na    不変 ない  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      vassissatī’ vṛṣ 雨降る、降る、注ぐ  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「もし王が上に矢を放ったならば、王にも国土にも平安があろうが、王の領有する限りにおいて、天は七年の間、雨を降らせないであろう」  
                       
                       
                       
    274-16.                
     ‘Sotthi, bhaddante, hotu rañño sotthi janapadassa devo ca vassatū’ti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘Sotthi, bhaddante, hotu rañño sotthi janapadassa (274-14.)  
      devo    a 神、天、陛下  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      vassatū’ vṛṣ 雨降る、降る、注ぐ  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「尊者よ、王に平穏あれ。国土に平穏あれ。また天は雨を降らせ」  
                       
                       
                       
    274-17.                
     ‘Sotthi bhavissati rañño sotthi janapadassa devo ca vassissati, api ca rājā jeṭṭhakumāre khurappaṃ patiṭṭhāpetu, sotthi kumāro pallomo bhavissatī’ti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘Sotthi bhavissati rañño sotthi janapadassa (274-15.)  
      devo    a 神、天、陛下  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      vassissati,  vṛṣ 雨降る、降る、注ぐ  
      語根 品詞 語基 意味  
      api    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      rājā    an  
      jeṭṭha   a 最老の、最年長の、最勝  
      kumāre    a 子供、童子  
      khura   a 剃刀  
      appaṃ    名形 a 少ない →突箭、矢  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      patiṭṭhāpetu,  prati-sthā 使 立てる  
      語根 品詞 語基 意味  
      sotthi    i 平安、安穏、幸福、吉祥  
      kumāro    a 子供、童子  
      pallomo    a 安心した、身毛が倒れている  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      bhavissatī’ bhū ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「王にも国土にも平安があり、天は雨を降らせるであろうが、〔ただし〕王は年長の子供たちに矢を突き立てよ。〔そうすれば、末の〕息子は平穏にして安心であろう」  
    メモ                
     ・諸訳は、「第一王子に矢を立てていただきたい。王子は、無事で、身の毛がよだつことはないであろう(『パーリ』)」などと訳す。kumāre を単数処格と取ってのことであろう。しかしここでは複数対格とみた。すなわち、前章で追放に処された年嵩の王子たちを、なお念入りに抹殺することで、末王子の王権に対する脅威がなくなるであろうという冷徹な諫言であったと解する。  
                       
                       
                       
    274-18.                
     Atha kho, māṇavakā, amaccā okkākassa ārocesuṃ –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また  
      kho,    不変 じつに、たしかに  
      māṇavakā,    a 学童、青年、若い婆羅門  
      amaccā    a 大臣  
      okkākassa    a 人名、オッカーカ、甘蔗王  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ārocesuṃ –  ā-ruc 告げる、述べる  
    訳文                
     青年たちよ、ときに大臣たちはオッカーカへ告げました。  
                       
                       
                       
    274-19.                
     ‘okkāko jeṭṭhakumāre khurappaṃ patiṭṭhāpetu.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘okkāko    a 人名、オッカーカ、甘蔗王  
      jeṭṭhakumāre khurappaṃ patiṭṭhāpetu. (274-17.)  
    訳文                
     「オッカーカは年長の子供たちに矢を突き立てられよ。  
                       
                       
                       
    274-20.                
     Sotthi kumāro pallomo bhavissatī’ti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Sotthi kumāro pallomo bhavissatī’ti.  (274-17.)  
    訳文                
     〔そうすれば、末の〕息子は平穏にして安心でありましょう」と。  
                       
                       
                       
    274-21.                
     Atha kho rājā okkāko jeṭṭhakumāre khurappaṃ patiṭṭhapesi, sotthi kumāro pallomo samabhavi.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      rājā    an  
      okkāko    a 人名、オッカーカ、甘蔗王  
      jeṭṭha   a 最老の、最年長の、最勝  
      kumāre    a 子供、童子  
      khura   a 剃刀  
      appaṃ    名形 a 少ない →突箭、矢  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      patiṭṭhapesi,  prati-sthā 使 立てる  
      語根 品詞 語基 意味  
      sotthi    i 平安、安穏、幸福、吉祥  
      kumāro    a 子供、童子  
      pallomo    a 安心した、身毛が倒れている  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      samabhavi.  saṃ-bhū 生じた  
    訳文                
     ときにオッカーカ王は年長の子供たちに矢を突き立て、〔末の〕息子は平穏にして安心となりました。  
    メモ                
     ・『註』はこのkumāre khurappaṃ patiṭṭhapesiについてtena ‘‘saro otaratū’’ti mante parivatti, te kumārassa nābhiyaṃ patiṭṭhapesi.とのべるが、構文が不明瞭である。「よって〔カンハは〕『矢は届け』と諸呪を誦した。それら(呪文)は王子の臍に突きたてた」とでも訳すべきか。わざわざ「届け」と呪文を唱えていることから、ヒマラヤに住む兄王子たちのことをいったとするここでの解釈を支持するようにも思われるが、ここではkumārassaと単数が用いられているので、やはり諸訳に従うのが妥当であろうか。  
                       
                       
                       
    274-22.                
     Atha kho tassa rājā okkāko bhīto saṃviggo lomahaṭṭhajāto brahmadaṇḍena tajjito maddarūpiṃ dhītaraṃ adāsi.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      tassa    代的 それ、彼  
      rājā    an  
      okkāko    a 人名、オッカーカ、甘蔗王  
      bhīto  bhī 過分 a 恐れた  
      saṃviggo  saṃ-vij 過分 a 驚怖した  
      loma   an 依(属)  
      haṭṭha hṛṣ 過分 a 有(持) 逆立ち  
      jāto  jan 過分 a 生じた  
      brahma bṛh 名形 an(特) 依(属) 梵、梵天、尊貴、神聖  
      daṇḍena    a 鞭、罰  
      tajjito  tarj 使 過分 a 恐れさせられた、脅かされた、叱責された  
      maddarūpiṃ    ī 人名、マッダルーピー  
      dhītaraṃ    ar  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      adāsi.  与える  
    訳文                
     ときにオッカーカ王は恐れ、おののき、総毛立って、梵天の鞭に脅かされ、彼(カンハ)のため娘のマッダルーピーを与えました。  
                       
                       
                       
    274-23.                
     Mā kho tumhe, māṇavakā, ambaṭṭhaṃ māṇavaṃ atibāḷhaṃ dāsiputtavādena nimmādetha, uḷāro so kaṇho isi ahosī’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Mā kho tumhe, māṇavakā, ambaṭṭhaṃ māṇavaṃ atibāḷhaṃ dāsiputtavādena nimmādetha, uḷāro so kaṇho isi ahosī’’ (274-4, 274-5.)  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     じつに青年たちよ、あなた方はアンバッタ青年を、あまりにひどく、女奴隷の子孫である話をもって侮辱してはいけません。かのカンハは、偉大な仙人だったのです」と。  
                       
                       
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