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     Sañcayabelaṭṭhaputtavādo  
      語根 品詞 語基 意味  
      Sañcaya   a 人名、サンジャヤ(刪闍邪)  
      belaṭṭhaputta   a 依(属) 人名、ベーラッティプッタ(毘羅胝子、ベーラッティの息子)  
      vādo vad a 説、語、論  
    訳文                
     【サンジャヤ・ベーラッティプッタの説】  
    メモ                
     ・VRI版の表記をカタカナであてるなら「サンチャヤ・ベーラッタプッタ」であろうが、ここでは広くなじみのある「サンジャヤ・ベーラッティプッタ」表記を用いるものとする。  
                       
                       
                       
    179-1.                
     179. ‘‘Ekamidāhaṃ, bhante, samayaṃ yena sañcayo belaṭṭhaputto tenupasaṅkamiṃ; upasaṅkamitvā sañcayena belaṭṭhaputtena saddhiṃ sammodiṃ.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Ekam   代的 副対 一、とある  
      idaṃ   代的 これ  
      ahaṃ,    代的  
      bhante,  bhū 名現分 ant(特) 大徳よ  
      samayaṃ    a 副対 時、集会  
      yena    代的 (関係代名詞)  
      sañcayo   a 人名、サンジャヤ  
      belaṭṭhaputto   a 人名、ベーラッティプッタ  
      tena   代的 それ、彼  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upasaṅkamiṃ;  upa-saṃ-kram 近づく  
      upasaṅkamitvā  upa-saṃ-kram 近づく  
      語根 品詞 語基 意味  
      sañcayena   a 人名、サンジャヤ  
      belaṭṭhaputtena   a 人名、ベーラッティプッタ  
      saddhiṃ    不変 共に、一緒に(具格支配)  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      sammodiṃ.  saṃ-mud 喜ぶ、相喜ぶ、挨拶する  
    訳文                
     尊者よ、ある時この私は、サンジャヤ・ベーラッティプッタに近づきました。近づいて、サンジャヤ・ベーラッティプッタと挨拶しました。  
                       
                       
                       
    179-2.                
     Sammodanīyaṃ kathaṃ sāraṇīyaṃ vītisāretvā ekamantaṃ nisīdiṃ.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Sammodanīyaṃ  saṃ-mud 未分 a よろこばしい  
      kathaṃ    ā 話、説、論  
      sāraṇīyaṃ  saṃ-raj 未分 a 相慶慰すべき、喜ぶべき  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      vītisāretvā  vi-ati-sṛ 使 交わす、交換する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ekamantaṃ    不変 一方に  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      nisīdiṃ.  ni-sad 坐る  
    訳文                
     喜ばしき慶賀の言葉を交わしてから、私は一方へ坐りました。  
                       
                       
                       
    179-3.                
     Ekamantaṃ nisinno kho ahaṃ bhante, sañcayaṃ belaṭṭhaputtaṃ etadavocaṃ –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Ekamantaṃ    不変 一方に  
      nisinno  ni-sad 過分 a すわった  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      ahaṃ    代的  
      bhante,  bhū 名現分 ant(特) 大徳よ  
      sañcayaṃ   a 人名、サンジャヤ  
      belaṭṭhaputtaṃ   a 人名、ベーラッティプッタ  
      etad   代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      avocaṃ –  vac いう  
    訳文                
     じつに尊者よ、一方へ坐った私は、サンジャヤ・ベーラッティプッタへこう言いました。  
                       
                       
                       
    179-4.                
     ‘yathā nu kho imāni, bho sañcaya, puthusippāyatanāni…pe… sakkā nu kho, bho sañcaya, evameva diṭṭheva dhamme sandiṭṭhikaṃ sāmaññaphalaṃ paññapetu’nti?  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘yathā    不変 その如く  
      nu    不変 〜かどうか、〜ではないか  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      imāni,    代的 これら  
      bho  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ  
      sañcaya,   a 人名、サンジャヤ  
      puthu   u 個々の、別々の、広い、多数の  
      sippa   a 有(属) 技術、技芸、工巧、職技、職人  
      āyatanāni,    a 処 →技能  
      …pe…   (略)  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      sakkā  śak 可能である  
      語根 品詞 語基 意味  
      nu    不変 〜かどうか、〜ではないか  
      kho,    不変 じつに、たしかに  
      bho  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ  
      sañcaya,   a 人名、サンジャヤ  
      evam   不変 このように、かくの如き  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      diṭṭhe dṛś 過分 a 男中 見られた、見、所見  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      dhamme  dhṛ a 男中 法、教法、真理、正義、もの →現法、現世  
      sandiṭṭhikaṃ  saṃ-dṛś a 現世の、現に見られた、現証の、自見の  
      sāmañña śram a 依(属) 沙門性、沙門位、沙門法  
      phalaṃ  phal a 果、果実  
      paññapetu’n pra-jñā  不定 知らしめること、告知・施設・用意すること  
      ti?   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     『尊者サンジャヤよ、じつに、かくのごときこれら多くの技能をもったものたちがいるではありませんか。……尊者サンジャヤよ、じつにあなたはこのような、まさしく現法において目に見える沙門であることの果報を説明することがかないましょうか』と。  
                       
                       
                       
    180-1.                
     180 ‘‘Evaṃ vutte, bhante, sañcayo belaṭṭhaputto maṃ etadavoca –   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Evaṃ    不変 このように、かくの如き  
      vutte,  vac 受 過分 a 男中 いわれた  
      bhante,  bhū 名現分 ant(特) 大徳よ  
      sañcayo   a 人名、サンジャヤ  
      belaṭṭhaputto   a 人名、ベーラッティプッタ  
      maṃ    代的  
      etad   代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      avoca –  vac いう  
    訳文                
     尊者よ、このようにいわれて、サンジャヤ・ベーラッティプッタは私にこう言いました。  
                       
                       
                       
    180-2.                
     ‘atthi paro lokoti iti ce maṃ pucchasi, atthi paro lokoti iti ce me assa, atthi paro lokoti iti te naṃ byākareyyaṃ.   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ‘atthi  as ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      paro    代的  
      loko   a 世界、世間  
      ti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      iti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      ce    不変 もし  
      maṃ    代的  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pucchasi,  prach 問う  
      atthi  as ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      paro    代的  
      loko   a 世界、世間  
      ti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      iti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      ce    不変 もし  
      me    代的  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      assa,  as ある  
      atthi  as ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      paro    代的  
      loko   a 世界、世間  
      ti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      iti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      te    代的 あなた  
      naṃ    代的 それ、彼  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      byākareyyaṃ.  vi-ā-kṛ 解説する、解答する、受記する  
    訳文                
     『他の世界は存在する〔のだろうか〕、とこのように、もし私があなたに問われて、他の世界は存在する、とこのような〔思いが〕もし私にあるならば、他の世界は存在する、とこのようなそれを、あなたのために答えるであろう。  
    メモ                
     ・以下、サンジャヤの所説は「梵網経」の詭弁論者のうち第四のものとほぼ同一である。  
                       
                       
                       
    180-3.                
     Evantipi me no, tathātipi me no, aññathātipi me no, notipi me no, no notipi me no.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Evan   不変 このように、かくの如き  
      ti   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      pi    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      me    代的  
      no,    不変 ない、否  
      tathā   不変 かく、その如く  
      ti   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      pi    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      me    代的  
      no,    不変 ない、否  
      aññathā   不変 他の方法で、異なって  
      ti   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      pi    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      me    代的  
      no,    不変 ない、否  
      no   不変 ない、否  
      ti   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      pi    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      me    代的  
      no,    不変 ない、否  
      no    不変 ない、否  
      no   不変 ない、否  
      ti   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      pi    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      me    代的  
      no.    不変 ない、否  
    訳文                
     〔しかしそれについて〕私はこうだとも〔主張し〕ない、私はそうだとも〔主張し〕ない、私は別だとも〔主張し〕ない、私は否だとも〔主張し〕ない、私は否でないとも〔主張し〕ない。  
                       
                       
                       
    180-4.                
     Natthi paro loko…pe…   
      語根 品詞 語基 意味  
      Na   不変 ない  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      atthi  as ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      paro    代的  
      loko   a 世界、世間  
      …pe…    (略)  
    訳文                
     他の世界は存在しない〔のだろうか〕……  
                       
                       
                       
    180-5.                
     atthi ca natthi ca paro loko…pe…   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      atthi  as ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      na   不変 ない  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      atthi  as ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      paro    代的  
      loko   a 世界、世間  
      …pe…    (略)  
    訳文                
     他の世界は存在し、かつ存在しない〔のだろうか〕……  
                       
                       
                       
    180-6.                
     nevatthi na natthi paro loko…pe…   
      語根 品詞 語基 意味  
      neva   不変 じつになし(na-eva  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      atthi  as ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      na    不変 ない  
      na   不変 ない  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      atthi  as ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      paro    代的  
      loko   a 世界、世間  
      …pe…    (略)  
    訳文                
     他の世界はじつに存在するのでなく、存在しないのでもない〔のだろうか〕……  
                       
                       
                       
    180-7.                
     atthi sattā opapātikā…pe…   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      atthi  as ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      sattā    a 衆生、有情  
      opapātikā   a 化生の  
      …pe…    (略)  
    訳文                
     化生の有情は存在する〔のだろうか〕……  
                       
                       
                       
    180-8.                
     natthi sattā opapātikā…pe…   
      語根 品詞 語基 意味  
      na   不変 ない  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      atthi  as ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      sattā    a 衆生、有情  
      opapātikā   a 化生の  
      …pe…    (略)  
    訳文                
     化生の有情は存在しない〔のだろうか〕……  
                       
                       
                       
    180-9.                
     atthi ca natthi ca sattā opapātikā…pe…   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      atthi  as ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      na   不変 ない  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      atthi  as ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      sattā    a 衆生、有情  
      opapātikā   a 化生の  
      …pe…    (略)  
    訳文                
     化生の有情は存在し、かつ存在しない〔のだろうか〕……  
                       
                       
                       
    180-10.                
     nevatthi na natthi sattā opapātikā…pe…   
      語根 品詞 語基 意味  
      neva   不変 じつになし(na-eva  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      atthi  as ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      na    不変 ない  
      na   不変 ない  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      atthi  as ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      sattā    a 衆生、有情  
      opapātikā   a 化生の  
      …pe…    (略)  
    訳文                
     化生の有情は存在するのでなく、かつ存在しないのでもない〔のだろうか〕……  
                       
                       
                       
    180-11.                
     atthi sukatadukkaṭānaṃ kammānaṃ phalaṃ vipāko…pe…   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      atthi  as ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      sukata su-kṛ a 善行、善行の  
      dukkaṭānaṃ  dur-kṛ a 悪行、悪行の、悪作、突吉羅  
      kammānaṃ  kṛ an 業、行為  
      phalaṃ  phal a 果、結果  
      vipāko vi-pac a 異熟、果報  
      …pe…    (略)  
    訳文                
     善行と悪行の業果たる異熟は存在する〔のだろうか〕……  
                       
                       
                       
    180-12.                
     natthi sukatadukkaṭānaṃ kammānaṃ phalaṃ vipāko…pe…  
      語根 品詞 語基 意味  
      na   不変 ない  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      atthi  as ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      sukata su-kṛ a 善行、善行の  
      dukkaṭānaṃ  dur-kṛ a 悪行、悪行の、悪作、突吉羅  
      kammānaṃ  kṛ an 業、行為  
      phalaṃ  phal a 果、結果  
      vipāko vi-pac a 異熟、果報  
      …pe…   (略)  
    訳文                
     善行と悪行の業果たる異熟は存在しない〔のだろうか〕……  
                       
                       
                       
    180-13.                
     atthi ca natthi ca sukatadukkaṭānaṃ kammānaṃ phalaṃ vipāko…pe…   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      atthi  as ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      na   不変 ない  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      atthi  as ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      sukata su-kṛ a 善行、善行の  
      dukkaṭānaṃ  dur-kṛ a 悪行、悪行の、悪作、突吉羅  
      kammānaṃ  kṛ an 業、行為  
      phalaṃ  phal a 果、結果  
      vipāko vi-pac a 異熟、果報  
      …pe…    (略)  
    訳文                
     善行と悪行の業果たる異熟は存在し、かつ存在しない〔のだろうか〕……  
                       
                       
                       
    180-14.                
     nevatthi na natthi sukatadukkaṭānaṃ kammānaṃ phalaṃ vipāko…pe…   
      語根 品詞 語基 意味  
      neva   不変 じつになし(na-eva  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      atthi  as ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      na    不変 ない  
      na   不変 ない  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      atthi  as ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      sukata su-kṛ a 善行、善行の  
      dukkaṭānaṃ  dur-kṛ a 悪行、悪行の、悪作、突吉羅  
      kammānaṃ  kṛ an 業、行為  
      phalaṃ  phal a 果、結果  
      vipāko vi-pac a 異熟、果報  
      …pe…    (略)  
    訳文                
     善行と悪行の業果たる異熟は存在するのでもなく、かつ存在しないのでもない〔のだろうか〕……  
                       
                       
                       
    180-15.                
     hoti tathāgato paraṃ maraṇā…pe…   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      hoti  bhū ある、存在する  
      語根 品詞 語基 意味  
      tathāgato  tathā-(ā-)gam a 如来  
      paraṃ    代的 副対 更に、他に、超えて  
      maraṇā mṛ a 死 →死後に  
      …pe…    (略)  
    訳文                
     如来は死後に存在する〔のだろうか〕……  
                       
                       
                       
    180-16.                
     na hoti tathāgato paraṃ maraṇā…pe…   
      語根 品詞 語基 意味  
      na    不変 ない  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      hoti  bhū ある、存在する  
      語根 品詞 語基 意味  
      tathāgato  tathā-(ā-)gam a 如来  
      paraṃ    代的 副対 更に、他に、超えて  
      maraṇā mṛ a 死 →死後に  
      …pe…    (略)  
    訳文                
     如来は死後に存在しない〔のだろうか〕……  
                       
                       
                       
    180-17.                
     hoti ca na ca hoti tathāgato paraṃ maraṇā…pe…   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      hoti  bhū ある、存在する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      na    不変 ない  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      hoti  bhū ある、存在する  
      語根 品詞 語基 意味  
      tathāgato  tathā-(ā-)gam a 如来  
      paraṃ    代的 副対 更に、他に、超えて  
      maraṇā mṛ a 死 →死後に  
      …pe…    (略)  
    訳文                
     如来は死後に存在し、かつ存在しない〔のだろうか〕……  
                       
                       
                       
    180-18.                
     neva hoti na na hoti tathāgato paraṃ maraṇāti iti ce maṃ pucchasi, neva hoti na na hoti tathāgato paraṃ maraṇāti iti ce me assa, neva hoti na na hoti tathāgato paraṃ maraṇāti iti te naṃ byākareyyaṃ.   
      語根 品詞 語基 意味  
      neva    不変 じつになし(na-eva  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      hoti  bhū ある、存在する  
      語根 品詞 語基 意味  
      na    不変 ない  
      na    不変 ない  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      hoti  bhū ある、存在する  
      語根 品詞 語基 意味  
      tathāgato  tathā-(ā-)gam a 如来  
      paraṃ    代的 副対 更に、他に、超えて  
      maraṇā mṛ a 死 →死後に  
      ti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      iti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      ce    不変 もし  
      maṃ    代的  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pucchasi,  prach 問う  
      語根 品詞 語基 意味  
      neva    不変 じつになし(na-eva  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      hoti  bhū ある、存在する  
      語根 品詞 語基 意味  
      na    不変 ない  
      na    不変 ない  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      hoti  bhū ある、存在する  
      語根 品詞 語基 意味  
      tathāgato  tathā-(ā-)gam a 如来  
      paraṃ    代的 副対 更に、他に、超えて  
      maraṇā mṛ a 死 →死後に  
      ti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      iti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      ce    不変 もし  
      me    代的  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      assa,  as ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      neva    不変 じつになし(na-eva  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      hoti  bhū ある、存在する  
      語根 品詞 語基 意味  
      na    不変 ない  
      na    不変 ない  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      hoti  bhū ある、存在する  
      語根 品詞 語基 意味  
      tathāgato  tathā-(ā-)gam a 如来  
      paraṃ    代的 副対 更に、他に、超えて  
      maraṇā mṛ a 死 →死後に  
      ti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      iti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      te    代的 あなた  
      naṃ    代的 それ、彼  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      byākareyyaṃ.  vi-ā-kṛ 解説する、解答する、受記する  
    訳文                
     如来は死後に存在するのでもなく、かつ存在しないのでもない〔のだろうか〕、とこのようにもし私があなたに問われて、如来は死後に存在するのでもなく、かつ存在しないのでもない、とこのような〔思いが〕もし私にあるならば、如来は死後に存在するのでもなく、かつ存在しないのでもない、とこのようなそれを、あなたのために答えるであろう。  
                       
                       
                       
    180-19.                
     Evantipi me no, tathātipi me no, aññathātipi me no, notipi me no, no notipi me no’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Evantipi me no, tathātipi me no, aññathātipi me no, notipi me no, no notipi me no’ (180-3.)  
      ti.   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     〔しかしそれについて〕私はこうだとも〔主張し〕ない、私はそうだとも〔主張し〕ない、私は別だとも〔主張し〕ない、私は否だとも〔主張し〕ない、私は否でないとも〔主張し〕ない』と。  
                       
                       
                       
    181-1.                
     181. ‘‘Itthaṃ kho me, bhante, sañcayo belaṭṭhaputto sandiṭṭhikaṃ sāmaññaphalaṃ puṭṭho samāno vikkhepaṃ byākāsi.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Itthaṃ    不変 かかる  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      me,    代的  
      bhante,  bhū 名現分 ant(特) 大徳よ  
      sañcayo   a 人名、サンジャヤ  
      belaṭṭhaputto   a 人名、ベーラッティプッタ  
      sandiṭṭhikaṃ  saṃ-dṛś a 現世の、現に見られた、現証の、自見の  
      sāmañña śram a 依(属) 沙門性、沙門位、沙門法  
      phalaṃ  phal a 果、果実  
      puṭṭho  prach 過分 a 問われた  
      samāno  as 現分 a ありつつ  
      vikkhepaṃ vi-kṣip a 混乱  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      byākāsi. vi-ā-kṛ 解答する、解説する  
    訳文                
     じつに尊者よ、私に目に見える沙門の果報を問われてありながら、サンジャヤ・ベーラッティプッタは、かかる混乱〔の言葉〕を説いたのです。  
                       
                       
                       
    181-2.                
     Seyyathāpi, bhante, ambaṃ vā puṭṭho labujaṃ byākareyya, labujaṃ vā puṭṭho ambaṃ byākareyya;   
      語根 品詞 語基 意味  
      Seyyathā    不変 たとえば、その如き  
      pi,   不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      bhante,  bhū 名現分 ant(特) 大徳よ  
      ambaṃ    a マンゴー  
          不変 あるいは  
      puṭṭho  prach 過分 a 問われた  
      labujaṃ    a パンノキ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      byākareyya,  vi-ā-kṛ 解答する、解説する  
      語根 品詞 語基 意味  
      labujaṃ    a パンノキ  
          不変 あるいは  
      puṭṭho  prach 過分 a 問われた  
      ambaṃ    a マンゴー  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      byākareyya;  vi-ā-kṛ 解答する、解説する  
    訳文                
     尊者よ、まるで、マンゴーについて問われてパンノキについて答え、パンノキについて問われてマンゴーについて答えるようなものです。  
                       
                       
                       
    181-3.                
     evameva kho me, bhante, sañcayo belaṭṭhaputto sandiṭṭhikaṃ sāmaññaphalaṃ puṭṭho samāno vikkhepaṃ byākāsi.   
      語根 品詞 語基 意味  
      evam   不変 このように、かくの如き  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      kho me, bhante, sañcayo belaṭṭhaputto sandiṭṭhikaṃ sāmaññaphalaṃ puṭṭho samāno vikkhepaṃ byākāsi.  (181-1.)  
    訳文                
     じつに尊者よ、私に目に見える沙門の果報を問われてありながら、サンジャヤ・ベーラッティプッタは、まさにこのように混乱〔の言葉〕を説いたのです。  
                       
                       
                       
    181-4.                
     Tassa mayhaṃ, bhante, etadahosi –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Tassa    代的 それ、彼  
      mayhaṃ,    代的  
      bhante,  bhū 名現分 ant(特) 大徳よ  
      etad   代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ahosi –  bhū ある  
    訳文                
     尊者よ、その私に、この〔思い〕が生じました。  
                       
                       
                       
    181-5.                
     ‘ayañca imesaṃ samaṇabrāhmaṇānaṃ sabbabālo sabbamūḷho.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘ayañ   代的 これ  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      imesaṃ    代的 これら  
      samaṇa śram a 沙門  
      brāhmaṇānaṃ  bṛh a 婆羅門  
      sabba   名形 代的 依(奪) すべて  
      bālo    a 愚かな  
      sabba   名形 代的 依(奪) すべて  
      mūḷho.  muh 過分 a 愚昧の、混迷した  
    訳文                
     『この者は、彼ら沙門婆羅門のうちで、最も愚かで、最も混迷している。  
    メモ                
     ・sabbaは、複合語前分の時、「最も」の意味を持つ(PTS辞書参照)。  
                       
                       
                       
    181-6.                
     Kathañhi nāma sandiṭṭhikaṃ sāmaññaphalaṃ puṭṭho samāno vikkhepaṃ byākarissatī’ti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Kathañ   不変 如何に、何故に  
      hi    不変 じつに、なぜなら  
      nāma    an 副対 と、という名の、じつに →一体どういう訳で  
      sandiṭṭhikaṃ  saṃ-dṛś a 現世の、現に見られた、現証の、自見の  
      sāmañña śram a 依(属) 沙門性、沙門位、沙門法  
      phalaṃ  phal a 果、果実  
      puṭṭho  prach 過分 a 問われた  
      samāno  as 現分 a ありつつ  
      vikkhepaṃ  vi-kṣip a 混乱  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      byākarissatī’ vi-ā-kṛ 解答する、解説する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     いったいなぜ、目に見える沙門の果報を問われてありながら、混乱〔の言葉〕を答えるのであろうか』と。  
                       
                       
                       
    181-7.                
     Tassa mayhaṃ, bhante, etadahosi –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Tassa mayhaṃ, bhante, etadahosi – (181-4.)  
    訳文                
     〔しかし〕尊者よ、これに関して、私にこの〔思い〕が生じました。  
                       
                       
                       
    181-8.                
     ‘kathañhi nāma mādiso samaṇaṃ vā brāhmaṇaṃ vā vijite vasantaṃ apasādetabbaṃ maññeyyā’ti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘kathañ   不変 如何に、何故に  
      hi    不変 じつに、なぜなら  
      nāma    an 副対 と、という名の、じつに →一体どういう訳で  
      mādiso  maṃ-dṛś a 私如き、私に等しい  
      samaṇaṃ  śram a 沙門  
          不変 あるいは  
      brāhmaṇaṃ  bṛh a 婆羅門  
          不変 あるいは  
      vijite  vi-ji 名形 a 打ち勝った/領土、王国  
      vasantaṃ  vas 現分 ant 住まう  
      apasādetabbaṃ  apa-sad 未分 a 拒否、非難、叱責されるべき  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      maññeyyā’ man 考える、思う  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     『一体どうして私如きが、王国に住まう沙門あるいは婆羅門を、非難されるべき者と考えようか』と。  
                       
                       
                       
    181-9.                
     So kho ahaṃ, bhante, sañcayassa belaṭṭhaputtassa bhāsitaṃ neva abhinandiṃ nappaṭikkosiṃ.   
      語根 品詞 語基 意味  
      So    代的 それ、彼  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      ahaṃ,    代的  
      bhante,  bhū 名現分 ant(特) 大徳よ  
      sañcayassa   a 人名、サンジャヤ  
      belaṭṭhaputtassa   a 人名、ベーラッティプッタ  
      bhāsitaṃ  bhāṣ 名過分 a 話した、語った  
      neva    不変 じつになし(na-eva  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      abhinandiṃ  abhi-nand 歓喜する、喜ぶ  
      語根 品詞 語基 意味  
      na   不変 ない  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      paṭikkosiṃ. prati-kruś 叱る、非難する  
    訳文                
     じつに尊者よ、それで私は、サンジャヤ・ベーラッティプッタの語ったことに歓喜することもしないが、非難することもありませんでした。  
                       
                       
                       
    181-10.                
     Anabhinanditvā appaṭikkositvā anattamano anattamanavācaṃ anicchāretvā tameva vācaṃ anuggaṇhanto anikkujjanto uṭṭhāyāsanā pakkamiṃ.  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      Anabhinanditvā  an-abhi-nand 歓喜する、喜ぶ  
      appaṭikositvā  a-prati-kruś 叱る、非難する  
      語根 品詞 語基 意味  
      anattamano  man a 不適意、不悦意、不喜  
      anattamana man a 依(属) 不適意、不悦意、不喜  
      vācaṃ  vac ā 言葉  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      anicchāretvā  a-niś-car 出す  
      語根 品詞 語基 意味  
      tam   代的 それ  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      vācaṃ  vac ā 言葉  
      anuggaṇhanto  anu-grah 現分 a 摂受する、摂益する、資助する、教護する  
      anikkujjanto    現分 a 倒れない、顛倒しない  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      uṭṭhāya ud-sthā 立ち上がる  
      語根 品詞 語基 意味  
      āsanā  ās a  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pakkamiṃ. pra-kram 出発する、進む  
    訳文                
     歓喜せず非難もせず、不満ではあったが不満の言葉出さず、じつにその言葉を受け取りながら、傾倒することなく、座より立って立ち去ったのです。  
                       
                       
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