←前へ   トップへ   次へ→
                       
                       
     4. Bakabrahmasuttaṃ  
      語根 品詞 語基 意味  
      Baka    a 神名、バカ(青鷺の意)  
      brahma  bṛh 名形 an(特) 依(属)  
      suttaṃ  sīv a 経、糸  
    訳文                
     「バカ梵天経」(『相応部』6-4  
    メモ                
     ・本経の前半は『中部』49「梵天招請経」にパラレル。  
                       
                       
                       
    175-1.                
     175. Evaṃ me sutaṃ –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Evaṃ    不変 このように、かくの如き  
      me    代的  
      sutaṃ –  śru 名過分 a 所聞、聞かれた  
    訳文                
     私はこのように聞いた。  
                       
                       
                       
    175-2.                
     ekaṃ samayaṃ bhagavā sāvatthiyaṃ viharati jetavane anāthapiṇḍikassa ārāme.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ekaṃ    代的 副対 一、とある  
      samayaṃ  saṃ-i a 副対  
      bhagavā    ant 世尊  
      sāvatthiyaṃ    ī 地名、サーヴァッティー  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      viharati  vi-hṛ 住する  
      語根 品詞 語基 意味  
      jetavane    a 地名、ジェータ林、祇樹、祇園  
      anāthapiṇḍikassa    a 人名、アナータピンディカ、給孤独  
      ārāme.    a  
    訳文                
     あるとき世尊はサーヴァッティーのジェータ林、アナータピンディカ園に住しておられた。  
                       
                       
                       
    175-3.                
     Tena kho pana samayena bakassa brahmuno evarūpaṃ pāpakaṃ diṭṭhigataṃ uppannaṃ hoti –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Tena    代的 副具 それ、彼、それによって、それゆえ  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      pana    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      samayena    a 副具  
      bakassa    a 神名、バカ  
      brahmuno  bṛh 名形 an(特) 梵天  
      evarūpaṃ    a かくのごとき  
      pāpakaṃ    a 悪しき  
      diṭṭhi  dṛś i 見、見解、意見  
      gataṃ  gam 過分 a 行った、関係した、姿 →悪見、成見  
      uppannaṃ  ud-pad 過分 a 生じた  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      hoti –  bhū ある、なる、存在する  
    訳文                
     さてそのとき、バカ梵天に、かくのごとき悪しき見解が生じていた。  
                       
                       
                       
    175-4.                
     ‘‘idaṃ niccaṃ, idaṃ dhuvaṃ, idaṃ sassataṃ, idaṃ kevalaṃ, idaṃ acavanadhammaṃ, idañhi na jāyati na jīyati na mīyati na cavati na upapajjati, ito ca panaññaṃ uttariṃ [uttariṃ (sī. syā. kaṃ. pī.)] nissaraṇaṃ natthī’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘idaṃ    代的 これ  
      niccaṃ,    a 常住の  
      idaṃ    代的 これ  
      dhuvaṃ,    a 恒常の、堅固の  
      idaṃ    代的 これ  
      sassataṃ,    a 常の、常恒の、常住の  
      idaṃ    代的 これ  
      kevalaṃ,    a 独一の、独存の、完全の  
      idaṃ    a これ  
      acavana  a-cyu a 有(持) 不衰変の  
      dhammaṃ,  dhṛ a 男中  
      idañ    代的 これ  
      hi    不変 じつに、なぜなら  
      na    不変 ない  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      jāyati  jan 受 生まれる、再生する  
      語根 品詞 語基 意味  
      na    不変 ない  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      jīyati  ji 受 失う、損失する  
      語根 品詞 語基 意味  
      na    不変 ない  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      mīyati  mṛ 死す  
      語根 品詞 語基 意味  
      na    不変 ない  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      cavati  cyu 死没する  
      語根 品詞 語基 意味  
      na    不変 ない  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upapajjati,  upa-pad 往生する、再生する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ito    不変 これより、ここより  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      pana    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      aññaṃ    代的 副対 他の  
      uttarim    i より上の、超えた  
      nissaraṇaṃ  ni-sṛ a 出離、遠離  
      na    不変 ない  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      atthī’  as ある、なる  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     『これは常住であり、これは堅固であり、これは恒常であり、これは完全であり、これは不衰退の性質あるものである。なぜならこれは、再生せず、損傷せず、死なず、死没せず、転生しないからである。しからば、これより他に、よりすぐれた出離は存在しない』と。  
    メモ                
     ・ここでの「これ」は梵天の身であることと思われる。  
                       
                       
                       
    175-5.                
     Atha kho bhagavā bakassa brahmuno cetasā cetoparivitakkamaññāya –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また、そこに  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      bhagavā    ant 世尊  
      bakassa    a 神名、バカ  
      brahmuno  bṛh 名形 an(特) 梵天  
      cetasā  cit as  
      ceto  cit as 依(属)  
      parivitakkam  pari-vi-tark 名形 a 審慮、尋求  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      aññāya –  ā-jñā よく知る  
    訳文                
     そこで世尊は心によってバカ梵天の心の審慮を知られ、  
                       
                       
                       
    175-6.                
     seyyathāpi nāma balavā puriso samiñjitaṃ vā bāhaṃ pasāreyya, pasāritaṃ vā bāhaṃ samiñjeyya evameva –   
      語根 品詞 語基 意味  
      seyyathā    不変 その如き、たとえば  
      pi    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      nāma    an 副対 と、という名の、じつに  
      balavā    ant 力ある  
      puriso    a 男、人  
      samiñjitaṃ  saṃ-iṅg 過分 a 動いた、曲がった  
          不変 あるいは  
      bāhaṃ    ā  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pasāreyya,  pra-sṛ 使 伸ばす  
      語根 品詞 語基 意味  
      pasāritaṃ  pra-sṛ 使 過分 a 伸ばした  
          不変 あるいは  
      bāhaṃ    ā  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      samiñjeyya  saṃ-iṅg 動かす、曲げる  
      語根 品詞 語基 意味  
      evam    不変 このように、かくの如き  
      eva –    不変 まさに、のみ、じつに  
    訳文                
     あたかも力ある男が曲がった腕を伸ばし、あるいは伸びた腕を曲げる、その如くに、  
                       
                       
                       
    175-7.                
     jetavane antarahito tasmiṃ brahmaloke pāturahosi.   
      語根 品詞 語基 意味  
      jetavane    a 地名、ジェータ林、祇樹、祇園  
      antarahito  antara-dhā 過分 a 滅没した、消失した  
      tasmiṃ    代的 それ、彼  
      brahma  bṛh 名形 an(特)  
      loke    a 世界、世間  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pāturahosi.  bhū 明らかにする、現れる  
    訳文                
     ジェータ林から消失し、その梵天界へ顕現された。  
                       
                       
                       
    175-8.                
     Addasā kho bako brahmā bhagavantaṃ dūratova āgacchantaṃ.   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      Addasā  dṛś 見た  
      語根 品詞 語基 意味  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      bako    a 神名、バカ  
      brahmā  bṛh 名形 an(特) 梵天  
      bhagavantaṃ    ant 世尊  
      dūrato    a 遠く  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      āgacchantaṃ.  ā-gam 現分 ant 来る  
    訳文                
     バカ梵天は、遠くからやってくる世尊を見た。  
                       
                       
                       
    175-9.                
     Disvāna bhagavantaṃ etadavoca –   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      Disvāna  dṛś 見る  
      語根 品詞 語基 意味  
      bhagavantaṃ    ant 世尊  
      etad    代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      avoca –  vac いう  
    訳文                
     見て、世尊へこう言った。  
                       
                       
                       
    175-10.                
     ‘‘ehi kho mārisa, svāgataṃ te, mārisa!   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘ehi  i 不変 いざ、来たれ  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      mārisa,    不変 我が師よ、我が友よ  
      svāgataṃ  su-gam 過分 a よく来た、歓迎した、通暁した  
      te,    代的 あなた  
      mārisa!    不変 我が師よ、我が友よ  
    訳文                
     「来たれ、我が友よ。あなたを歓迎します、我が友よ。  
                       
                       
                       
    175-11.                
     Cirassaṃ kho mārisa!   
      語根 品詞 語基 意味  
      Cirassaṃ    不変 久しく、遂に  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      mārisa!    不変 我が師よ、我が友よ  
    訳文                
     我が友よ、とうとう、  
                       
                       
                       
    175-12.                
     Imaṃ pariyāyamakāsi yadidaṃ idhāgamanāya.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Imaṃ    代的 これ  
      pariyāyam  pari-i a 法門、教説、理趣、理由、方便  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      akāsi  kṛ なす  
      語根 品詞 語基 意味  
      yadidaṃ    不変 すなわち、いわゆる  
      idha    不変 ここに、この世で、いま、さて  
      āgamanāya.  ā-gam a 到来、帰来  
    訳文                
     あなたがここへいらっしゃるための、この機会をもうけられました。  
                       
                       
                       
    175-13.                
     Idañhi, mārisa, niccaṃ, idaṃ dhuvaṃ, idaṃ sassataṃ, idaṃ kevalaṃ, idaṃ acavanadhammaṃ, idañhi na jāyati na jīyati na mīyati na cavati na upapajjati.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Idañhi, mārisa, niccaṃ, idaṃ dhuvaṃ, idaṃ sassataṃ, idaṃ kevalaṃ, idaṃ acavanadhammaṃ, idañhi na jāyati na jīyati na mīyati na cavati na upapajjati. (175-4.)  
      hi,    不変 じつに、なぜなら  
      mārisa,    不変 我が師よ、我が友よ  
    訳文                
     我が友よ、これは常住であり、これは堅固であり、これは恒常であり、これは完全であり、これは不衰退の性質あるものです。なぜならこれは、再生せず、損傷せず、死なず、死没せず、転生しないからです。  
                       
                       
                       
    175-14.                
     Ito ca panaññaṃ uttari nissaraṇaṃ natthī’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Ito ca panaññaṃ uttari nissaraṇaṃ natthī’’ti. (175-4.)  
    訳文                
     しからば、これより他に、よりすぐれた出離は存在しません』と。  
                       
                       
                       
    175-15.                
     Evaṃ vutte, bhagavā bakaṃ brahmānaṃ etadavoca –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Evaṃ    不変 このように、かくの如き  
      vutte,  vac 受 過分 a いわれた  
      bhagavā    ant 世尊  
      bakaṃ    a 神名、バカ  
      brahmānaṃ  bṛh 名形 an(特) 梵天  
      etad    代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      avoca –  vac いう  
    訳文                
     このように言われて、世尊はバカ梵天へこう仰った。  
                       
                       
                       
    175-16.                
     ‘‘avijjāgato vata, bho, bako brahmā;   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘avijjā  a-vid ā 依(対) 無明  
      gato  gam 過分 a 行った  
      vata,    不変 じつに  
      bho,  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      bako    a 神名、バカ  
      brahmā;  bṛh 名形 an(特) 梵天  
    訳文                
     「友よ、バカ梵天は無明に陥っています。  
                       
                       
                       
    175-17.                
     avijjāgato vata, bho, bako brahmā.   
      語根 品詞 語基 意味  
      avijjāgato vata, bho, bako brahmā. (175-16.)  
    訳文                
     友よ、バカ梵天は無明に陥っています。  
                       
                       
                       
    175-18.                
     Yatra hi nāma aniccaṃyeva samānaṃ niccanti vakkhati, adhuvaṃyeva samānaṃ dhuvanti vakkhati, asassataṃyeva samānaṃ sassatanti vakkhati, akevalaṃyeva samānaṃ kevalanti vakkhati, cavanadhammaṃyeva samānaṃ acavanadhammanti vakkhati.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Yatra    不変 〜するところの所  
      hi    不変 じつに、なぜなら  
      nāma    an 副対 と、という名の →じつに〜であるから  
      aniccaṃ    a 無常の  
      yeva    不変 まさに、のみ、じつに  
      samānaṃ  as 現分 a ある、なる  
      niccan    a 常住の  
      ti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      vakkhati,  vac いう  
      語根 品詞 語基 意味  
      adhuvaṃ    a 堅固ならぬ  
      yeva    不変 まさに、のみ、じつに  
      samānaṃ  as 現分 a ある、なる  
      dhuvan    a 恒常の、堅固の  
      ti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      vakkhati,  同上  
      asassataṃ    a 恒常ならぬ  
      yeva    不変 まさに、のみ、じつに  
      samānaṃ  as 現分 a ある、なる  
      sassatan    a 常の、常恒の、常住の  
      ti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      vakkhati,  同上  
      akevalaṃ    a 不完全な  
      yeva    不変 まさに、のみ、じつに  
      samānaṃ  as 現分 a ある、なる  
      kevalan    a 独一の、独存の、完全の  
      ti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      vakkhati,  同上  
      cavana  cyu a 有(持) 死没、衰変  
      dhammaṃ  dhṛ a 男中  
      yeva    不変 まさに、のみ、じつに  
      samānaṃ  as 現分 a ある、なる  
      acavana  a-cyu a 有(持) 不衰変の  
      dhamman  dhṛ a 男中  
      ti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      vakkhati.  同上  
    訳文                
     およそ、無常なものを常住であるといい、堅固でないものを堅固といい、恒常でないものを恒常といい、不完全なものを完全といい、衰退の性質あるものを不衰退の性質あるものといい、  
    メモ                
     ・Yatra hi nāma の訳を175-21.へ。  
                       
                       
                       
    175-19.                
     Yattha ca pana jāyati ca jīyati ca mīyati ca cavati ca upapajjati ca, tañca tathā vakkhati –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Yattha    不変 〜するところの所  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      pana    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      jāyati  jan 受 生まれる、再生する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      jīyati  ji 受 失う、損失する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      mīyati  mṛ 死す  
      語根 品詞 語基 意味  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      cavati  cyu 死没する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upapajjati  upa-pad 往生する、再生する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ca,    不変 と、また、そして、しかし  
      tañ    代的 それ  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      tathā    不変 かく、その如く  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      vakkhati –  vac いう  
    訳文                
     またおよそ、再生し、損傷し、死に、死没し、転生するそれへ、  
    メモ                
     ・ここも訳を一部次文へ。  
                       
                       
                       
    175-20.                
     ‘idañhi na jāyati na jīyati na mīyati na cavati na upapajjati’.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘idañhi na jāyati na jīyati na mīyati na cavati na upapajjati’. (175-4.)  
    訳文                
     『なぜならこれは、再生せず、損傷せず、死なず、死没せず、転生しないからである』と、そのようにいい、  
                       
                       
                       
    175-21.                
     Santañca panaññaṃ uttari nissaraṇaṃ, ‘natthaññaṃ uttari nissaraṇa’nti vakkhatī’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Santañ  as 現分 ant ある、なる  
      ca panaññaṃ uttari nissaraṇaṃ, ‘natthaññaṃ uttari nissaraṇa’nti (175-4.)  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      vakkhatī’’  vac いう  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     また、他によりすぐれた出離が存在するにもかかわらず、『他によりすぐれた出離は存在しない』というのですから」と。  
                       
                       
                       
    175-22.                
     ‘‘Dvāsattati gotama puññakammā,  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Dvāsattati    i 七十二  
      gotama    a 人名、ゴータマ  
      puñña    a 依(属) 福、善、功徳  
      kammā,  kṛ an  
    訳文                
     〔梵天曰く〕「♪ゴータマよ、〔我々〕七十二人は善業のゆえに、  
    メモ                
     ・puññakammāは有財釈で男性複数主格となっている可能性もあろう。  
     ・諸訳にならったが、この七十二とはどういう数字であろうか。  
                       
                       
                       
    175-23.                
     Vasavattino jātijaraṃ atītā;  
      語根 品詞 語基 意味  
      Vasavattino    in 自在力ある、力ある  
      jāti  jan i 生、誕生、生まれ、種類  
      jaraṃ  jṝ ā 老、老い  
      atītā;  ati-i 名過分 a 中→男 過ぎ去った、過去  
    訳文                
     ♪自在なる者たち、〈生〉と〈老)を超えた者たち、  
                       
                       
                       
    175-24.                
     Ayamantimā vedagū brahmupapatti,  
      語根 品詞 語基 意味  
      Ayam    代的 これ  
      antimā    a 最終の、最後の  
      vedagū  vid 名形 ū 明智者  
      brahma  bṛh 名形 an(特) 依(対)  
      upapatti,    i 往生、再生、転生  
    訳文                
     ♪明智者たちとなった。この梵天への生まれ変わりが、〔輪廻の〕最後である。  
    メモ                
     ・vedagūは単数呼格で「明智者よ」という呼びかけの可能性もあろうか。『パーリ』や『原始』は「智により」などとしているが、これは『註』に依ったものであろう。  
                       
                       
                       
    175-25.                
     Asmābhijappanti janā anekā’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Asmā    代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      abhijappanti  abhi-jalp 欲求する、希求する  
      語根 品詞 語基 意味  
      janā    a  
      anekā’’    a 一つならぬ、多数の  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ♪それゆえ、多くの人々が、〔梵天界への転生を〕希求するのである」  
                       
                       
                       
    175-26.                
     ‘‘Appañhi etaṃ na hi dīghamāyu,  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Appañ    名形 a 少ない、少量  
      hi    不変 じつに、なぜなら  
      etaṃ    代的 これ  
      na    不変 ない  
      hi    不変 じつに、なぜなら  
      dīgham    a 長い  
      āyu,    us 寿、寿命  
    訳文                
     〔世尊曰く〕「♪この寿命はわずかで、長くはない。  
                       
                       
                       
    175-27.                
     Yaṃ tvaṃ baka maññasi dīghamāyuṃ;  
      語根 品詞 語基 意味  
      Yaṃ    代的 (関係代名詞)  
      tvaṃ    代的 あなた  
      baka    a 神名、バカ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      maññasi  man 考える  
      語根 品詞 語基 意味  
      dīgham    a 長く  
      āyuṃ;    us 寿命  
    訳文                
     ♪すなわちバカよ、そなたが長寿と考えているようなその〔寿命〕は。  
                       
                       
                       
    175-28.                
     Sataṃ sahassānaṃ [sahassāna (syā. kaṃ.)] nirabbudānaṃ,  
      語根 品詞 語基 意味  
      Sataṃ    a  
      sahassānaṃ    a  
      nirabbudānaṃ,    a ニラッブダ、大数の名、地獄の名  
    訳文                
     ♪百千ニラッブダのものとして、  
    メモ                
     ・『原始』は、ここでの「十万ニラッブダ」を、前文の、梵天の想定する長寿を言ったものと解している。ここでは『南伝』、『パーリ』にならったが、それもありうる解釈である。  
                       
                       
                       
    175-29.                
     Āyuṃ pajānāmi tavāhaṃ brahme’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Āyuṃ    us 寿命  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pajānāmi  pra-jñā 知る、了知する  
      語根 品詞 語基 意味  
      tava    代的 あなた  
      ahaṃ    代的  
      brahme’’  bṛh 名形 an(特) 梵天  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ♪そなたの寿命を私は知る、梵天よ」  
                       
                       
                       
    175-30.                
     ‘‘Anantadassī bhagavāhamasmi,  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Ananta    a 依(属) 無辺の  
      dassī  dṛś in 見ある、認める  
      bhagavā    ant 世尊  
      aham    代的  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      asmi,  as ある、なる  
    訳文                
     ♪〔梵天曰く〕「♪世尊よ、私は無辺を見る者である。  
    メモ                
     ・tumheを補って説明する『註』に従い、『パーリ』と『南伝』は「汝もし『我は無辺の見者にて正老の悲悩を超えたり』と謂わば」などと訳す。ここでは偈の文そのままに梵天の自認として訳した。  
                       
                       
                       
    175-31.                
     Jātijaraṃ sokamupātivatto;  
      語根 品詞 語基 意味  
      Jāti  jan i 生、誕生、生まれ、種類  
      jaraṃ  jṝ ā 老、老い  
      sokam  śuc a 憂愁、愁い  
      upātivatto;  upa-ati-vṛt 過分 a 超えた、脱した  
    訳文                
     ♪〈生〉と〈老〉を、愁いを超えた者である。  
                       
                       
                       
    175-32.                
     Kiṃ me purāṇaṃ vatasīlavattaṃ,  
      語根 品詞 語基 意味  
      Kiṃ    代的 何、なぜ、いかに  
      me    代的  
      purāṇaṃ    名形 a 以前の、古い  
      vata    a 男中 禁戒、誓戒、善行  
      sīla    a 依(属)  
      vattaṃ,  vṛt 名過分 a 義務、徳行、儀法  
    訳文                
     ♪私にはいかなる過去の禁戒と戒行があるか、  
    メモ                
     ・どうも唐突であるが、現在の梵天の寿命を知っているということは、それを決定づけた過去の業を知っているということに他ならないから、それを述べてみせよ、ということなのであろう。  
                       
                       
                       
    175-33.                
     Ācikkha me taṃ yamahaṃ vijaññā’’ti.  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      Ācikkha  ā-khyā 強 告げる、述べる、説く  
      語根 品詞 語基 意味  
      me    代的  
      taṃ    代的 それ  
      yam    代的 (関係代名詞)  
      ahaṃ    代的  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      vijaññā’’  vi-jñā 了別する、識知する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ♪私が了解できるように、そなたはそれを私に述べてみよ」  
    メモ                
     ・願望法vijaññāは三人称だが、他の可能性が浮かばず、そのように解した。  
                       
                       
                       
    175-34.                
     ‘‘Yaṃ tvaṃ apāyesi bahū manusse,  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Yaṃ    代的 (関係代名詞)  
      tvaṃ    代的 あなた  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      apāyesi   使 飲ませる  
      語根 品詞 語基 意味  
      bahū    u 多くの  
      manusse,    a  
    訳文                
     〔世尊曰く〕「♪そなたは多くの人々に〔水を〕飲ませた。  
                       
                       
                       
    175-35.                
     Pipāsite ghammani samparete;  
      語根 品詞 語基 意味  
      Pipāsite   意 過分 a 乾いた、渇望の  
      ghammani    an? 炎暑、夏熱  
      samparete;  saṃ-pari-i 過分 a 囲まれた、悩まされた  
    訳文                
     ♪乾いた、炎熱に悩まされた者たちに。  
                       
                       
                       
    175-36.                
     Taṃ te purāṇaṃ vatasīlavattaṃ,  
      語根 品詞 語基 意味  
      Taṃ    代的 それ  
      te    代的 あなた  
      purāṇaṃ    名形 a 以前の、古い  
      vata    a 男中 禁戒、誓戒、善行  
      sīla    a 依(属)  
      vattaṃ,  vṛt 名過分 a 義務、徳行、儀法  
    訳文                
     ♪その、そなたの過去の禁戒と戒行を  
                       
                       
                       
    175-37.                
     Suttappabuddhova anussarāmi.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Sutta  svap 名過分 a 依(奪) 眠り、眠った  
      pabuddho  pra-budh 過分 a 目を覚ました  
      iva    不変 まさに、のみ、じつに  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      anussarāmi.  anu-smṛ 随念する、憶念する  
    訳文                
     ♪私は眠りからさめた者の如く、憶念している。  
                       
                       
                       
    175-38.                
     ‘‘Yaṃ eṇikūlasmiṃ janaṃ gahītaṃ,  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Yaṃ    代的 (関係代名詞)  
      eṇi    i 地名、エーニ(鹿、羚羊)  
      kūlasmiṃ    a 斜面、土手、堤防  
      janaṃ    a 人々  
      gahītaṃ,  grah 過分 a 捕らえられた、把持された  
    訳文                
     ♪エーニ堤防にとらわれた人々、  
                       
                       
                       
    175-39.                
     Amocayī gayhakaṃ nīyamānaṃ;  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      Amocayī  muc 使 逃れさせた  
      語根 品詞 語基 意味  
      gayhakaṃ    a 捕らえられるべき  
      nīyamānaṃ;   受 現分 a 導かれた  
    訳文                
     ♪連行された虜囚を解放した。  
                       
                       
                       
    175-40.                
     Taṃ te purāṇaṃ vatasīlavattaṃ,  
      語根 品詞 語基 意味  
      Taṃ te purāṇaṃ vatasīlavattaṃ, (175-36.)  
    訳文                
     ♪その、そなたの過去の禁戒と戒行を  
                       
                       
                       
    175-41.                
     Suttappabuddhova anussarāmi.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Suttappabuddhova anussarāmi. (175-37.)  
    訳文                
     ♪私は眠りからさめた者の如く、憶念している。  
                       
                       
                       
    175-42.                
     ‘‘Gaṅgāya sotasmiṃ gahītanāvaṃ,  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Gaṅgāya    ā 地名、ガンガー  
      sotasmiṃ  sru as 男中 流れ、流水  
      gahīta  grah 過分 a 捕らえられた、把持された  
      nāvaṃ,    ā  
    訳文                
     ♪ガンガーの流れの中で、  
    メモ                
     ・訳を一部次文へ。  
                       
                       
                       
    175-43.                
     Luddena nāgena manussakamyā;  
      語根 品詞 語基 意味  
      Luddena    名形 a 恐ろしい、凶暴な  
      nāgena    a 竜、蛇、象  
      manussa    a 依(対) 人、人間  
      kamyā;    不変 欲して  
    訳文                
     ♪人を欲する竜によって捕らわれた船を、  
                       
                       
                       
    175-44.                
     Pamocayittha balasā pasayha,  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      Pamocayittha  pra-muc 使 複(単) 脱させた、放った、自由にさせた  
      語根 品詞 語基 意味  
      balasā    名形 as? 力、強い、軍  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pasayha,  pra-sah 征服する、圧迫する、強いる  
    訳文                
     ♪力によって征服し、自由にさせた。  
    メモ                
     ・活用語尾-itthaは二人称複数もしくは三人称単数である。ここでは上のように表記した。  
                       
                       
                       
    175-45.                
     Taṃ te purāṇaṃ vatasīlavattaṃ,  
      語根 品詞 語基 意味  
      Taṃ te purāṇaṃ vatasīlavattaṃ, (175-36.)  
    訳文                
     ♪その、そなたの過去の禁戒と戒行を  
                       
                       
                       
    175-46.                
     Suttappabuddhova anussarāmi.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Suttappabuddhova anussarāmi. (175-37.)  
    訳文                
     ♪私は眠りからさめた者の如く、憶念している。  
                       
                       
                       
    175-47.                
     ‘‘Kappo ca te baddhacaro ahosiṃ,  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Kappo    a 人名、カッパ  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      te    代的 あなた  
      baddhacaro  car 名形 a 召使い、奉仕する、奴隷  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ahosiṃ,  bhū ある、なる  
    訳文                
     ♪また私はカッパ〔という名の〕、そなたの奉仕者であった。  
    メモ                
     ・baddhacarobaddhacaroの異体とみなした。  
                       
                       
                       
    175-48.                
     Sambuddhimantaṃ [sambuddhivantaṃ (bahūsu)] vatinaṃ amaññi;  
      語根 品詞 語基 意味  
      Sambuddhimantaṃ  saṃ-budh ant 正覚ある  
      vatinaṃ    in 禁戒の  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      amaññi;  man 考える、思う  
    訳文                
     ♪私はそなたを、正覚ある、禁戒ある者と考えたものだ。  
                       
                       
                       
    175-49.                
     Taṃ te purāṇaṃ vatasīlavattaṃ,  
      語根 品詞 語基 意味  
      Taṃ te purāṇaṃ vatasīlavattaṃ, (175-36.)  
    訳文                
     ♪その、そなたの過去の禁戒と戒行を  
                       
                       
                       
    175-50.                
     Suttappabuddhova anussarāmī’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Suttappabuddhova anussarāmī’’ (175-37.)  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ♪私は眠りからさめた者の如く、憶念している」  
                       
                       
                       
    175-51.                
     ‘‘Addhā pajānāsi mametamāyuṃ,  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Addhā    不変 じつに、確かに  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pajānāsi  pra-jñā 知る、了知する  
      語根 品詞 語基 意味  
      mama    代的  
      etam    代的 これ  
      āyuṃ,    us 寿命  
    訳文                
     〔梵天曰く〕「♪確かにそなたは、私のこの寿命を了知している。  
                       
                       
                       
    175-52.                
     Aññepi [aññampi (sī. pī.)] jānāsi tathā hi buddho;  
      語根 品詞 語基 意味  
      Aññe    代的  
      pi    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      jānāsi  jñā 知る  
      語根 品詞 語基 意味  
      tathā    不変 かく、その如く  
      hi    不変 じつに、なぜなら  
      buddho;  budh 名過分 a 仏陀、覚者  
    訳文                
     ♪仏陀というものがそうであるとおり、そなたは他の諸々をも知っている。  
    メモ                
     ・このAññeとは「他者」か。文脈からすると「他生」の可能性も想定されるが、確証はない。  
                       
                       
                       
    175-53.                
     Tathā hi tyāyaṃ jalitānubhāvo,  
      語根 品詞 語基 意味  
      Tathā    不変 かく、その如く  
      hi    不変 じつに、なぜなら  
      te    代的 あなた  
      ayaṃ    代的 これ  
      jalita  jval 過分 a 燃える、輝く  
      anubhāvo,  anu-bhū a 威力、勢力  
    訳文                
     ♪〔仏陀というものが〕そうであるとおり、そなたのその輝く威力は、  
                       
                       
                       
    175-54.                
     Obhāsayaṃ tiṭṭhati brahmaloka’’nti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Obhāsayaṃ  ava-bhāṣ 使 現分 ant 照らす、輝かす  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      tiṭṭhati  sthā 住立する、立つ  
      語根 品詞 語基 意味  
      brahma  bṛh 名形 an(特)  
      loka’’n    a 世界、世間  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ♪梵天界を照らして住立している」  
                       
                       
  ←前へ   トップへ   次へ→
inserted by FC2 system