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     Namo tassa bhagavato arahato sammāsambuddhassa  
      語根 品詞 語基 意味  
      Namo  nam as 南無、礼拝  
      tassa    代的 それ、彼  
      bhagavato    ant 世尊  
      arahato  arh 名現分 ant 阿羅漢、応供  
      sammā    不変 正しい、正しく  
      sambuddhassa  saṃ-budh 名過分 a 等覚  
    訳文                
     かの阿羅漢にして正等覚者たる世尊に礼拝いたします  
    メモ                
     ・(追記)この「有偈篇」はこれまで数経を一ページに収めてたが、「因縁篇」以降のように一ページ一経に改めた。結果、繰り返しの表記が複数ページに跨がっているため、要注意。  
                       
                       
                       
     Saṃyuttanikāyo  
      語根 品詞 語基 意味  
      Saṃyutta  saṃ-yuj 過分 a 依(属) 結合、相応、関係した  
      nikāyo    a 部、部類  
    訳文                
     『相応部〔経典〕』  
                       
                       
                       
     Sagāthāvaggo  
      語根 品詞 語基 意味  
      Sagāthā    a 依(属) 偈ある  
      vaggo    a 章、品  
    訳文                
     「有偈篇」  
                       
                       
                       
     1. Devatāsaṃyuttaṃ  
      語根 品詞 語基 意味  
      Devatā    ā 依(属) 神々、女神、地祇  
      saṃyuttaṃ  saṃ-yuj 過分 a 結ばれた、結合した  
    訳文                
     「諸天相応」  
    メモ                
     ・1-12. passāmiという活用などを見るに、本章のdevatāは複数のニュアンスの「神々」ではなく単体の「地祇」「神霊」と捉えたほうが適切な場合も多いが、伝統的な訳に従い、ここでは「諸天」とした。  
                       
                       
                       
     1. Naḷavaggo  
      語根 品詞 語基 意味  
      Naḷa    a 依(属)  
      vaggo    a 章、品  
    訳文                
     「葦品」  
                       
                       
                       
     1. Oghataraṇasuttaṃ  
      語根 品詞 語基 意味  
      Ogha    a 依(属) 暴流、洪水  
      taraṇa  tṛ a 依(属) 度、度脱  
      suttaṃ  sīv a 経、糸  
    訳文                
     「暴流度脱経」(『相応部』1-1  
                       
                       
                       
    1-1.                
     1. Evaṃ me sutaṃ –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Evaṃ    不変 このように、かくの如き  
      me    代的  
      sutaṃ –  śru 名過分 a 所聞、聞かれた  
    訳文                
     私はこのように聞いた。  
                       
                       
                       
    1-2.                
     ekaṃ samayaṃ bhagavā sāvatthiyaṃ viharati jetavane anāthapiṇḍikassa ārāme.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ekaṃ    代的 副対 一、とある  
      samayaṃ  saṃ-i a 副対  
      bhagavā    ant 世尊  
      sāvatthiyaṃ    ī 地名、サーヴァッティー  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      viharati  vi-hṛ 住する  
      語根 品詞 語基 意味  
      jetavane    a 地名、ジェータ林、祇樹、祇園  
      anāthapiṇḍikassa    a 人名、アナータピンディカ、給孤独  
      ārāme.    a  
    訳文                
     あるとき世尊はサーヴァッティーのジェータ林、アナータピンディカ園に住しておられた。  
                       
                       
                       
    1-3.                
     Atha kho aññatarā devatā abhikkantāya rattiyā abhikkantavaṇṇā kevalakappaṃ jetavanaṃ obhāsetvā yena bhagavā tenupasaṅkami;   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また、そこに  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      aññatarā    代的 とある  
      devatā    ā 神々、女神、地祇  
      abhikkantāya  abhi-kram 過分 a 過ぎ去った、進んだ、超えた、素晴らしい  
      rattiyā    i  
      abhikkanta  abhi-kram 過分 a 有(持) 過ぎ去った、進んだ、超えた、素晴らしい  
      vaṇṇā    a 男→女 色、容色  
      kevalakappaṃ    不変 全面に  
      jetavanaṃ    a 地名、ジェータ林、祇樹、祇園  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      obhāsetvā  ava-bhās 使 照らす  
      語根 品詞 語基 意味  
      yena    代的 (関係代名詞、〜tenaで「〜の所に」)  
      bhagavā    ant 世尊  
      tena    代的 それ、彼、それによって、それゆえ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upasaṅkami;  upa-saṃ-kram 近づいた  
    訳文                
     ときに、すぐれた容色をもったとある神霊が、夜更けに、ジェータ林を全面に照らしながら、世尊のもとへ近づいた。  
                       
                       
                       
    1-4.                
     upasaṅkamitvā bhagavantaṃ abhivādetvā ekamantaṃ aṭṭhāsi.   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upasaṅkamitvā  upa-saṃ-kram 近づく  
      語根 品詞 語基 意味  
      bhagavantaṃ    ant 世尊  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      abhivādetvā  abhi-vad 使 敬礼する、礼拝する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ekamantaṃ    不変 一方に  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      aṭṭhāsi.  sthā 立つ  
    訳文                
     近づいて、世尊へ礼拝し、一方へ立った。  
                       
                       
                       
    1-5.                
     Ekamantaṃ ṭhitā kho sā devatā bhagavantaṃ etadavoca –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Ekamantaṃ    不変 一方に  
      ṭhitā  sthā 過分 a 立った  
      kho    不変 じつに、たしかに  
          代的 それ、彼女  
      devatā    ā 神々、女神、地祇  
      bhagavantaṃ    ant 世尊  
      etad    代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      avoca –  vac いう  
    訳文                
     一方へ立ったその神霊は、世尊へこう言った。  
                       
                       
                       
    1-6.                
     ‘‘‘kathaṃ nu tvaṃ, mārisa, oghamatarī’ti?   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘‘kathaṃ    不変 いかに、なぜに  
      nu    不変 いったい、たぶん、〜かどうか、〜ではないか  
      tvaṃ,    代的 あなた  
      mārisa,    不変 我が師よ、我が友よ  
      ogham    a 暴流  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      atarī’    渡る、度脱する、超える  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti?    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「わが師よ、あなたはいったい、いかに暴流を度脱したのでしょうか」と。  
                       
                       
                       
    1-7.                
     ‘Appatiṭṭhaṃ khvāhaṃ, āvuso, anāyūhaṃ oghamatari’nti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘Appatiṭṭhaṃ  a-pra-sthā 現分 ant 住立しない、足場のない、無底の、無拠の  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      ahaṃ,    代的  
      āvuso,    不変 友よ  
      anāyūhaṃ  an-ā-vah 現分 ant 努力しない、励まない  
      ogham    a 暴流  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      atari’n    渡る、度脱する、超える  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「友よ、わたしは〔煩悩に〕止住せず、〔邪行を〕勤めずして、暴流を度脱したのです」  
    メモ                
     ・『南伝』は「住せず、求めずして」、『パーリ』は「止まることなく、求めることなく」とする。『原始』は「立ち止まることなく、あがくことなしに」としている。ここでは『複註』の解釈をもって補訳したが、『原始』のように実際に川を渡る動作のように訳すべきかも知れない。  
     ・『複註』にはこうある。「Appatiṭṭhahantoとは、煩悩などの力によって停止せず、沈まないという意味である。Anāyūhantoとは、行作などの力によって努力せず、中道へ跳躍して救出される〔という事である〕。それゆえ〔『註』は、anāyūhaṃの語の解釈として〕avāyamantoと〔も〕いうのである。邪行などの力によって励まない、という趣意である」。  
     ・その原文。Appatiṭṭhahantoti kilesādīnaṃ vasena asantiṭṭhanto, asaṃsīdantoti attho. Anāyūhantoti abhisaṅkhārādivasena na āyūhanto majjhimaṃ paṭipadaṃ vilaṅghitvā nibbuyhanto.Tenāha – ‘‘avāyamanto’’ti, micchāvāyāmavasena avāyamantoti adhippāyo.   
                       
                       
                       
    1-8.                
     ‘Yathā kathaṃ pana tvaṃ, mārisa, appatiṭṭhaṃ anāyūhaṃ oghamatarī’ti?   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘Yathā    不変 〜のごとくに、〜のように  
      kathaṃ pana tvaṃ, mārisa, appatiṭṭhaṃ anāyūhaṃ oghamatarī’ti? (1-6, 7.)  
      pana    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
    訳文                
     「しからばわが師よ、あなたはいったい、いかように〔煩悩に〕止住せず、〔邪行を〕勤めずして、暴流を度脱したのでしょうか」  
                       
                       
                       
    1-9.                
     ‘Yadākhvāhaṃ, āvuso, santiṭṭhāmi tadāssu saṃsīdāmi;   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘Yadā    不変 〜の時  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      ahaṃ,    代的  
      āvuso,    不変 友よ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      santiṭṭhāmi  saṃ-sthā 立つ、停止する、住立する  
      語根 品詞 語基 意味  
      tadā    不変 そのとき  
      assu    不変 じつに  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      saṃsīdāmi;  saṃ-sad 沈む、消沈する、行き止まる  
    訳文                
     「友よ、私が〔煩悩に〕止住すると、じつにその時、私は沈んでしまいます。  
                       
                       
                       
    1-10.                
     yadākhvāhaṃ, āvuso, āyūhāmi tadāssu nibbuyhāmi [nivuyhāmi (syā. kaṃ. ka.)].   
      語根 品詞 語基 意味  
      yadā    不変 〜の時  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      ahaṃ,    代的  
      āvuso,    不変 友よ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      āyūhāmi  ā-vah 努力する、励む、遂行する  
      語根 品詞 語基 意味  
      tadā    不変 そのとき  
      assu    不変 じつに  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      nibbuyhāmi.  nir-vah 受 運び出される、救助される  
    訳文                
     友よ、私が〔邪行を〕勤めると、じつにその時、私は押し流されてしまいます。  
    メモ                
     ・nibbuyhāmiを「私は救助される」とする前述の『複註』の文脈に従うと、この文は「勤めると救われる」という意味になり、これまでの文脈にそぐわなくなる。  
     ・そこで『註』の「Nibbuyhāmiとは立っていることが不可能となり、行き過ぎる〔ということである〕」Nibbuyhāmīti ṭhātuṃ asakkonto ativattāmi解釈に基づき、上記のように訳してみた。しかしこれも、「超過、征服」というニュアンスをもつativattāmiの語を無理に訳した感は否めない。  
     ・「勤めると救われる」というのは通仏教的なテーマであるだけに、さきのanāyūhaṃの語が、「勤めずして」(an-ā-vah由来)でなく「随勤して」(anu-ā-vah由来)であった可能性はあるまいか。  
                       
                       
                       
    1-11.                
     Evaṃ khvāhaṃ, āvuso, appatiṭṭhaṃ anāyūhaṃ oghamatari’’’nti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Evaṃ    不変 このように、かくの如き  
      khvāhaṃ, āvuso, appatiṭṭhaṃ anāyūhaṃ oghamatari’’’nti. (1-7.)  
    訳文                
     友よ、わたしはこのように〔煩悩に〕止住せず、〔邪行を〕勤めずして、暴流を度脱したのです」  
                       
                       
                       
    1-12.                
     ‘‘Cirassaṃ vata passāmi, brāhmaṇaṃ parinibbutaṃ;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Cirassaṃ    不変 久しく、遂に  
      vata    不変 じつに  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      passāmi,  paś 見る  
      語根 品詞 語基 意味  
      brāhmaṇaṃ  bṛh a 婆羅門、司祭  
      parinibbutaṃ;  pari-nir-vā? 過分 a 般涅槃した、完成した、円寂した  
    訳文                
     「♪ついに私は円寂した婆羅門を見た。  
                       
                       
                       
    1-13.                
     Appatiṭṭhaṃ anāyūhaṃ, tiṇṇaṃ loke visattika’’nti. –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Appatiṭṭhaṃ  a-pra-sthā 現分 ant 住立しない、足場のない、無底の、無拠の  
      anāyūhaṃ,  an-ā-vah 現分 ant 努力しない、励まない  
      tiṇṇaṃ  tṛ 過分 a 渡った、度脱した  
      loke    a 世界、世間  
      visattika’’n    ā 執着、愛着  
      ti. –    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ♪〔煩悩に〕止住せず、〔邪行を〕勤めずして世間における執着を度脱した者を」という、  
                       
                       
                       
    1-14.                
     Idamavoca sā devatā.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Idam    代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      avoca  vac いう  
      語根 品詞 語基 意味  
          代的 それ、彼女  
      devatā.    ā 神々、女神、地祇  
    訳文                
     これを、その神霊は言った。  
                       
                       
                       
    1-15.                
     Samanuñño satthā ahosi.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Samanuñño  saṃ-anu-jñā a 是認者  
      satthā  śās ar  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ahosi.  bhū ある、なる  
    訳文                
     師は是認された。  
                       
                       
                       
    1-16.                
     Atha kho sā devatā –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また、そこに  
      kho    不変 じつに、たしかに  
          代的 それ、彼女  
      devatā –    ā 神々、女神、地祇  
    訳文                
     ときにその神霊は、  
                       
                       
                       
    1-17.                
     ‘‘samanuñño me satthā’’ti bhagavantaṃ abhivādetvā padakkhiṇaṃ katvā tatthevantaradhāyīti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘samanuñño  saṃ-anu-jñā a 是認者  
      me    代的  
      satthā’’  śās ar  
      ti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      bhagavantaṃ    ant 世尊  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      abhivādetvā  abhi-vad 使 敬礼する、礼拝する  
      語根 品詞 語基 意味  
      padakkhiṇaṃ    a 右回り、右繞、幸福な、器用な  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      katvā  kṛ なす  
      語根 品詞 語基 意味  
      tattha    不変 そこで、そこに、そのとき、そのなかで  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      antaradhāyī  dhā 滅没する、消失する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「師は私〔の言葉〕を是認された」といって世尊へ礼拝し、右繞をなして、そこから消失した。  
                       
                       
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