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     Dāsiputtavādo  
      語根 品詞 語基 意味  
      Dāsi   ī 依(属) 女の奴隷、婢女  
      putta   a 依(属) 息子  
      vādo vad a 説、語、論  
    訳文                
     【女奴隷の子に関する話】  
                       
                       
                       
    267-1.                
     267. Atha kho bhagavato etadahosi –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      bhagavato    ant 世尊  
      etad   代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ahosi –  bhū ある  
    訳文                
     ときに、世尊にはこの〔思いが〕生じた。  
                       
                       
                       
    267-2.                
     ‘‘atibāḷhaṃ kho ayaṃ ambaṭṭho māṇavo sakyesu ibbhavādena nimmādeti, yaṃnūnāhaṃ gottaṃ puccheyya’’nti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘atibāḷhaṃ    不変 極めて強く、しっかりと、きわめて激しい、甚だしい  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      ayaṃ    代的 これ  
      ambaṭṭho    a 人名、アンバッタ  
      māṇavo    a 学童、青年、若い婆羅門  
      sakyesu    a 氏族名、サキャ、釈迦  
      ibbha   a 依(属) 奴隷の、卑俗の、邪黒の  
      vādena  vad a 説、語、論  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      nimmādeti,  ni-mṛd 砕破する、恥をかかす、侵害する  
      語根 品詞 語基 意味  
      yaṃ   代的 (関係代名詞)  
      nūna   不変 たしかに →いかに〜すべきか、〜したらどうか  
      ahaṃ    代的  
      gottaṃ    a 氏、氏姓、種姓、家系  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      puccheyya’’n prach 問う  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「じつにこのアンバッタ青年は、あまりにひどく、釈迦族に関して卑俗であるとの説をもって侮蔑している。私は〔彼の〕氏姓を問うてみるとしようか」と。  
                       
                       
                       
    267-3.                
     Atha kho bhagavā ambaṭṭhaṃ māṇavaṃ etadavoca –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      bhagavā    ant 世尊  
      ambaṭṭhaṃ    a 人名、アンバッタ  
      māṇavaṃ    a 学童、青年、若い婆羅門  
      etad   代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      avoca –  vac いう  
    訳文                
     ときに世尊はアンバッタ青年にこういった。  
                       
                       
                       
    267-4.                
     ‘‘kathaṃ gottosi, ambaṭṭhā’’ti?   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘kathaṃ    不変 いかに、なぜに  
      gotto   a 中(男) 氏、氏姓、種姓、家系  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      asi, as ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      ambaṭṭhā’’   a 人名、アンバッタ  
      ti?    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「アンバッタよ、あなたはいかなる氏姓のものなのですか」と。  
    メモ                
     ・gottaは中性だが、中性名詞はまれに男性化するというルールで解した。あるいはkathaṃ と有財釈で複合していると見るべきか。  
                       
                       
                       
    267-5.                
     ‘‘Kaṇhāyanohamasmi, bho gotamā’’ti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Kaṇhāyano   a 氏族名、カンハーヤナ  
      aham   代的  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      asmi,  as ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      bho  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      gotamā’’   a 人名、ゴータマ  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「尊者ゴータマよ、わたしはカンハーヤナ氏族のものです」  
                       
                       
                       
    267-6.                
     Porāṇaṃ kho pana te ambaṭṭha mātāpettikaṃ nāmagottaṃ anussarato ayyaputtā sakyā bhavanti;   
      語根 品詞 語基 意味  
      Porāṇaṃ    名形 a 男→中 往昔の、古い、古人、古聖  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      pana    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      te    代的 属絶 あなた  
      ambaṭṭha    a 人名、アンバッタ  
      mātā   ar  
      pettikaṃ    a 父の  
      nāma   an  
      gottaṃ    a 氏、氏姓、種姓、家系  
      anussarato  anu-smṛ 現分 ant 属絶 憶念する、随念する  
      ayya   名形 a 高貴の、聖の  
      puttā    a 息子 →主人、旦那  
      sakyā    a 氏族名、サキャ、釈迦  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      bhavanti;  bhū ある  
    訳文                
     「しからばアンバッタよ、あなたが往昔の、父母の姓名を思いおこしてゆくと、釈迦族が主人であり、  
                       
                       
                       
    267-7.                
     dāsiputto tvamasi sakyānaṃ.   
      語根 品詞 語基 意味  
      dāsi   ī 依(属) 女の奴隷、婢女  
      putto    a 息子  
      tvam   代的 あなた  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      asi as ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      sakyānaṃ.    a 氏族名、サキャ、釈迦  
    訳文                
     あなたは釈迦族の奴隷女の子孫となるのです。  
                       
                       
                       
    267-8.                
     Sakyā kho pana, ambaṭṭha, rājānaṃ okkākaṃ pitāmahaṃ dahanti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Sakyā    a 氏族名、サキャ、釈迦  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      pana,    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      ambaṭṭha,    a 人名、アンバッタ  
      rājānaṃ    an  
      okkākaṃ    a 人名、オッカーカ、甘蔗王  
      pitā   ar  
      mahaṃ    ant 大 →父祖  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      dahanti. dhā 置く、定める  
    訳文                
     じつにアンバッタよ、釈迦族はオッカーカ王を父祖とします。  
    メモ                
     ・『経集』997などにも甘蔗王の名は出る。  
                       
                       
                       
    267-9.                
     ‘‘Bhūtapubbaṃ, ambaṭṭha, rājā okkāko yā sā mahesī piyā manāpā, tassā puttassa rajjaṃ pariṇāmetukāmo jeṭṭhakumāre raṭṭhasmā pabbājesi –   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Bhūta bhū 過分 a 存在した  
      pubbaṃ,    代的 副対 過去の →往昔  
      ambaṭṭha,    a 人名、アンバッタ  
      rājā    an  
      okkāko    a 人名、オッカーカ、甘蔗王  
          代的 (関係代名詞)  
          代的 それ、彼女  
      mahesī    ī 皇后、第一婦人  
      piyā    a 可愛の、所愛の  
      manāpā,    a 可意の、適意の  
      tassā    代的 それ、彼女  
      puttassa    a 息子  
      rajjaṃ    a 王たること、王国、王位、王権、統治、政権  
      pariṇāmetu pari-nam 使 不定 変化させること、曲げること、結果を得させること  
      kāmo    a  
      jeṭṭha   a 最老の、最年長の、最勝  
      kumāre    a 子供、童子  
      raṭṭhasmā    a 王国  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pabbājesi –  pra-vraj 使 出家させる、遁世させる  
    訳文                
     アンバッタよ、その昔、オッカーカ王は、所愛適意のかの皇后、その息子に王位を得させることを欲して、年長の子供たちを王国から放逐しました。  
                       
                       
                       
    267-10.                
     okkāmukhaṃ karakaṇḍaṃ [ukkāmukhaṃ karakaṇḍuṃ (sī. syā.)] hatthinikaṃ sinisūraṃ [sinipuraṃ (sī. syā.)].   
      語根 品詞 語基 意味  
      okkāmukhaṃ    a 人名、オッカームカ  
      karakaṇḍaṃ    a 人名、カラカンダ  
      hatthinikaṃ    a 人名、ハッティニカ  
      sinisūraṃ    a 人名、シニスーラ  
    訳文                
     オッカームカ、カラカンダ、ハッティニカ、シニスーラ〔たち〕を。  
    メモ                
     ・版によって名前に差異があるようである。  
                       
                       
                       
    267-11.                
     Te raṭṭhasmā pabbājitā himavantapasse pokkharaṇiyā tīre mahāsākasaṇḍo, tattha vāsaṃ kappesuṃ.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Te    代的 それら、彼ら  
      raṭṭhasmā    a 王国  
      pabbājitā  pra-vraj 使 過分 a 出家させられた、遁世させされた  
      himavanta   a 依(属) ヒマラヤ  
      passe    a 男中 脇、山腹  
      pokkharaṇiyā    ī 蓮池、泉  
      tīre  tṛ a  
      mahā   ant  
      sāka   a 依(属) サーカ樹  
      saṇḍo,    a 群、衆、叢  
      tattha    不変 そこで、そこに、そのとき、そのなかで  
      vāsaṃ  vas a 住、家  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      kappesuṃ.  なす、営む、整える、準備する  
    訳文                
     王国より放逐されたかれらは、ヒマラヤの中腹にある蓮池の岸の大サーカ樹群、そこに住まいをなしました。  
    メモ                
     ・主格が二つあるが、これはsaṇḍoにかかるべきyoが省略された構文とみた。  
                       
                       
                       
    267-12.                
     Te jātisambhedabhayā sakāhi bhaginīhi saddhiṃ saṃvāsaṃ kappesuṃ.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Te    代的 それら、彼ら  
      jāti   i 依(属) 生、生まれ、血統  
      sambheda saṃ-bhid a 依(奪) 混合、汚染  
      bhayā  bhī a 男中 恐れ、恐怖  
      sakāhi    a 自分の  
      bhaginīhi    ī 姉妹  
      saddhiṃ    不変 共に、一緒に(具格支配)  
      saṃvāsaṃ  saṃ-vas a 共住、同住、性交、親交  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      kappesuṃ.  kḷp なす、営む、整える、準備する  
    訳文                
     彼らは、血統の混淆をおそれて、自分の姉妹たちと共住をなしました。  
                       
                       
                       
    267-13.                
     ‘‘Atha kho, ambaṭṭha, rājā okkāko amacce pārisajje āmantesi –   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Atha    不変 ときに、また  
      kho,    不変 じつに、たしかに  
      ambaṭṭha,    a 人名、アンバッタ  
      rājā    an  
      okkāko    a 人名、オッカーカ、甘蔗王  
      amacce    a 大臣  
      pārisajje    a 廷臣  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      āmantesi –    呼びかける、話す、相談する  
    訳文                
     アンバッタよ、ときにオッカーカ王は大臣、廷臣たちへ話しかけました。  
                       
                       
                       
    267-14.                
     ‘kahaṃ nu kho, bho, etarahi kumārā sammantī’ti?   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘kahaṃ    不変 どこに  
      nu    不変 〜かどうか、〜ではないか  
      kho,    不変 じつに、たしかに  
      bho,  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      etarahi    不変 いま  
      kumārā    a 子供、童子  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      sammantī’ śam 静まる、寂止する、休息する、住む  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti?    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     『友よ、子供たちは今、一体どこにすんでいるのであろうか』と。  
                       
                       
                       
    267-15.                
     ‘Atthi, deva, himavantapasse pokkharaṇiyā tīre mahāsākasaṇḍo, tatthetarahi kumārā sammanti.   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ‘Atthi,  as ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      deva,    a 天、神、王、陛下  
      himavantapasse pokkharaṇiyā tīre mahāsākasaṇḍo, tattha (267-11.)  
      etarahi    不変 いま  
      kumārā    a 子供、童子  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      sammanti.  śam 静まる、寂止する、休息する、住む  
    訳文                
     『陛下、いまご子息がたは、ヒマラヤの中腹にある蓮池の岸の大サーカ樹群、そこにすんでおられます。  
                       
                       
                       
    267-16.                
     Te jātisambhedabhayā sakāhi bhaginīhi saddhiṃ saṃvāsaṃ kappentī’ti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Te jātisambhedabhayā sakāhi bhaginīhi saddhiṃ saṃvāsaṃ (267-12.)  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      kappentī’ kḷp なす、営む、整える、準備する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     彼らは、血統の混淆をおそれて、ご自分のご姉妹たちと共住をなしておられます』  
                       
                       
                       
    267-17.                
     Atha kho, ambaṭṭha, rājā okkāko udānaṃ udānesi –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また  
      kho,    不変 じつに、たしかに  
      ambaṭṭha,    a 人名、アンバッタ  
      rājā    an  
      okkāko    a 人名、オッカーカ、甘蔗王  
      udānaṃ    a 自説、感興語  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      udānesi –    発音する、発話する  
    訳文                
     アンバッタよ、ときにオッカーカ王は感嘆の声を発しました。  
                       
                       
                       
    267-18.                
     ‘sakyā vata, bho, kumārā, paramasakyā vata, bho, kumārā’ti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘sakyā  śak a 可能な、できる  
      vata,    不変 じつに  
      bho,  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      kumārā,    a 子供、童子  
      parama   a 最高、最上、第一  
      sakyā  śak a 可能な、できる  
      vata,    不変 じつに  
      bho,  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      kumārā’   a 子供、童子  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     『ああ、じつに有能な(sakya)息子たちだ。ああ、じつに最高に有能な息子たちだ』と。  
    メモ                
     ・辞書類にはsakyaという形は載っていない。sakkotiの連続体から派生した形容詞化sakkaの梵語形がśakyaなので、これの異体であると思われる。  
                       
                       
                       
    267-19.                
     Tadagge kho pana ambaṭṭha sakyā paññāyanti;   
      語根 品詞 語基 意味  
      Tadagge    不変 それ以来、その後  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      pana    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      ambaṭṭha    a 人名、アンバッタ  
      sakyā    a 氏族名、サキャ、釈迦  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      paññāyanti;  pra-jñā 使 知られる、認められる  
    訳文                
     じつにアンバッタよ、それ以来、釈迦族〔という名が〕知られるようになったのです。  
    メモ                
     ・tadaggePTS辞書aggaの項にしたがって訳した。  
                       
                       
                       
    267-20.                
     so ca nesaṃ pubbapuriso.  
      語根 品詞 語基 意味  
      so    代的 それ、彼  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      nesaṃ    代的 それら、彼ら  
      pubba   代的 過去  
      puriso.   a 人 →祖先  
    訳文                
     彼(オッカーカ王)が彼ら(釈迦族)の祖先なのです。  
                       
                       
                       
    267-21.                
     ‘‘Rañño kho pana, ambaṭṭha, okkākassa disā nāma dāsī ahosi.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Rañño    an  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      pana,    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      ambaṭṭha,    a 人名、アンバッタ  
      okkākassa    a 人名、オッカーカ、甘蔗王  
      disā    ā 人名、ディサー  
      nāma    an 副対 と、という名の、じつに  
      dāsī    ī 女の奴隷、婢女  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ahosi.  bhū ある、存在する  
    訳文                
     さてアンバッタよ、オッカーカ王には、ディサーという名の女奴隷がありました。  
                       
                       
                       
    267-22.                
     Sā kaṇhaṃ nāma [sā kaṇhaṃ (pī.)] janesi.   
      語根 品詞 語基 意味  
          代的 それ、彼女  
      kaṇhaṃ    a 人名、カンハ(形容詞「黒い」)  
      nāma    an 副対 と、という名の、じつに  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      janesi.  jan 使 産む  
    訳文                
     彼女はじつにカンハと名付けられる〔子供〕を産みました。  
                       
                       
                       
    267-23.                
     Jāto kaṇho pabyāhāsi –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Jāto  jan 過分 a 生まれた  
      kaṇho    a 人名、カンハ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pabyāhāsi –  pra-vi-ā-hṛ 話しかける  
    訳文                
     生まれたカンハは声をあげました。  
    メモ                
     ・語根hṛのアオリストは、パーリ語では、harasiでなくhāsiになるため注意を要する。  
                       
                       
                       
    267-24.                
     ‘dhovatha maṃ, amma, nahāpetha maṃ amma, imasmā maṃ asucismā parimocetha, atthāya vo bhavissāmī’ti.   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ‘dhovatha  dhāv 洗う、清める  
      語根 品詞 語基 意味  
      maṃ,    代的  
      amma,    ā  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      nahāpetha  snā 使 沐浴させる  
      語根 品詞 語基 意味  
      maṃ    代的  
      amma,    ā  
      imasmā    代的 男中 これ  
      maṃ    代的  
      asucismā    i 男中 不浄  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      parimocetha,  pari-muc 使 解き放つ  
      語根 品詞 語基 意味  
      atthāya    a 男中 意義、利益  
      vo    不変 とは、じつに  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      bhavissāmī’ bhū ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     『母よ、あなた方は私を洗って下さい。母よ、あなた方は私を沐浴させて下さい。あなた方は私をこの不浄から解き放って下さい。私はお役に立つことでしょう』と。  
    メモ                
     ・あるいはatthaを意義の意味で取って「私は意義あるものとなろう」とも読みうるか。  
     ・ā語基女性名詞の単数呼格は-eという形だが、ammaは特殊例であろうか。  
                       
                       
                       
    267-25.                
     Yathā kho pana ambaṭṭha etarahi manussā pisāce disvā ‘pisācā’ti sañjānanti;   
      語根 品詞 語基 意味  
      Yathā    不変 〜のごとくに、〜のように  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      pana    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      ambaṭṭha    a 人名、アンバッタ  
      etarahi    不変 いま  
      manussā    a 人、人間  
      pisāce    a  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      disvā  dṛś 見る  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘pisācā’   a  
      ti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      sañjānanti;  saṃ-jñā 知覚する、了解する、想念する、呼ぶ、名付ける  
    訳文                
     じつにアンバッタよ、いま、人々が鬼を見て、『鬼』と呼ぶごとく、  
                       
                       
                       
    267-26.                
     evameva kho, ambaṭṭha, tena kho pana samayena manussā pisāce ‘kaṇhā’ti sañjānanti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      evam   不変 このように、かくの如き  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      kho,    不変 じつに、たしかに  
      ambaṭṭha,    a 人名、アンバッタ  
      tena    代的 副具 それ、彼、それによって、それゆえ  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      pana    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      samayena    a 副具 時、集会  
      manussā    a 人、人間  
      pisāce    a  
      ‘kaṇhā’   a 黒い  
      ti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      sañjānanti.  saṃ-jñā 知覚する、了解する、想念する、呼ぶ、名付ける  
    訳文                
     じつにそのように、その時代の人々は、鬼を『黒鬼(kaṇha)』と呼んだのです。  
    メモ                
     ・PTS辞書の“of demons, goblins”という説明によって訳した。  
                       
                       
                       
    267-27.                
     Te evamāhaṃsu –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Te    代的 それら、彼ら  
      evam   不変 このように、かくの如き  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      āhaṃsu –  ah いう  
    訳文                
     彼らはこのようにいいました。  
                       
                       
                       
    267-28.                
     ‘ayaṃ jāto pabyāhāsi, kaṇho jāto, pisāco jāto’ti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘ayaṃ    代的 これ  
      jāto  jan 過分 a 生まれた  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pabyāhāsi,  pra-vi-ā-hṛ 話しかける  
      語根 品詞 語基 意味  
      kaṇho    a 黒い  
      jāto,  jan 過分 a 生まれた  
      pisāco    a  
      jāto’ jan 過分 a 生まれた  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     『彼は生まれて〔すぐに〕喋った。黒鬼(カンハ)が生まれた、鬼が生まれた』と。  
                       
                       
                       
    267-29.                
     Tadagge kho pana, ambaṭṭha kaṇhāyanā paññāyanti, so ca kaṇhāyanānaṃ pubbapuriso.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Tadagge    不変 それ以来、その後  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      pana,    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      ambaṭṭha    a 人名、アンバッタ  
      kaṇhāyanā    a 氏族名、カンハーヤナ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      paññāyanti,  pra-jñā 使 知られる、認められる  
      語根 品詞 語基 意味  
      so    代的 それ、彼  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      kaṇhāyanānaṃ    a 氏族名、カンハーヤナ  
      pubba   代的 過去  
      puriso.    a 人 →祖先  
    訳文                
     じつにアンバッタよ、それ以来、カンハーヤナ族〔という名が〕知られるようになったのあり、そして彼(カンハ)が、カンハーヤナ族の祖先なのです。  
                       
                       
                       
    267-30.                
     Iti kho te, ambaṭṭha, porāṇaṃ mātāpettikaṃ nāmagottaṃ anussarato ayyaputtā sakyā bhavanti, dāsiputto tvamasi sakyāna’’nti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Iti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      te,    代的 属絶 あなた  
      ambaṭṭha,    a 人名、アンバッタ  
      porāṇaṃ    名形 a 中→男 往昔の、古い、古人、古聖  
      porāṇaṃ mātāpettikaṃ nāmagottaṃ anussarato ayyaputtā sakyā bhavanti, dāsiputto tvamasi sakyāna’’n (267-6, 267-7.)   
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     じつにアンバッタよ、かくのごとく、あなたが往昔の、父母の姓名を思いおこしてゆくと、釈迦族が主人であり、あなたは釈迦族の奴隷女の子孫となるのです」  
                       
                       
                       
    268-1.                
     268. Evaṃ vutte, te māṇavakā bhagavantaṃ etadavocuṃ –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Evaṃ    不変 このように、かくの如き  
      vutte,  vac 受 過分 a 男中 いわれた  
      te    代的 それら、彼ら  
      māṇavakā    a 学童、青年、若い婆羅門  
      bhagavantaṃ    ant 世尊  
      etad   代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      avocuṃ –  vac いう  
    訳文                
     このようにいわれて、かれら青年たちは世尊へこういった。  
                       
                       
                       
    268-2.                
     ‘‘mā bhavaṃ gotamo ambaṭṭhaṃ atibāḷhaṃ dāsiputtavādena nimmādesi.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘mā    不変 なかれ  
      bhavaṃ  bhū 名現分 ant(特) 現存者、勝存者、尊師  
      gotamo    a 人名、ゴータマ  
      ambaṭṭhaṃ    a 人名、アンバッタ  
      atibāḷhaṃ    不変 極めて強く、しっかりと、きわめて激しい、甚だしい  
      dāsi   ī 依(属) 女の奴隷、婢女  
      putta   a 依(属) 息子  
      vādena  vad a 説、語、論  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      nimmādesi.  ni-mṛd 砕破する、恥をかかす、侵害する  
    訳文                
     「尊者ゴータマは、女奴隷の子孫という説によって、あまりにひどくアンバッタを侮辱しないで下さい。  
    メモ                
     ・主語と述語の人称が合っていないのは、直接「あなたは」と呼びかけない敬語表現であろうか。  
                       
                       
                       
    268-3.                
     Sujāto ca, bho gotama ambaṭṭho māṇavo, kulaputto ca ambaṭṭho māṇavo, bahussuto ca ambaṭṭho māṇavo, kalyāṇavākkaraṇo ca ambaṭṭho māṇavo, paṇḍito ca ambaṭṭho māṇavo, pahoti ca ambaṭṭho māṇavo bhotā gotamena saddhiṃ asmiṃ vacane paṭimantetu’’nti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Sujāto  su-jan a よい生まれの  
      ca,    不変 と、また、そして、しかし  
      bho  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      gotama    a 人名、ゴータマ  
      ambaṭṭho    a 人名、アンバッタ  
      māṇavo,    a 学童、青年、若い婆羅門  
      kula   a 依(属) 家、良家、族姓  
      putto    a 息子 →善男子  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      ambaṭṭho    a 人名、アンバッタ  
      māṇavo,    a 学童、青年、若い婆羅門  
      bahu   u 有(持) 多く  
      suto  śru 名過分 a 聞いた →多聞  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      ambaṭṭho    a 人名、アンバッタ  
      māṇavo,    a 学童、青年、若い婆羅門  
      kalyāṇa   a 有(持) よい  
      vāk vac 依(属) 言葉  
      karaṇo  kṛ a 中→男 なすこと、なすもの、所作 →善語者  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      ambaṭṭho    a 人名、アンバッタ  
      māṇavo,    a 学童、青年、若い婆羅門  
      paṇḍito    a 賢い、博学の、賢者、知者  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      ambaṭṭho    a 人名、アンバッタ  
      māṇavo,    a 学童、青年、若い婆羅門  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pahoti  pra-bhū 生ずる、発生する、できる、可能である  
      語根 品詞 語基 意味  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      ambaṭṭho    a 人名、アンバッタ  
      māṇavo    a 学童、青年、若い婆羅門  
      bhotā  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      gotamena    a 人名、ゴータマ  
      saddhiṃ    不変 共に、一緒に(具格支配)  
      asmiṃ    代的 これ  
      vacane  vac a 言、語  
      paṭimantetu’’n prati-mant 不定 対論すること、応答すること、論駁すること  
      ti.   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     尊者ゴータマよ、アンバッタ青年はよい生まれのものです。アンバッタ青年は良家の子息です。アンバッタ青年は多聞です。アンバッタ青年は善語者です。またアンバッタ青年は賢者です。そしてアンバッタ青年は尊者ゴータマと共に、その説に関して論議することが可能です」と。  
                       
                       
                       
    269-1.                
     269. Atha kho bhagavā te māṇavake etadavoca –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      bhagavā    ant 世尊  
      te    代的 それら、彼ら  
      māṇavake    a 学童、青年、若い婆羅門  
      etad   代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      avoca –  vac いう  
    訳文                
     ときに世尊は、彼ら青年たちへこう仰った。  
                       
                       
                       
    269-2.                
     ‘‘sace kho tumhākaṃ māṇavakānaṃ evaṃ hoti –   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘sace    不変 もし  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      tumhākaṃ    代的 あなたたち  
      māṇavakānaṃ    a 学童、青年、若い婆羅門  
      evaṃ    不変 このように、かくの如き  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      hoti –  bhū ある、存在する  
    訳文                
     もし、あなたがた青年たちにこのような〔思いが〕ある〔としましょう〕。  
                       
                       
                       
    269-3.                
     ‘dujjāto ca ambaṭṭho māṇavo, akulaputto ca ambaṭṭho māṇavo, appassuto ca ambaṭṭho māṇavo, akalyāṇavākkaraṇo ca ambaṭṭho māṇavo, duppañño ca ambaṭṭho māṇavo, na ca pahoti ambaṭṭho māṇavo samaṇena gotamena saddhiṃ asmiṃ vacane paṭimantetu’nti, tiṭṭhatu ambaṭṭho māṇavo, tumhe mayā saddhiṃ mantavho asmiṃ vacane.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘dujjāto  dur-jan a 悪しき生まれの  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      ambaṭṭho    a 人名、アンバッタ  
      māṇavo,    a 学童、青年、若い婆羅門  
      akula   a 良家ならぬ  
      putto    a 息子  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      ambaṭṭho    a 人名、アンバッタ  
      māṇavo,    a 学童、青年、若い婆羅門  
      appa   名形 a 有(持) 少ない  
      suto  śru 名過分 a 聞いた  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      ambaṭṭho    a 人名、アンバッタ  
      māṇavo,    a 学童、青年、若い婆羅門  
      akalyāṇa   a 有(持) よからぬ  
      vāk vac 依(属) 言葉  
      karaṇo  kṛ a 中→男 なすこと、なすもの、所作 →言説  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      ambaṭṭho    a 人名、アンバッタ  
      māṇavo,    a 学童、青年、若い婆羅門  
      duppañño  dur-pra-jñā 名形 a 悪慧の、愚人  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      ambaṭṭho    a 人名、アンバッタ  
      māṇavo,    a 学童、青年、若い婆羅門  
      na    不変 ない  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pahoti  pra-bhū 生ずる、発生する、できる、可能である  
      語根 品詞 語基 意味  
      ambaṭṭho    a 人名、アンバッタ  
      māṇavo    a 学童、青年、若い婆羅門  
      samaṇena  śram a 沙門  
      gotamena    a 人名、ゴータマ  
      saddhiṃ    不変 共に、一緒に(具格支配)  
      asmiṃ    代的 これ  
      vacane    a 言、語  
      paṭimantetu’n prati-mant 不定 対論すること、応答すること、論駁すること  
      ti,    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      tiṭṭhatu  sthā 住する、とどまる  
      語根 品詞 語基 意味  
      ambaṭṭho    a 人名、アンバッタ  
      māṇavo,    a 学童、青年、若い婆羅門  
      tumhe    代的 あなたたち  
      mayā    代的  
      saddhiṃ    不変 共に、一緒に(具格支配)  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      mantavho  mant 考量する、相談する、助言する、忠告する、密語する  
      語根 品詞 語基 意味  
      asmiṃ    代的 これ  
      vacane.    a 言、語  
    訳文                
     『アンバッタ青年は悪しき生まれのものだ。アンバッタ青年は良家の子息でない。アンバッタ青年は多聞でない。アンバッタ青年は悪語者だ。またアンバッタ青年は愚者だ。そしてアンバッタ青年は沙門ゴータマと共に、その説に関して論議することが可能ではない』と。〔そうであれば〕アンバッタ青年はとどまり、あなたたちが私と共に、この説に関して考量なさい。  
                       
                       
                       
    269-4.                
     Sace pana tumhākaṃ māṇavakānaṃ evaṃ hoti –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Sace pana tumhākaṃ māṇavakānaṃ evaṃ hoti – (269-2.)  
      pana    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
    訳文                
     しかし、もし、あなたがた青年たちにこのような〔思いが〕ある〔としましょう〕。  
                       
                       
                       
    269-5.                
     ‘sujāto ca ambaṭṭho māṇavo, kulaputto ca ambaṭṭho māṇavo, bahussuto ca ambaṭṭho māṇavo, kalyāṇavākkaraṇo ca ambaṭṭho māṇavo, paṇḍito ca ambaṭṭho māṇavo, pahoti ca ambaṭṭho māṇavo samaṇena gotamena saddhiṃ asmiṃ vacane paṭimantetu’nti, tiṭṭhatha tumhe; ambaṭṭho māṇavo mayā saddhiṃ paṭimantetū’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘sujāto ca ambaṭṭho māṇavo, kulaputto ca ambaṭṭho māṇavo, bahussuto ca ambaṭṭho māṇavo, kalyāṇavākkaraṇo ca ambaṭṭho māṇavo, paṇḍito ca ambaṭṭho māṇavo, pahoti ca ambaṭṭho māṇavo  (268-3.)  
      samaṇena    a 沙門  
      gotamena saddhiṃ asmiṃ vacane paṭimantetu’nti, (268-3.)  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      tiṭṭhatha  sthā 住する、とどまる  
      語根 品詞 語基 意味  
      tumhe;    代的 あなたたち  
      ambaṭṭho    a 人名、アンバッタ  
      māṇavo    a 学童、青年、若い婆羅門  
      mayā    代的  
      saddhiṃ    不変 共に、一緒に(具格支配)  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      paṭimantetū’’ prati-mant 対論する、応答する、論駁する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     『アンバッタ青年はよい生まれのものだ。アンバッタ青年は良家の子息だ。アンバッタ青年は多聞だ。アンバッタ青年は善語者だ。またアンバッタ青年は賢者だ。そしてアンバッタ青年は沙門ゴータマと共に、その説に関して論議することが可能だ』と。〔そうであれば〕あなたがたはとどまり、アンバッタ青年が私と共に、この説に関して論議なさい」と。  
    メモ                
     ・アンバッタが善男子だというなら、当人がそれを論証すればよいのであって、外野は黙っておれ、ということであろう。  
                       
                       
                       
    269-6.                
     ‘‘Sujāto ca, bho gotama, ambaṭṭho māṇavo, kulaputto ca ambaṭṭho māṇavo, bahussuto ca ambaṭṭho māṇavo, kalyāṇavākkaraṇo ca ambaṭṭho māṇavo, paṇḍito ca ambaṭṭho māṇavo, pahoti ca ambaṭṭho māṇavo bhotā gotamena saddhiṃ asmiṃ vacane paṭimantetuṃ, tuṇhī mayaṃ bhavissāma, ambaṭṭho māṇavo bhotā gotamena saddhiṃ asmiṃ vacane paṭimantetū’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Sujāto ca, bho gotama, ambaṭṭho māṇavo, kulaputto ca ambaṭṭho māṇavo, bahussuto ca ambaṭṭho māṇavo, kalyāṇavākkaraṇo ca ambaṭṭho māṇavo, paṇḍito ca ambaṭṭho māṇavo, pahoti ca ambaṭṭho māṇavo bhotā gotamena saddhiṃ asmiṃ vacane paṭimantetuṃ,  (268-3.)  
      tuṇhī    不変 沈黙して、黙って  
      mayaṃ    代的 私たち  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      bhavissāma,  bhū ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      ambaṭṭho māṇavo bhotā gotamena saddhiṃ asmiṃ vacane (268-3.)  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      paṭimantetū’’ prati-mant 対論する、応答する、論駁する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     『アンバッタ青年はよい生まれのものです。アンバッタ青年は良家の子息です。アンバッタ青年は多聞です。アンバッタ青年は善語者です。またアンバッタ青年は賢者です。そしてアンバッタ青年は尊者ゴータマと共に、その説に関して論議することが可能です。我々は沈黙を守りましょう。アンバッタ青年は尊者ゴータマと共に、この説に関して論議して下さい」と。  
                       
                       
                       
    270-1.                
     270. Atha kho bhagavā ambaṭṭhaṃ māṇavaṃ etadavoca –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha kho bhagavā ambaṭṭhaṃ māṇavaṃ etadavoca – (267-3.)  
    訳文                
     ときに世尊はアンバッタ青年にこう仰った。  
                       
                       
                       
    270-2.                
     ‘‘ayaṃ kho pana te, ambaṭṭha, sahadhammiko pañho āgacchati, akāmā byākātabbo.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘ayaṃ    代的 これ  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      pana    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      te,    代的 あなた  
      ambaṭṭha,    a 人名、アンバッタ  
      sahadhammiko  dhṛ a 同法の、倶法の、如法の、理由のある  
      pañho    a 問い  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      āgacchati,  ā-gam 来る  
      語根 品詞 語基 意味  
      akāmā    a 男中 副奪 欲さず  
      byākātabbo.  vi-ā-kṛ 未分 a 解答されるべき  
    訳文                
     「じつにアンバッタよ、あなたへの、この理由ある問いが提示されます。不本意であっても答えられねばなりません。  
    メモ                
     ・akāmāについて『註』は、「望まない終局あるもの自身によってすら答えられねばならない、必ず答えられねばならない、という意味である」attanā anicchantenapi byākaritabbo, avassaṃ vissajjetabboti atthoとする。これと諸訳に従い、上記の通り訳した。  
                       
                       
                       
    270-3.                
     Sace tvaṃ na byākarissasi, aññena vā aññaṃ paṭicarissasi, tuṇhī vā bhavissasi, pakkamissasi vā ettheva te sattadhā muddhā phalissati.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Sace    不変 もし  
      tvaṃ    代的 あなた  
      na    不変 ない  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      byākarissasi,  vi-ā-kṛ 解答する  
      語根 品詞 語基 意味  
      aññena    代的 他の、異なる  
          不変 あるいは  
      aññaṃ    代的 他の、異なる  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      paṭicarissasi,  prati-car 徘徊する、つきあう、答えをそらす、異なって答える  
      語根 品詞 語基 意味  
      tuṇhī    不変 沈黙して、黙って  
          不変 あるいは  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      bhavissasi,  bhū ある  
      pakkamissasi  pra-kram 出発する、進む  
      語根 品詞 語基 意味  
          不変 あるいは  
      ettha   不変 ここに  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      te    代的 あなた  
      sattadhā    不変 七種に、七樣に  
      muddhā    an 頭、頂上  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      phalissati.  phal 破れる、裂ける、熟する、結実する  
    訳文                
     もしもあなたが、答えなかったり、他のことをいって他に答えをそらしたり、沈黙したり、あるいは立ち去ったりすれば、まさにここで、あなたの頭は七つに裂けてしまうことでしょう。  
    メモ                
     ・aññena aññaṃという表現は、「沙門果経」に、パクダ・カッチャーヤナの解答への評価として登場する。  
     ・「頭が七つに裂ける」という定型的な表現は『経集』989などにも出る(婆羅門バーヴァリにかけられた呪詛として)。中村元訳『ブッダのことば』の注では、類例が古ウパニシャッドに遡るものとされる (p415)  
                       
                       
                       
    270-4.                
     Taṃ kiṃ maññasi, ambaṭṭha, kinti te sutaṃ brāhmaṇānaṃ vuddhānaṃ mahallakānaṃ ācariyapācariyānaṃ bhāsamānānaṃ kutopabhutikā kaṇhāyanā, ko ca kaṇhāyanānaṃ pubbapuriso’’ti?  
      語根 品詞 語基 意味  
      Taṃ    代的 それ、彼、彼女  
      kiṃ    不変 何、どう  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      maññasi,  man 考える  
      語根 品詞 語基 意味  
      ambaṭṭha,    a 人名、アンバッタ  
      kin   不変 何、どう  
      ti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      te    代的 あなた  
      sutaṃ  śru 名過分 a 聞かれた  
      brāhmaṇānaṃ  bṛh a 属絶 婆羅門  
      vuddhānaṃ  vṛdh 過分 a 属絶 年長の、増上の  
      mahallakānaṃ    a 属絶 老練、高齢の  
      ācariya ā-car a 師、阿闍梨  
      pācariyānaṃ  pra-ā-car a 属絶 師中の師、大阿闍梨、  
      bhāsamānānaṃ  bhāṣ 現分 a 属絶 話す  
      kuto   不変 どこから、なにゆえ  
      pabhutikā    a 始めて、以降、以来、以後  
      kaṇhāyanā,    a 氏族名、カンハーヤナ  
      ko    代的 何、誰  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      kaṇhāyanānaṃ    a 氏族名、カンハーヤナ  
      pubba   代的 過去  
      puriso’’   a 人 →祖先  
      ti?   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     アンバッタよ、あなたはこれをどう考えますか。年長の婆羅門たち、老練の師や大師たちが、カンハーヤナ族がどこから始まったもので、また誰がカンハーヤナ族の祖先であるか、と話しているのを、あなたは何と聞いたでしょうか」と。  
                       
                       
                       
    270-5.                
     Evaṃ vutte, ambaṭṭho māṇavo tuṇhī ahosi.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Evaṃ    不変 このように、かくの如き  
      vutte,  vac 受 過分 a 男中 いわれた  
      ambaṭṭho    a 人名、アンバッタ  
      māṇavo    a 学童、青年、若い婆羅門  
      tuṇhī    不変 沈黙して、黙って  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ahosi.  bhū ある、存在する  
    訳文                
     このようにいわれて、アンバッタ青年は沈黙した。  
                       
                       
                       
    270-6.                
     Dutiyampi kho bhagavā ambaṭṭhaṃ māṇavaṃ etadavoca –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Dutiyam   名形 a 副対 第二の  
      pi    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      bhagavā    ant 世尊  
      ambaṭṭhaṃ    a 人名、アンバッタ  
      māṇavaṃ    a 学童、青年、若い婆羅門  
      etad   代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      avoca –  vac いう  
    訳文                
     じつにまた再び、世尊はアンバッタ青年にこう仰った。  
                       
                       
                       
    270-7.                
     ‘‘taṃ kiṃ maññasi, ambaṭṭha, kinti te sutaṃ brāhmaṇānaṃ vuddhānaṃ mahallakānaṃ ācariyapācariyānaṃ bhāsamānānaṃ kutopabhutikā kaṇhāyanā, ko ca kaṇhāyanānaṃ pubbapuriso’’ti?   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘taṃ kiṃ maññasi, ambaṭṭha, kinti te sutaṃ brāhmaṇānaṃ vuddhānaṃ mahallakānaṃ ācariyapācariyānaṃ bhāsamānānaṃ kutopabhutikā kaṇhāyanā, ko ca kaṇhāyanānaṃ pubbapuriso’’ti? (270-4.)  
    訳文                
     「アンバッタよ、あなたはこれをどう考えますか。年長の婆羅門たち、老練の師や大師たちが、カンハーヤナ族がどこから始まったもので、また誰がカンハーヤナ族の祖先であるか、と話しているのを、あなたは何と聞いたでしょうか」と。  
                       
                       
                       
    270-8.                
     Dutiyampi kho ambaṭṭho māṇavo tuṇhī ahosi.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Dutiyam   名形 a 副対 第二の  
      pi    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      ambaṭṭho    a 人名、アンバッタ  
      māṇavo    a 学童、青年、若い婆羅門  
      tuṇhī    不変 沈黙して、黙って  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ahosi.  bhū ある、存在する  
    訳文                
     じつにまた再び、アンバッタ青年は沈黙した。  
                       
                       
                       
    270-9.                
     Atha kho bhagavā ambaṭṭhaṃ māṇavaṃ etadavoca –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      bhagavā    ant 世尊  
      ambaṭṭhaṃ    a 人名、アンバッタ  
      māṇavaṃ    a 学童、青年、若い婆羅門  
      etad   代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      avoca –  vac いう  
    訳文                
     ときに世尊はアンバッタ青年へこう仰った。  
                       
                       
                       
    270-10.                
     ‘‘byākarohi dāni ambaṭṭha, na dāni, te tuṇhībhāvassa kālo.   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ‘‘byākarohi  vi-ā-kṛ 解答する  
      語根 品詞 語基 意味  
      dāni    不変 今、今や  
      ambaṭṭha,    a 人名、アンバッタ  
      na    不変 ない  
      dāni,    不変 今、今や  
      te    代的 あなた  
      tuṇhī   不変 沈黙して、黙って  
      bhāvassa  bhū a 性質、状態  
      kālo.    a  
    訳文                
     「アンバッタよ、いまこそ解答なさい。いまや、あなたが沈黙すべき時ではありません。  
                       
                       
                       
    270-11.                
     Yo kho, ambaṭṭha, tathāgatena yāvatatiyakaṃ sahadhammikaṃ pañhaṃ puṭṭho na byākaroti, etthevassa sattadhā muddhā phalissatī’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Yo    代的 (関係代名詞)  
      kho,    不変 じつに、たしかに  
      ambaṭṭha,    a 人名、アンバッタ  
      tathāgatena  tathā-(ā-)gam a 如来  
      yāva   不変 〜だけ、〜まで、〜の限り  
      tatiyakaṃ    a 第三の  
      sahadhammikaṃ  dhṛ a 同法の、倶法の、如法の、理由のある  
      pañhaṃ    a 問い  
      puṭṭho  prach 過分 a 問われた  
      na    不変 ない  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      byākaroti,  vi-ā-kṛ 解答する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ettha   不変 ここに  
      eva   不変 まさに、のみ、じつに  
      assa    代的 これ  
      sattadhā    不変 七種に、七樣に  
      muddhā    an 頭、頂上  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      phalissatī’’ phal 破れる、裂ける、熟する、結実する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     じつにアンバッタよ、如来によって三度までも理由のある問いを問われたものが解答しなければ、まさにここで、そのものの頭は七つに裂けてしまうことでしょう」と。  
                       
                       
                       
    271-1.                
     271. Tena kho pana samayena vajirapāṇī yakkho mahantaṃ ayokūṭaṃ ādāya ādittaṃ sampajjalitaṃ sajotibhūtaṃ [sañjotibhūtaṃ (syā.)] ambaṭṭhassa māṇavassa upari vehāsaṃ ṭhito hoti –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Tena    代的 副具 それ、彼  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      pana    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      samayena    a 副具 時、集会  
      vajira   a 男中 有(属) 電光、金剛杵、金剛石、金剛  
      pāṇī    in 手の  
      yakkho    a 夜叉  
      mahantaṃ    ant 大きい  
      ayo   as 依(属)  
      kūṭaṃ    a 鎚、ハンマー  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ādāya  ā-dā 取る  
      語根 品詞 語基 意味  
      ādittaṃ  ā-dīp 過分 a 燃えた、点火した、輝いた  
      sampajjalitaṃ  saṃ-pra-jval 過分 a 燃えた  
      sajotibhūtaṃ  sa-dyut-bhū a 点火した、輝いた  
      ambaṭṭhassa    a 人名、アンバッタ  
      māṇavassa    a 学童、青年、若い婆羅門  
      upari    不変 上に  
      vehāsaṃ    a 空、虚空  
      ṭhito  ṣthā 過分 a 住した  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      hoti –  bhū ある、存在する  
    訳文                
     じつにそのとき、金剛杵を手にした夜叉が、火が付いて燃えて輝く大きな鉄槌を取って、アンバッタ青年の上の虚空に住立していた。  
    メモ                
     ・『註』はこの夜叉を帝釈天sakkaであると見る。とすればこれは落雷をいったものか。  
     ・『経集』のケースでは頭が割れる呪いは詐欺師のでまかせであったが、ここでは、実際に超自然的な効力を発揮しつつあるように描写されている。  
                       
                       
                       
    271-2.                
     ‘‘sacāyaṃ ambaṭṭho māṇavo bhagavatā yāvatatiyakaṃ sahadhammikaṃ pañhaṃ puṭṭho na byākarissati, etthevassa sattadhā muddhaṃ phālessāmī’’ti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘sace   不変 もし  
      ayaṃ    代的 これ  
      ambaṭṭho    a 人名、アンバッタ  
      māṇavo    a 学童、青年、若い婆羅門  
      bhagavatā    ant 世尊  
      yāva   不変 〜だけ、〜まで、〜の限り  
      tatiyakaṃ    a 第三の  
      sahadhammikaṃ  dhṛ a 同法の、倶法の、如法の、理由のある  
      pañhaṃ    a 問い  
      puṭṭho  prach 過分 a 問われた  
      na    不変 ない  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      byākarissati,  vi-ā-kṛ 解答する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ettha    不変 ここに  
      eva   不変 まさに、のみ、じつに  
      assa   代的 これ  
      sattadhā    不変 七種に、七樣に  
      muddhaṃ    an 頭、頂上  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      phālessāmī’’ phal 使 破る、裂く  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「もしこのアンバッタ青年が、世尊により三度までも問いを問われて解答しないのであれば、まさにここで、私は彼の頭を七つに裂いてしまおう」といって。  
                       
                       
                       
    271-3.                
    Taṃ kho pana vajirapāṇiṃ yakkhaṃ bhagavā ceva passati ambaṭṭho ca māṇavo.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Taṃ    代的 それ、彼、彼女、そのとき(副対)  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      pana    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      vajira   a 男中 有(属) 電光、金剛杵、金剛石、金剛  
      pāṇiṃ    in 手の  
      yakkhaṃ    a 夜叉  
      bhagavā    ant 世尊  
      ca   不変 と、また、そして、しかし  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      passati  paś 見る  
      語根 品詞 語基 意味  
      ambaṭṭho    a 人名、アンバッタ  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      māṇavo.   a 学童、青年、若い婆羅門  
    訳文                
     じつに、世尊とアンバッタ青年は、その金剛杵を手にした夜叉を見た。  
    メモ                
     ・『パーリ』、『原始』はevaを「のみ」の意味で取っている。  
                       
                       
                       
    272-1.                
     272. Atha kho ambaṭṭho māṇavo bhīto saṃviggo lomahaṭṭhajāto bhagavantaṃyeva tāṇaṃ gavesī bhagavantaṃyeva leṇaṃ gavesī bhagavantaṃyeva saraṇaṃ gavesī –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      ambaṭṭho    a 人名、アンバッタ  
      māṇavo    a 学童、青年、若い婆羅門  
      bhīto  bhī 過分 a 恐れた  
      saṃviggo  saṃ-vij 過分 a 驚怖した  
      loma   an 依(属)  
      haṭṭha hṛṣ 過分 a 有(持) 逆立ち  
      jāto  jan 過分 a 生じた  
      bhagavantaṃ   ant 世尊  
      yeva    不変 まさに、のみ、じつに  
      tāṇaṃ    a 救護所、避難所、救護、庇護  
      gavesī  gava-ā-iṣ in 求める、探す、追求する  
      bhagavantaṃ   ant 世尊  
      yeva    不変 まさに、のみ、じつに  
      leṇaṃ    a 洞穴、窟、山窟、住房、避難所、庇護処  
      gavesī  gava-ā-iṣ in 求める、探す、追求する  
      bhagavantaṃ   ant 世尊  
      yeva    不変 まさに、のみ、じつに  
      saraṇaṃ    a 帰依、帰依処、隠家  
      gavesī –  gava-ā-iṣ in 求める、探す、追求する  
    訳文                
     時にアンバッタ青年は、恐れ、おののき、総毛立って、じつに世尊を庇護処として求め、じつに世尊を避難処として求め、じつに世尊を帰依処として求めた。  
                       
                       
                       
    272-2.                
     upanisīditvā bhagavantaṃ etadavoca –   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upanisīditvā  upa-ni-sad 近くへ坐る  
      語根 品詞 語基 意味  
      bhagavantaṃ    ant 世尊  
      etad   代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      avoca –  vac いう  
    訳文                
     そばへ坐って、世尊へこういった。  
                       
                       
                       
    272-3.                
     ‘‘kimetaṃ [kiṃ me taṃ (ka.)] bhavaṃ gotamo āha?   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘kim   不変 なぜ、いかに  
      etaṃ    代的 これ  
      bhavaṃ  bhū 名現分 ant(特) 現存者、勝存者、尊師  
      gotamo    a 人名、ゴータマ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      āha?  ah いう  
    訳文                
     「尊者ゴータマは、これを何とおっしゃったのですか。  
                       
                       
                       
    272-4.                
     Punabhavaṃ gotamo bravitū’’ti [brūtu (syā.)].  
      語根 品詞 語基 意味  
      Puna    不変 さらに、ふたたび  
      bhavaṃ bhū 名現分 ant(特) 現存者、勝存者、尊師  
      gotamo    a 人名、ゴータマ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      bravitū’’ brū いう、告げる、述べる  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     もう一度、尊者ゴータマはおっしゃって下さい」と。  
                       
                       
                       
    272-5.                
     ‘‘Taṃ kiṃ maññasi, ambaṭṭha, kinti te sutaṃ brāhmaṇānaṃ vuddhānaṃ mahallakānaṃ ācariyapācariyānaṃ bhāsamānānaṃ kutopabhutikā kaṇhāyanā, ko ca kaṇhāyanānaṃ pubbapuriso’’ti?   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Taṃ kiṃ maññasi, ambaṭṭha, kinti te sutaṃ brāhmaṇānaṃ vuddhānaṃ mahallakānaṃ ācariyapācariyānaṃ bhāsamānānaṃ kutopabhutikā kaṇhāyanā, ko ca kaṇhāyanānaṃ pubbapuriso’’ti? (270-4.)  
    訳文                
     「アンバッタよ、あなたはこれをどう考えますか。年長の婆羅門たち、老練の師や大師たちが、カンハーヤナ族がどこから始まったもので、また誰がカンハーヤナ族の祖先であるか、と話しているのを、あなたは何と聞いたでしょうか」  
                       
                       
                       
    272-6.                
     ‘‘Evameva me, bho gotama, sutaṃ yatheva bhavaṃ gotamo āha.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Evam   不変 このように、かくの如き  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      me,    代的  
      bho  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      gotama,    a 人名、ゴータマ  
      sutaṃ  śru 名過分 a 聞かれた  
      yathā   不変 〜のごとくに、〜のように  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      bhavaṃ  bhū 名現分 ant(特) 現存者、勝存者、尊師  
      gotamo    a 人名、ゴータマ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      āha.  ah いう  
    訳文                
     「尊者ゴータマよ、尊者ゴータマのおっしゃったごとく、まさにそのように私は聞きました。  
                       
                       
                       
    272-7.                
     Tatopabhutikā kaṇhāyanā;   
      語根 品詞 語基 意味  
      Tato   不変 それより、それゆえに、その後  
      pabhutikā    a 始めて、以降、以来、以後  
      kaṇhāyanā;    a 氏族名、カンハーヤナ  
    訳文                
     その〔とき〕より、カンハーヤナ族は始まりました。  
                       
                       
                       
    272-8.                
     so ca kaṇhāyanānaṃ pubbapuriso’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      so    代的 それ、彼  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      kaṇhāyanānaṃ    a 氏族名、カンハーヤナ  
      pubba   代的 過去  
      puriso’’   a 人 →祖先  
      ti.   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     そして、かれ(カンハ)が、カンハーヤナ族の祖先です」と。  
                       
                       
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