←前へ   トップへ   次へ→
                       
                       
     Paṭhamaibbhavādo  
      語根 品詞 語基 意味  
      Paṭhama   a 第一  
      ibbha   a 依(属) 奴隷の、卑俗の、邪黒の  
      vādo vad a 説、語、論  
    訳文                
     【第一の卑俗説】  
    メモ                
     ・これは、「釈迦族が卑俗であるという主張」なので、「卑俗語」でなく「卑俗説」とした。前者では発言そのものが卑俗であるというニュアンスになってしまうためである(そうでもあるのかもしれないが、それが本義ではあるまい)。  
                       
                       
                       
    263-1.                
     263. ‘‘No hidaṃ, bho gotama.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘No    不変 ない、否/〜かどうか  
      hi   不変 じつに、なぜなら  
      idaṃ,    代的 これ  
      bho  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      gotama.    a 人名、ゴータマ  
    訳文                
     「尊者ゴータマよ、そうではありません。  
                       
                       
                       
    263-2.                
     Gacchanto vā hi, bho gotama, gacchantena brāhmaṇo brāhmaṇena saddhiṃ sallapitumarahati, ṭhito vā hi, bho gotama, ṭhitena brāhmaṇo brāhmaṇena saddhiṃ sallapitumarahati, nisinno vā hi, bho gotama, nisinnena brāhmaṇo brāhmaṇena saddhiṃ sallapitumarahati, sayāno vā hi, bho gotama, sayānena brāhmaṇo brāhmaṇena saddhiṃ sallapitumarahati.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Gacchanto  gam 現分 ant 行く  
          不変 あるいは  
      hi,    不変 じつに、なぜなら  
      bho  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      gotama,    a 人名、ゴータマ  
      gacchantena  gam 現分 ant 行く  
      brāhmaṇo  bṛh a 婆羅門  
      brāhmaṇena  bṛh a 婆羅門  
      saddhiṃ    不変 共に、一緒に(具格支配)  
      sallapitum saṃ-lap 不定 共に語ること、会談すること  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      arahati,  arh 価値がある、値する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ṭhito  sthā 過分 a 住した  
          不変 あるいは  
      hi,    不変 じつに、なぜなら  
      bho  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      gotama,    a 人名、ゴータマ  
      ṭhitena  sthā 過分 a 住した  
      brāhmaṇo  bṛh a 婆羅門  
      brāhmaṇena  bṛh a 婆羅門  
      saddhiṃ    不変 共に、一緒に(具格支配)  
      sallapitum saṃ-lap 不定 共に語ること、会談すること  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      arahati,  arh 価値がある、値する  
      語根 品詞 語基 意味  
      nisinno  ni-sad 過分 a 坐った  
          不変 あるいは  
      hi,    不変 じつに、なぜなら  
      bho  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      gotama,    a 人名、ゴータマ  
      nisinnena  ni-sad 過分 a 坐った  
      brāhmaṇo  bṛh a 婆羅門  
      brāhmaṇena  bṛh a 婆羅門  
      saddhiṃ    不変 共に、一緒に(具格支配)  
      sallapitum saṃ-lap 不定 共に語ること、会談すること  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      arahati,  arh 価値がある、値する  
      語根 品詞 語基 意味  
      sayāno  śī 現分 a 臥した  
          不変 あるいは  
      hi,    不変 じつに、なぜなら  
      bho  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      gotama,    a 人名、ゴータマ  
      sayānena  śī 現分 a 臥した  
      brāhmaṇo  bṛh a 婆羅門  
      brāhmaṇena  bṛh a 婆羅門  
      saddhiṃ    不変 共に、一緒に(具格支配)  
      sallapitum saṃ-lap 不定 共に語ること、会談すること  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      arahati.  arh 価値がある、値する  
    訳文                
     なぜなら、尊者ゴータマよ、歩いている婆羅門と共に語るに相応しいのは、歩いている婆羅門だからです。尊者ゴータマよ、立った婆羅門と共に語るに相応しいのは、立った婆羅門だからです。尊者ゴータマよ、坐った婆羅門と共に語るに相応しいのは、坐った婆羅門だからです。あるいは、尊者ゴータマよ、寝ている婆羅門と共に語るに相応しいのは、寝ている婆羅門だからです。  
                       
                       
                       
    263-3.                
     Ye ca kho te, bho gotama, muṇḍakā samaṇakā ibbhā kaṇhā [kiṇhā (ka. sī. pī.)] bandhupādāpaccā, tehipi me saddhiṃ evaṃ kathāsallāpo hoti, yathariva bhotā gotamenā’’ti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Ye    代的 (関係代名詞)  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      te,    代的 それら、彼ら  
      bho  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      gotama,    a 人名、ゴータマ  
      muṇḍakā    a 剃髪の、禿頭の似非沙門  
      samaṇakā    a 似非沙門  
      ibbhā    a 奴隷の、卑俗の、邪黒の  
      kaṇhā    a 黒い  
      bandhupāda   a 依(属) 梵天の足、卑賤者(婆羅門から沙門への卑称)  
      apaccā,    a 子孫  
      tehi   代的 それら、彼ら  
      pi    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      me    代的  
      saddhiṃ    不変 共に、一緒に(具格支配)  
      evaṃ    不変 このように、かくの如き  
      kathā   ā 語、論、話  
      sallāpo  saṃ-lap a 語ること →会話  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      hoti,  bhū ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      yathā   不変 〜のごとくに、〜のように  
      iva   不変 〜のごとくに、〜のように  
      bhotā  bhū 名現分 ant(特) 尊者  
      gotamenā’’   a 人名、ゴータマ  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     しかし尊者ゴータマよ、じつに、かの禿人たち、似非沙門たち、卑俗の、色の黒い、梵天の足から生まれた者たち、私は彼らとは、沙門ゴータマとしたように会話します」と。  
    メモ                
     ・漢訳仏典では、ここで言われるような、出家のふりをして剃髪し利養を得ようとするものを指して「禿人」とする。(たとえば「大般涅槃経」の「善男子。我涅槃後濁惡之世國土荒亂。互相抄掠人民飢餓。爾時多有爲飢餓故發心出家。如是之人名爲禿人。(T12, 384a)」など)ここではそれを使って訳した。  
     ・『註』はこういう。「それについてはこうだとされる。バラモンは梵天の口から生じた。クシャトリヤは胸から、ヴァイシャは臍から、シュードラは膝から、沙門は足から、と」Tassa kira ayaṃ laddhi – brāhmaṇā brahmuno mukhato nikkhantā, khattiyā urato, vessā nābhito, suddā jāṇuto, samaṇā piṭṭhipādatoti. しかし沙門は他の四姓と違い、生まれつきなるものではないので、奇妙な話ではある。  
     ・「黒い」というこの表現は、インドの身分制度が、肌の色による差別とリンクしている事に由来するのであろう。  
     ・後でわかるが、この言い回しは師であるポッカラサーティの受け売りであったようである。  
                       
                       
                       
    263-4.                
     ‘‘Atthikavato kho pana te, ambaṭṭha, idhāgamanaṃ ahosi, yāyeva kho panatthāya āgaccheyyātha [āgaccheyyātho (sī. pī.)], tameva atthaṃ sādhukaṃ manasi kareyyātha [manasikareyyātho (sī. pī.)].   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Atthikavato    ant 欲求ある、使命を帯びた  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      pana    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      te,    代的 あなた  
      ambaṭṭha,    a 人名、アンバッタ  
      idha   不変 ここに、この世で、いま、さて  
      āgamanaṃ  ā-gam a 到来  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ahosi,  bhū ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      yāya   代的 (関係代名詞)  
      eva   不変 まさに、のみ、じつに  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      pana   不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      atthāya    a 男中 義、利益、道理、意味  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      āgaccheyyātha  ā-gam 来た  
      語根 品詞 語基 意味  
      tam   代的 それ、彼、彼女、そのとき(副対)  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      atthaṃ    a 男中 義、利益、道理、意味  
      sādhukaṃ    a 副対 よく  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      manasikareyyātha  man, kṛ 作意する  
    訳文                
     「しかしアンバッタよ、じつにあなたは、〔私の器量を見届けるという〕目的があってここへやってきたのではないのですか。じつにあなたがたが、その目的のためにやってきたのならば、あなたがたは、まさにその目的を、よく作意すべきです。  
    メモ                
     ・yāyevayāya evaと解したが、ここで関係代名詞が女性になるのはおかしな事である。何か別の解釈法があるのかもしれない(いちおう、atthāya atthaが女性化したatthāの与格であり、yāyaはそれにかかっているのだともとれるが、そうだとしても女性化する理由がない)。  
                       
                       
                       
    263-5.                
     Avusitavāyeva kho pana bho ayaṃ ambaṭṭho māṇavo vusitamānī kimaññatra avusitattā’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Avusitavā a-ava-sā? ant 修行未完成の  
      yeva    不変 まさに、のみ、じつに  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      pana    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      bho  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      ayaṃ    代的 これ  
      ambaṭṭho    a 人名、アンバッタ  
      māṇavo    a 学童、青年、若い婆羅門  
      vusita ava-sā? 過分 a 依(属) 完成した  
      mānī    in 慢心ある  
      kim   不変 なぜ、いかに、いかなる  
      aññatra    不変 他所で、除いては、以外では  
      avusitattā’’ a-ava-sā? a 男中 未完成性  
      ti.   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     友よ、じつにこのアンバッタ青年が、修行未完成でありながら完成していると慢心しているのは、まさしく未完成であることゆえ以外の何ものでもありますまい」  
    メモ                
     ・kimaññatraPTS辞書によればwhat else is the cause butの義。kiṃが疑問詞として反語表現を形成するものであろう。  
                       
                       
                       
    264-1.                
     264. Atha kho ambaṭṭho māṇavo bhagavatā avusitavādena vuccamāno kupito anattamano bhagavantaṃyeva khuṃsento bhagavantaṃyeva vambhento bhagavantaṃyeva upavadamāno –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      ambaṭṭho    a 人名、アンバッタ  
      māṇavo    a 学童、青年、若い婆羅門  
      bhagavatā    ant 世尊  
      avusita a-ava-sā? 過分 a 依(属) 未完成  
      vādena  vad a 説、語、論  
      vuccamāno  vac 受 現分 a いわれる  
      kupito  kup 過分 a 怒った  
      anattamano    a 不適意、不悦意、不喜  
      bhagavantaṃ   ant 世尊  
      yeva    不変 まさに、のみ、じつに  
      khuṃsento    現分 ant 叱る、呪う、怒る  
      bhagavantaṃ   ant 世尊  
      yeva    不変 まさに、のみ、じつに  
      vambhento    現分 ant 軽蔑する、謗る  
      bhagavantaṃ   ant 世尊  
      yeva    不変 まさに、のみ、じつに  
      upavadamāno –    現分 a 非難する、罵詈する  
    訳文                
     時にアンバッタ青年は、世尊より未完成であるとの言葉を言われて、怒り、不快に思い、世尊を叱責し、世尊を謗り、世尊を非難した。  
                       
                       
                       
    264-2.                
     ‘‘samaṇo ca me, bho, gotamo pāpito bhavissatī’’ti bhagavantaṃ etadavoca –   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘samaṇo  śram a 沙門  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      me,    代的  
      bho,  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      gotamo    a 人名、ゴータマ  
      pāpito    過分 a 邪悪の、悪い  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      bhavissatī’’ bhū ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      bhagavantaṃ    ant 世尊  
      etad   代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      avoca –  vac いう  
    訳文                
     「友よ、沙門ゴータマは、私にとって悪をなすものとなろう」と、世尊へこういった。  
    メモ                
     ・『南伝』は「我に対して悪意あるものなるべし」、『パーリ』は「私に罪をなすろうとしている」、『原始』は「私に悪意を抱いている」とする。  
                       
                       
                       
    264-3.                
     ‘‘caṇḍā, bho gotama, sakyajāti; pharusā, bho gotama, sakyajāti; lahusā, bho gotama, sakyajāti; bhassā, bho gotama, sakyajāti;   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘caṇḍā,    a 暴悪な、凶悪な  
      bho  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      gotama,    a 人名、ゴータマ  
      sakya   a 有(属) 氏族名、サキャ、釈迦  
      jāti;    i 生、誕生、生まれ、血統、種類  
      pharusā,    a 粗な、粗悪な、粗暴な  
      bho  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      gotama,    a 人名、ゴータマ  
      sakya   a 有(属) 氏族名、サキャ、釈迦  
      jāti;    i 生、誕生、生まれ、血統、種類  
      lahusā,    a 軽率な  
      bho  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      gotama,    a 人名、ゴータマ  
      sakya   a 有(属) 氏族名、サキャ、釈迦  
      jāti;    i 生、誕生、生まれ、血統、種類  
      bhassā,    a 談話、言説、論議の  
      bho  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      gotama,    a 人名、ゴータマ  
      sakya   a 有(属) 氏族名、サキャ、釈迦  
      jāti;    i 生、誕生、生まれ、血統、種類  
    訳文                
     「尊者ゴータマよ、釈迦族の血統は凶悪です。尊者ゴータマよ、釈迦族の血統は粗暴です。尊者ゴータマよ、釈迦族の血統は軽率です。尊者ゴータマよ、釈迦族の血統は駄弁家です。  
    メモ                
     ・この文脈で「尊者」も変ではあるが、通例にならった。  
     ・bhassaは本来中性名詞であるが、同形のまま「談話の」という形容詞になり、女性にかかったものとみた。  
                       
                       
                       
    264-4.                
     ibbhā santā ibbhā samānā na brāhmaṇe sakkaronti, na brāhmaṇe garuṃ karonti [garukaronti (sī. syā. kaṃ. pī.)], na brāhmaṇe mānenti, na brāhmaṇe pūjenti, na brāhmaṇe apacāyanti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ibbhā    a 男女 奴隷の、卑俗の、邪黒の  
      santā  as 現分 ant ある  
      ibbhā    a 男女 奴隷の、卑俗の、邪黒の  
      samānā  as 現分 a 男女 ある  
      na    不変 ない  
      brāhmaṇe  bṛh a 婆羅門  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      sakkaronti,  sat-kṛ 恭敬する、尊敬する  
      語根 品詞 語基 意味  
      na    不変 ない  
      brāhmaṇe  bṛh a 婆羅門  
      garuṃ    名形 u 重い、尊重  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      karonti  kṛ なす  
      語根 品詞 語基 意味  
      na    不変 ない  
      brāhmaṇe  bṛh a 婆羅門  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      mānenti,  man 使 尊敬する、奉事する  
      語根 品詞 語基 意味  
      na    不変 ない  
      brāhmaṇe  bṛh a 婆羅門  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pūjenti,  pūj 供養する、尊敬する、崇拝する  
      語根 品詞 語基 意味  
      na    不変 ない  
      brāhmaṇe  bṛh a 婆羅門  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      apacāyanti.  apa-ci 尊敬する、敬う  
    訳文                
     卑俗のものたちであり、下賤のものたちであり〔ながら〕、婆羅門たちを恭敬せず、婆羅門たちを尊重せず、婆羅門たちを奉事せず、婆羅門たちを供養せず、婆羅門たちを敬いません。  
    メモ                
     ・冒頭は繰り返しによる強調なのだろう。同じ現在分詞でも-at-mānaではニュアンスに違いがあるのだろうか。  
                       
                       
                       
    264-5.                
     Tayidaṃ, bho gotama, nacchannaṃ, tayidaṃ nappatirūpaṃ, yadime sakyā ibbhā santā ibbhā samānā na brāhmaṇe sakkaronti, na brāhmaṇe garuṃ karonti, na brāhmaṇe mānenti, na brāhmaṇe pūjenti, na brāhmaṇe apacāyantī’’ti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Taṃ   代的 それ  
      idaṃ,    代的 これ  
      bho  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      gotama,    a 人名、ゴータマ  
      na   不変 ない  
      channaṃ,  chad 過分 a 適当な  
      taṃ   代的 それ  
      idaṃ    代的 これ  
      na   不変 ない  
      patirūpaṃ,    a 適当な、相応しい  
      yad   代的 (関係代名詞)  
      ime    代的 これら  
      sakyā    a 氏族名  
      ibbhā santā ibbhā samānā na brāhmaṇe sakkaronti, na brāhmaṇe garuṃ karonti, na brāhmaṇe mānenti, na brāhmaṇe pūjenti, na brāhmaṇe apacāyantī’’ (264-4.)  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ゴータマよ、かの釈迦族たちが、卑俗のものたちであり、下賤のものたちであり〔ながら〕、婆羅門たちを恭敬せず、婆羅門たちを尊重せず、婆羅門たちを奉事せず、婆羅門たちを供養せず、婆羅門たちを敬わないそのこと、これは適当でなく、適切でありません」と。  
                       
                       
                       
    264-6.                
     Itiha ambaṭṭho māṇavo idaṃ paṭhamaṃ sakyesu ibbhavādaṃ nipātesi.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Iti   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      iha    不変 ここに、この世で、いま、さて  
      ambaṭṭho    a 人名、アンバッタ  
      māṇavo    a 学童、青年、若い婆羅門  
      idaṃ    代的 これ  
      paṭhamaṃ    a 第一の、最初の、初の  
      sakyesu    a 氏族名、サキャ、釈迦  
      ibbha   a 依(属) 奴隷の、卑俗の、邪黒の  
      vādaṃ  vad a 説、語、論  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      nipātesi. ni-pat 使 投げる、倒す、害する  
    訳文                
     かくして、ここにアンバッタ青年は、釈迦族に関して卑俗であるとする、この第一の説を投げかけた。  
    メモ                
     ・vādaṃにかかるのは男性のayaṃでなければならないはずだが、なぜかidaṃである。  
     ・諸訳は、sakyesu を「釈迦族に対し」としているが、ここではそれにならわなかった。  
                       
                       
                       
     Dutiyaibbhavādo  
      語根 品詞 語基 意味  
      Dutiya   名形 a 第二  
      ibbha   a 依(属) 奴隷の、卑俗の、邪黒の  
      vādo vad a 説、語、論  
    訳文                
     【第二の卑俗説】  
                       
                       
                       
    265-1.                
     265. ‘‘Kiṃ pana te, ambaṭṭha, sakyā aparaddhu’’nti?   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Kiṃ    不変 なぜ、いかに  
      pana    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      te,    代的 あなた  
      ambaṭṭha,    a 人名、アンバッタ  
      sakyā    a 氏族名、サキャ、釈迦  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      aparaddhu’’n apa-rādh 罪を犯す、怒らせる  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti?    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「しかしアンバッタよ、釈迦族は、何かあなたを怒らせるようなことをしたのでしょうか」  
                       
                       
                       
    265-2.                
     ‘‘Ekamidāhaṃ, bho gotama, samayaṃ ācariyassa brāhmaṇassa pokkharasātissa kenacideva karaṇīyena kapilavatthuṃ agamāsiṃ.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Ekam   代的 副対 一、とある  
      idaṃ   代的 これ  
      ahaṃ,    代的  
      bho  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      gotama,    a 人名、ゴータマ  
      samayaṃ    a 副対 時、集会  
      ācariyassa  ā-car a 師、阿闍梨  
      brāhmaṇassa  bṛh a 婆羅門  
      pokkharasātissa    i 人名、ポッカラサーティ  
      kenaci   代的 何らかの、何者であれ  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      karaṇīyena  kṛ 名未分 a なされるべき、義務、所作、必須  
      kapilavatthuṃ    u 地名、カピラヴァットゥ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      agamāsiṃ.  gam 行く  
    訳文                
     「尊者ゴータマよ、この私はあるとき、師である婆羅門ポッカラサーティのとある用事で、カピラヴァットゥへ赴いたのです。  
                       
                       
                       
    265-3.                
     Yena sakyānaṃ sandhāgāraṃ tenupasaṅkamiṃ.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Yena    代的 (関係代名詞)  
      sakyānaṃ    a 氏族名、サキャ、釈迦  
      sandhāgāraṃ    a 会議所、公会堂  
      tena   代的 それ、彼、それによって、それゆえ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upasaṅkamiṃ.  upa-saṃ-kram 近づいた  
    訳文                
     私は釈迦族の公会堂に近づきました。  
    メモ                
     ・sandhāgāraṃは辞書類にはsanthāgāraとして載っている。  
                       
                       
                       
    265-4.                
     Tena kho pana samayena sambahulā sakyā ceva sakyakumārā ca sandhāgāre [santhāgāre (sī. pī.)] uccesu āsanesu nisinnā honti aññamaññaṃ aṅgulipatodakehi [aṅgulipatodakena (pī.)] sañjagghantā saṃkīḷantā, aññadatthu mamaññeva maññe anujagghantā, na maṃ koci āsanenapi nimantesi.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Tena    代的 副具 それ、彼、それによって、それゆえ  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      pana    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      samayena    a 副具 時、集会  
      sambahulā    a 多くの、衆多の  
      sakyā    a 氏族名、サキャ、釈迦  
      ca   不変 と、また、そして、しかし  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      sakya   a 依(属) 氏族名、サキャ、釈迦  
      kumārā    a 児童、童子  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      santhāgāre    a 会議所、公会堂  
      uccesu    a 高い  
      āsanesu  ās a  
      nisinnā  ni-sad 過分 a 坐った  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      honti  bhū ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      aññamaññaṃ    代的 相互、他と他  
      aṅguli   i 依(具)  
      patodakehi  pa-tud a くすぐる  
      sañjagghantā  saṃ-ghar 現分 ant 哄笑する  
      saṃkīḷantā,  saṃ-krīḍ 現分 ant 遊ぶ、戯れる  
      aññadatthu    不変 何はともあれ、さもあらばあれ、必ずや  
      mamaññ   代的  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      maññe  man 考える、思う  
      語根 品詞 語基 意味  
      anujagghantā,  anu-ghar 強? 現分 ant 嘲笑する  
      na    不変 ない  
      maṃ    代的  
      koci    代的 何らかの、何者であれ  
      āsanena ās a  
      pi    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      nimantesi.  ni-mant? 招待する  
    訳文                
     じつにその時、多くの釈迦族たちと釈迦族の童子たちとが高座に坐っており、互いに指でつつきあいながら、笑い、戯れていました。私思うに、きっと私をあざ笑っていたのでしょう。誰も私を座へ招いてすらくれませんでした。  
                       
                       
                       
    265-5.                
     Tayidaṃ, bho gotama, nacchannaṃ, tayidaṃ nappatirūpaṃ, yadime sakyā ibbhā santā ibbhā samānā na brāhmaṇe sakkaronti, na brāhmaṇe garuṃ karonti, na brāhmaṇe mānenti, na brāhmaṇe pūjenti, na brāhmaṇe apacāyantī’’ti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Tayidaṃ, bho gotama, nacchannaṃ, tayidaṃ nappatirūpaṃ, yadime sakyā ibbhā santā ibbhā samānā na brāhmaṇe sakkaronti, na brāhmaṇe garuṃ karonti, na brāhmaṇe mānenti, na brāhmaṇe pūjenti, na brāhmaṇe apacāyantī’’ti. (264-5.)  
    訳文                
     かの釈迦族たちが、卑俗のものたちであり、下賤のものたちであり〔ながら〕、婆羅門たちを恭敬せず、婆羅門たちを尊重せず、婆羅門たちを奉事せず、婆羅門たちを供養せず、婆羅門たちを敬わないそのこと、これは適当でなく、適切でありません」と。  
                       
                       
                       
    265-6.                
     Itiha ambaṭṭho māṇavo idaṃ dutiyaṃ sakyesu ibbhavādaṃ nipātesi.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Itiha ambaṭṭho māṇavo idaṃ (264-6.)  
      dutiyaṃ    名形 a 第二の  
      sakyesu ibbhavādaṃ nipātesi. (264-6.)  
    訳文                
     かくして、ここにアンバッタ青年は、釈迦族に関して卑俗であるとする、この第二の説を投げかけた。  
                       
                       
                       
     Tatiyaibbhavādo  
      語根 品詞 語基 意味  
      Tatiya   a 第三  
      ibbha   a 依(属) 奴隷の、卑俗の、邪黒の  
      vādo vad a 説、語、論  
    訳文                
     【第三の卑俗説】  
                       
                       
                       
    266-1.                
     266. ‘‘Laṭukikāpi kho, ambaṭṭha, sakuṇikā sake kulāvake kāmalāpinī hoti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Laṭukikā   ā うずら  
      pi    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      kho,    不変 じつに、たしかに  
      ambaṭṭha,    a 人名、アンバッタ  
      sakuṇikā    ā  
      sake    a 自分の  
      kulāvake    a 鳥の巣、ひな鳥  
      kāma   a 男中 有(具)  
      lāpinī  lap in 虚談者  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      hoti.  bhū ある  
    訳文                
    「じつにアンバッタよ、鶉という鳥たちは自分の巣においては気ままにさえずるものです。  
    メモ                
     ・『註』は、釈尊が釈迦族を鶉にたとえたことを、謙遜nimmānaと解する。  
                       
                       
                       
    266-2.                
     Sakaṃ kho panetaṃ, ambaṭṭha, sakyānaṃ yadidaṃ kapilavatthuṃ, nārahatāyasmā ambaṭṭho imāya appamattāya abhisajjitu’’nti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Sakaṃ    a 自分の  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      pana   不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      etaṃ,    代的 これ、彼、彼女、そのとき(副対)  
      ambaṭṭha,    a 人名、アンバッタ  
      sakyānaṃ    a 氏族名、サキャ、釈迦  
      yad   代的 (関係代名詞)  
      idaṃ    代的 これ  
      kapilavatthuṃ,    u 地名、カピラヴァットゥ  
      na   不変 ない  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      arahati arh 値する、相応しい  
      語根 品詞 語基 意味  
      āyasmā    ant 尊者、具寿  
      ambaṭṭho    a 人名、アンバッタ  
      imāya    代的 これ  
      appa   名形 a 有(持) 少ない、少量の  
      mattāya    ā 量、適量  
      abhisajjitu’’n abhi-sañj 不定 不機嫌になること、怒ること  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     じつにアンバッタよ、かのカピラヴァットゥは釈迦族にとって、自分の〔巣のような場所なのです〕。尊者アンバッタは、この些末なことで不機嫌になるのに相応しくありません」  
    メモ                
     ・na-arahat-āyasmāという切り方でよいかどうか、一考を要する。  
                       
                       
                       
    266-3.                
     ‘‘Cattārome, bho gotama, vaṇṇā – khattiyā brāhmaṇā vessā suddā.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Cattāro    
      ime,    代的 これら  
      bho  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      gotama,    a 人名、ゴータマ  
      vaṇṇā –    a 色(いろ)、容貌、階級  
      khattiyā    a 刹帝利、クシャトリヤ、王族  
      brāhmaṇā  bṛh a 婆羅門、ブラーフマナ、司祭  
      vessā    a 毘舎、ヴァイシャ、庶民  
      suddā.    a 首陀羅、シュードラ、奴隷  
    訳文                
     「尊者ゴータマよ、これら四つの階級があります。刹帝利、婆羅門、毘舎、首陀羅。  
    メモ                
     ・この後、釈尊によって説かれるクシャトリヤ優位説に基づくとおぼしき四姓の順序を、この時点でアンバッタが用いているのは、いささかおかしな事ではある。  
                       
                       
                       
    266-4.                
     Imesañhi, bho gotama, catunnaṃ vaṇṇānaṃ tayo vaṇṇā – khattiyā ca vessā ca suddā ca – aññadatthu brāhmaṇasseva paricārakā sampajjanti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Imesañ   代的 これら  
      hi,    不変 じつに、なぜなら  
      bho  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      gotama,    a 人名、ゴータマ  
      catunnaṃ     
      vaṇṇānaṃ    a 色(いろ)、容貌、階級  
      tayo     
      vaṇṇā –    a 色(いろ)、容貌、階級  
      khattiyā    a 刹帝利、クシャトリヤ、王族  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      vessā    a 毘舎、ヴァイシャ、庶民  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      suddā    a 首陀羅、シュードラ、奴隷  
      ca –    不変 と、また、そして、しかし  
      aññadatthu    不変 何はともあれ、さもあらばあれ、必ずや  
      brāhmaṇassa bṛh a 婆羅門、ブラーフマナ、司祭  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      paricārakā  pari-car 名形 a 奉仕の、従者  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      sampajjanti.  saṃ-pad 起こる、なる、成功する  
    訳文                
     じつに尊者ゴータマよ、これら四姓のうち三つの階級、刹帝利と毘舎と首陀羅は、どうあれ、ただ婆羅門への奉仕者となっているのです。  
                       
                       
                       
    266-5.                
     Tayidaṃ, bho gotama, nacchannaṃ, tayidaṃ nappatirūpaṃ, yadime sakyā ibbhā santā ibbhā samānā na brāhmaṇe sakkaronti, na brāhmaṇe garuṃ karonti, na brāhmaṇe mānenti, na brāhmaṇe pūjenti, na brāhmaṇe apacāyantī’’ti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Tayidaṃ, bho gotama, nacchannaṃ, tayidaṃ nappatirūpaṃ, yadime sakyā ibbhā santā ibbhā samānā na brāhmaṇe sakkaronti, na brāhmaṇe garuṃ karonti, na brāhmaṇe mānenti, na brāhmaṇe pūjenti, na brāhmaṇe apacāyantī’’ti. (264-5.)  
    訳文                
     かの釈迦族たちが、卑俗のものたちであり、下賤のものたちであり〔ながら〕、婆羅門たちを恭敬せず、婆羅門たちを尊重せず、婆羅門たちを奉事せず、婆羅門たちを供養せず、婆羅門たちを敬わないそのこと、これは適当でなく、適切でありません」と。  
                       
                       
                       
    266-6.                
     Itiha ambaṭṭho māṇavo idaṃ tatiyaṃ sakyesu ibbhavādaṃ nipātesi.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Itiha ambaṭṭho māṇavo idaṃ (264-6.)  
      tatiyaṃ   a 第三の  
      sakyesu ibbhavādaṃ nipātesi. (264-6.)  
    訳文                
     かく、ここにアンバッタ青年は、釈迦族に関して卑俗であるとする、この第三の説を投げかけた。  
                       
                       
  ←前へ   トップへ   次へ→
inserted by FC2 system