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    281-1.                
     281. ‘‘Yena uttarakuruvho [uttarakurū rammā (sī. syā. pī.)], mahāneru sudassano.  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Yena    代的 (関係代名詞、〜tenaで「〜の所に」)  
      uttarakuru    u 地名、ウッタラクル、北拘盧〔洲〕  
      vho,    不変 称する  
      mahā    ant 大きい  
      neru    u 須弥山  
      sudassano. su-dṛś a よく見る、見やすい、美しい?  
    訳文                
     ♪大きく美しい須弥山のあるところ〔の向こう〕に、ウッタラクルと称する〔洲〕がある  
    メモ                
     ・vhoは如何とも解しがたい。『パーリ』は「称する」としており、おそらくvhayaの異体と見たものと思われる。ここでもそれにならった。  
     ・『南伝』、『原始』はウッタラクルに須弥山がある、と解して訳し、『パーリ』はウッタラクルと須弥山を別途のトピックとして訳している。ここではyenaneruにかかった構文であると解した。閻浮提から見れば、北拘盧は須弥山の向こう側にある、という見立てである。  
                       
                       
                       
    281-2.                
     Manussā tattha jāyanti, amamā apariggahā.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Manussā    a 人、人間  
      tattha    不変 そこで、そこに、そのとき、そのなかで  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      jāyanti,  jan 生まれる、再生する  
      語根 品詞 語基 意味  
      amamā    a 無我所の、我執なき  
      apariggahā. pari-grah a 遍取なき、執着なき  
    訳文                
     ♪人々はそこに、我執なき、執着なき者たちとして生まれる。  
                       
                       
                       
    281-3.                
     ‘‘Na te bījaṃ pavapanti, napi nīyanti naṅgalā;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Na    不変 ない  
      te    代的 それら、彼ら  
      bījaṃ    a  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pavapanti,  pra-vap 撒く  
      語根 品詞 語基 意味  
      na    不変 ない  
      pi    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      nīyanti   受 導かれる  
      語根 品詞 語基 意味  
      naṅgalā;   a 中(男)  
    訳文                
     ♪彼らは種をまくことなく、また犂が用いられることもない。  
                       
                       
                       
    281-4.                
     Akaṭṭhapākimaṃ sāliṃ, paribhuñjanti mānusā.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Akaṭṭhapākimaṃ  a-kṛṣ, pac a 耕されずして実る  
      sāliṃ,    i 米、稲  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      paribhuñjanti  pari-bhuj 受用する、食べる  
      語根 品詞 語基 意味  
      mānusā.   名形 a 男中 人の  
    訳文                
     ♪人々は、耕されずして実る稲を食べる。  
    メモ                
     ・pākimaなる語は辞書類に見当たらない。そこでAkaṭṭhapākimaṃを、パラレルな描写のある「世起経」に出たakaṭṭha-pāka-sāliと同一と見なした。  
                       
                       
                       
    281-5.                
     ‘‘Akaṇaṃ athusaṃ suddhaṃ, sugandhaṃ taṇḍulapphalaṃ;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Akaṇaṃ  kaṇo  a 糠のない  
      athusaṃ  thuso  a 籾殻のない  
      suddhaṃ,  śudh a 清い、純粋の  
      sugandhaṃ    a よい香りの  
      taṇḍula    a 有(属) 米、稲  
      phalaṃ; phal a 中→男  
    訳文                
     ♪糠がなく、籾殻がなく、清い、よい香りの米粒がある〔稲〕を。  
                       
                       
                       
    281-6.                
     Tuṇḍikīre pacitvāna, tato bhuñjanti bhojanaṃ.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Tuṇḍikīre    a 男中 鍋、竈?  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pacitvāna,  pac 煮る、炊く  
      語根 品詞 語基 意味  
      tato    不変 それより、それゆえに、その後  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      bhuñjanti  bhuj 食べる、受用する、享受する  
      語根 品詞 語基 意味  
      bhojanaṃ. bhuj a 食べ物  
    訳文                
     ♪食べ物を鍋で炊いて、それから食べるのである。  
    メモ                
     ・tuṇḍikīraなる語も辞書類に見当たらない。『註』はTuṇḍikīre pacitvānāとは「鍋に入れて煙の出ない炭火による火で煮て」ukkhaliyaṃ ākiritvā niddhumaṅgārena agginā pacitvā. であると説明しているので、ここでは『パーリ』と同じく「鍋」としておく。『南伝』、『原始』は「石の竈」としている。『註』の説明ではその後、自然に熱を発する「輝石」jotikapāsāṇāなるものを三つ置いて調理する、という伝承が紹介されているため、これもあり得る解釈であろう。また『長阿含』「世起経」には「釜鍑」とあり、焔光という名の摩尼珠によって調理する、とされている。  
                       
                       
                       
    281-7.                
     ‘‘Gāviṃ ekakhuraṃ katvā, anuyanti disodisaṃ;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Gāviṃ    ī 牝牛  
      eka    代的 有(帯)  
      khuraṃ    a 男→女  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      katvā,    なす  
      anuyanti  anu-yā 随従する、訪問する  
      語根 品詞 語基 意味  
      disodisaṃ; diś 不変 諸方に、地方から地方へ  
    訳文                
     ♪彼らは、牝牛へ蹄鉄をなして、諸方をたずねる。  
    メモ                
     ・『註』は何も言わず、諸訳もただ「一つの蹄」とだけしているが、これは上記の通り、蹄鉄のことではあるまいか。牛は偶蹄目で蹄が二つに割れているが、これに蹄鉄を履かせる事を「一つの蹄あるものとなす」と表現しているものと考えて、意訳した。  
                       
                       
                       
    281-8.                
     Pasuṃ ekakhuraṃ katvā, anuyanti disodisaṃ.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Pasuṃ    u 家畜、獣  
      ekakhuraṃ katvā, anuyanti disodisaṃ. (281-7.)  
    訳文                
     ♪彼らは、家畜へ蹄鉄をなして、諸方をたずねる。  
                       
                       
                       
    281-9.                
     ‘‘Itthiṃ vā vāhanaṃ [itthī-vāhanaṃ (sī. pī.), itthīṃ vāhanaṃ (syā.)] katvā, anuyanti disodisaṃ;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Itthiṃ    i, ī 女性、婦人  
          不変 あるいは  
      vāhanaṃ  vah 名形 a 運搬者、軍勢  
      katvā, anuyanti disodisaṃ; (281-7.)  
    訳文                
     ♪彼らは、女性を運び手となして、諸方をたずねる。  
                       
                       
                       
    281-10.                
     Purisaṃ vāhanaṃ katvā, anuyanti disodisaṃ.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Purisaṃ    a 人間、男  
      vāhanaṃ katvā, anuyanti disodisaṃ. (281-9.)  
    訳文                
     ♪彼らは、男性を運び手となして、諸方をたずねる。  
                       
                       
                       
    281-11.                
     ‘‘Kumāriṃ vāhanaṃ katvā, anuyanti disodisaṃ;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Kumāriṃ    ī 童女  
      vāhanaṃ katvā, anuyanti disodisaṃ; (281-9.)  
    訳文                
     ♪彼らは、童女を運び手となして、諸方をたずねる。  
                       
                       
                       
    281-12.                
     Kumāraṃ vāhanaṃ katvā, anuyanti disodisaṃ.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Kumāraṃ    a 童子  
      vāhanaṃ katvā, anuyanti disodisaṃ. (281-9.)  
    訳文                
     ♪彼らは、童子を運び手となして、諸方をたずねる。  
                       
                       
                       
    281-13.                
     ‘‘Te yāne abhiruhitvā,  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Te    代的 それら、彼ら  
      yāne  a 中(男) 乗り物  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      abhiruhitvā, abhi-ruh 上がる、昇る  
    訳文                
     ♪彼らは乗り物に乗って、  
                       
                       
                       
    281-14.                
     Sabbā disā anupariyāyanti [anupariyanti (syā.)];  
      語根 品詞 語基 意味  
      Sabbā    名形 代的 中→女 すべて  
      disā  diś ā 方位、方角  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      anupariyāyanti; anu-pari-yā 歩き回る、遊歴する  
    訳文                
     ♪あらゆる方角を遊歴する、  
                       
                       
                       
    281-15.                
     Pacārā tassa rājino.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Pacārā  pari-car 名形 a 奉仕、召使い、侍者  
      tassa    代的 それ、彼  
      rājino.   an  
    訳文                
     ♪かの〔ヴェッサヴァナ〕王に仕える者たちは。  
    メモ                
     ・『註』はPacārāparicārikāと換言している。これにならって文法注釈と訳をおこなった。  
                       
                       
                       
    281-16.                
     ‘‘Hatthiyānaṃ assayānaṃ, dibbaṃ yānaṃ upaṭṭhitaṃ;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Hatthi    in 依(属)  
      yānaṃ  a 乗り物  
      assa    a 依(属)  
      yānaṃ,  a 乗り物  
      dibbaṃ    a 天の  
      yānaṃ  a 乗り物  
      upaṭṭhitaṃ; upa-sthā 過分 a 仕えた、出現した、現れた  
    訳文                
     ♪象の乗り物、馬の乗り物、天の乗り物が出現した  
                       
                       
                       
    281-17.                
     Pāsādā sivikā ceva, mahārājassa yasassino.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Pāsādā  pra-ā-sad a 殿堂、楼閣  
      sivikā    ā  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      eva,    不変 まさに、のみ、じつに  
      mahā    ant 大きい  
      rājassa    an  
      yasassino.   in 名声ある、高名な  
    訳文                
     ♪また、楼閣や籠が、高名な大王のために。  
                       
                       
                       
    281-18.                
     ‘‘Tassa ca nagarā ahu,  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Tassa    代的 それ、彼  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      nagarā    a 中(男) 城、都市  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ahu, bhū ある、なる  
    訳文                
     ♪また彼には、諸々の都市がある  
                       
                       
                       
    281-19.                
     Antalikkhe sumāpitā;  
      語根 品詞 語基 意味  
      Antalikkhe    a 空中、虚空  
      sumāpitā; su-mā 使 過分 a よく築かれた  
    訳文                
     ♪虚空によく築かれた、  
                       
                       
                       
    281-20.                
     Āṭānāṭā kusināṭā parakusināṭā,  
      語根 品詞 語基 意味  
      Āṭānāṭā    ā 地名、アーターナーター  
      kusināṭā    ā 地名、クシナーター  
      parakusināṭā,   ā 地名、パラクシナーター  
    訳文                
     ♪アーターナーター、クシナーター、パラクシナーター、  
                       
                       
                       
    281-21.                
     Nāṭasuriyā [nāṭapuriyā (sī. pī.), nāṭapariyā (syā.)] parakusiṭanāṭā.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Nāṭasuriyā    ā 地名、ナータスリヤー  
      parakusiṭanāṭā.   ā 地名、パラクシタナーター  
    訳文                
     ♪ナータスリヤー、パラクシタナーター〔といった諸都市〕が。  
                       
                       
                       
    281-22.                
     ‘‘Uttarena kasivanto [kapivanto (sī. syā. pī)],  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Uttarena    代的 副具 北方  
      kasivanto,   ant 地名、カシヴァント  
    訳文                
     ♪北にはカシヴァント、  
                       
                       
                       
    281-23.                
     Janoghamaparena ca;  
      語根 品詞 語基 意味  
      Janogham    a 地名、ジャノーガ  
      aparena    代的 副具 後の、西の  
      ca;   不変 と、また、そして、しかし  
    訳文                
     ♪西にはジャノーガ、  
                       
                       
                       
    281-24.                
     Navanavutiyo ambaraambaravatiyo,  
      語根 品詞 語基 意味  
      Navanavutiyo    a 地名、ナヴァナヴティヤ  
      ambara    a 地名、アンバラ  
      ambaravatiyo,   a 地名、アンバラヴァティヤ  
    訳文                
     ♪ナヴァナヴティヤ、アンバラ、アンバラヴァティヤ、  
                       
                       
                       
    281-25.                
     Āḷakamandā nāma rājadhānī.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Āḷakamandā    ā 地名、アーラカマンダー  
      nāma    an 副対 と、という名の、じつに  
      rāja    an 依(属)  
      dhānī.   ī 容器 →王都  
    訳文                
     ♪アーラカマンダーという名の王都がある。  
                       
                       
                       
    281-26.                
     ‘‘Kuverassa kho pana, mārisa, mahārājassa visāṇā nāma rājadhānī;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Kuverassa    a 神名、クヴェーラ  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      pana,    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      mārisa,    不変 我が友よ、我が師よ  
      mahā    ant 大きい  
      rājassa    an  
      visāṇā    ā 地名、ヴィサーナー  
      nāma    an 副対 と、という名の、じつに  
      rāja    an 依(属)  
      dhānī;   ī 容器 →王都  
    訳文                
     ♪また我が師よ、クヴェーラ大王にはヴィサーナーという名の王都がある。  
                       
                       
                       
    281-27.                
     Tasmā kuvero mahārājā, ‘vessavaṇo’ti pavuccati.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Tasmā    代的 それ、彼  
      kuvero    a 神名、クヴェーラ  
      mahā    ant 大きい  
      rājā,    an  
      ‘vessavaṇo’    a 神名、ヴェッサヴァナ  
      ti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pavuccati. pra-vac 受 いわれる  
    訳文                
     ♪それゆえクヴェーラ大王は、ヴェッサヴァナと呼ばれるのである。  
                       
                       
                       
    281-28.                
     ‘‘Paccesanto pakāsenti, tatolā tattalā tatotalā;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Paccesanto  prati-ā-iṣ 現分 ant 求める、探す  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pakāsenti,  pra-kāś 使 説明する、明らかにする  
      語根 品詞 語基 意味  
      tatolā    ā 神名、タトーラー  
      tattalā    ā 神名、タトーラー  
      tatotalā;   ā 神名、タトーラー  
    訳文                
     ♪彼らが、〔夜叉からの防護を〕求める〔仏弟子〕たち〔の訴え〕を、〔そのヴェッサヴァナ大王へ〕説明する。タトーラー、タッタラー、タトータラー、  
    メモ                
     ・『註』は「求める者たちを、個別に義において観察し、教誡して、他の十二の夜叉の諸侯が説明する。彼らは信書を取って、十二の夜叉の守衛へ告げ、夜叉の守衛たちはその信書を大王へ告げるという」Paccesanto pakāsentīti paṭiesanto visuṃ visuṃ atthe upaparikkhamānā anusāsamānā aññe dvādasa yakkharaṭṭhikā pakāsenti. Te kira yakkharaṭṭhikā sāsanaṃ gahetvā dvādasannaṃ yakkhadovārikānaṃ nivedenti. Yakkhadovārikā taṃ sāsanaṃ mahārājassa nivedenti. とする。  
     ・このあと、仏弟子が閑林で邪悪な神霊に悩まされたなら、夜叉の将軍たちへ訴えるべし、という文言が出る。『註』は、その結果、将軍が大王に注進し、大王がそのものへ懲罰を科す、と解しているのであろう。そのような文脈と『註』の説明を加味して、補訳した。  
     ・『註』はさらに「いまは、それら夜叉の諸侯の名を示してタトーラーなどと言っているのである」Idāni tesaṃ yakkharaṭṭhikānaṃ nāmaṃ dassento tatolātiādimāha. としているから、以下の列挙は有力な夜叉たちなのであろう。  
                       
                       
                       
    281-29.                
     Ojasi tejasi tatojasī, sūro rājā ariṭṭho nemi.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Ojasi    i 神名、オージャシ  
      tejasi    i 神名、テージャシ  
      tatojasī,    ī 神名、タトージャシー  
      sūro    a 神名、スーラ  
      rājā    an 神名、ラージャン  
      ariṭṭho    a 神名、アリッタ  
      nemi.   i 神名、ネーミ  
    訳文                
     ♪オージャシ、テージャシ、タトージャシ、スーラ、ラージャン、アリッタ、ネーミ〔といった夜叉の諸侯たち〕が。  
                       
                       
                       
    281-30.                
     ‘‘Rahadopi tattha dharaṇī nāma, yato meghā pavassanti;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Rahado    a 池、湖、沼  
      pi    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      tattha    不変 そこで、そこに、そのとき、そのなかで  
      dharaṇī    ī 地名、ダラニー  
      nāma,    an 副対 と、という名の、じつに  
      yato    不変 そこから、〜なるが故に、何となれば(yaの奪格)  
      meghā    a 雲、雨雲  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pavassanti; pra-vṛṣ 降雨する、降り注ぐ  
    訳文                
     ♪そこには、ダラニーという名の湖があり、そこから雨雲が〔生じて〕雨を降らせ、  
                       
                       
                       
    281-31.                
     Vassā yato patāyanti, sabhāpi tattha sālavatī [bhagalavatī (sī. syā. pī.)] nāma.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Vassā  vṛṣ a 男中 雨、年、安居  
      yato    不変 そこから、〜なるが故に、何となれば(yaの奪格)  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      patāyanti,    広げる、出す  
      語根 品詞 語基 意味  
      sabhā    ā 会堂、集会所  
      pi    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      tattha    不変 そこで、そこに、そのとき、そのなかで  
      sālavatī    ī 地名、サーラヴァティー  
      nāma.   an 副対 と、という名の、じつに  
    訳文                
     ♪そこから雨は拡がるのである。またそこには、サーラヴァティーという名の会堂がある。  
                       
                       
                       
    281-32.                
     ‘‘Yattha yakkhā payirupāsanti, tattha niccaphalā rukkhā;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Yattha    不変 〜のところで  
      yakkhā    a ヤッカ、夜叉  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      payirupāsanti,  pari-upa-ās 尊敬する、訪ねる  
      語根 品詞 語基 意味  
      tattha    不変 そこで、そこに、そのとき、そのなかで  
      nicca    a 有(持) 常の、常住の  
      phalā  phal a 中→男  
      rukkhā;   a 木、樹木  
    訳文                
     ♪夜叉たちのおもむくところ、そこには常に実のなる樹木があり、  
                       
                       
                       
    281-33.                
     Nānā dijagaṇā yutā, mayūrakoñcābhirudā;  
      語根 品詞 語基 意味  
      Nānā    不変 種々の  
      dija  di-jan 名形 a 依(属) 鳥、再生者  
      gaṇā    a 衆、群  
      yutā,  yu 過分 a 結んだ、熱中した  
      mayūra    a 孔雀  
      koñca    a 有(持) 白鷺  
      abhirudā;   a 鳴き声の  
    訳文                
     ♪種々の鳥の群が集う。鳴き声を上げる孔雀たち、白鷺たちが、  
                       
                       
                       
    281-34.                
     Kokilādīhi vagguhi.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Kokila    a 有(持) 郭公、ほととぎす  
      ādīhi    i 男中 始め  
      vagguhi.   u 男中 愛すべき、妙なる  
    訳文                
     ♪妙なる郭公たちなどとともに。  
                       
                       
                       
    281-35.                
     ‘‘Jīvañjīvakasaddettha, atho oṭṭhavacittakā;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Jīvañjīvaka    a 依(属) 共命鳥  
      saddā   a  
       ettha,    不変 ここに  
      atho    不変 時に、また  
      oṭṭhavacittakā;   a 鳥名、オッタヴァチッタカ  
    訳文                
     ♪そこには、共命鳥たちの声があり、またオッタヴァチッタカたちがいる。  
    メモ                
     ・これらの鳥の列挙は、例えば『阿弥陀経』の「白鵲 孔雀 鸚鵡 舎利 迦陵頻伽 共命之鳥」と無関係ではあるまい。そこでjīvañjīvakaを水野辞書の出す伝統訳語「共命鳥」とした。ただ『註』は、『雑宝蔵経』T04.0464a05にあるような双頭の鳥ではなく‘‘jīva jīvā’’と鳴く鳥であると説明している。あるいは双頭の鳥の説話はパーリテクストにはなく、漢訳語の誤解から生じたものであるかもしれない。要確認。  
     ・いっぽうoṭṭhavacittakāについては『パーリ』が「心起鳥」としているが、この語はSATの検索にも出なかったため、ここではカタカナとした。『註』は「心を起こせ、心を起こせ」‘‘uṭṭhehi, citta, uṭṭhehi cittā’’と鳴くのだとしている。いちおう男性複数としたが、中女性の可能性もあろうか。  
                       
                       
                       
    281-36.                
     Kukkuṭakā [kukutthakā (sī. pī.)] kuḷīrakā, vane pokkharasātakā.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Kukkuṭakā    a 鳥名、クックタカ(「鶏の」?)  
      kuḷīrakā,    a 鳥名、クリーラカ(小鳥の一種という)  
      vane    a 森、林  
      pokkharasātakā.   a 鳥名、ポッカラサータカ  
    訳文                
     ♪森には、クックタカたち、クリーラカたち、ポッカラサータカたちが。  
                       
                       
                       
    281-37.                
     ‘‘Sukasāḷikasaddettha, daṇḍamāṇavakāni ca;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Suka    a 鸚鵡  
      sāḷika    ā 依(属) 九官鳥、ツグミ、百舌、舎利、鶖鷺、鸚鵡  
      saddā    a  
      ettha,    不変 ここに  
      daṇḍamāṇavakāni    a ダンダマーナヴァカ  
      ca;   不変 と、また、そして、しかし  
    訳文                
     ♪そこには、鸚鵡、舎利の声があり、またダンダマーナヴァカたちがいる。  
    メモ                
     ・daṇḍamāṇavakaは、『註』によれば「人面鳥である。曰く彼らは両手に金の杖を取って云々」manussamukhasakuṇā. Te kira dvīhi hatthehi suvaṇṇadaṇḍaṃ gahetvā……ということである。  
                       
                       
                       
    281-38.                
     Sobhati sabbakālaṃ sā, kuveranaḷinī sadā.  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      Sobhati  śubh 輝く、美しい  
      語根 品詞 語基 意味  
      sabba    名形 代的 すべて  
      kālaṃ    a 副対  
      sā,    代的 それ、彼女  
      kuvera    a 依(属) 神名、クヴェーラ  
      naḷinī    ī  
      sadā.   不変 常に  
    訳文                
     ♪かのクヴェーラの池は、いつでも、常に輝いている。  
                       
                       
                       
    281-39.                
     ‘‘Ito ‘sā uttarā disā’, iti naṃ ācikkhatī jano;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Ito    不変 これより、ここより  
      ‘sā    代的 それ、彼女  
      uttarā    代的 北の  
      disā’,  diś ā 方位、方角  
      iti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      naṃ    代的 それ、彼  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ācikkhatī  ā-khyā 強 告げる、述べる、宣説する  
      語根 品詞 語基 意味  
      jano;   a 人、人々  
    訳文                
     ♪ここから〔見て〕その方角が、北である』と、〔須弥山の〕人々はそういうのである。  
                       
                       
                       
    281-40.                
     Yaṃ disaṃ abhipāleti, mahārājā yasassi so.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Yaṃ    代的 (関係代名詞)  
      disaṃ  diś ā 方位、方角  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      abhipāleti,  abhi-pā 使 守る  
      語根 品詞 語基 意味  
      mahā    ant 大きい  
      rājā    an  
      yasassi    in 有名な、名声ある  
      so.   代的 それ、彼  
    訳文                
     ♪その方角を守護するのは、かの高名な大王である  
                       
                       
                       
    281-41.                
     ‘‘Yakkhānañca adhipati, ‘kuvero’ iti nāmaso;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Yakkhānañ    a ヤッカ、夜叉  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      adhipati,    名形 i 主、君主  
      ‘kuvero’    a 神名、クヴェーラ  
      iti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      nāmaso;   a 名前の  
    訳文                
     ♪クヴェーラという名の夜叉の王である。  
                       
                       
                       
    281-42.                
     Ramatī naccagītehi, yakkheheva purakkhato.  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      Ramatī  ram 楽しむ  
      語根 品詞 語基 意味  
      nacca  nṛt a 有(相) 踊り、舞踊  
      gītehi,  gai 名過分 a 中→男  
      yakkhehi    a 乾達婆、ガンダルヴァ  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      purakkhato. puras-kṛ 過分 a 前に置かれる、尊敬される  
    訳文                
     ♪彼は、踊りと歌ある夜叉たちにかしづかれて楽しむ。  
                       
                       
                       
    281-43.                
     ‘‘Puttāpi tassa bahavo, ekanāmāti me sutaṃ;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Puttā    a 息子  
      pi    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      tassa    代的 それ、彼  
      bahavo,    u 多い  
      eka    代的 有(帯)  
      nāmā    an 中→男 名前  
      ti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      me    代的  
      sutaṃ; śru 名過分 a 聞かれた、所聞の  
    訳文                
     ♪また、私の聞いた所では、彼の息子たちは一つの名を持つという。  
                       
                       
                       
    281-44.                
     Asīti dasa eko ca, indanāmā mahabbalā.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Asīti    i 八十  
      dasa     
      eko    代的  
      ca,    不変 と、また、そして、しかし  
      inda    a 有(持) 帝釈、王  
      nāmā    an 中→男  
      maha    ant 有(持) 大きい  
      balā.    名形 a 中→男  
    訳文                
     ♪〔彼らは〕八十と十と一人いて、インダという名を持ち、大きな力を有する。  
                       
                       
                       
    281-45.                
     ‘‘Te cāpi buddhaṃ disvāna, buddhaṃ ādiccabandhunaṃ;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Te    代的 それら、彼ら  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      api    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      buddhaṃ  budh 名過分 a 仏陀、覚者  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      disvāna,  dṛś 見る  
      語根 品詞 語基 意味  
      buddhaṃ  budh 名過分 a 仏陀、覚者  
      ādicca    a 依(属) 太陽、日  
      bandhunaṃ; bandh u 親族  
    訳文                
     ♪彼らは仏陀を、日種たる仏陀を見て、  
                       
                       
                       
    281-46.                
     Dūratova namassanti, mahantaṃ vītasāradaṃ.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Dūrato    a 副奪 遠くから  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      namassanti,    礼拝する  
      語根 品詞 語基 意味  
      mahantaṃ    ant 大きい  
      vīta  vi-i 過分 a 離れた、ない  
      sāradaṃ.   a 秋の、未熟の、未経験の →無畏者  
    訳文                
     ♪偉大な無畏者へ、遠くから帰命する。  
                       
                       
                       
    281-47.                
     ‘‘Namo te purisājañña, namo te purisuttama;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Namo    as 南無、帰命、礼拝  
      te    代的 あなた  
      purisa    a 人、男  
      ājañña,  ā-jan 名形 a よい生まれの、高貴の、良馬  
      namo    as 南無、帰命、礼拝  
      te    代的 あなた  
      purisa    a 人、男  
      uttama;   代的 最上の  
    訳文                
     ♪高貴な御方よ、あなたへ帰命あり。最上の御方よ、あなたへ帰命あり。  
                       
                       
                       
    281-48.                
     Kusalena samekkhasi, amanussāpi taṃ vandanti;  
      語根 品詞 語基 意味  
      Kusalena    a 善い、善巧の  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      samekkhasi,  saṃ-īkṣ 考察、観察、探求する  
      語根 品詞 語基 意味  
      amanussā    a 非人間  
      pi    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      taṃ    代的 あなた  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      vandanti; vand 礼拝、尊敬する  
    訳文                
     ♪あなたは善巧なる〔智慧〕をもって観察する。人ならぬ者たちもあなたへ礼拝する。  
                       
                       
                       
    281-49.                
     Sutaṃ netaṃ abhiṇhaso, tasmā evaṃ vademase.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Sutaṃ  śru 名過分 a 聞かれた、所聞  
      no    代的 私たち  
      etaṃ    代的 これ  
      abhiṇhaso,    不変 常に、しばしば  
      tasmā    代的 それ、彼  
      evaṃ    不変 このように、かくの如き  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      vademase. vad 言う  
    訳文                
     ♪我々は常々この〔問い〕を聞いている。ゆえに我々はこのように〔答えを〕言おう。  
                       
                       
                       
    281-50.                
     ‘‘‘Jinaṃ vandatha gotamaṃ, jinaṃ vandāma gotamaṃ;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘‘Jinaṃ  ji 名過分 a 勝った、勝者  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      vandatha  vand 礼拝、尊敬する  
      語根 品詞 語基 意味  
      gotamaṃ,    a 人名、ゴータマ  
      jinaṃ  ji 名過分 a 勝った、勝者  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      vandāma  vand 礼拝、尊敬する  
      語根 品詞 語基 意味  
      gotamaṃ;   a 人名、ゴータマ  
    訳文                
     ♪『あなた方は勝者ゴータマへ礼拝するか?』〔と問われれば〕、『我々は勝者ゴータマへ礼拝する。  
                       
                       
                       
    281-51.                
     Vijjācaraṇasampannaṃ, buddhaṃ vandāma gotama’’’nti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Vijjā  vid ā 明、智、呪,陀羅尼、学術、魔術  
      caraṇa  car a 依(具) 行、行為、実践、徳行  
      sampannaṃ,  saṃ-pad 過分 a 具足した、成就した →明行足  
      buddhaṃ  budh 名過分 a 仏陀、覚者  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      vandāma  vand 礼拝、尊敬する  
      語根 品詞 語基 意味  
      gotama’’’n    a 人名、ゴータマ  
      ti.   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ♪明行足にして仏陀たるゴータマへ、我々は礼拝する』〔と答えよう〕。  
                       
                       
                       
    281-52.                
     ‘‘Ayaṃ kho sā, mārisa, āṭānāṭiyā rakkhā bhikkhūnaṃ bhikkhunīnaṃ upāsakānaṃ upāsikānaṃ guttiyā rakkhāya avihiṃsāya phāsuvihārāya.  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Ayaṃ    代的 これ  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      sā,    代的 それ、彼女  
      mārisa,    不変 我が友よ、我が師よ  
      āṭānāṭiyā    a アーターナーター(都市名)の  
      rakkhā  rakṣ ā 守護、保護、護経  
      bhikkhūnaṃ  bhikṣ u 比丘  
      bhikkhunīnaṃ  bhikṣ ī 比丘尼  
      upāsakānaṃ    a 優婆塞  
      upāsikānaṃ    ā 優婆夷  
      guttiyā  gup i 守護、保護  
      rakkhāya  rakṣ ā 守護、保護、護経  
      avihiṃsāya  a-vi-hiṃs ā 無害、不殺生  
      phāsu    u 安穏な  
      vihārāya. vi-hṛ a 住、精舎、僧房  
    訳文                
     我が師よ、これがその、比丘、比丘尼、優婆塞、優婆夷たちの保護、守護、不害、安穏な所住のためのアーターナーターの護呪です。  
                       
                       
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