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     Brahmunā sākacchā  
      語根 品詞 語基 意味  
      Brahmunā  bṛh 名形 an(特) 梵天  
      sākacchā   ā 会話、議論  
    訳文                
     【梵天との会話】  
                       
                       
                       
    318-1.                
     318. ‘‘Atha kho, bho, brahmā sanaṅkumāro mahāgovindassa brāhmaṇassa cetasā cetoparivitakkamaññāya seyyathāpi nāma balavā puriso samiñjitaṃ vā bāhaṃ pasāreyya, pasāritaṃ vā bāhaṃ samiñjeyya, evameva, brahmaloke antarahito mahāgovindassa brāhmaṇassa sammukhe pāturahosi.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Atha    不変 ときに、また、そこに  
      kho,    不変 じつに、たしかに  
      bho,  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      brahmā  bṛh 名形 an(特) 梵天  
      sanaṅkumāro    a 神名、サナンクマーラ  
      mahāgovindassa    a 人名、マハーゴーヴィンダ  
      brāhmaṇassa  bṛh a 婆羅門  
      cetasā  cit as  
      ceto  cit as  
      parivitakkam    a 審慮 →心の所念  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      aññāya  ā-jñā よく知る  
      語根 品詞 語基 意味  
      seyyathā    不変 その如き、たとえば  
      pi    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      nāma    an 副対 と、という名の、じつに  
      balavā    ant 力ある  
      puriso    a 男、人  
      samiñjitaṃ  saṃ-iṅg 過分 a 動いた、曲がった  
          不変 あるいは  
      bāhaṃ    ā  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pasāreyya,  pra-sṛ 使 伸ばす  
      語根 品詞 語基 意味  
      pasāritaṃ  pra-sṛ 使 過分 a 伸ばした  
          不変 あるいは  
      bāhaṃ    ā  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      samiñjeyya,  saṃ-iṅg 動かす、曲げる  
      語根 品詞 語基 意味  
      evam    不変 このように、かくの如き  
      eva,    不変 まさに、のみ、じつに  
      brahma  bṛh 名形 an(特) 依(属) 梵天  
      loke    a 世、世界、世間  
      antarahito  antara-dhā 過分 a 滅没した、消失した  
      mahāgovindassa    a 人名、マハーゴーヴィンダ  
      brāhmaṇassa  bṛh a 婆羅門  
      sammukhe    a 男中 副処 面前に  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pāturahosi.  bhū 顕現する  
    訳文                
     友等よ、ときに、梵天サナンクマーラが、マハーゴーヴィンダ婆羅門の心の所念を心で知って、あたかも力ある男が曲がった腕を伸ばし、あるいは伸びた腕を曲げるが如くに、梵天界より消失して、マハーゴーヴィンダ婆羅門の面前へ、顕現しました。  
    メモ                
     ・これを語っているのがサナンクマーラ自身であったはずだが。  
                       
                       
                       
    318-2.                
     Atha kho, bho, mahāgovindassa brāhmaṇassa ahudeva bhayaṃ ahu chambhitattaṃ ahu lomahaṃso yathā taṃ adiṭṭhapubbaṃ rūpaṃ disvā.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また、そこに  
      kho,    不変 じつに、たしかに  
      bho,  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      mahāgovindassa    a 人名、マハーゴーヴィンダ  
      brāhmaṇassa  bṛh a 婆羅門  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ahu  bhū ある、なる  
      語根 品詞 語基 意味  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      bhayaṃ  bhī a 恐れ、恐怖  
      ahu  同上  
      chambhitattaṃ    a 硬直、恐怖  
      ahu  同上  
      loma    an 依(属)  
      haṃso  hṛṣ a 逆立つ  
      yathā    不変 〜のごとくに、〜のように  
      taṃ    代的 それ  
      adiṭṭha  a-dṛś 過分 a 有(持) 見られない  
      pubbaṃ    代的 前の、先の、昔の  
      rūpaṃ    a 色、物質、肉体、容姿  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      disvā.  dṛś 見る  
    訳文                
     友等よ、ときに、その見たこともない姿を見て、マハーゴーヴィンダ婆羅門に、恐怖が、身のすくみが、身の毛のよだちが生じました。  
                       
                       
                       
    318-3.                
     Atha kho, bho, mahāgovindo brāhmaṇo bhīto saṃviggo lomahaṭṭhajāto brahmānaṃ sanaṅkumāraṃ gāthāya ajjhabhāsi –  
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また、そこに  
      kho,    不変 じつに、たしかに  
      bho,  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      mahāgovindo    a 人名、マハーゴーヴィンダ  
      brāhmaṇo  bṛh a 婆羅門  
      bhīto  bhī 過分 a 恐れた  
      saṃviggo  saṃ-vij 過分 a 驚怖した  
      loma    an 依(属)  
      haṭṭha  hṛṣ 過分 a 依(対) 逆立ち  
      jāto  jan 過分 a 生じた  
      brahmānaṃ  bṛh 名形 an(特) 梵天  
      sanaṅkumāraṃ    a 神名、サナンクマーラ  
      gāthāya    ā  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ajjhabhāsi – adhi-bhāṣ 話しかける、語る  
    訳文                
     友等よ、ときに、恐れ、おののき、総毛立ったマハーゴーヴィンダ婆羅門は、梵天サナンクマーラに、偈をもって語りかけました。  
                       
                       
                       
    318-4.                
     ‘‘‘Vaṇṇavā yasavā sirimā, ko nu tvamasi mārisa;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘‘Vaṇṇavā    ant 美しい  
      yasavā    ant 有名な、名声ある  
      sirimā,    ant 吉祥ある  
      ko    代的 何、誰  
      nu    不変 いったい、たぶん、〜かどうか、〜ではないか  
      tvam    代的 あなた  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      asi  as ある、なる  
      語根 品詞 語基 意味  
      mārisa;   不変 我が師よ、我が友よ  
    訳文                
     ♪我が友よ、容色、名声、吉祥をそなえたあなたは、何者であろうか。  
    メモ                
     ・知らない相手に「名声ある」というのも妙ではある。  
                       
                       
                       
    318-5.                
     Ajānantā taṃ pucchāma, kathaṃ jānemu taṃ maya’’nti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Ajānantā  a-jñā 現分 ant 知らない  
      taṃ    代的 それ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pucchāma,  prach 問う  
      語根 品詞 語基 意味  
      kathaṃ    不変 いかに、なぜに  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      jānemu  jñā 知る  
      語根 品詞 語基 意味  
      taṃ    代的 あなた  
      maya’’n   代的 私たち  
      ti.   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ♪それを知らない我々は問う。あなたを何と知りおくべきかと。  
    メモ                
     ・この二つのtaṃは「それ」でも「あなた」でも通ずるが、一応このような形にしてみた。  
     ・「我々」と複数形なのは敬語表現と思われる。  
                       
                       
                       
    318-6.                
     ‘‘Maṃ ve kumāraṃ jānanti, brahmaloke sanantanaṃ [sanantica (ka.)];  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Maṃ    代的  
      ve    不変 じつに  
      kumāraṃ    a 童子  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      jānanti,  jñā 知る  
      語根 品詞 語基 意味  
      brahma  bṛh 名形 an(特) 依(属) 梵天  
      loke    a 世、世界、世間  
      sanantanaṃ;   a 昔から、永遠の  
    訳文                
     ♪梵天界では、〔皆は〕私を、永遠の(サナンタラ)童子(クマーラ)と知る。  
                       
                       
                       
    318-7.                
     Sabbe jānanti maṃ devā, evaṃ govinda jānahi’’.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Sabbe    名形 代的 中→男 すべて  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      jānanti  jñā 知る  
      語根 品詞 語基 意味  
      maṃ    代的  
      devā,    a 天、神  
      evaṃ    不変 このように、かくの如き  
      govinda    a 人名、ゴーヴィンダ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      jānahi’’. jñā 知る  
    訳文                
     ♪ゴーヴィンダよ、すべての神々が私を知る、そのごとくに知るがよい  
                       
                       
                       
    318-8.                
     ‘‘‘Āsanaṃ udakaṃ pajjaṃ, madhusākañca [madhupākañca (sī. syā. pī.)] brahmuno;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘‘Āsanaṃ  ās a  
      udakaṃ    a  
      pajjaṃ,    名形 a 足の →洗足の水  
      madhu    u 蜂蜜  
      sākañ    a 野菜  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      brahmuno; bṛh 名形 an(特) 梵天  
    訳文                
     ♪梵天のため、座と洗足の水と、蜂蜜と野菜あり。  
    メモ                
     ・madhusākañを、『南伝』は「熟蜜」、『原始』は「甘いお菓子」、『パーリ』は「甘美な食べ物」とする。ここではそのままsākaを野菜ととって、相違釈で訳した。ニカーヤの仏教は必ずしも肉食そのものは禁じないが、それでも動物を供物とする儀礼には批判的である(「クータダンタ経」など)ことから、ここでも肉を供物にしていないことを強調したものとみたのである。  
                       
                       
                       
    318-9.                
     Agghe bhavantaṃ pucchāma, agghaṃ kurutu no bhavaṃ’’.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Agghe    a 価値、評価、供物  
      bhavantaṃ  bhū 名現分 ant(特) 尊師、尊者  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pucchāma,  prach 問う  
      語根 品詞 語基 意味  
      agghaṃ    a 価値、評価、供物  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      kurutu  kṛ なす  
      語根 品詞 語基 意味  
      no    代的 私たち  
      bhavaṃ’’. bhū ant 尊師、尊者  
    訳文                
     ♪我らは〔贈与品の〕価値を尊者へ問う。尊者は我らへ評価をなされよ  
    メモ                
     ・『南伝』、『原始』は、供物の対価をなせ、という意味で訳す。『パーリ』は「供物をお受け下さい」と意訳する。ここでは、agghaの「価値・評価」の意味で訳してみた(「供物」は「価値あるもの」からきた派生的意味と見たのであり、次文はそちらで訳す)。  
                       
                       
                       
    318-10.                
     ‘‘Paṭiggaṇhāma te agghaṃ, yaṃ tvaṃ govinda bhāsasi;  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ‘‘Paṭiggaṇhāma  pari-grah 受け取る、受領する  
      語根 品詞 語基 意味  
      te    代的 あなた  
      agghaṃ,    a 価値、評価、供物  
      yaṃ    代的 (関係代名詞)  
      tvaṃ    代的 あなた  
      govinda    a 人名、ゴーヴィンダ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      bhāsasi; bhāṣ いう  
    訳文                
     ♪ゴーヴィンダよ、我らは、あなたのいう、あなたよりの供物を受け取ろう。  
                       
                       
                       
    318-11.                
     Diṭṭhadhammahitatthāya, samparāya sukhāya ca;  
      語根 品詞 語基 意味  
      Diṭṭha  dṛś 過分 a 見られた、見、所見  
      dhamma  dhṛ a 依(処) 法 →現法、現世  
      hita 名過分 a 有益な、利益  
      atthāya,    a 男中 義、利益、道理、意味、必要  
      samparāya  saṃ-para-i a 依(処) 到来、来世、後世  
      sukhāya    名形 a 楽、安楽  
      ca;   不変 と、また、そして、しかし  
    訳文                
     ♪現世での利益と、来世での安楽のため、  
                       
                       
                       
    318-12.                
     Katāvakāso pucchassu, yaṃ kiñci abhipatthita’’nti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Kata  kṛ 過分 a 有(持) なされた  
      avakāso    a 空間、機会  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pucchassu,  prach 問う  
      語根 品詞 語基 意味  
      yaṃ    代的 (関係代名詞)  
      kiñci    代的 何らかの、何者であれ  
      abhipatthita’’n  abhi-pra-arth 過分 a 欲された  
      ti.   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ♪機会を作られたあなたは、何であれ、欲されたところを問うがいい  
                       
                       
                       
    319-1.                
     319. ‘‘Atha kho, bho, mahāgovindassa brāhmaṇassa etadahosi –   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Atha    不変 ときに、また、そこに  
      kho,    不変 じつに、たしかに  
      bho,  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      mahāgovindassa    a 人名、マハーゴーヴィンダ  
      brāhmaṇassa  bṛh a 婆羅門  
      etad    代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ahosi –  bhū ある、なる  
    訳文                
     友等よ、ときにマハーゴーヴィンダ婆羅門に、この〔思い〕がおこりました。  
                       
                       
                       
    319-2.                
     ‘‘katāvakāso khomhi brahmunā sanaṅkumārena.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘kata  kṛ 過分 a 有(持) なされた  
      avakāso    a 空間、機会  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      amhi  as ある、なる  
      語根 品詞 語基 意味  
      brahmunā  bṛh 名形 an(特) 梵、梵天、尊貴の、神聖の  
      sanaṅkumārena.    a 神名、サナンクマーラ  
    訳文                
     私は、梵天サナンクマーラによって、機会を作られた。  
                       
                       
                       
    319-3.                
     Kiṃ nu kho ahaṃ brahmānaṃ sanaṅkumāraṃ puccheyyaṃ diṭṭhadhammikaṃ vā atthaṃ samparāyikaṃ vā’ti?   
      語根 品詞 語基 意味  
      Kiṃ    代的  
      nu    不変 いったい、たぶん、〜かどうか、〜ではないか  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      ahaṃ    代的  
      brahmānaṃ  bṛh 名形 an(特) 梵、梵天、尊貴の、神聖の  
      sanaṅkumāraṃ    a 神名、サナンクマーラ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      puccheyyaṃ  prach 能反 問う  
      語根 品詞 語基 意味  
      diṭṭha  dṛś 過分 a 有(持) 見られた、見、所見  
      dhammikaṃ  dhṛ a 男中 法の →現法、現世の  
          不変 あるいは  
      atthaṃ    a 男中 義、利益、道理、意味、必要  
      samparāyikaṃ  saṃ-para-i a 男中 到来、来世、後世の  
      vā’    不変 あるいは  
      ti?    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     いったい私は、梵天サナンクマーラに、何を問うべきだろう。現世の利益か、あるいは来世のことかと。  
                       
                       
                       
    319-4.                
     Atha kho, bho, mahāgovindassa brāhmaṇassa etadahosi –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha kho, bho, mahāgovindassa brāhmaṇassa etadahosi – (319-1.)  
    訳文                
     友等よ、ときにマハーゴーヴィンダ婆羅門に、この〔思い〕がおこりました。  
                       
                       
                       
    319-5.                
     ‘kusalo kho ahaṃ diṭṭhadhammikānaṃ atthānaṃ, aññepi maṃ diṭṭhadhammikaṃ atthaṃ pucchanti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘kusalo    a 善き、巧みな  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      ahaṃ    代的  
      diṭṭha  dṛś 過分 a 有(持) 見られた、見、所見  
      dhammikānaṃ  dhṛ a 男中 法の →現法、現世の  
      atthānaṃ,    a 男中 義、利益、道理、意味、必要  
      aññe    代的 他の、異なる  
      pi    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      maṃ    代的  
      diṭṭha  dṛś 過分 a 有(持) 見られた、見、所見  
      dhammikaṃ  dhṛ a 男中 法の →現法、現世の  
      atthaṃ    a 男中 義、利益、道理、意味、必要  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pucchanti.  prach 問う  
    訳文                
     じつに私は、諸々の現世での利益に関して巧者であり、他の人たちが私に、現世での利益について質問してくる〔ほどである〕。  
                       
                       
                       
    319-6.                
     Yaṃnūnāhaṃ brahmānaṃ sanaṅkumāraṃ samparāyikaññeva atthaṃ puccheyya’nti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Yaṃ    代的 (関係代名詞)  
      nūna    不変 たしかに →〜したらどうか  
      ahaṃ    代的  
      brahmānaṃ  bṛh 名形 an(特) 梵、梵天、尊貴の、神聖の  
      sanaṅkumāraṃ    a 神名、サナンクマーラ  
      samparāyikaññ  saṃ-para-i a 男中 到来、来世、後世の  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      atthaṃ    a 男中 義、利益、道理、意味、必要  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      puccheyya’n  prach 能反 問う  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     私は、梵天サナンクマーラに、来世での利益をこそ、問うてみるべきではなかろうかと。  
                       
                       
                       
    319-7.                
     Atha kho, bho, mahāgovindo brāhmaṇo brahmānaṃ sanaṅkumāraṃ gāthāya ajjhabhāsi –  
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また、そこに  
      kho,    不変 じつに、たしかに  
      bho,  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      mahāgovindo    a 人名、マハーゴーヴィンダ  
      brāhmaṇo  bṛh a 婆羅門  
      brahmānaṃ  bṛh 名形 an(特) 梵天  
      sanaṅkumāraṃ    a 神名、サナンクマーラ  
      gāthāya    ā  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ajjhabhāsi – adhi-bhāṣ 話しかける、語る  
    訳文                
     友等よ、そこで、マハーゴーヴィンダ婆羅門は、梵天サナンクマーラへ、偈をもって語りかけました。  
                       
                       
                       
    319-8.                
     ‘‘Pucchāmi brahmānaṃ sanaṅkumāraṃ,  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ‘‘Pucchāmi  prach 問う  
      語根 品詞 語基 意味  
      brahmānaṃ  bṛh 名形 an(特) 梵天  
      sanaṅkumāraṃ,   a 神名、サナンクマーラ  
    訳文                
     ♪私は、梵天サナンクマーラへ問う。  
                       
                       
                       
    319-9.                
     Kaṅkhī akaṅkhiṃ paravediyesu;  
      語根 品詞 語基 意味  
      Kaṅkhī  kāṅkṣ in 疑っている、疑惑の  
      akaṅkhiṃ  a-kāṅkṣ in 疑っていない、疑惑なき  
      para   代的 依(属) 他の  
      vediyesu; vid 使 未分 a 男中 知られるべき →異端説  
    訳文                
     ♪諸々の異説に疑念ある者として、疑念なき者へ〔問う〕。  
                       
                       
                       
    319-10.                
     Katthaṭṭhito kimhi ca sikkhamāno,  
      語根 品詞 語基 意味  
      Kattha    不変 どこに  
      ṭhito  sthā 過分 a 立った  
      kimhi    代的 何、誰  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      sikkhamāno, śikṣ 現分 a 学ぶ、学得する  
    訳文                
     ♪どこに立ち、何について学ぶ者が、  
                       
                       
                       
    319-11.                
     Pappoti macco amataṃ brahmaloka’’nti.  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      Pappoti  pra-āp 得る、到達する  
      語根 品詞 語基 意味  
      macco  mṛ 名未分 a 死すべき、人間  
      amataṃ  a-mṛ 名過分 a 不死の  
      brahma  bṛh 名形 an(特) 依(属) 梵天  
      loka’’n    a 世、世界、世間  
      ti.   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ♪死すべき身〔でありながら〕、不死の梵天界へ到るのであろうか  
                       
                       
                       
    319-12.                
     ‘‘Hitvā mamattaṃ manujesu brahme,  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ‘‘Hitvā  捨てて  
      語根 品詞 語基 意味  
      mamattaṃ    a 我執、我所執  
      manujesu    a  
      brahme, bṛh 名形 an(特) 梵天、梵者、婆羅門  
    訳文                
     ♪婆羅門よ、人間の内で、我執を捨て、  
    メモ                
     ・brahmaは普通「梵天」だが、「婆羅門」の意味もある。音韻の関係でこの語を選んだのであろう。  
                       
                       
                       
    319-13.                
     Ekodibhūto karuṇedhimutto [karuṇādhimutto (sī. syā. pī.)];  
      語根 品詞 語基 意味  
      Ekodi    i 依(対) 専一の、一点の  
      bhūto  bhū 過分 a なった  
      karuṇā    ā 依(対) 悲、悲心  
      adhimutto; adhi-muc 受 過分 a 信解する、勝解する、志向する  
    訳文                
     ♪孤独となり、悲〔なる禅定〕に心を傾けて、  
    メモ                
     ・諸訳はekodibhūtoを「心一境相」(南伝)というように訳すが、320-4.を見るに、これは心の統一ではなく独住をいったもののようである。  
     ・異版のkaruṇādhimuttoを採用した。以下も同様。  
                       
                       
                       
    319-14.                
     Nirāmagandho virato methunasmā,  
      語根 品詞 語基 意味  
      Nirāmagandho    a 臭穢なき、生臭ならぬ  
      virato  vi-ram 過分 a 慎んだ、離れた  
      methunasmā,   名形 a 淫欲  
    訳文                
     ♪臭穢なく淫欲を離れたもの。  
                       
                       
                       
    319-15.                
     Etthaṭṭhito ettha ca sikkhamāno;  
      語根 品詞 語基 意味  
      Ettha    不変 ここに  
      ṭhito  sthā 過分 a 立った  
      ettha    不変 ここに  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      sikkhamāno; śikṣ 現分 a 学ぶ、学得する  
    訳文                
     ♪ここに立ち、またここに学ぶ者が、  
                       
                       
                       
    319-16.                
     Pappoti macco amataṃ brahmaloka’’nti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Pappoti macco amataṃ brahmaloka’’nti. (319-11.)  
    訳文                
     ♪死すべき身〔でありながら〕、不死の梵天界へ到るのである  
                       
                       
                       
    320-1.                
     320. ‘‘Hitvā mamatta’nti ahaṃ bhoto ājānāmi.   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ‘‘Hitvā  捨てて  
      語根 品詞 語基 意味  
      mamatta’n    a 我執、我所執  
      ti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      ahaṃ    代的  
      bhoto  bhū 名現分 ant(特) 尊師、尊者  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ājānāmi.  ā-jñā 了知する、よく知る  
    訳文                
     「我執を捨てて」という尊者の〔所説を〕、私は了知しています。  
                       
                       
                       
    320-2.                
     Idhekacco appaṃ vā bhogakkhandhaṃ pahāya mahantaṃ vā bhogakkhandhaṃ pahāya appaṃ vā ñātiparivaṭṭaṃ pahāya mahantaṃ vā ñātiparivaṭṭaṃ pahāya kesamassuṃ ohāretvā kāsāyāni vatthāni acchādetvā agārasmā anagāriyaṃ pabbajati, ‘iti hitvā mamatta’nti ahaṃ bhoto ājānāmi.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Idha    不変 ここに、この世で、いま、さて  
      ekacco    代的 とある、一類の  
      appaṃ    名形 a 中→男 少ない  
          不変 あるいは  
      bhoga  bhuj a 依(属) 受用、財  
      khandhaṃ    a 蘊、集まり  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pahāya  pra-hā 捨てて  
      語根 品詞 語基 意味  
      mahantaṃ    ant 大きな  
          不変 あるいは  
      bhoga  bhuj a 依(属) 受用、財  
      khandhaṃ    a 蘊、集まり  
      pahāya  同上  
      appaṃ    名形 a 中→男 少ない  
          不変 あるいは  
      ñāti    i 親族、親戚  
      parivaṭṭaṃ  pari-vṛt a 円輪、集団、とりまき  
      pahāya  同上  
      mahantaṃ    ant 大きな  
          不変 あるいは  
      ñāti    i 親族、親戚  
      parivaṭṭaṃ  pari-vṛt a 円輪、集団、とりまき  
      pahāya  同上  
      kesa    a  
      massuṃ    u ひげ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ohāretvā  ava-hṛ 使 剃る  
      語根 品詞 語基 意味  
      kāsāyāni    a 渋色の、袈裟、黄衣  
      vatthāni  vas a  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      acchādetvā  ā-chad 使 覆う、まとう、包む  
      語根 品詞 語基 意味  
      agārasmā    a 家、舎、家屋、俗家  
      anagāriyaṃ    a 非家の  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pabbajati,  pra-vraj 出家する、遁世する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘iti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      hitvā mamatta’nti ahaṃ bhoto ājānāmi. (320-1.)  
    訳文                
     ここなるとある者が、少ない財産を捨て、あるいは多い財産を捨て、少ない親族や眷属を捨て、あるいは多い親族や眷属を捨てて、髪とひげを剃って袈裟衣をまとい、家から出家する、というのが「我執を捨てて」という尊者の〔所説であると〕、私は了知しています。  
    メモ                
     ・「沙門果経」【よりすぐれた沙門の果報】192-1.にパラレル。  
                       
                       
                       
    320-3.                
     ‘Ekodibhūto’ti ahaṃ bhoto ājānāmi.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘Ekodi    i 依(対) 専一の、一点の  
      bhūto’  bhū 過分 a なった  
      ti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      ahaṃ    代的  
      bhoto  bhū 名現分 ant(特) 尊師、尊者  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ājānāmi.  ā-jñā 了知する、よく知る  
    訳文                
     「孤独となり」という尊者の〔所説を〕、私は了知しています。  
                       
                       
                       
    320-4.                
     Idhekacco vivittaṃ senāsanaṃ bhajati araññaṃ rukkhamūlaṃ pabbataṃ kandaraṃ giriguhaṃ susānaṃ vanapatthaṃ abbhokāsaṃ palālapuñjaṃ, iti ekodibhūto’ti ahaṃ bhoto ājānāmi.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Idha    不変 ここに、この世で、いま、さて  
      ekacco    代的 とある、一類の  
      vivittaṃ  vi-vic 過分 a 遠離した、離れた  
      sena śī a 臥具、臥処  
      āsanaṃ  ās a 坐具、坐処 →遠離した住処  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      bhajati  bhaj 親近する、奉仕する  
      語根 品詞 語基 意味  
      araññaṃ    a 林野、閑林、空閑処  
      rukkha    a 衣(属)  
      mūlaṃ    a 根 →樹下  
      pabbataṃ    a 山、山岳  
      kandaraṃ    a 洞窟、石窟、峡谷  
      giri   i 衣(属)  
      guhaṃ  guh ā  
      susānaṃ    a 塚間、塚墓、墓、墓場、墓地  
      vana   a 衣(属) 森林、欲望  
      patthaṃ  pra-sthā a 辺鄙  
      abbhokāsaṃ  abhi-ava-kāś a 露地、野天、屋外、野外、開かれた場所  
      palāla    a 男中 衣(属) わら  
      puñjaṃ,    a 集積、山積  
      iti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      ekodibhūto’ti ahaṃ bhoto ājānāmi. (320-3.)  
    訳文                
     ここなるとある者が、閑林、樹下、山岳、峡谷、山窟、墓地、森の辺鄙な場所、野天、わら山〔といった〕遠離した住処に親しむ、というのが「孤独となり」という尊者の〔所説であると〕、私は了知しています。  
    メモ                
     ・「沙門果経」【〔五〕蓋の捨断】216-1.にパラレル。  
                       
                       
                       
    320-5.                
     ‘Karuṇedhimutto’ti ahaṃ bhoto ājānāmi.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘Karuṇā    ā 依(対) 悲、悲心  
      adhimutto’  adhi-muc 受 過分 a 信解する、勝解する、志向する  
      ti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      ahaṃ    代的  
      bhoto  bhū 名現分 ant(特) 尊師、尊者  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ājānāmi.  ā-jñā 了知する、よく知る  
    訳文                
     「悲〔なる禅定〕に心を傾けて」という尊者の〔所説を〕、私は了知しています。  
                       
                       
                       
    320-6.                
     Idhekacco karuṇāsahagatena cetasā ekaṃ disaṃ pharitvā viharati, tathā dutiyaṃ, tathā tatiyaṃ, tathā catutthaṃ.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Idha    不変 ここに、この世で、いま、さて  
      ekacco    代的 とある、一類の  
      karuṇā    ā 依(具) 悲、悲心  
      sahagatena  saha-gam a 倶行の、倶なる  
      cetasā  cit as 心、心想  
      ekaṃ    代的 ひとつ、とある  
      disaṃ  diś ā 方向、方角  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pharitvā  sphar ひろがる、遍満する  
      viharati,  vi-hṛ 住する  
      語根 品詞 語基 意味  
      tathā    不変 かく、その如く  
      dutiyaṃ,    名形 a 男→女 第二  
      tathā    不変 かく、その如く  
      tatiyaṃ,    a 第三  
      tathā    不変 かく、その如く  
      catutthaṃ.    a 第四  
    訳文                
     ここなるとある者が、悲をともなう心によって、一つの方角を満たして住し、そのように、第二、第三、第四の〔方向を満たして住し〕、  
    メモ                
     ・「三明経」【梵天界への道の教示】556-4.にパラレル。そこでも描かれたように、修道のプロセスとして、出家から戒具足をへて五蓋の捨断まで達した後、色界四禅へ続けて行くと漏尽へ達し(「沙門果経」ほか)、分岐して四無量心の修習に入ると梵天界へ到る(「三明経」や本経)、というモデルが共有されているようである。本経の最後でも、それに関連する発言がある。  
                       
                       
                       
    320-7.                
     Iti uddhamadhotiriyaṃ sabbadhi sabbattatāya sabbāvantaṃ lokaṃ karuṇāsahagatena cetasā vipulena mahaggatena appamāṇena averena abyāpajjena pharitvā viharati.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Iti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      uddha    不変  
      madho    不変  
      tiriyaṃ    不変 横に、四方に  
      sabbadhi    不変 一切処に、あらゆる場合に、あらゆる点で  
      sabbattatāya    ā 副具 一切処性、遍通(副具で「全体として」「全体に」)  
      sabbāvantaṃ    ant 一切の、全部  
      lokaṃ    a 界、世界、世間  
      karuṇā    ā 依(具) 悲、悲心  
      sahagatena  saha-gam a 倶行の、倶なる  
      cetasā  cit as 心、心想  
      vipulena    a 広大  
      mahaggatena    a 大きな、広大な、上二界の  
      appamāṇena    名形 a 無量の  
      averena    a 怨なき、無怨の  
      abyāpajjena  a-vi-ā-pad a 瞋なき、無瞋の  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pharitvā  sphar ひろがる、遍満する  
      viharati.  vi-hṛ 住する  
    訳文                
     そのように、上を、下を、四維を、一切処を、あまねく全世界を、広大で、大きな、無量の、怨なき、瞋なき、悲をともなう心によって、満たして住す、  
                       
                       
                       
    320-8.                
     Iti ‘karuṇedhimutto’ti ahaṃ bhoto ājānāmi.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Iti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      ‘karuṇedhimutto’ti ahaṃ bhoto ājānāmi. (320-5.)  
    訳文                
     というのが、「悲〔なる禅定〕に心を傾けて」という尊者の〔所説であると〕、私は了知しています。  
                       
                       
                       
    320-9.                
     Āmagandhe ca kho ahaṃ bhoto bhāsamānassa na ājānāmi.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Āma    a 生の、加工していない  
      gandhe    a 香 →臭穢、生臭  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      ahaṃ    代的  
      bhoto  bhū 名現分 ant(特) 属絶 尊師、尊者  
      bhāsamānassa  bhāṣ 現分 a 属絶 語る  
      na    不変 ない  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ājānāmi.  ā-jñā 了知する、よく知る  
    訳文                
     しかし私は、尊者の語る「臭穢」に関して、了知していません  
                       
                       
                       
    320-10.                
     ‘‘Ke āmagandhā manujesu brahme,  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Ke    代的  
      āma    a 有(持) 生の、加工していない  
      gandhā    a 香 →臭穢、生臭  
      manujesu    a  
      brahme, bṛh 名形 an(特) 梵天、梵者、婆羅門  
    訳文                
     ♪梵天よ、人々の内で、いかなる者たちが臭穢ある者たちなのか。  
                       
                       
                       
    320-11.                
     Ete avidvā idha brūhi dhīra;  
      語根 品詞 語基 意味  
      Ete    代的 それら、彼ら  
      avidvā  a-vid ant 無知の  
      idha    不変 ここに、この世で、いま、さて  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      brūhi  brū いう、告げる、述べる  
      語根 品詞 語基 意味  
      dhīra;   名形 a 堅固な、賢者  
    訳文                
     ♪〔私は〕それらを知らない。〔それゆえ〕賢者よ、あなたはここに述べられよ。  
    メモ                
     ・avidvāを、『南伝』と『原始』は「知らざるが故に」などと理由のように訳す。ここでは『パーリ』のように文を途中で区切って、補訳した。  
                       
                       
                       
    320-12.                
     Kenāvaṭā [kenāvuṭā (syā.)] vāti pajā kurutu [kururū (syā.), kuruṭṭharū (pī.), kurūru (?)],  
      語根 品詞 語基 意味  
      Kena    代的  
      āvaṭā  ā-vṛ 過分 a 覆われた、閉じた  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      vāti  吹く、香る、匂う  
      語根 品詞 語基 意味  
      pajā    ā 人々  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      kurutu, kṛ なす  
    訳文                
     ♪〔解答〕なされよ。何によって、人々は覆われ、臭うのか。  
    メモ                
     ・『パーリ』は「悪しき臭い」、『南伝』は「悪臭」、『原始』は「臭いとただれ」としているようであるが、いずれも、kurutuの語をどう見たものか(「残忍な」を意味するkurūraの誤記とみたものであろうか)。ここでは、水野辞書に出るkṛの命令形ととったうえで、上記のように補ってみたが、これも文の本意かどうかは不明である。  
                       
                       
                       
    320-13.                
     Āpāyikā nivutabrahmalokā’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Āpāyikā    a 悪趣の、苦界の  
      nivuta  ni-vṛ 過分 a 有(持) 覆われた、包まれた、さまたげ  
      brahma  bṛh 名形 an(特) 依(属) 梵天  
      lokā’’    a 世、世界、世間  
      ti.   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ♪悪趣の者たち、梵天界をとざされた者たちとなるのか  
                       
                       
                       
    320-14.                
     ‘‘Kodho mosavajjaṃ nikati ca dubbho,  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Kodho  krudh a 忿怒  
      mosa    a 偽りの、虚妄の  
      vajjaṃ  vad 名未分 a いわれるべき、言葉 →妄語  
      nikati    i 詐欺、欺瞞  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      dubbho, dabh a 欺瞞の、害意の、反逆の  
    訳文                
     ♪忿怒、妄語、また欺瞞、害意、  
                       
                       
                       
    320-15.                
     Kadariyatā atimāno usūyā;  
      語根 品詞 語基 意味  
      Kadariyatā    ā 吝嗇、貪婪  
      atimāno    a 過慢  
      usūyā;   ā 嫉妬  
    訳文                
     ♪吝嗇、過慢、嫉妬  
                       
                       
                       
    320-16.                
     Icchā vivicchā paraheṭhanā ca,  
      語根 品詞 語基 意味  
      Icchā  iṣ ā 欲求、希求  
      vivicchā    ā 貪欲、種々欲  
      para    代的 依(与) 他の  
      heṭhanā  heḍ, hīd ā 悩害  
      ca,   不変 と、また、そして、しかし  
    訳文                
     ♪欲望、種々欲、また他者への悩害、  
                       
                       
                       
    320-17.                
     Lobho ca doso ca mado ca moho;  
      語根 品詞 語基 意味  
      Lobho    a 貪、貪欲  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      doso    a 瞋恚  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      mado    a 驕慢、慢心  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      moho;   a 痴、愚痴  
    訳文                
     ♪貪欲と瞋恚と驕慢と愚痴、  
                       
                       
                       
    320-18.                
     Etesu yuttā anirāmagandhā,  
      語根 品詞 語基 意味  
      Etesu    代的 これ  
      yuttā  yuj 過分 a 相応した、結合した  
      anirāmagandhā,   a 臭穢なからず  
    訳文                
     ♪これらに束縛された者たちは、臭穢なき者ではない。  
                       
                       
                       
    320-19.                
     Āpāyikā nivutabrahmalokā’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Āpāyikā nivutabrahmalokā’’ti. (320-13.)  
    訳文                
     ♪悪趣の者たち、梵天界をとざされた者たちとなる  
                       
                       
                       
    320-20.                
     ‘‘Yathā kho ahaṃ bhoto āmagandhe bhāsamānassa ājānāmi.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Yathā    不変 〜のごとくに、〜のように  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      ahaṃ    代的  
      bhoto  bhū 名現分 ant(特) 属絶 尊師、尊者  
      āma    a 生の、加工していない  
      gandhe    a 香 →臭穢、生臭  
      bhāsamānassa  bhāṣ 現分 a 属絶 語る  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ājānāmi.  ā-jñā 了知する、よく知る  
    訳文                
     じつに私は、臭穢に関して、尊者の語る如く、了知しました。  
                       
                       
                       
    320-21.                
     Te na sunimmadayā agāraṃ ajjhāvasatā.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Te    代的 それら、彼ら  
      na    不変 ない  
      sunimmadayā  su-ni-mṛd 未分 a 制圧しやすい  
      agāraṃ    a 家、在家  
      ajjhāvasatā.  adhi-ā-vas 現分 ant 住する  
    訳文                
     それらは、在家に住する者によっては、制圧することは容易ではありません。  
                       
                       
                       
    320-22.                
     Pabbajissāmahaṃ, bho, agārasmā anagāriya’’nti.   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      Pabbajissāmi  pra-vraj 出家する、遁世する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ahaṃ,    代的  
      bho,  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      agārasmā    a 家、舎、家屋、俗家  
      anagāriya’’n    a 非家の  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     尊者よ、私は在家より非家へと出家しようと思います  
                       
                       
                       
    320-23.                
     ‘‘Yassadāni bhavaṃ govindo kālaṃ maññatī’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Yassa    代的 (関係代名詞)  
      dāni    不変 いま、いまや  
      bhavaṃ  bhū 名現分 ant(特) 尊師、尊者  
      govindo    a 人名、ゴーヴィンダ  
      kālaṃ    a  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      maññatī’’  man 考える  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     尊者ゴーヴィンダが、いまや時を〔出家の適時だと〕お考えならば、そのため、〔これでお別れとしましょう〕  
                       
                       
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