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     7. Nadubbhiyasuttaṃ  
      語根 品詞 語基 意味  
      Na    不変 ない  
      dubbhiya  dabh a 依(属) 欺瞞の、害意の、反逆する  
      suttaṃ  sīv a 経、糸  
    訳文                
     「不害経」(『相応部』11-7  
                       
                       
                       
    253-1.                
     253. Sāvatthiyaṃ.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Sāvatthiyaṃ.    ī 地名、サーヴァッティー  
    訳文                
     サーヴァッティーでのことである。  
                       
                       
                       
    253-2.                
     ‘‘Bhūtapubbaṃ, bhikkhave, sakkassa devānamindassa rahogatassa paṭisallīnassa evaṃ cetaso parivitakko udapādi –   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Bhūta  bhū 過分 a 存在した、生類  
      pubbaṃ,    代的 副対 前の、先の、昔の →往昔  
      bhikkhave,  bhikṣ u 比丘  
      sakkassa    a 属絶 帝釈、釈迦、釈迦族  
      devānam    a 天、神  
      indassa    a 属絶 インドラ、帝王、王  
      raho  rah as 依(対) 独処、静処  
      gatassa  gam 過分 a 属絶 行った、関係した →独処した  
      paṭisallīnassa  prati-saṃ-lī 過分 a 属絶 独坐した  
      evaṃ    不変 このように、かくの如き  
      cetaso  cit as  
      parivitakko  pari-vi-tark 名形 a 審慮 →心の所念  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      udapādi –  ud-pad 生じる、発生する  
    訳文                
     〔世尊曰く〕「比丘たちよ、かつて、独処し、独坐した神々の王サッカに、かくのごとき心の所念がおこりました。  
                       
                       
                       
    253-3.                
     ‘yopi me assa supaccatthiko tassapāhaṃ na dubbheyya’nti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘yo    代的 (関係代名詞)  
      pi    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      me    代的  
      assa    代的 これ  
      supaccatthiko    a よく敵対する  
      tassa    代的 それ、彼  
      pi    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      ahaṃ    代的  
      na    不変 ない  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      dubbheyya’n  dabh 能反 害する、欺く、裏切る  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     『この私にひどく敵対するような者があっても、私はその者を害さないようにしよう』と。  
                       
                       
                       
    253-4.                
     Atha kho, bhikkhave, vepacitti asurindo sakkassa devānamindassa cetasā cetoparivitakkamaññāya yena sakko devānamindo tenupasaṅkami.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また、そこに  
      kho,    不変 じつに、たしかに  
      bhikkhave,  bhikṣ u 比丘  
      vepacitti    i 神名、ヴェーパチッティ  
      asura    a 依(属) アスラ、阿修羅  
      indo    a インドラ、帝王、王  
      sakkassa    a 帝釈、釈迦、釈迦族  
      devānam    a 天、神  
      indassa    a インドラ、帝王、王  
      cetasā  cit as  
      ceto cit as 依(属)  
      parivitakkam    a 審慮 →心の所念  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      aññāya  ā-jñā よく知る  
      語根 品詞 語基 意味  
      yena    代的 (関係代名詞、〜tenaで「〜の所に」)  
      sakko    a 神名、サッカ、帝釈天  
      devānam    a 天、神  
      indo    a インドラ、帝王、王  
      tena    代的 それ、彼、それによって、それゆえ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upasaṅkami.  upa-saṃ-kram 近づく  
    訳文                
     比丘たちよ、ときにアスラの王ヴェーパチッティが、神々の王サッカの心の所念を心で知って、神々の王サッカへ近づきました。  
                       
                       
                       
    253-5.                
     Addasā kho, bhikkhave, sakko devānamindo vepacittiṃ asurindaṃ dūratova āgacchantaṃ.   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      Addasā  dṛś 見た  
      語根 品詞 語基 意味  
      kho,    不変 じつに、たしかに  
      bhikkhave,  bhikṣ u 比丘  
      sakko    a 神名、サッカ、帝釈天  
      devānam    a 天、神  
      indo    a インドラ、帝王、王  
      vepacittiṃ    i 神名、ヴェーパチッティ  
      asura    a 依(属) アスラ、阿修羅  
      indaṃ    a インドラ、帝王、王  
      dūrato    a 遠く  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      āgacchantaṃ.  ā-gaṃ 現分 ant 来る  
    訳文                
     比丘たちよ、神々の王サッカは、遠くからやってくるアスラの王ヴェーパチッティを見ました。  
                       
                       
                       
    253-6.                
     Disvāna vepacittiṃ asurindaṃ etadavoca –   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      Disvāna  dṛś 見る  
      語根 品詞 語基 意味  
      vepacittiṃ    i 神名、ヴェーパチッティ  
      asura    a 依(属) アスラ、阿修羅  
      indaṃ    a インドラ、帝王、王  
      etad    代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      avoca –  vac いう  
    訳文                
     見て、アスラの王ヴェーパチッティへこう言いました。  
                       
                       
                       
    253-7.                
     ‘tiṭṭha, vepacitti, gahitosī’’’ti.  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ‘tiṭṭha,  sthā 立つ、止まる  
      語根 品詞 語基 意味  
      vepacitti,    i 神名、ヴェーパチッティ  
      gahito  grah 過分 a 取られた  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      asī’’’  as ある、なる  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     『止まれ、ヴェーパチッティよ。そなたは捕捉されている』と。  
    メモ                
     ・捕らえられている、では奇妙なので、このように「近づいている事に気づいているぞ」というニュアンスにしてみた。  
                       
                       
                       
    253-8.                
     ‘‘Yadeva te, mārisa, pubbe cittaṃ, tadeva tvaṃ mā pajahāsī’’ti [tadeva tvaṃ mārisa pahāsīti (sī. syā. kaṃ.)].  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Yad    代的 (関係代名詞)  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      te,    代的 あなた  
      mārisa,    不変 我が師よ、我が友よ  
      pubbe    不変 前に、以前に  
      cittaṃ,  cit a  
      tad    代的 それ  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      tvaṃ    代的 あなた  
          不変 なかれ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pajahāsī’’  pra-hā 捨てる、捨断する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     『友よ、そなたは、そなたの以前の心を捨てるなかれ』  
    メモ                
     ・さきほどの不害の決心を思い出せ、という事であろう。  
                       
                       
                       
    253-9.                
     ‘‘Sapassu ca me, vepacitti, adubbhāyā’’ti [adrubbhāya (ka.)].  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ‘‘Sapassu  śap 呪う、呪詛する、宣誓する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      me,    代的  
      vepacitti,    i 神名、ヴェーパチッティ  
      adubbhāyā’’  a-dabh a 欺瞞なき、害意なき、反逆せざる  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     『ヴェーパチッティよ、そなたは、私に害意なきことを宣誓せよ』  
    メモ                
     ・水野、雲井辞書にはsapatiは「呪う」とだけあるが、『註』はsapassusapathaṃ karohīと換言しており、sapathaについては「宣誓」の義を掲載しているので、もともとsapatiに「誓う」の義も内包されているものと判断した。PTS辞書も、to swearの義を挙げている。  
                       
                       
                       
    253-10.                
     ‘‘Yaṃ musā bhaṇato pāpaṃ, yaṃ pāpaṃ ariyūpavādino;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Yaṃ    代的 (関係代名詞)  
      musā    不変 虚妄に、偽って  
      bhaṇato  bhaṇ 現分 ant 話す、語る  
      pāpaṃ,    名形 a  
      yaṃ    代的 (関係代名詞)  
      pāpaṃ    名形 a  
      ariya    名形 a 依(対) 聖なる  
      upavādino;  upa-vad in 非難する、悪罵する  
    訳文                
     『♪妄語者の罪障、聖者を非難する者の罪障、  
    メモ                
     ・pāpaは「悪」であるが、文脈からして「悪の報い」がいわれているように思われるので『原始』にならい「罪障」とした。『南伝』はより直裁に「悪報」としている。  
                       
                       
                       
    253-11.                
     Mittadduno ca yaṃ pāpaṃ, yaṃ pāpaṃ akataññuno;  
      語根 品詞 語基 意味  
      Mitta    a 男中 依(対)  
      duno    u 悪い、難しい →友を裏切る  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      yaṃ    代的 (関係代名詞)  
      pāpaṃ,    名形 a  
      yaṃ    代的 (関係代名詞)  
      pāpaṃ    名形 a  
      akataññuno;  a-kṛ, jñā ū 忘恩の  
    訳文                
     ♪友を裏切る者の罪障、忘恩者の罪障、  
                       
                       
                       
    253-12.                
     Tameva pāpaṃ phusatu [phusati (sī. pī.)], yo te dubbhe sujampatī’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Tam    代的 それ  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      pāpaṃ    名形 a  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      phusatu,  spṛś 触れる、達する  
      語根 品詞 語基 意味  
      yo    代的 (関係代名詞)  
      te    代的 あなた  
      dubbhe  dabh a 欺瞞の、害意の、反逆する  
      sujampatī’’    i 神名、スジャンパティ、サッカの異名  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ♪あなたを害する者には、その罪障が触れることとなろう、スジャンパティよ』」  
                       
                       
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