←前へ   トップへ      
                       
                       
    280-1.                
     280. ‘‘Pañca kho ime, kaccāna, kāmaguṇā.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Pañca     
      kho    不変 じつに、たしかに  
      ime,    代的 これら  
      kaccāna,    a 人名、カッチャーナ  
      kāma    a 男中 依(属) 欲、欲楽  
      guṇā.    a 徳、種類  
    訳文                
     カッチャーナよ、これらの五妙欲があります。   
                       
                       
                       
    280-2.                
     Katame pañca?   
      語根 品詞 語基 意味  
      Katame    代的 いずれの、どちらの  
      pañca?     
    訳文                
     いかなる五か。  
                       
                       
                       
    280-3.                
     Cakkhuviññeyyā rūpā iṭṭhā kantā manāpā piyarūpā kāmūpasaṃhitā rajanīyā, sotaviññeyyā saddā…pe…   
      語根 品詞 語基 意味  
      Cakkhu    us 依(具)  
      viññeyyā  vi-jñā 未分 a 所識の  
      rūpā    a 中(男)  
      iṭṭhā    a 可愛の  
      kantā    a 可楽の、所愛の  
      manāpā    a 可意の、適意の  
      piya    a 有(持) 愛の、可愛の  
      rūpā    a 中→男 色、物質、肉体、形相  
      kāma    a 男中 依(対)  
      upasaṃhitā  upa-saṃ-dhā 過分 a 具えた  
      rajanīyā,  raj 未分 a 染まるべき、染心をあおる  
      sota  śru as 依(具)  
      viññeyyā  vi-jñā 未分 a 所識の  
      saddā…pe…    a 声、音  
    訳文                  
     眼によって識られる、可愛、可楽、適意の、愛すべき形相ある、欲の具わった、染心をあおる諸色。耳によって識られる……諸声。  
                       
                       
                       
    280-4.                
     ghānaviññeyyā gandhā…   
      語根 品詞 語基 意味  
      ghāna    a 依(具)  
      viññeyyā  vi-jñā 未分 a 所識の  
      gandhā…    a  
    訳文                  
     鼻によって識られる……諸香。  
                       
                       
                       
    280-5.                
     jivhāviññeyyā rasā…   
      語根 品詞 語基 意味  
      jivhā    ā 依(具)  
      viññeyyā  vi-jñā 未分 a 所識の  
      rasā…pe…    a  
    訳文                  
     舌によって識られる……諸味。  
                       
                       
                       
    280-6.                
     kāyaviññeyyā phoṭṭhabbā iṭṭhā kantā manāpā piyarūpā kāmūpasaṃhitā rajanīyā –   
      語根 品詞 語基 意味  
      kāya    a 依(具)  
      viññeyyā  vi-jñā 未分 a 所識の  
      phoṭṭhabbā  spṛś 名未分 a 中(男) 触、所触、触れられるべきもの  
      iṭṭhā kantā manāpā piyarūpā kāmūpasaṃhitā rajanīyā – (280-3.)  
    訳文                  
     身によって識られる、可愛、可楽、適意の、愛すべき形相ある、欲の具わった、染心をあおる諸触。  
                       
                       
                       
    280-7.                
     ime kho, kaccāna, pañca kāmaguṇā.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ime kho, kaccāna, pañca kāmaguṇā. (280-1.)  
    訳文                
     カッチャーナよ、これらが五妙欲です。  
                       
                       
                       
    280-8.                
     Yaṃ kho, kaccāna, ime pañca kāmaguṇe paṭicca uppajjati sukhaṃ somanassaṃ idaṃ vuccati kāmasukhaṃ.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Yaṃ    代的 (関係代名詞)  
      kho,    不変 じつに、たしかに  
      kaccāna,    a 人名、カッチャーナ  
      ime    代的 これら  
      pañca     
      kāma    a 男中 依(属) 欲、欲楽  
      guṇe    a 徳、種類  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      paṭicca  prati-i 縁りて、〜のために  
      uppajjati  ud-pad 起こる、生ずる、発生する  
      語根 品詞 語基 意味  
      sukhaṃ    名形 a  
      somanassaṃ  su-man a 喜悦  
      idaṃ    代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      vuccati  vac 受 いわれる  
      語根 品詞 語基 意味  
      kāma    a 男中 依(属) 欲、欲楽  
      sukhaṃ.    名形 a  
    訳文                
     カッチャーナよ、およそ、これら五妙欲を縁として生ずる楽なる喜悦、これが欲楽といわれます。  
                       
                       
                       
    280-9.                
     Iti kāmehi kāmasukhaṃ, kāmasukhā kāmaggasukhaṃ tattha aggamakkhāyatī’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Iti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      kāmehi    a 男中 欲、欲楽  
      kāma    a 男中 依(属) 欲、欲楽  
      sukhaṃ,    名形 a  
      kāma    a 男中 依(属) 欲、欲楽  
      sukhā    名形 a  
      kāma    a 男中 依(属) 欲、欲楽  
      agga    a 最高、最上  
      sukhaṃ    名形 a  
      tattha    不変 そこで、そこに、そのとき、そのなかで  
      aggam    a 最高、最上  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      akkhāyatī’’  ā-khyā 受 告げられる、話される  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     かくのごとく、諸欲より欲楽が〔生じますが〕、欲楽より〔上の〕最上欲楽が存在し、〔それが〕それらのうちで最上を称されます」  
    メモ                
     ・この奪格は比較の意味とも原因の意味とも読める。『南伝』は原因、『パーリ』は比較でとっている。ここでは『原始』にならって使い分けて訳した。というのも、前文でpaṭiccaとあることから諸欲が欲楽の原因である事は確定であり、また「多受経」で 「欲楽よりすぐれたもの」として初禅ないし想受滅が説かれているからである。  
     ・なお『註』はkāmaggasukhaを涅槃のことであるとしている。  
                       
                       
                       
    280-10.                
     Evaṃ vutte, vekhanaso paribbājako bhagavantaṃ etadavoca –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Evaṃ    不変 このように、かくの如き  
      vutte,  vac 受 過分 a 男中 いわれた  
      vekhanaso    a 人名、ヴェーカナサ  
      paribbājako  pari-vraj a 遍歴者、遊行者  
      bhagavantaṃ    ant 世尊  
      etad    代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      avoca –  vac いう  
    訳文                
     このようにいわれて、ヴェーカナサ遍歴行者は世尊へこういった。  
                       
                       
                       
    280-11.                
     ‘‘acchariyaṃ, bho gotama, abbhutaṃ, bho gotama!   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘acchariyaṃ,    a 希有の  
      bho  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      gotama,    a 人名、ゴータマ  
      abbhutaṃ,  a-bhū a 未曾有の  
      bho  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      gotama!    a 人名、ゴータマ  
    訳文                
     「希有なり、尊者ゴータマよ。未曾有なり、尊者ゴータマよ。  
                       
                       
                       
    280-12.                
     Yāva subhāsitaṃ cidaṃ bhotā gotamena –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Yāva    不変 〜だけ、〜まで、〜の限り  
      subhāsitaṃ  su-bhāṣ 過分 a 善く説かれた  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      idaṃ    代的 これ  
      bhotā  bhū 名現分 ant(特) 尊者  
      gotamena –    a 人名、ゴータマ  
    訳文                
     尊者ゴータマによって、これほどのことが善説されようとは。すなわち、  
    メモ                
     ・これはおそらく皮肉のニュアンスなのであろう。  
                       
                       
                       
    280-13.                
     ‘kāmehi kāmasukhaṃ, kāmasukhā kāmaggasukhaṃ tattha aggamakkhāyatī’ti. (‘Kāmehi, bho gotama, kāmasukhaṃ, kāmasukhā kāmaggasukhaṃ, tattha aggamakkhāyatī’ti) [( ) sī. syā. kaṃ. pī. potthakesu natthi] –   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘kāmehi kāmasukhaṃ, kāmasukhā kāmaggasukhaṃ tattha aggamakkhāyatī’ti. (280-9.)  
    訳文                
     『かく、諸欲より欲楽が〔生じますが〕、欲楽より〔上の〕最上欲楽が存在し、〔それが〕それらのうちで最上を称されます』と」  
                       
                       
                       
    280-14.                
     ‘‘dujjānaṃ kho etaṃ, kaccāna, tayā aññadiṭṭhikena aññakhantikena aññarucikena aññatrayogena aññatrācariyakena –   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘dujjānaṃ  dur-jñā a 知りがたい  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      etaṃ,    代的 これ  
      kaccāna,    a 人名、カッチャーナ  
      tayā    代的 あなた  
      añña    代的  
      diṭṭhikena    a 男中 見の  
      añña    代的  
      khantikena    a 男中 信忍ある  
      añña    代的  
      rucikena    a 男中 好みの、意欲の  
      aññatra    不変 他所で、以外で  
      yogena  yuj a 軛、束縛、結合/瑜伽、瞑想、修行  
      aññatra    不変 他所で、以外で  
      ācariyakena –  ā-car 名形 a 師の  
    訳文                
     「カッチャーナよ、異学の見解、異学の信忍、異学の意欲、異学の実践、異学の師をもつあなたによっては、このことは知りがたいのです。  
    メモ                
     ・「ポッタパーダ経」などにパラレル。  
                       
                       
                       
    280-15.                
     kāmā [kāmaṃ (sī. syā. kaṃ. pī.)] vā kāmasukhaṃ vā kāmaggasukhaṃ vā.   
      語根 品詞 語基 意味  
      kāmā    a 男中 欲、欲楽  
          不変 あるいは  
      kāma    a 男中 依(属) 欲、欲楽  
      sukhaṃ    名形 a  
          不変 あるいは  
      kāma    a 男中 依(属) 欲、欲楽  
      agga    a 最高、最上  
      sukhaṃ    名形 a  
      vā.    不変 あるいは  
    訳文                
     諸欲、欲楽、あるいは最上欲楽は。  
                       
                       
                       
    280-16.                
     Ye kho te, kaccāna, bhikkhū arahanto khīṇāsavā vusitavanto katakaraṇīyā ohitabhārā anuppattasadatthā parikkhīṇabhavasaṃyojanā sammadaññā vimuttā te kho etaṃ jāneyyuṃ –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Ye    代的 (関係代名詞)  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      te,    代的 それら、彼ら  
      kaccāna,    a 人名、カッチャーナ  
      bhikkhū  bhikṣ u 比丘  
      arahanto  arh 名現分 ant 阿羅漢、応供  
      khīṇa  kṣī 受 過分 a 有(持) 尽きた  
      āsavā  ā-sru a  
      vusitavanto  ava-sā? ant 修行完成した  
      kata  kṛ 過分 a 有(持) なされた  
      karaṇīyā  kṛ 名未分 a 中→男 なされるべき  
      ohita  ava-dhā 過分 a 有(持) 老いた、下ろした  
      bhārā  bhṛ a 重荷、荷物  
      anuppatta  anu-pra-āp 過分 a 有(持) 得達した  
      sadatthā    a 自己の利  
      parikkhīṇa  pari-kṣī 受 過分 a 有(持) 消尽した、滅尽した  
      bhava  bhū a 依(与) 有、存在  
      saṃyojanā  saṃ-yuj a 中→男 結縛、繋縛  
      sammad    不変 正しく  
      aññā  ā-jñā ā 依(具) 了知  
      vimuttā  vi-muc 過分 a 解脱した  
      te    代的 それら、彼ら  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      etaṃ    代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      jāneyyuṃ –  jñā 知る  
    訳文                
     カッチャーナよ、およそ、阿羅漢であり、漏が尽き、修行完成し、なされるべき事がなされ、重荷を下ろし、自己の利を得達し、有への繋縛が消尽し、正しく了知によって解脱したかの比丘たち。彼らはこのことを知ることができます。  
                       
                       
                       
    280-17.                
     kāmā vā kāmasukhaṃ vā kāmaggasukhaṃ vā’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      kāmā vā kāmasukhaṃ vā kāmaggasukhaṃ vā’’ti. (280-15.)  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     『諸欲、欲楽、あるいは最上欲楽あり』と」  
    メモ                
     ・kāmāからしてこれらは対格ではないため、このように訳した。  
                       
                       
                       
    281-1.                
     281. Evaṃ vutte, vekhanaso paribbājako kupito anattamano bhagavantaṃyeva khuṃsento bhagavantaṃyeva vambhento bhagavantaṃyeva vadamāno ‘‘samaṇo [samaṇo ca (sī. pī.)] gotamo pāpito bhavissatī’’ti bhagavantaṃ etadavoca –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Evaṃ    不変 このように、かくの如き  
      vutte,  vac 受 過分 a 男中 いわれた  
      vekhanaso    a 人名、ヴェーカナサ  
      paribbājako  pari-vraj a 遍歴者、遊行者  
      kupito  kup 過分 a 怒った  
      anattamano    a 不適意、不悦意、不喜  
      bhagavantaṃ    ant 世尊  
      yeva    不変 まさに、のみ、じつに  
      khuṃsento    現分 ant 叱る、呪う、怒る  
      bhagavantaṃ    ant 世尊  
      yeva    不変 まさに、のみ、じつに  
      vambhento    現分 ant 軽蔑する、謗る  
      bhagavantaṃ    ant 世尊  
      yeva    不変 まさに、のみ、じつに  
      vadamāno    現分 a いう  
      ‘‘samaṇo  śram a 沙門  
      gotamo    a 人名、ゴータマ  
      pāpito    過分 a 邪悪の、悪い  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      bhavissatī’’  bhū ある、なる  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      bhagavantaṃ    ant 世尊  
      etad    代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      avoca –  vac いう  
    訳文                
     このようにいわれて、ヴェーカナサ遍歴行者は怒り、不快に思い、世尊を叱責し、世尊を謗り、世尊を〔非難して〕いい、「沙門ゴータマは〔私にとって〕悪しきものとなろう」と世尊へ言った。  
    メモ                
     ・「アンバッタ経」【第一の卑俗説】に類似の文あり。そちらではvadamānoではなくupavadamānoとなっており、meの語が加わっているので、ここでもそれに準拠して補訳してみた。  
                       
                       
                       
    281-2.                
     ‘‘evameva panidhekacce [panidheke (sī. pī.), panimeke (uparisubhasutte)] samaṇabrāhmaṇā ajānantā pubbantaṃ, apassantā aparantaṃ atha ca pana ‘khīṇā jāti, vusitaṃ brahmacariyaṃ, kataṃ karaṇīyaṃ, nāparaṃ itthattāyāti –   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘evam    不変 このように、かくの如き  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      pana    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      idha    不変 ここに、この世で、いま、さて  
      ekacce    代的 一類の  
      samaṇa  śram a 沙門  
      brāhmaṇā  bṛh a 婆羅門  
      ajānantā  ā-jñā 現分 a 知らない  
      pubba    代的 前の、先の  
      antaṃ,    a 辺、極限 →過去、前際  
      apassantā  a-paś 現分 a 見ない  
      apara    代的 他の、後の  
      antaṃ    a 辺、極限 →未来、後際  
      atha    不変 ときに、また、そこに  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      pana    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      ‘khīṇā  kṣī 受 過分 ā 尽きた  
      jāti,  jan i  
      vusitaṃ  ava-sā? 過分 a 完成した  
      brahma bṛh 名形 an(特)  
      cariyaṃ,  car a  
      kataṃ  kṛ 過分 a なされた  
      karaṇīyaṃ,  kṛ 名未分 a なされるべきこと  
      na    不変 ない  
      aparaṃ    代的 副対 後、他  
      itthattāyā    a かくの如き状態、現状、ここ[輪廻]の状態  
      ti –    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「しかるに、まさしくその〔あなたの〕ように、一部の沙門婆羅門たちは前際を知らず、後際を見ずして、にもかかわらず『生は尽きた。梵行は完成した。なされるべきことはなされた。もはやこのような〔輪廻の〕状態へ〔至ることは〕ないと、  
                       
                       
                       
    281-3.                
     pajānāmā’ti –   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pajānāmā’  pra-jñā 知る、了知する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti –    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     我々は知っている』と、  
                       
                       
                       
    281-4.                
     paṭijānanti [itthattāyāti paṭijānanti (pī.)].   
      語根 品詞 語基 意味  
      paṭijānanti.  prati-jñā 自称する、公言する  
    訳文                
     公言しています。  
                       
                       
                       
    281-5.                
     Tesamidaṃ bhāsitaṃ hassakaṃyeva sampajjati, nāmakaṃyeva sampajjati, rittakaṃyeva sampajjati, tucchakaṃyeva sampajjatī’’ti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Tesam    代的 それら、彼ら  
      idaṃ    代的 これ  
      bhāsitaṃ  bhāṣ 名過分 a 所説、語った  
      hassakaṃ  has a おかしな、冗談の  
      yeva    不変 まさに、のみ、じつに  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      sampajjati,  saṃ-pad 起こる、なる、成功する  
      語根 品詞 語基 意味  
      nāmakaṃ    a 名のみの、つまらない、無意味の  
      yeva    不変 まさに、のみ、じつに  
      sampajjati,  同上  
      rittakaṃ    a 空無の、虚ろな  
      yeva    不変 まさに、のみ、じつに  
      sampajjati,  同上  
      tucchakaṃ    a 空虚の、虚偽の  
      yeva    不変 まさに、のみ、じつに  
      sampajjatī’’  同上  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     彼らのこの所説は、じつにおかしな、じつにつまらない、じつに虚ろな、じつに虚偽のものです」  
                       
                       
                       
    281-6.                
     ‘‘Ye kho te, kaccāna, samaṇabrāhmaṇā ajānantā pubbantaṃ, apassantā aparantaṃ, ‘khīṇā jāti, vusitaṃ brahmacariyaṃ, kataṃ karaṇīyaṃ, nāparaṃ itthattāyāti –   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Ye    代的 (関係代名詞)  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      te,    代的 それら、彼ら  
      kaccāna,    a 人名、カッチャーナ  
      samaṇabrāhmaṇā ajānantā pubbantaṃ, apassantā aparantaṃ, ‘khīṇā jāti, vusitaṃ brahmacariyaṃ, kataṃ karaṇīyaṃ, nāparaṃ itthattāyāti – (281-2.)  
    訳文                
     「カッチャーナよ、およそかれら沙門婆羅門たちは前際を知らず、後際を見ずして、にもかかわらず『生は尽きた。梵行は完成した。なされるべきことはなされた。もはやこのような〔輪廻の〕状態へ〔至ることは〕ないと、  
                       
                       
                       
    281-7.                
     pajānāmā’ti –   
      語根 品詞 語基 意味  
      pajānāmā’ti – (281-3.)  
    訳文                
     我々は知っている』と、  
                       
                       
                       
    281-8.                
     paṭijānanti;   
      語根 品詞 語基 意味  
      paṭijānanti; (281-4.)  
    訳文                
     公言していますが、  
                       
                       
                       
    281-9.                
     tesaṃ soyeva [tesaṃ tesāyaṃ (sī.), tesaṃyeva so (?)] sahadhammiko niggaho hoti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      tesaṃ    代的 それら、彼ら  
      so    代的 それ、彼  
      yeva    不変 まさに、のみ、じつに  
      sahadhammiko  saha-dhṛ a 同法の、如法の  
      niggaho    a 抑止、折伏、論破、叱責  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      hoti.  bhū ある、なる、存在する  
    訳文                
     彼らに対するその叱責は、全く正当なものです。  
                       
                       
                       
    281-10.                
     Api ca, kaccāna, tiṭṭhatu pubbanto, tiṭṭhatu aparanto.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Api    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      ca,    不変 と、また、そして、しかし  
      kaccāna,    a 人名、カッチャーナ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      tiṭṭhatu  sthā 立つ、とどまる  
      語根 品詞 語基 意味  
      pubba    代的 前の、先の  
      anto,    a 辺、極限 →過去、前際  
      tiṭṭhatu  同上  
      apara    代的 他の、後の  
      anto.    a 辺、極限 →未来、後際  
    訳文                
     けれどもカッチャーナよ、前際はさておき、後際はさておきましょう。  
                       
                       
                       
    281-11.                
     Etu viññū puriso asaṭho amāyāvī ujujātiko, ahamanusāsāmi ahaṃ dhammaṃ desemi.   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      Etu  i 来い、行け、いざ  
      語根 品詞 語基 意味  
      viññū  vi-jñā 名形 ū 有智の、識者  
      puriso    a 人、男  
      asaṭho    a 不諂の、諂いなき  
      amāyāvī    in 不誑の、誑かしなき  
      uju    u 正しい、真っ直ぐな  
      jātiko,  jan a 生の、種類の  
      aham    代的  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      anusāsāmi  anu-śās 教誡する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ahaṃ    代的  
      dhammaṃ  dhṛ a 男中  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      desemi.  diś 示す  
    訳文                
     有智で、諂いなく、誑かしなく、真っ直ぐな種類の人は来なさい。私は教誡し、私は法を説示します。  
    メモ                
     ・「ウドゥンバリカー経」【梵行の完了と現証】にパラレル。  
                       
                       
                       
    281-12.                
     Yathānusiṭṭhaṃ tathā paṭipajjamāno [yathānusiṭṭhaṃ paṭipajjamāno (?)] nacirasseva sāmaññeva ñassati sāmaṃ dakkhiti –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Yathā    不変 〜のごとくに、〜のように  
      anusiṭṭhaṃ  anu-śās 過分 a 教誡された  
      tathā    不変 かく、その如く  
      paṭipajjamāno  prati-pad 現分 a 向かって歩く、行動する  
      na    不変 ない  
      cirassa    a 副属 久しく  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      sāmaññ    不変 自分で、自ら  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ñassati  jñā 知る  
      語根 品詞 語基 意味  
      sāmaṃ    不変 自分で、自ら  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      dakkhiti –  dṛś 見る  
    訳文                
     教誡されたとおりに行道する者は、久しからずして、自ら知り、自ら見ることでしょう。  
    メモ                
     ・さきの台詞と合わせて考えるに、〔宿住随念智で過去生を〕知り、〔天眼智で未来生を〕見る、ということであろうか。「知者にして見者」というように「知る」と「見る」がペアで登場することがニカーヤには多く見られるが、それらはみなこの含みがあるのかもしれない。  
                       
                       
                       
    281-13.                
     evaṃ kira sammā [evaṃ kirāyasmā (syā. ka.)] bandhanā vippamokkho hoti, yadidaṃ avijjā bandhanā.   
      語根 品詞 語基 意味  
      evaṃ    不変 このように、かくの如き  
      kira    不変 伝え言う、〜という話だ  
      sammā    不変 正しい、正しく  
      bandhanā  bandh a 結縛、繋縛  
      vippamokkho  vi-pra-muc a 解脱、解縛  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      hoti,  bhū ある、なる、存在する  
      語根 品詞 語基 意味  
      yadidaṃ    不変 すなわち  
      avijjā  a-vid ā 無明  
      bandhanā.  bandh a 結縛、繋縛  
    訳文                
     そのように、正しく繋縛からの解脱があるはずです。すなわち無明という繋縛からの。  
    メモ                
     ・kiraのニュアンスが解らず「はずだ」としたがこれでよいかどうか。  
     ・avijjā bandhanāはそのままでは文法的におかしいのでavijjābandhanāという複合語と解した。  
     ・この「そのように」は宿住随念智や天眼智と同じように漏尽智もまた、最初からその有無に拘泥せずとも、正しく行道すればいずれおのずから証得される、という意味に理解したが、これもどうであろうか。  
                       
                       
                       
    281-14.                
     Seyyathāpi, kaccāna, daharo kumāro mando uttānaseyyako kaṇṭhapañcamehi bandhanehi baddho assa suttabandhanehi;   
      語根 品詞 語基 意味  
      Seyyathā    不変 その如き、たとえば  
      pi,    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      kaccāna,    a 人名、カッチャーナ  
      daharo    a 幼い、若い  
      kumāro    a 童子  
      mando    a 鈍い、遅い  
      uttāna  ud-tan a 明瞭な、上向きの  
      seyyako  śī a 横たわる  
      kaṇṭha    a 喉、首  
      pañcamehi    a 第五  
      bandhanehi  bandh a 結縛、繋縛  
      baddho  bandh a 縛られた  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      assa  as ある、なる  
      語根 品詞 語基 意味  
      sutta  sīv a 依(具) 経、糸  
      bandhanehi;  bandh a 結縛、繋縛  
    訳文                
     例えばカッチャーナよ、幼く、動きの鈍い、仰向けに横たわる童子が、糸の繋縛による五体の結縛によって縛られているとしましょう。  
                       
                       
                       
    281-15.                
     tassa vuddhimanvāya indriyānaṃ paripākamanvāya tāni bandhanāni mucceyyuṃ;   
      語根 品詞 語基 意味  
      tassa    代的 それ、彼  
      vuddhim  vṛdh i 増大、繁栄  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      anvāya  anu-i 従って  
      語根 品詞 語基 意味  
      indriyānaṃ    a 根、感覚器官  
      paripākam  pari-pac a 遍熟、毀熟  
      anvāya  同上  
      tāni    代的 それら  
      bandhanāni    a 結縛、繋縛  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      mucceyyuṃ;  muc 受 脱される  
    訳文                
     彼の成長に従い、諸根の成熟に従って、それらの繋縛は脱されます。  
                       
                       
                       
    281-16.                
     so mokkhomhīti kho jāneyya no ca bandhanaṃ.   
      語根 品詞 語基 意味  
      so    代的 それ、彼  
      mokkho  muc a 脱、解脱  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      amhī  as ある、なる  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      jāneyya  jñā 知る  
      語根 品詞 語基 意味  
      no    不変 ない  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      bandhanaṃ.    a 結縛、繋縛  
    訳文                
     彼は『私は解脱した』と知るでしょう。そして繋縛はなくなります。  
                       
                       
                       
    281-17.                
     Evameva kho, kaccāna, etu viññū puriso asaṭho amāyāvī ujujātiko, ahamanusāsāmi, ahaṃ dhammaṃ desemi;   
      語根 品詞 語基 意味  
      Evam    不変 このように、かくの如き  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      kho,    不変 じつに、たしかに  
      kaccāna,    a 人名、カッチャーナ  
      etu viññū puriso asaṭho amāyāvī ujujātiko, ahamanusāsāmi, ahaṃ dhammaṃ desemi; (281-11.)  
    訳文                
     カッチャーナよ、まさしくそのように、有智で、諂いなく、誑かしなく、真っ直ぐな種類の人は来なさい。私は教誡し、私は法を説示します。  
                       
                       
                       
    281-18.                
     yathānusiṭṭhaṃ tathā paṭipajjamāno nacirasseva sāmaññe ñassati, sāmaṃ dakkhiti –   
      語根 品詞 語基 意味  
      yathānusiṭṭhaṃ tathā paṭipajjamāno nacirasseva sāmaññe ñassati, sāmaṃ dakkhiti – (281-12.)  
    訳文                
     教誡されたとおりに行道する者は、久しからずして、自ら知り、自ら見ることでしょう。  
                       
                       
                       
    281-19.                
     ‘evaṃ kira sammā bandhanā vippamokkho hoti, yadidaṃ avijjā bandhanā’’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘evaṃ kira sammā bandhanā vippamokkho hoti, yadidaṃ avijjā bandhanā’’’ti. (281-13.)  
    訳文                
     そのように、正しく繋縛からの解脱があるはずです。すなわち無明という繋縛からの」  
                       
                       
                       
    281-20.                
     Evaṃ vutte, vekhanaso paribbājako bhagavantaṃ etadavoca –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Evaṃ vutte, vekhanaso paribbājako bhagavantaṃ etadavoca – (280-10.)  
    訳文                
     このようにいわれて、ヴェーカナサ遍歴行者は世尊へこういった。  
                       
                       
                       
    281-21.                
     ‘‘abhikkantaṃ, bho gotama…pe…   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘abhikkantaṃ,  abhi-kram 名過分 a 偉なるかな、奇なるかな、希有なり、素晴らしい  
      bho  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      gotama…pe…    a 人名、ゴータマ  
    訳文                
     「素晴らしい、尊者ゴータマよ……  
                       
                       
                       
    281-22.                
     upāsakaṃ maṃ bhavaṃ gotamo dhāretu ajjatagge pāṇupetaṃ saraṇaṃ gata’’nti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      upāsakaṃ  upa-ās a 優婆塞  
      maṃ    代的  
      bhavaṃ  bhū 名現分 ant(特) 尊師、尊者  
      gotamo    a 人名、ゴータマ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      dhāretu    持たせる、保持する、憶持する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ajja   不変 今日、今  
      agge    a 第一、最高、最上、首位、頂点 →今日以降  
      pāṇa pra-an a 依(対) 生類、生命  
      upetaṃ  upa-i 過分 a 副対 そなえた、具備した →命ある限り  
      saraṇaṃ  sṛ a 帰依処  
      gata’’n  gam 過分 a 行った →帰依した  
      ti.   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     尊者ゴータマは私を、今日以降、命ある限り、帰依をなした優婆塞であるとご記憶下さい」  
                       
                       
                       
     Vekhanasasuttaṃ niṭṭhitaṃ dasamaṃ.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Vekhanasa    a 依(属) 人名、ヴェーカナサ  
      suttaṃ  sīv a 経、糸  
      niṭṭhitaṃ  nih-sthā 過分 a 完了した、終わった  
      dasamaṃ.    a 第十の  
    訳文                
     〔『中部』「中分五十篇」「遍歴行者品」〕第十〔経〕「ヴェーカナサ経」おわり。  
                       
                       
                       
     Paribbājakavaggo niṭṭhito tatiyo.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Paribbājaka  pari-vraj a 依(属) 遍歴行者  
      vaggo    a 章、品  
      niṭṭhito  nih-sthā 過分 a 完了した、終わった  
      tatiyo.    a 第三の  
    訳文                
     〔『中部』「中分五十篇」〕第三〔品〕」「遍歴行者品」おわり。  
                       
                       
                       
     Tassuddānaṃ –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Tassa    代的 それ  
      uddānaṃ –  ud-dā a 摂頌  
    訳文                
     その摂頌は、  
                       
                       
                       
     Puṇḍarī-aggisaha-kathināmo, dīghanakho puna bhāradvājagotto;  
      語根 品詞 語基 意味  
      Puṇḍarī-    ī 地名エーカプンダリーカの略  
      aggi    i  
      saha-kathi    in 有(持) 共語者、ともに語る  
      nāmo,    an 中(男) 名前  
      dīghanakho    a 人名、ディーガナカ  
      puna    不変 さらに、ふたたび  
      bhāradvāja    a 有(持) 人名、バーラドヴァージャ  
      gotto;    a 氏姓、家系  
    訳文                
     ♪〔エーカ〕プンダリー〔カ行者林が舞台の「三明ヴァッチャ経」〕、「火〔ヴァッチャ経〕」、対話者〔経〕という〔異〕名を持つ〔「大ヴァッチャ経」〕、「ディーガナカ〔経〕」、またバーラドヴァージャ氏族の婆羅門〔が出る「マーガンディヤ経」〕、〔「サンダカ経」〕、  
    メモ                
     ・「大ヴァッチャ経」にsahakathinの語が出るので、VRI版のハイフンの位置は適切でないと思われる。  
     ・「サンダカ経」に対応する語がないので補ったが、次文のvaravaggoがそれなのかも知れない。  
                       
                       
                       
     Sandakaudāyimuṇḍikaputto, maṇiko tathākaccāno varavaggo.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Sandakaudāyi    in 人名、サクルダーイン  
      muṇḍika    ā 依(属) 人名サマナムンディカーの略  
      putto,    a 息子  
      maṇiko    ā 女(男) 水瓶  
      tathā    不変 かく、その如く  
      kaccāno    a 人名、カッチャーナ  
      vara    名形 a 男中 優れた、高貴な  
      vaggo.    a 章、品  
    訳文                
     ♪「〔大〕サクルダーイン〔経〕」、〔サマナ〕ムンディカーの息子〔が出る「サマナムンディカー経」〕、水瓶〔の譬喩が用いられる「小サクルダーイン経」〕、このとおりカッチャーナ〔が出る「ヴェーカナサ経」〕。〔以上よりなる〕すぐれた章である。  
                       
                       
  ←前へ   トップへ      
inserted by FC2 system