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     Sīlapaññākathā  
      語根 品詞 語基 意味  
      Sīla   a 戒、戒行、習慣、道徳  
      paññā pra-jñā ā 依(属) 慧、智慧、般若  
      kathā   ā 論、説、話、物語  
    訳文                
     【戒と慧の話】  
    メモ                
     ・本経にはこれまでも「智慧」に類する語がいくつか出てきたが、paññāの語はここが初出である。  
                       
                       
                       
    317-1.                
     317. ‘‘Imesaṃ pana, brāhmaṇa, dvinnaṃ aṅgānaṃ sakkā ekaṃ aṅgaṃ ṭhapayitvā ekena aṅgena samannāgataṃ brāhmaṇā brāhmaṇaṃ paññapetuṃ;   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Imesaṃ    代的 これら  
      pana,    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      brāhmaṇa,  bṛh a 婆羅門  
      dvinnaṃ     
      aṅgānaṃ    a 部分、支分、肢体、身分、関心、理由  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      sakkā  śak できる  
      語根 品詞 語基 意味  
      ekaṃ    代的 一つ  
      aṅgaṃ    a 部分、支分、肢体、身分、関心、理由  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ṭhapayitvā  sthā 使 置いて、除いて  
      語根 品詞 語基 意味  
      ekena    代的 一つ  
      aṅgena    a 部分、支分、肢体、身分、関心、理由  
      samannāgataṃ  saṃ-anu-ā-gam 過分 a 具備した、具足の  
      brāhmaṇā  bṛh a 婆羅門  
      brāhmaṇaṃ  bṛh a 婆羅門  
      paññapetuṃ;  pra-jñā 使 不定 知らしめること、告知・施設・用意すること  
    訳文                
     「しかるに婆羅門よ、これら二つの条件のうち、一条件を除いて、一つの条件を具足した者を、婆羅門たちが婆羅門と認めることは可能でしょうか。  
                       
                       
                       
    317-2.                
     ‘brāhmaṇosmī’ti ca vadamāno sammā vadeyya, na ca pana musāvādaṃ āpajjeyyā’’ti?   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘brāhmaṇo  bṛh a 婆羅門  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      asmī’ as ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      vadamāno  vad 現分 a いう  
      sammā    不変 正しい、正しく  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      vadeyya,  vad いう  
      語根 品詞 語基 意味  
      na    不変 ない  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      pana    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      musā   不変 虚妄に、偽って  
      vādaṃ  vad a 説、語、論 →妄語  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      āpajjeyyā’’ ā-pad 来る、会う、遭遇する、到達する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti?    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     〔すなわち、〕『私は婆羅門である』といったとしても、〔それが〕正しい物言いであって、妄語にはあたらない〔婆羅門として〕」と。  
                       
                       
                       
    317-3.                
     ‘‘No hidaṃ, bho gotama.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘No    不変 ない  
      hi    不変 じつに、なぜなら  
      idaṃ,    代的 これ  
      bho  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      gotama.    a 人名、ゴータマ  
    訳文                
     「それは否です、尊者ゴータマよ。  
                       
                       
                       
    317-4.                
     Sīlaparidhotā hi, bho gotama, paññā;   
      語根 品詞 語基 意味  
      Sīla   a 依(具)  
      paridhotā  pari-dhāv 過分 a 洗われた、清められた  
      hi,    不変 じつに、なぜなら  
      bho  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      gotama,    a 人名、ゴータマ  
      paññā;  pra-jñā ā  
    訳文                
     尊者ゴータマよ、なぜなら、戒によって清められるものが慧であり、  
    メモ                
     ・paridhotaは過去分詞だが、諸訳に従い、このように訳した。  
                       
                       
                       
    317-5.                
     paññāparidhotaṃ sīlaṃ.   
      語根 品詞 語基 意味  
      paññā pra-jñā ā 依(具)  
      paridhotaṃ  pari-dhāv 過分 a 洗われた、清められた  
      sīlaṃ.    a  
    訳文                
     慧によって清められるものが戒だからです。  
                       
                       
                       
    317-6.                
     Yattha sīlaṃ tattha paññā, yattha paññā tattha sīlaṃ.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Yattha    不変 そこで、そこに、そのとき、そのなかで(関係代名詞)  
      sīlaṃ    a  
      tattha    不変 そこで、そこに、そのとき、そのなかで  
      paññā,  pra-jñā ā  
      yattha    不変 そこで、そこに、そのとき、そのなかで(関係代名詞)  
      paññā  pra-jñā ā  
      tattha    不変 そこで、そこに、そのとき、そのなかで  
      sīlaṃ.    a  
    訳文                
     戒のあるところには慧があり、慧のあるとことには戒があります。  
                       
                       
                       
    317-7.                
     Sīlavato paññā, paññavato sīlaṃ.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Sīlavato    ant 戒ある  
      paññā,  pra-jñā ā  
      paññavato  pra-jñā ant 慧ある  
      sīlaṃ.    a  
    訳文                
     戒のある者には慧があり、慧のある者には戒があります。  
                       
                       
                       
    317-8.                
     Sīlapaññāṇañca pana lokasmiṃ aggamakkhāyati.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Sīla   a  
      paññāṇañ pra-jñā a 識智、慧智  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      pana    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      lokasmiṃ    a 世、世界、世間  
      aggam    a 第一、最高、最上  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      akkhāyati. ā-khyā 受 いわれる  
    訳文                
     そしてまた、戒と慧智は、世における最上を称されるのです。  
                       
                       
                       
    317-9.                
     Seyyathāpi, bho gotama, hatthena vā hatthaṃ dhoveyya, pādena vā pādaṃ dhoveyya;   
      語根 品詞 語基 意味  
      Seyyathā    不変 たとえば、その如き  
      pi,    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      bho  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      gotama,    a 人名、ゴータマ  
      hatthena  hṛ a  
          不変 あるいは  
      hatthaṃ  hṛ a  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      dhoveyya,  dhāv 洗う  
      語根 品詞 語基 意味  
      pādena    a  
          不変 あるいは  
      pādaṃ    a  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      dhoveyya;  dhāv 洗う  
    訳文                
     尊者ゴータマよ、たとえば、手によって手を洗い、足によって足を洗うようなものです。  
                       
                       
                       
    317-10.                
     evameva kho, bho gotama, sīlaparidhotā paññā, paññāparidhotaṃ sīlaṃ.   
      語根 品詞 語基 意味  
      evam    不変 このように、かくの如き  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      kho,    不変 じつに、たしかに  
      bho  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      gotama,    a 人名、ゴータマ  
      sīlaparidhotā paññā, paññāparidhotaṃ sīlaṃ. (317-4, 317-5.)  
    訳文                
     じつにそのように尊者ゴータマよ、慧は戒によって清められ、戒は慧によって清められるのです。  
                       
                       
                       
    317-11.                
     Yattha sīlaṃ tattha paññā, yattha paññā tattha sīlaṃ.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Yattha sīlaṃ tattha paññā, yattha paññā tattha sīlaṃ. (317-6.)  
    訳文                
     戒のあるところに慧があり、慧のあるとことに戒があります。  
                       
                       
                       
    317-12.                
     Sīlavato paññā, paññavato sīlaṃ.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Sīlavato paññā, paññavato sīlaṃ. (317-7.)  
    訳文                
     戒のある者に慧があり、慧のある者に戒があります。  
                       
                       
                       
    317-13.                
     Sīlapaññāṇañca pana lokasmiṃ aggamakkhāyatī’’ti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Sīlapaññāṇañca pana lokasmiṃ aggamakkhāyatī’’ti. (317-8.)  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     そしてまた、戒と慧は、世における最上を称されるのです」  
                       
                       
                       
    317-14.                
     ‘‘Evametaṃ, brāhmaṇa, evametaṃ, brāhmaṇa, sīlaparidhotā hi, brāhmaṇa, paññā, paññāparidhotaṃ sīlaṃ.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Evam    不変 このように、かくの如き  
      etaṃ,    代的 それ、彼、彼女  
      brāhmaṇa,  bṛh a 婆羅門  
      evam    不変 このように、かくの如き  
      etaṃ,    代的 それ、彼、彼女  
      brāhmaṇa,  bṛh a 婆羅門  
      sīla   a 依(具)  
      paridhotā  pari-dhāv 過分 a 洗われた、清められた  
      hi,    不変 じつに、なぜなら  
      brāhmaṇa,  bṛh a 婆羅門  
      paññā,  pra-jñā ā  
      paññā pra-jñā ā 依(具)  
      paridhotaṃ  pari-dhāv 過分 a 洗われた、清められた  
      sīlaṃ.    a  
    訳文                
     「婆羅門よ、その通りです。婆羅門よ、その通りです。じつに慧は戒によって清められ、戒は慧によって清められます。  
                       
                       
                       
    317-15.                
     Yattha sīlaṃ tattha paññā, yattha paññā tattha sīlaṃ.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Yattha sīlaṃ tattha paññā, yattha paññā tattha sīlaṃ. (317-6.)  
    訳文                
     戒のあるところに慧があり、慧のあるとことに戒があります。  
                       
                       
                       
    317-16.                
     Sīlavato paññā, paññavato sīlaṃ.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Sīlavato paññā, paññavato sīlaṃ. (317-7.)  
    訳文                
     戒のある者に慧があり、慧のある者に戒があります。  
                       
                       
                       
    317-17.                
     Sīlapaññāṇañca pana lokasmiṃ aggamakkhāyati.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Sīlapaññāṇañca pana lokasmiṃ aggamakkhāyati. (317-8.)  
    訳文                
     そしてまた、戒と慧は、世における最上を称されます。  
                       
                       
                       
    317-18.                
     Seyyathāpi, brāhmaṇa, hatthena vā hatthaṃ dhoveyya, pādena vā pādaṃ dhoveyya;   
      語根 品詞 語基 意味  
      Seyyathā    不変 たとえば、その如き  
      pi,    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      brāhmaṇa,  bṛh a 婆羅門  
      hatthena vā hatthaṃ dhoveyya, pādena vā pādaṃ dhoveyya; (317-9.)  
    訳文                
     婆羅門よ、たとえば、手によって手を洗い、足によって足を洗うようなものです。  
                       
                       
                       
    317-19.                
     evameva kho, brāhmaṇa, sīlaparidhotā paññā, paññāparidhotaṃ sīlaṃ.   
      語根 品詞 語基 意味  
      evam    不変 このように、かくの如き  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      kho,    不変 じつに、たしかに  
      brāhmaṇa,  bṛh a 婆羅門  
      sīlaparidhotā paññā, paññāparidhotaṃ sīlaṃ. (317-4, 317-5.)  
    訳文                
     じつにそのように婆羅門よ、慧は戒によって清められ、戒は慧によって清められるのです。  
                       
                       
                       
    317-20.                
     Yattha sīlaṃ tattha paññā, yattha paññā tattha sīlaṃ.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Yattha sīlaṃ tattha paññā, yattha paññā tattha sīlaṃ. (317-6.)  
    訳文                
     戒のあるところに慧があり、慧のあるとことに戒があります。  
                       
                       
                       
    317-21.                
     Sīlavato paññā, paññavato sīlaṃ.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Sīlavato paññā, paññavato sīlaṃ. (317-7.)  
    訳文                
     戒のある者に慧があり、慧のある者に戒があります。  
                       
                       
                       
    317-22.                
     Sīlapaññāṇañca pana lokasmiṃ aggamakkhāyati.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Sīlapaññāṇañca pana lokasmiṃ aggamakkhāyati. (317-8.)  
    訳文                
     そしてまた、戒と慧は、世における最上を称されるのです。  
                       
                       
                       
    318-1.                
     318. ‘‘Katamaṃ pana taṃ, brāhmaṇa, sīlaṃ?   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Katamaṃ    代的 いずれか、どちらか  
      pana    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      taṃ,    代的 それ、彼、彼女  
      brāhmaṇa,  bṛh a 婆羅門  
      sīlaṃ?    a  
    訳文                
     では、婆羅門よ、その戒とは何でしょうか。  
                       
                       
                       
    318-2.                
     Katamā sā paññā’’ti?   
      語根 品詞 語基 意味  
      Katamā    代的 いずれか、どちらか  
          代的 それ、彼女  
      paññā’’ pra-jñā ā  
      ti?    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     その慧とは何でしょうか」  
                       
                       
                       
    318-3.                
     ‘‘Ettakaparamāva mayaṃ, bho gotama, etasmiṃ atthe.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Ettaka   a 有(持) これだけの  
      paramā   a 最高、最上、第一の  
      eva   不変 まさに、のみ、じつに  
      mayaṃ,    代的 私たち  
      bho  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      gotama,    a 人名、ゴータマ  
      etasmiṃ    代的 男中 それ、彼  
      atthe.    a 男中 義、利益、道理、意味、必要、裁判、営務  
    訳文                
     「尊者ゴータマよ、この義に関して、私どもは以上を精一杯とするのみです。  
                       
                       
                       
    318-4.                
     Sādhu vata bhavantaṃyeva gotamaṃ paṭibhātu etassa bhāsitassa attho’’ti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Sādhu  sādh 不変 善哉、なにとぞ  
      vata    不変 じつに  
      bhavantaṃ   ant 世尊  
      yeva    不変 まさに、のみ、じつに  
      gotamaṃ    a 人名、ゴータマ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      paṭibhātu  prati-bhā 現われる、明らかとなる、見える、思える  
      語根 品詞 語基 意味  
      etassa    代的 これ  
      bhāsitassa  bhāṣ 名過分 a 語られた  
      attho’’   a 男中 義、利益、道理、意味、必要、裁判、営務  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     なにとぞ世尊ゴータマは、この所説の意義を明らかにして下さいますよう」  
    メモ                
     ・「義」が主語になるなど、構文が奇妙なのは敬語表現。貴人に命令形を使うのが憚られるため、「椅子があなたに坐られますよう」という類の表現を用いるのだという。ここでは普通の構文に直して意訳した。  
                       
                       
                       
    318-5.                
     ‘‘Tena hi, brāhmaṇa, suṇohi;   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Tena    代的 それ、彼、それによって、それゆえ  
      hi,    不変 じつに、なぜなら →しからば  
      brāhmaṇa,  bṛh a 婆羅門  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      suṇohi;  śru 聞く  
    訳文                
     「では婆羅門よ、聞きなさい。  
                       
                       
                       
    318-6.                
     sādhukaṃ manasikarohi;   
      語根 品詞 語基 意味  
      sādhukaṃ    a 副対 よい、十分に  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      manasikarohi;  man, kṛ 注意する、作意する  
    訳文                
     よく注意して。  
                       
                       
                       
    318-7.                
     bhāsissāmī’’ti.   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      bhāsissāmī’’ bhāṣ 話す、語る  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     私は、語ることにしましょう」  
                       
                       
                       
    318-8.                
     ‘‘Evaṃ, bho’’ti kho soṇadaṇḍo brāhmaṇo bhagavato paccassosi.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Evaṃ,    不変 このように、かくの如き  
      bho’’ bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      ti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      soṇadaṇḍo    a 人名、ソーナダンダ  
      brāhmaṇo  bṛh a 婆羅門  
      bhagavato    ant 世尊  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      paccassosi.  prati-śru 同意する、応諾する、応える  
    訳文                
     「尊者よ、そのように」と、ソーナダンダ婆羅門は世尊へ応えた。  
                       
                       
                       
    318-9.                
     Bhagavā etadavoca –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Bhagavā    ant 世尊  
      etad    代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      avoca –  vac いう  
    訳文                
     世尊はこういった。  
                       
                       
                       
    318-10.                
     ‘‘idha, brāhmaṇa, tathāgato loke uppajjati arahaṃ sammāsambuddho…pe… (yathā 190-212 anucchedesu tathā vitthāretabbaṃ).   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘idha,    不変 ここに、この世で、いま、さて  
      brāhmaṇa,  bṛh a 婆羅門  
      tathāgato  tathā-(ā-)gam a 如来  
      loke    a 世間、世界  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      uppajjati  ud-pad 起こる、生ずる、発生する  
      語根 品詞 語基 意味  
      arahaṃ  arh 名現分 ant 阿羅漢、応供  
      sammā   不変 正しい、正しく  
      sambuddho saṃ-budh 名過分 a 等覚者  
      …pe…    (略)  
    訳文                
     「婆羅門よ、ここなる世に、如来、応供、正等覚、……(略)  
    メモ                
     ・ここからは、「沙門果経」の【よりすぐれた沙門の果報】から【漏尽智】までの章とほぼ重複する記述が、省略されたものである。  
     ・( )内は原文でなくVRI版の注記。「191から212の如き、途絶なき諸々におけるように詳説されるべし」。「沙門果経」を見よ、ということ。  
     ・この略は、おおむね【小戒】【中戒】【大戒】に対応。  
                       
                       
                       
    318-11.                
     Evaṃ kho, brāhmaṇa, bhikkhu sīlasampanno hoti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Evaṃ    不変 このように、かくの如き  
      kho,    不変 じつに、たしかに  
      brāhmaṇa,    a 婆羅門  
      bhikkhu  bhikṣ u 比丘、(特に男性の)出家者  
      sīla   a 依(具)  
      sampanno  saṃ-pad 過分 a 具足した、成就した  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      hoti.  bhū ある、存在する  
    訳文                
     婆羅門よ、比丘はこのように戒を具足するのです。  
                       
                       
                       
    318-12.                
     Idaṃ kho taṃ, brāhmaṇa, sīlaṃ…pe…   
      語根 品詞 語基 意味  
      Idaṃ    代的 これ  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      taṃ,    代的 それ、彼、彼女  
      brāhmaṇa,    a 婆羅門  
      sīlaṃ   a  
      …pe…    (略)  
    訳文                
     じつに婆羅門よ、これがその戒です。……(略)  
    メモ                
     ・この略は、おおむね【根の防護】から【蓋の捨断】までに対応。  
                       
                       
                       
    318-13.                
     paṭhamaṃ jhānaṃ upasampajja viharati…pe…   
      語根 品詞 語基 意味  
      paṭhamaṃ    a 初の、第一の  
      jhānaṃ  dhyai a  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upasampajja  upa-saṃ-pad 到達する、成就する、具足する  
      viharati vi-hṛ 住する  
      語根 品詞 語基 意味  
      …pe…    (略)  
    訳文                
     〔比丘が〕初禅に達して住します。……(略)  
                       
                       
                       
    318-14.                
     dutiyaṃ jhānaṃ…pe…   
      語根 品詞 語基 意味  
      dutiyaṃ    名形 a 男→中 第二の  
      jhānaṃ dhyai a  
      …pe…    (略)  
    訳文                
     第二禅に……(略)  
                       
                       
                       
    318-15.                
     tatiyaṃ jhānaṃ…pe…   
      語根 品詞 語基 意味  
      tatiyaṃ    a 第三の  
      jhānaṃ dhyai a  
      …pe…    (略)  
    訳文                
     第三禅に……(略)  
                       
                       
                       
    318-16.                
     catutthaṃ jhānaṃ upasampajja viharati…pe…   
      語根 品詞 語基 意味  
      catutthaṃ    a 第四の  
      jhānaṃ  dhyai a  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upasampajja  upa-saṃ-pad 到達する、成就する、具足する  
      viharati vi-hṛ 住する  
      語根 品詞 語基 意味  
      …pe…    (略)  
    訳文                
     第四禅に達して住します。……(略)  
    メモ                
     ・この略は、おそらく八智の章に対応するものと思われる。  
                       
                       
                       
    318-17.                
     ñāṇadassanāya cittaṃ abhinīharati, abhininnāmeti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ñāṇa jñā a 智、智慧  
      dassanāya  dṛś a 見、見ること  
      cittaṃ  cit a  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      abhinīharati,  abhi-nir-hṛ 心を向ける、適用する、引発する  
      abhininnāmeti.  abhi-ni-nam 使 向ける、転じさせる  
    訳文                
     智見に心を向け、転じさせます。  
    メモ                
     ・この文は、「沙門果経」における【内観智】から【漏尽智】までの八智のそれぞれに含まれる文であるが、いずれの智に関しても、次文との間に別の文が入っているので、本当ならこの文の後にも…pe…があるべきであろう。   
                       
                       
                       
    318-18.                
     Idampissa hoti paññāya…pe…   
      語根 品詞 語基 意味  
      Idam    代的 これ  
      pi    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      assa    代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      hoti  bhū ある、存在する  
      語根 品詞 語基 意味  
      paññāya pra-jñā ā 慧、智慧、般若  
      …pe…    (略)  
    訳文                
     これもまた、彼(比丘)の慧の〔一つ〕です。……(略)  
                       
                       
                       
    318-19.                
     nāparaṃ itthattāyāti pajānāti, idampissa hoti paññāya ayaṃ kho sā, brāhmaṇa, paññā’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      na    不変 ない  
      aparaṃ    代的 副対 後、他  
      itthattāyā   a かくの如き状態、現状、ここ[輪廻]の状態、  
      ti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pajānāti,  pra-jñā 知る、了知する  
      語根 品詞 語基 意味  
      idam    代的 これ  
      pi    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      assa    代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      hoti  bhū ある、存在する  
      語根 品詞 語基 意味  
      paññāya  pra-jñā ā 慧、智慧、般若  
      ayaṃ    代的 これ  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      sā,    代的 それ、彼女  
      brāhmaṇa,    a 婆羅門  
      paññā’’ pra-jñā ā  
      ti.   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     『……もはやこのような〔輪廻の〕状態へ〔至ることは〕ない』と知るのです。これもまた、彼(比丘)の慧の〔一つ〕です。じつに婆羅門よ、これが、その慧なのです」と。  
                       
                       
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