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     10. Yakkhasaṃyuttaṃ  
      語根 品詞 語基 意味  
      Yakkha    a 依(属) ヤッカ、夜叉  
      saṃyuttaṃ  saṃ-yuj 過分 a 結ばれた、結合した  
    訳文                
     「夜叉相応」  
                       
                       
                       
     1. Indakasuttaṃ  
      語根 品詞 語基 意味  
      Indaka    a 依(属) 神名、インダカ  
      suttaṃ  sīv a 経、糸  
    訳文                
     「インダカ経」(『相応部』10-1  
                       
                       
                       
    235-1.                
     235. Evaṃ me sutaṃ –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Evaṃ    不変 このように、かくの如き  
      me    代的  
      sutaṃ –  śru 名過分 a 所聞、聞かれた  
    訳文                
     私はこのように聞いた。  
                       
                       
                       
    235-2.                
     ekaṃ samayaṃ bhagavā rājagahe viharati indakūṭe pabbate, indakassa yakkhassa bhavane.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ekaṃ    代的 副対 一、とある  
      samayaṃ  saṃ-i a 副対  
      bhagavā    ant 世尊  
      rājagahe    a 地名、ラージャガハ、王舎城  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      viharati  vi-hṛ 住する  
      語根 品詞 語基 意味  
      indakūṭe    a 男中 地名、インダクータ  
      pabbate,    a  
      indakassa    a 神名、インダカ  
      yakkhassa    a 夜叉  
      bhavane.    a 住処、都城、領域、世界  
    訳文                
     あるとき世尊はラージャガハの、インダカ夜叉の住処であるインダクータ山に住しておられた。  
                       
                       
                       
    235-3.                
     Atha kho indako yakkho yena bhagavā tenupasaṅkami;   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また、そこに  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      indako    a 神名、インダカ  
      yakkho    a 夜叉  
      yena    代的 (関係代名詞、〜tenaで「〜の所に」)  
      bhagavā    ant 世尊  
      tena    代的 それ、彼、それによって、それゆえ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upasaṅkami;  upa-saṃ-kram 近づいた  
    訳文                
     ときにインダカ夜叉が、世尊へ近づいた。  
                       
                       
                       
    235-4.                
     upasaṅkamitvā bhagavantaṃ gāthāya ajjhabhāsi –   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upasaṅkamitvā  upa-saṃ-kram 近づく  
      語根 品詞 語基 意味  
      bhagavantaṃ    ant 世尊  
      gāthāya    ā  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ajjhabhāsi –  adhi-bhāṣ 話しかける、語る  
    訳文                
     近づいて、世尊へ偈をもって語りかけた。  
                       
                       
                       
    235-5.                
     ‘‘Rūpaṃ na jīvanti vadanti buddhā, kathaṃ nvayaṃ vindatimaṃ sarīraṃ;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Rūpaṃ    a 色、物質、肉体、形相  
      na    不変 ない  
      jīvan  jīv a 命、生命、霊魂  
      ti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      vadanti  vad 言う、説く  
      語根 品詞 語基 意味  
      buddhā,  budh 名過分 a 仏陀  
      kathaṃ    不変 いかに、なぜに  
      nu    不変 いったい、たぶん、〜かどうか、〜ではないか  
      ayaṃ    代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      vindati  vid 知る、見出す、所有する  
      語根 品詞 語基 意味  
      imaṃ    代的 これ  
      sarīraṃ;    a 身、遺体、遺骨、舎利  
    訳文                
     「♪〈色〉は霊魂でないと諸仏は説く。〔では〕かれはいったいこの身体をいかに知るのであろうか。  
    メモ                
     ・諸訳は「生命」「命」とするが、偈でのやりとりを見るに、夜叉は過去生から〈色〉が母胎に転移してくるものと主張しているように読める。すなわち輪廻における一貫した媒介、恒常不変のアートマンとしての〈色〉が言われているものと思われる。そこで「霊魂」の訳語を採用してみた。  
                       
                       
                       
    235-6.                
     Kutassa aṭṭhīyakapiṇḍameti, kathaṃ nvayaṃ sajjati gabbharasmi’’nti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Kuto    不変 どこから、いかなる理由で  
      assa    代的 これ  
      aṭṭhī    i  
      yakapiṇḍam    a 男(中) 肝臓  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      eti,  i 行く  
      語根 品詞 語基 意味  
      kathaṃ    不変 いかに、なぜに  
      nu    不変 いったい、たぶん、〜かどうか、〜ではないか  
      ayaṃ    代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      sajjati  sañj 受 着する、執着する  
      語根 品詞 語基 意味  
      gabbharasmi’’n    a 大洞穴  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ♪彼の骨や肝臓はどこから来るのか。いったいこれは、いかにして母胎に付着するのか」と。  
    メモ                
     ・gabbharaは上記のように「洞穴」の意であるが、文脈からして「母胎」gabbhaが意図されたものと解した。諸訳もそうしている。  
                       
                       
                       
    235-7.                
     ‘‘Paṭhamaṃ kalalaṃ hoti, kalalā hoti abbudaṃ;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Paṭhamaṃ    a 副対 第一の、最初の  
      kalalaṃ    a 男中 カララ、卵黄、凝滑  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      hoti,  bhū ある、なる、存在する  
      語根 品詞 語基 意味  
      kalalā    a 男中 カララ、卵黄、凝滑  
      hoti  同上  
      abbudaṃ;    a アッブダ、胞、垢濁  
    訳文                
     〔世尊曰く〕「♪最初に凝滑があり、凝滑から胞が現れる。  
                       
                       
                       
    235-8.                
     Abbudā jāyate pesi, pesi nibbattatī ghano;  
      語根 品詞 語基 意味  
      Abbudā    a アッブダ、胞、垢濁  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      jāyate  jan 生まれる、再生する  
      語根 品詞 語基 意味  
      pesi,    i, ī ペーシ、肉片、断片  
      pesi    i, ī 主(奪) ペーシ、肉片、断片  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      nibbattatī  nir-vṛt 生ずる、発生する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ghano;    名形 a ガナ、厚い、堅肉  
    訳文                
     ♪胞から肉片が生じ、肉片から堅肉が発生する。  
    メモ                
     ・『註』は二度目のpesitato pesitoと換言している(しかしtāya pesiyāではないのか)ので、ここでも奪格とした。  
                       
                       
                       
    235-9.                
     Ghanā pasākhā jāyanti, kesā lomā nakhāpi ca.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Ghanā    名形 a ガナ、厚い、堅肉  
      pasākhā    a 男中 ペーサーカ、肢節  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      jāyanti,  jan 受 生まれる、再生する  
      語根 品詞 語基 意味  
      kesā    a 頭髪  
      lomā    an 体毛  
      nakhā    a  
      pi    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      ca.    不変 と、また、そして、しかし  
    訳文                
     ♪堅肉から諸々の肢節が、また髪、毛、爪が生ずるのである。  
                       
                       
                       
    235-10.                
     ‘‘Yañcassa bhuñjatī mātā, annaṃ pānañca bhojanaṃ;  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Yañ    代的 (関係代名詞)  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      assa    代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      bhuñjatī  bhuj 食べる、享受する  
      語根 品詞 語基 意味  
      mātā,    ar  
      annaṃ    a 食べ物  
      pānañ  a 飲み物  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      bhojanaṃ;  bhuj a 食物  
    訳文                
     ♪彼の母が飲食や食物を食べる、  
                       
                       
                       
    235-11.                
     Tena so tattha yāpeti, mātukucchigato naro’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Tena    代的 それ、彼、それによって、それゆえ  
      so    代的 それ、彼  
      tattha    不変 そこで、そこに、そのとき、そのなかで  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      yāpeti,   使 行かせる、存続させる、生存させる  
      語根 品詞 語基 意味  
      mātu    ar 依(属)  
      kucchi    i 依(対) 腹、内部  
      gato  gam 過分 a 行った  
      naro’’    a  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     ♪それによって、その者はそこで生存し、母の胎に宿った人となるのである」  
    メモ                
     ・夜叉の説に対し、〈色〉はあくまで父母や食物に由来するものであって、輪廻してきたエッセンシャルな要素、人の固有の本質ではない、と返しているものと解した。  
     ・とはいえ、この返歌でも「骨なり肝臓なりは別途に成長したものであっても、カララこそはアートマンであり、過去生の肉体の核であったカララが現在生の母胎に転移してきたのだ」とする反論を許すことにはなってしまうか。この偈のやりとり自体意味が掴みづらく、何か他の解釈がなされるべきかも知れない。  
                       
                       
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