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     Ambaṭṭhamāṇavo  
      語根 品詞 語基 意味  
      Ambaṭṭha   a 人名、アンバッタ  
      māṇavo   a 学童、青年、若い婆羅門  
    訳文                
     【アンバッタ青年】  
                       
                       
                       
    256-1.                
     256. Tena kho pana samayena brāhmaṇassa pokkharasātissa ambaṭṭho nāma māṇavo antevāsī hoti ajjhāyako mantadharo tiṇṇaṃ vedānaṃ [bedānaṃ (ka.)] pāragū sanighaṇḍukeṭubhānaṃ sākkharappabhedānaṃ itihāsapañcamānaṃ padako veyyākaraṇo lokāyatamahāpurisalakkhaṇesu anavayo anuññātapaṭiññāto sake ācariyake tevijjake pāvacane –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Tena    代的 副具 それ、彼  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      pana    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      samayena    a 副具 時、集会  
      brāhmaṇassa  bṛh a 婆羅門  
      pokkharasātissa    i 人名、ポッカラサーティ  
      ambaṭṭho    a 人名、アンバッタ  
      nāma    an 副対 と、という名の、じつに  
      māṇavo    a 学童、青年、若い婆羅門  
      antevāsī  ante-vas in 内住者、住み込み弟子、近侍  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      hoti  bhū ある、存在する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ajjhāyako    a 学習者、読誦者  
      manta   a 依(属) 呪文、真言、経文  
      dharo  dhṛ a 保つ、保持する  
      tiṇṇaṃ     
      vedānaṃ  vid a ヴェーダ、明知  
      pāragū  pāra-gam ū 彼岸に至った、超えた  
      sa   不変 有する、伴う  
      nighaṇḍu   u 字彙、難語解、名義集  
      keṭubhānaṃ    a 儀規、儀式書  
      sa   不変 有する、伴う  
      akkhara   a 文字  
      pabhedānaṃ  pra-bhid a 区分、区別、種類 →音韻論と語源論ある  
      itihāsa   a 有(持) 古伝説、史伝、口碑  
      pañcamānaṃ    a 第五  
      padako    名形 a 男中 句の、聖句の通暁者、詩句、条目  
      veyyākaraṇo  vi-ā-kṛ a 文法、文典家(解答、受記の意の場合は中性)  
      lokāyata   a 順世派  
      mahā   ant  
      purisa   a 依(属) 人間、男  
      lakkhaṇesu    a 相、特徴  
      anavayo    a 無欠の  
      anuññāta anu-jñā 過分 a 許可された、規定された  
      paṭiññāto  paṭi-jñā 過分 a 自称した、自言した  
      sake    a 自分の、自己の  
      ācariyake    名形 a  
      te    
      vijjake  vid a ヴェーダに関する  
      pāvacane –  pra-vac a 語、教語  
    訳文                
     じつにまたその時、婆羅門ポッカラサーティにはアンバッタという名の青年の弟子がいた。〔彼は〕読誦者、持呪者であり、三ヴェーダのみならず、語句解説、儀式書、音韻論、語源論と、第五に古伝の通暁者であり、文法家であり、順世論と大人相に関して無欠の〔知識があり〕、己の師にあって、三ヴェーダにおける語に関し、〔このように〕認められ、また自認するものである。  
    メモ                
     ・『註』はkeṭubhaを「活用規則の分類」kiriyākappavikappoとする。『パーリ』、『原始』はこれに従う。『南伝』は「楷書(知明)」とする。  
     ・pāragūについて『註』は「唇を殺された所作によって他へ行ったがゆえに」Oṭṭhapahatakaraṇavasena pāraṃ gatoti と述べるが、意味不明(唇を殺された所作とは暗記の意か?)。PTS辞書は「超えた」の意とするので、ここでは三ヴェーダの範囲を超えて、付随する各文典にも精通した、という趣旨で捉えた。『パーリ』は、sanighaṇḍukeṭubhānaṃ云々を三ヴェーダの形容とみている(三ヴェーダ+アタルヴァ・ヴェーダに加え古伝を第五とするという註に従ったゆえであろう)。『南伝』、『原始』は三ヴェーダとこれら五種を列挙する形で訳す。  
     ・「小部」『経集』1026‘‘Lakkhaṇe itihāse ca, sanighaṇḍusakeṭubhe; Pañcasatāni vāceti, sadhamme pāramiṃ gato’’. 婆羅門バーヴァリへの評価。この定型句と明白に関連のあるテクストである。  
                       
                       
                       
    256-2.                
     ‘‘yamahaṃ jānāmi, taṃ tvaṃ jānāsi; yaṃ tvaṃ jānāsi tamahaṃ jānāmī’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘yam   代的 (関係代名詞)  
      ahaṃ    代的  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      jānāmi,  jñā 知る  
      語根 品詞 語基 意味  
      taṃ    代的 それ、彼、彼女、そのとき(副対)  
      tvaṃ    代的 あなた  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      jānāsi;  jñā 知る  
      語根 品詞 語基 意味  
      yaṃ    代的 (関係代名詞)  
      tvaṃ    代的 あなた  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      jānāsi  jñā 知る  
      語根 品詞 語基 意味  
      tam   代的 それ、彼、彼女、そのとき(副対)  
      ahaṃ    代的  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      jānāmī’’ jñā 知る  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「私の知るところはあなたの知るところであり、あなたの知るところは、私の知るところである」と。  
                       
                       
                       
    257-1.                
     257. Atha kho brāhmaṇo pokkharasāti ambaṭṭhaṃ māṇavaṃ āmantesi –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      brāhmaṇo  bṛh a 婆羅門  
      pokkharasāti    i 人名、ポッカラサーティ  
      ambaṭṭhaṃ    a 人名、アンバッタ  
      māṇavaṃ    a 学童、青年、若い婆羅門  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      āmantesi –  ā-mantra 呼びかける、話す、相談する  
    訳文                
     ときに、婆羅門ポッカラサーティは、アンバッタ青年へ話しかけた。  
                       
                       
                       
    257-2.                
     ‘‘ayaṃ, tāta ambaṭṭha, samaṇo gotamo sakyaputto sakyakulā pabbajito kosalesu cārikaṃ caramāno mahatā bhikkhusaṅghena saddhiṃ pañcamattehi bhikkhusatehi icchānaṅgalaṃ anuppatto icchānaṅgale viharati icchānaṅgalavanasaṇḍe.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘ayaṃ,    代的 これ  
      tāta    a 父、男性への呼称  
      ambaṭṭha,    a 人名、アンバッタ  
      samaṇo  śram a 沙門  
      gotamo    a 人名、ゴータマ  
      sakya   a 依(属) 氏族名、サキャ、釈迦  
      putto    a 息子  
      sakya   a 依(属) 氏族名、サキャ、釈迦  
      kulā    a 家、良家  
      pabbajito  pra-vraj 名過分 a 出家した、遁世した  
      kosalesu    a 地名、コーサラ国  
      cārikaṃ    名形 a 男中 旅行、遊行、徘徊  
      caramāno  car 現分 a 行ずる  
      mahatā    ant 大きな、偉大な  
      bhikkhu bhikṣ u 依(属) 比丘、(特に男性の)出家者  
      saṅghena  saṃ-hṛ a 僧伽、(特に仏教の)教団  
      saddhiṃ    不変 共に、一緒に(具格支配)  
      pañca    
      mattehi    a 量、だけ、のみ、程度  
      bhikkhu bhikṣ u 比丘  
      satehi    a  
      icchānaṅgalaṃ  iṣ a 地名、イッチャーナンガラ  
      anuppatto  anu-pra-āp 過分 a 到着した  
      icchānaṅgale  iṣ a 地名、イッチャーナンガラ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      viharati  vi-hṛ 住する  
      語根 品詞 語基 意味  
      icchānaṅgala iṣ a 地名  
      vana   a 依(属)  
      saṇḍe.   a 群、集 →密林  
    訳文                
     「アンバッタ君、かの、釈迦族の〔王〕子であり、釈迦族の家より出家した沙門ゴータマは、比丘五百人ほどの大比丘僧伽とともにコーサラ国に遊行し、イッチャーナンガラ〔村〕へ到着して、イッチャーナンガラ密林に住した。  
                       
                       
                       
    257-3.                
     Taṃ kho pana bhavantaṃ gotamaṃ evaṃ kalyāṇo kittisaddo abbhuggato –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Taṃ    代的 それ、彼、彼女  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      pana    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      bhavantaṃ bhū 名現分 ant(特) 尊師、尊者  
      gotamaṃ    a 人名、ゴータマ  
      evaṃ    不変 このように、かくの如き  
      kalyāṇo    a 善い  
      kitti   i, ī 依(属) 称讃、名声  
      saddo    a 音、声、語  
      abbhuggato –  abhi-ud-gam 過分 a あがる、昇る  
    訳文                
     しかるに、その尊者ゴータマへ、かくの如き善き称讃の声があがっている。  
                       
                       
                       
    257-4.                
     ‘itipi so bhagavā, arahaṃ sammāsambuddho vijjācaraṇasampanno sugato lokavidū anuttaro purisadammasārathi satthā devamanussānaṃ buddho bhagavā’.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘iti   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      pi    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      so    代的 それ、彼  
      bhagavā,    ant 世尊  
      arahaṃ  arh 名現分 ant 阿羅漢、応供  
      sammā   不変 正しい、正しく  
      sambuddho  saṃ-budh 名過分 a 等覚者  
      vijjā vid ā 明、智、呪,陀羅尼、学術、魔術  
      caraṇa car a 依(具) 行、行為、実践、徳行  
      sampanno  saṃ-pad 過分 a 具足した、成就した →明行足  
      sugato  su-gam 名過分 a よく行ったもの、善逝  
      loka   a 依(属) 世間、世界  
      vidū  vid ū 賢い、知者 →世間解  
      anuttaro    代的 この上ない、無上士  
      purisa   a 人、男  
      damma dam 未分 a 依(属) ならされるべき  
      sārathi    i 御者 →調御丈夫  
      satthā  śās ar 師、先生  
      deva   a 天、神、王、陛下  
      manussānaṃ    a 人間 →天人師  
      buddho  budh 名過分 a 仏陀、覚者  
      bhagavā’ .   ant 世尊  
    訳文                
     『かくのごとく、彼は世尊なり。応供、正等覚、明行足、善逝、世間解、無上士、調御丈夫、天人師、仏、世尊なり。  
                       
                       
                       
    257-5.                
     So imaṃ lokaṃ sadevakaṃ samārakaṃ sabrahmakaṃ sassamaṇabrāhmaṇiṃ pajaṃ sadevamanussaṃ sayaṃ abhiññā sacchikatvā pavedeti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      So    代的 それ、彼  
      imaṃ    代的 これ  
      lokaṃ    a 世間、世界  
      sadevakaṃ    a 天ある  
      samārakaṃ    a 魔ある  
      sabrahmakaṃ  sa-bṛh a 梵ある  
      sassamaṇa sa-śram a 有(相) 沙門ある  
      brāhmaṇiṃ  bṛh a 男→女 婆羅門  
      pajaṃ  pra-jan ā 人々  
      sadeva   a 有(相) 天ある  
      manussaṃ    a 男→女 人、人間  
      sayaṃ    不変 みずから  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      abhiññā  abhi-jñā 証知する、自証する  
      sacchikatvā  kṛ 作証する、証明をなす、さとる  
      pavedeti.  pra-vid 使 知らせる、説く  
    訳文                
     かれは、この天・魔・梵を含む世界、〔また〕沙門と婆羅門、王と民を含む人々を、みずから知り、悟り、説く。  
                       
                       
                       
    257-6.                
     So dhammaṃ deseti ādikalyāṇaṃ majjhekalyāṇaṃ pariyosānakalyāṇaṃ, sātthaṃ sabyañjanaṃ kevalaparipuṇṇaṃ parisuddhaṃ brahmacariyaṃ pakāseti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      So    代的 それ、彼  
      dhammaṃ  dhṛ a 男中  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      deseti  diś 使 示す、指示する、教示する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ādi   i 男中 依(処) 最初、初  
      kalyāṇaṃ    a 善い、善良の、善巧なる  
      majjhe   名形 a 中、中間の  
      kalyāṇaṃ    a 善い、善良の、善巧なる  
      pariyosāna pari-o-sā 使 a 依(処) 終末、完結、完了  
      kalyāṇaṃ,   a 善い、善良の、善巧なる  
      sātthaṃ    a 義ある、有義の(sa-attha)  
      sabyañjanaṃ   a 字ある  
      kevala   a 独一、独存、完全、全部  
      paripuṇṇaṃ  pari-pṝ 過分 a 円満した、充満した、完全な  
      parisuddhaṃ  pari-śudh 過分 a 清浄の  
      brahmacariyaṃ  bṛh, car a 梵行  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pakāseti. pra-kāś 使 説明する、あきらかにする、知らせる  
    訳文                
     かれは、始めよく、半ばよく、終わりよく、意義をそなえ、字句をそなえた教法を示し、完全に円満し清浄な梵行を説く。  
                       
                       
                       
    257-7.                
     Sādhu kho pana tathārūpānaṃ arahataṃ dassanaṃ hotīti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Sādhu    u よきかな  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      pana    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      tathārūpānaṃ    a かくの如きの  
      arahataṃ  arh 名現分 ant 阿羅漢、応供  
      dassanaṃ    a 見、見ること  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      hotī bhū ある、存在する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     じつによきかな、かくの如き阿羅漢たちとまみえることは』と。  
                       
                       
                       
    257-8.                
     Ehi tvaṃ tāta ambaṭṭha, yena samaṇo gotamo tenupasaṅkama; upasaṅkamitvā samaṇaṃ gotamaṃ jānāhi, yadi vā taṃ bhavantaṃ gotamaṃ tathāsantaṃyeva saddo abbhuggato, yadi vā no tathā.   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      Ehi  i 行く、いざ  
      語根 品詞 語基 意味  
      tvaṃ    代的 あなた  
      tāta    a 父、男性への呼称  
      ambaṭṭha,    a 人名、アンバッタ  
      yena    代的 (関係代名詞)  
      samaṇo  śram a 沙門  
      gotamo    a 人名、ゴータマ  
      tena   代的 (関係代名詞)  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upasaṅkama;  upa-saṃ-kram 近づいた  
      upasaṅkamitvā  upa-saṃ-kram 近づいて  
      語根 品詞 語基 意味  
      samaṇaṃ  śram a 沙門  
      gotamaṃ    a 人名、ゴータマ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      jānāhi,  jñā 知る  
      語根 品詞 語基 意味  
      yadi    不変 もし  
          不変 あるいは  
      taṃ    代的 それ、彼、彼女、そのとき(副対)  
      bhavantaṃ  bhū 名現分 ant(特) 尊師、尊者  
      gotamaṃ    a 人名、ゴータマ  
      tathā   不変 〜のごとくに、〜のように  
      santaṃ as 現分 ant 存在する、善き  
      yeva    不変 まさに、のみ、じつに  
      saddo    a 音、声、語  
      abbhuggato,  abhi-ud-gam 過分 a あがる、昇る  
      yadi    不変 もし  
          不変 あるいは  
      no    不変 ない、否/〜かどうか  
      tathā.    不変 〜のごとくに、〜のように  
    訳文                
     いざ、アンバッタ君、あなたは沙門ゴータマへ近づきなさい。沙門ゴータマへ近づいて、かの尊者ゴータマにまさしくそのような善き名声が上がっているか、はたまたそのようでないか、知りなさい。  
                       
                       
                       
    257-9.                
     Yadi vā so bhavaṃ gotamo tādiso, yadi vā na tādiso, tathā mayaṃ taṃ bhavantaṃ gotamaṃ vedissāmā’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Yadi    不変 もし  
          不変 あるいは  
      so    代的 それ、彼  
      bhavaṃ  bhū 名現分 ant(特) 現存者、勝存者、尊師  
      gotamo    a 人名、ゴータマ  
      tādiso,    a その如き、そのような  
      yadi    不変 もし  
          不変 あるいは  
      na    不変 ない  
      tādiso,    a その如き、そのような  
      tathā    不変 〜のごとくに、〜のように  
      mayaṃ    代的 私たち  
      taṃ    代的 それ、彼、彼女、そのとき(副対)  
      bhavantaṃ  bhū 名現分 ant(特) 尊師、尊者  
      gotamaṃ    a 人名、ゴータマ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      vedissāmā’’ vid 使 知る、感受する、経験する、知らしめる  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     〔また〕かの尊者ゴータマがその〔名声の〕とおりの人か、はたまたそうでないか〔知りなさい〕。そのように我々は、かの尊者ゴータマを知ることになろう」と。  
                       
                       
                       
    258-1.                
     258. ‘‘Yathā kathaṃ panāhaṃ, bho, taṃ bhavantaṃ gotamaṃ jānissāmi –   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Yathā    不変 (関係代名詞)  
      kathaṃ    不変 いかに、なぜに  
      pana   不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      ahaṃ,    代的  
      bho,  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      taṃ    代的 それ、彼、彼女、そのとき(副対)  
      bhavantaṃ  bhū 名現分 ant(特) 尊師、尊者  
      gotamaṃ    a 人名、ゴータマ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      jānissāmi –  jñā 知る、感受する、経験する、知らしめる  
    訳文                
     「しかし尊者よ、私はいかようにしてかの尊者ゴータマを知ればよいのでしょうか。  
                       
                       
                       
    258-2.                
     ‘yadi vā taṃ bhavantaṃ gotamaṃ tathāsantaṃyeva saddo abbhuggato, yadi vā no tathā.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘yadi vā taṃ bhavantaṃ gotamaṃ tathāsantaṃyeva saddo abbhuggato, yadi vā no tathā. (257-8.)  
    訳文                
     かの尊者ゴータマにまさしくそのような善き名声が上がっているか、はたまたそのようでないか。  
                       
                       
                       
    258-3.                
     Yadi vā so bhavaṃ gotamo tādiso, yadi vā na tādiso’’’ti?  
      語根 品詞 語基 意味  
      Yadi vā so bhavaṃ gotamo tādiso, yadi vā na tādiso’’’ (257-9.)  
      ti?   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     〔また〕かの尊者ゴータマがその〔名声の〕とおりの人か、はたまたそうでないかを」と。  
                       
                       
                       
    258-4.                
     ‘‘Āgatāni kho, tāta ambaṭṭha, amhākaṃ mantesu dvattiṃsa mahāpurisalakkhaṇāni, yehi samannāgatassa mahāpurisassa dveyeva gatiyo bhavanti anaññā.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Āgatāni  ā-gam 過分 a 来た、近づいた、帰った、伝えられた  
      kho,    不変 じつに、たしかに  
      tāta    a 父、男性への呼称  
      ambaṭṭha,    a 人名、アンバッタ  
      amhākaṃ    代的 私たち  
      mantesu    a 呪文、真言、経文  
      dvattiṃsa    a 三十二  
      mahā   ant  
      purisa   a 依(属) 人間、男  
      lakkhaṇāni,    a 相、特徴  
      yehi    代的 (関係代名詞)  
      samannāgatassa  saṃ-anu-ā-gam a 具足した  
      mahā   ant  
      purisassa    a 人間、男  
      dve    
      yeva    不変 まさに、のみ、じつに  
      gatiyo  gam i 帰趣、帰趨、行方、死去  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      bhavanti  bhū ある、存在する  
      語根 品詞 語基 意味  
      anaññā.    不変 他はなし  
    訳文                
     「アンバッタ君、じつに我らの諸経においては、それをそなえた偉大な人物には二つの行く末のみがあり、他はないという三十二大人相が伝えられている。  
    メモ                
     ・ここでは三十二大人相が仏教ではなく婆羅門の諸経典に伝えられたものとされる。『経集』1006などにも三十二大人相は出るが、そこでは、白毫のほか、このアンバッタ経にでる広長舌と陰馬蔵のみが挙げられる(しかもブッダではなく婆羅門バーヴァリの「三つの特徴」として)。他は出ないことから、中村元は『ブッダのことば』の注で三十二といってもその具体的な相は逐次成立したものであろうと見ている(p415)。経典の成立背景を考えるに当たっても、興味深い点である。  
                       
                       
                       
    258-5.                
     Sace agāraṃ ajjhāvasati, rājā hoti cakkavattī dhammiko dhammarājā cāturanto vijitāvī janapadatthāvariyappatto sattaratanasamannāgato.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Sace    不変 もし  
      agāraṃ    a 家、家屋、俗家  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ajjhāvasati,  adhi-ā-vas 住す、忍住する  
      語根 品詞 語基 意味  
      rājā    an  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      hoti  bhū ある、存在する  
      語根 品詞 語基 意味  
      cakka   a 依(対)  
      vattī  vṛt in 転ずる →転輪王  
      dhammiko  dhṛ 名形 a 如法の  
      dhamma dhṛ a 依(属)  
      rājā    an  
      cātur   有(帯)  
      anto    a 終極、目的、極限、辺、極端  
      vijitāvī  vi-ji in 己勝の、大勝した、征服した  
      janapada   a 依(属) 地方、国、国土  
      thāvariya   a 依(対) 確立、安定  
      patto  pra-āp 過分 a 獲得した、至った  
      satta    
      ratana   a 依(具)  
      samannāgato.  saṃ-anu-ā-gam a 具足した  
    訳文                
     もし、〔その者が〕俗家に住するならば、転論王、如法の法王、四辺の〔領有者〕、征服者、国土の安立に至ったもの、七宝を具足するものとなる。  
                       
                       
                       
    258-6.                
     Tassimāni satta ratanāni bhavanti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Tassa   代的 それ、彼  
      imāni    代的 これら  
      satta     
      ratanāni    a  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      bhavanti.  bhū ある、存在する  
    訳文                
     かれには、これらの七宝が存在する。  
                       
                       
                       
    258-7.                
     Seyyathidaṃ – cakkaratanaṃ, hatthiratanaṃ, assaratanaṃ, maṇiratanaṃ, itthiratanaṃ, gahapatiratanaṃ, pariṇāyakaratanameva sattamaṃ.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Seyyathidaṃ –    不変 たとえば、その如き  
      cakka   a  
      ratanaṃ,    a  
      hatthi   in  
      ratanaṃ,    a  
      assa   a  
      ratanaṃ,    a  
      maṇi   i 摩尼、宝珠  
      ratanaṃ,    a  
      itthi   i, ī 女性、夫人  
      ratanaṃ,    a  
      gahapati   i 家長、居士、資産家  
      ratanaṃ,    a  
      pariṇāyaka pari-nī a 指導者、将軍、司令官  
      ratanam   a  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      sattamaṃ.    a 第七  
    訳文                
     すなわち、輪宝、象宝、馬宝、摩尼宝、女宝、居士宝、じつに第七に将軍宝である。  
                       
                       
                       
    258-8.                
     Parosahassaṃ kho panassa puttā bhavanti sūrā vīraṅgarūpā parasenappamaddanā.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Paro   不変 超えて、以上に  
      sahassaṃ    a  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      pana   不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      assa    代的 これ  
      puttā    a 息子  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      bhavanti  bhū ある、存在する  
      語根 品詞 語基 意味  
      sūrā  śū a 勇敢な、英雄  
      vīra   a 依(属) 英雄、勇士  
      aṅga   a 有(属) 部分、肢体  
      rūpā    a 中→男 色、物質、肉体、形相、容姿、像、相、画、人形 →英雄的な  
      para   代的 他の、彼方の  
      sena   ā 有(属) 軍 →敵軍  
      pamaddanā.  pra-mṛd a 中→男 砕破、押し砕き  
    訳文                
     またじつに彼には、千を超える、勇敢で英雄的で、敵軍を砕破する息子たちがある。  
                       
                       
                       
    258-9.                
     So imaṃ pathaviṃ sāgarapariyantaṃ adaṇḍena asatthena dhammena abhivijiya ajjhāvasati.   
      語根 品詞 語基 意味  
      So    代的 それ、彼  
      imaṃ    代的 これ  
      pathaviṃ    ī 地、大地  
      sāgara   a 有(属) 海、海洋  
      pariyantaṃ    a 男→女 周辺、制限、究竟、終りにする  
      adaṇḍena    a 男中 杖なし  
      asatthena    a 男中 剣なし  
      dhammena  dhṛ a  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      abhivijiya  abhi-vi-ji 征服する  
      ajjhāvasati.  adhi-ā-vas 住す、忍住する  
    訳文                
     彼は、この海に囲まれた大地を杖によらず、剣によらず、法によって征服して住する。  
                       
                       
                       
    258-10.                
     Sace kho pana agārasmā anagāriyaṃ pabbajati, arahaṃ hoti sammāsambuddho loke vivaṭṭacchado.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Sace    不変 もし  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      pana    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      agārasmā    a 家、家屋、俗家  
      anagāriyaṃ    a 非家の  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pabbajati,  pra-vraj 出家する、遁世する  
      語根 品詞 語基 意味  
      arahaṃ  arh 名現分 ant 阿羅漢、応供  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      hoti  bhū ある、存在する  
      語根 品詞 語基 意味  
      sammā   不変 正しい、正しく  
      sambuddho  saṃ-budh 名過分 a 等覚者  
      loke    a 世、世界、世間  
      vivaṭa vi-vṛ 過分 a 有(持) 開いた、覆いのない  
      chado.  chad a 蓋、覆い  
    訳文                
     またじつに、もし〔彼が〕家から出家したなら、阿羅漢、正等覚者、世にあって覆いを開いた者となる。  
    メモ                
     ・vivaṭṭacchadaは辞書類にはvivatta- (vivaṭa-) chadaとある。『長部』14「大譬喩経」のパラレル箇所ではvivaṭacchadoとなっているので、ここもその誤記であろう。『パーリ』、『原始』はおそらく『註』に従い、「世の覆いを開く」とするが、ここでは違う解釈で訳してみた。  
                       
                       
                       
    258-11.                
     Ahaṃ kho pana, tāta ambaṭṭha, mantānaṃ dātā; tvaṃ mantānaṃ paṭiggahetā’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Ahaṃ    代的  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      pana,    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      tāta    a 父、男性への呼称  
      ambaṭṭha,    a 人名、人名  
      mantānaṃ    a 呪文、真言、経文  
      dātā;  ar 施者、施与者  
      tvaṃ    代的 あなた  
      mantānaṃ    a 呪文、真言、経文  
      paṭiggahetā’’ prati-grah ar 領受者、受納者、受者  
      ti.   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     しかるにアンバッタ君、じつに私は経文の教授者であり、あなたは経文の領受者である」と。  
    メモ                
     ・私はあなたに、釈尊が偉大な人物かどうかを見分ける三十二代人相のことをすでに教授したはずだ、といった趣旨であろう。  
                       
                       
                       
    259-1.                
     259. ‘‘Evaṃ, bho’’ti kho ambaṭṭho māṇavo brāhmaṇassa pokkharasātissa paṭissutvā uṭṭhāyāsanā brāhmaṇaṃ pokkharasātiṃ abhivādetvā padakkhiṇaṃ katvā vaḷavārathamāruyha sambahulehi māṇavakehi saddhiṃ yena icchānaṅgalavanasaṇḍo tena pāyāsi.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Evaṃ,    不変 このように、かくの如き  
      bho’’ bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      ti    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      ambaṭṭho    a 人名、アンバッタ  
      māṇavo    a 学童、青年、若い婆羅門  
      brāhmaṇassa  bṛh a 婆羅門  
      pokkharasātissa    i 人名、ポッカラサーティ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      paṭissutvā  prati-śru 同意する、応諾する、答える  
      uṭṭhāya ud-sthā 立つ  
      語根 品詞 語基 意味  
      āsanā  ās a  
      brāhmaṇaṃ  bṛh a 婆羅門  
      pokkharasātiṃ    i 人名、ポッカラサーティ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      abhivādetvā  abhi-vad 敬礼する、礼拝する  
      語根 品詞 語基 意味  
      padakkhiṇaṃ    a 右回り、右繞、幸福な、器用な  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      katvā  kṛ なす  
      語根 品詞 語基 意味  
      vaḷavā   ā 依(属) ラバ、牝馬  
      ratham   a  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      āruyha  ā-ruh 乗る、上がる  
      語根 品詞 語基 意味  
      sambahulehi    a 多くの、衆多の  
      māṇavakehi    a 学童、青年、若い婆羅門  
      saddhiṃ    不変 共に、一緒に(具格支配)  
      yena    代的 (関係代名詞)  
      icchānaṅgala iṣ a 地名、イッチャーナンガラ  
      vana   a 依(属)  
      saṇḍo    a 群、集 →密林  
      tena    代的 それ、彼  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pāyāsi.  pra-ā-yā 出発する、出て行く  
    訳文                
     じつに、「そのように、尊者よ」とアンバッタ青年は婆羅門ポッカラサーティへ答え、座より立って、婆羅門ポッカラサーティへ礼拝し、右繞をなして、ラバの車に乗り、多くの青年たちと共にイッチャーナンガラ密林へと出発した。  
    メモ                
     ・辞去の描写が「沙門果経」の阿闍世王とパラレル。右繞という作法が、仏教だけでなく、バラモン教においても用いられている描写である(史実の反映かどうかは不明)。  
                       
                       
                       
    259-2.                
     Yāvatikā yānassa bhūmi yānena gantvā yānā paccorohitvā pattikova ārāmaṃ pāvisi.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Yāvatikā    ā である限りの、それだけの  
      yānassa  a 乗り物  
      bhūmi    i 地、土地、大地、国土、階位  
      yānena  a 乗り物  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      gantvā  gam 行く  
      語根 品詞 語基 意味  
      yānā  a 乗り物  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      paccorohitvā  prati-ava-ruh おりる  
      語根 品詞 語基 意味  
      pattiko   a 歩行者、歩兵  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      ārāmaṃ    a  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pāvisi.  pra-viś 入る  
    訳文                
     〔彼は〕乗り物のため〔許される〕限りの場所を乗り物で行き、乗り物からおりて、じつに歩いて園へ入った。  
                       
                       
                       
    259-3.                
     Tena kho pana samayena sambahulā bhikkhū abbhokāse caṅkamanti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Tena    代的 副具 それ、彼、それによって、それゆえ  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      pana    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      samayena    a 副具 時、集会  
      sambahulā    a 多くの、衆多の  
      bhikkhū  bhikṣ u 比丘  
      abbhokāse  abhi-ava-kāś a 露地、野天、屋外、野外、開かれた場所  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      caṅkamanti.  kram 経行する、散歩する  
    訳文                
     さて、じつにその時、多くの比丘たちが野外を経行していた。  
                       
                       
                       
    259-4.                
     Atha kho ambaṭṭho māṇavo yena te bhikkhū tenupasaṅkami; upasaṅkamitvā te bhikkhū etadavoca –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      ambaṭṭho    a 人名、アンバッタ  
      māṇavo    a 学童、青年、若い婆羅門  
      yena    代的 (関係代名詞)  
      te    代的 それら、彼ら  
      bhikkhū  bhikṣ u 比丘  
      tena   代的 それ、彼、それによって、それゆえ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upasaṅkami;  upa-saṃ-kram 近づいた  
      upasaṅkamitvā  upa-saṃ-kram 近づいて  
      語根 品詞 語基 意味  
      te    代的 それら、彼ら  
      bhikkhū  bhikṣ u 比丘  
      etad   代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      avoca –  vac いう  
    訳文                
     ときにアンバッタ青年は、その比丘たちへ近づいた。近づいて彼ら比丘たちへこういった。  
                       
                       
                       
    259-5.                
     ‘‘kahaṃ nu kho, bho, etarahi so bhavaṃ gotamo viharati?   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘kahaṃ    不変 どこに  
      nu    不変 〜かどうか、〜ではないか  
      kho,    不変 じつに、たしかに  
      bho,  bhū 名現分 ant(特) 尊者よ、君よ、友よ、ああ、おお  
      etarahi    不変 いま  
      so    代的 それ、彼  
      bhavaṃ  bhū 名現分 ant(特) 現存者、勝存者、尊師  
      gotamo    a 人名、ゴータマ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      viharati?  vi-hṛ 住する  
    訳文                
     「君よ、かの尊者ゴータマは今、一体どこに住しておられますか。  
                       
                       
                       
    259-6.                
     Tañhi mayaṃ bhavantaṃ gotamaṃ dassanāya idhūpasaṅkantā’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Tañ   代的 それ  
      hi    不変 じつに、なぜなら  
      mayaṃ    代的 私たち  
      bhavantaṃ  bhū 名現分 ant(特) 尊師、尊者  
      gotamaṃ    a 人名、ゴータマ  
      dassanāya  dṛś a 見、見ること  
      idha   不変 ここに、この世で、いま、さて  
      upasaṅkantā’’ upa-saṃ-kram 過分 a 近づいた  
      ti.   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「じつに我々は、かの尊者ゴータマへまみえるために、ここへやってきたのです」と。  
                       
                       
                       
    260-1.                
     260. Atha kho tesaṃ bhikkhūnaṃ etadahosi –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      tesaṃ    代的 それら、彼ら  
      bhikkhūnaṃ  bhikṣ u 比丘  
      etad   代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ahosi –  bhū ある、存在する  
    訳文                
     ときに、彼ら比丘たちに、この〔思いが〕生じた。  
                       
                       
                       
    260-2.                
     ‘‘ayaṃ kho ambaṭṭho māṇavo abhiññātakolañño ceva abhiññātassa ca brāhmaṇassa pokkharasātissa antevāsī.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘ayaṃ    代的 これ  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      ambaṭṭho    a 人名、アンバッタ  
      māṇavo    a 学童、青年、若い婆羅門  
      abhiññāta abhi-jñā 過分 a よく知った、よく知られた  
      kolañño    a 家系の  
      ca   不変 と、また、そして、しかし  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      abhiññātassa  abhi-jñā 過分 a 証知した、有名な  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      brāhmaṇassa  bṛh a 婆羅門  
      pokkharasātissa    i 人名、ポッカラサーティ  
      antevāsī.  ante-vas in 内住者、住み込み弟子、近侍  
    訳文                
     「じつに、このアンバッタ青年は有名な家系のものであり、またじつに有名な婆羅門ポッカラサーティの弟子である。  
                       
                       
                       
    260-3.                
     Agaru kho pana bhagavato evarūpehi kulaputtehi saddhiṃ kathāsallāpo hotī’’ti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Agaru    u 重くない、重要でない  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      pana    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      bhagavato    ant 世尊  
      evarūpehi    a かくのごとき  
      kula   a 依(属) 家、良家、族姓  
      puttehi    a 息子 →善男子  
      saddhiṃ    不変 共に、一緒に(具格支配)  
      kathā   ā 語、論、話  
      sallāpo  saṃ-lap a 語ること →会話  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      hotī’’ bhū ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     しからば、世尊にとって、このような良家の子息との会話は、差し支えない〔であろう〕」と。  
                       
                       
                       
    260-4.                
     Te ambaṭṭhaṃ māṇavaṃ etadavocuṃ –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Te    代的 それら、彼ら  
      ambaṭṭhaṃ    a 人名、アンバッタ  
      māṇavaṃ    a 学童、青年、若い婆羅門  
      etad   代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      avocuṃ –  vac いう  
    訳文                
     彼らは、アンバッタ青年へこういった。  
                       
                       
                       
    260-5.                
     ‘‘eso ambaṭṭha vihāro saṃvutadvāro, tena appasaddo upasaṅkamitvā ataramāno āḷindaṃ pavisitvā ukkāsitvā aggaḷaṃ ākoṭehi, vivarissati te bhagavā dvāra’’nti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘eso    代的 これ、彼  
      ambaṭṭha    a 人名、アンバッタ  
      vihāro  vi-hṛ a 精舎、僧坊  
      saṃvuta  saṃ-vṛ 過分 a 有(持) 防護した、抑制された、閉じた  
      dvāro,   a 中→男  
      tena    代的 それ、彼、それによって、それゆえ  
      appa   名形 a 有(持) 少ない  
      saddo    a 音、声、語  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upasaṅkamitvā  upa-saṃ-kram 近づいて  
      語根 品詞 語基 意味  
      ataramāno    a 急がない、緩慢な  
      āḷindaṃ    a 玄関  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pavisitvā  pra-viś 入る  
      ukkāsitvā  ud-kās 咳払いする  
      語根 品詞 語基 意味  
      aggaḷaṃ    ā  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ākoṭehi,  ā-kuṭ? 打つ  
      vivarissati  vi-vṛ 開く、開明する  
      語根 品詞 語基 意味  
      te    代的 あなた  
      bhagavā    ant 世尊  
      dvāra’’n   a  
      ti.   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「アンバッタよ、この僧坊は門を閉じられています。ですから、静かに近づいてゆっくりと玄関へ入り、咳払いして閂を打って下さい。世尊はあなたのため、門を開かれるでしょう」と。  
                       
                       
                       
    261-1.                
     261. Atha kho ambaṭṭho māṇavo yena so vihāro saṃvutadvāro, tena appasaddo upasaṅkamitvā ataramāno āḷindaṃ pavisitvā ukkāsitvā aggaḷaṃ ākoṭesi.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      ambaṭṭho    a 人名、アンバッタ  
      māṇavo    a 学童、青年、若い婆羅門  
      yena    代的 (関係代名詞)  
      so    代的 それ、彼  
      vihāro saṃvutadvāro, tena appasaddo upasaṅkamitvā ataramāno āḷindaṃ pavisitvā ukkāsitvā aggaḷaṃ (260-5.)  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ākoṭesi.  ā-kuṭ? 打つ  
    訳文                
     そこでアンバッタ青年は、その門を閉じられた僧坊へ静かに近づいて、ゆっくりと玄関へ入り、咳払いして閂を打った。  
                       
                       
                       
    261-2.                
     Vivari bhagavā dvāraṃ.   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      Vivari  vi-vṛ 開く、開明する  
      語根 品詞 語基 意味  
      bhagavā    ant 世尊  
      dvāraṃ.    a  
    訳文                
     世尊は門を開かれた。  
                       
                       
                       
    261-3.                
     Pāvisi ambaṭṭho māṇavo.   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      Pāvisi  pra-viś 入る  
      語根 品詞 語基 意味  
      ambaṭṭho    a 人名、アンバッタ  
      māṇavo.    a 学童、青年、若い婆羅門  
    訳文                
     アンバッタ青年は入室した。  
                       
                       
                       
    261-4.                
     Māṇavakāpi pavisitvā bhagavatā saddhiṃ sammodiṃsu, sammodanīyaṃ kathaṃ sāraṇīyaṃ vītisāretvā ekamantaṃ nisīdiṃsu.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Māṇavakā   a 学童、青年、若い婆羅門  
      pi    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      pavisitvā  pra-viś 入る  
      語根 品詞 語基 意味  
      bhagavatā    ant 世尊  
      saddhiṃ    不変 共に、一緒に(具格支配)  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      sammodiṃsu,  saṃ-mud 喜ぶ、相喜ぶ、挨拶する  
      語根 品詞 語基 意味  
      sammodanīyaṃ  saṃ-mud 未分 a よろこばしい  
      kathaṃ    ā 話、説、論  
      sāraṇīyaṃ  saṃ-raj 未分 a 相慶慰すべき、喜ぶべき  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      vītisāretvā  vi-ati-sṛ 使 交わす、交換する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ekamantaṃ    不変 一方に  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      nisīdiṃsu.  ni-sad 坐る  
    訳文                
     また青年たちも、入室して世尊と挨拶し、喜ばしき慶賀の言葉を交わしてから、一方へ坐った。  
                       
                       
                       
    261-5.                
     Ambaṭṭho pana māṇavo caṅkamantopi nisinnena bhagavatā kañci kañci [kiñci kiñci (ka.)] kathaṃ sāraṇīyaṃ vītisāreti, ṭhitopi nisinnena bhagavatā kiñci kiñci kathaṃ sāraṇīyaṃ vītisāreti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Ambaṭṭho    a 人名、アンバッタ  
      pana    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      māṇavo    a 学童、青年、若い婆羅門  
      caṅkamanto kram 現分 a 経行する、散歩する  
      pi    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      nisinnena  ni-sad 過分 a 坐った  
      bhagavatā    ant 世尊  
      kañci    不変 何者か、何でも  
      kañci    不変 何者か、何でも  
      kathaṃ    不変 いかに、なぜに  
      sāraṇīyaṃ  saṃ-raj 未分 a 相慶慰すべき、喜ぶべき  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      vītisāreti,  vi-ati-sṛ 使 交わす、交換する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ṭhito sthā 過分 a 立った  
      pi    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      nisinnena  ni-sad 過分 a 坐った  
      bhagavatā    ant 世尊  
      kiñci    不変 何者か、何でも  
      kiñci    不変 何者か、何でも  
      kathaṃ    ā 話、説、論  
      sāraṇīyaṃ  saṃ-raj 未分 a 相慶慰すべき、喜ぶべき  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      vītisāreti. vi-ati-sṛ 使 交わす、交換する  
    訳文                
     しかしアンバッタ青年は、うろつきだしては坐った世尊へなにやら慶賀の言葉を交わし、立ち止まっては坐った世尊へなにやら慶賀の言葉を交わした。  
    メモ                
     ・妙な訳だが、ちゃんと坐らず、挨拶もきちんとしなかったということであろう。  
                       
                       
                       
    262-1.                
     262. Atha kho bhagavā ambaṭṭhaṃ māṇavaṃ etadavoca –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      bhagavā    ant 世尊  
      ambaṭṭhaṃ    a 人名、アンバッタ  
      māṇavaṃ    a 学童、青年、若い婆羅門  
      etad   代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      avoca –  vac いう  
    訳文                
     そこで世尊はアンバッタ青年にこう仰った。  
                       
                       
                       
    262-2.                
     ‘‘evaṃ nu te, ambaṭṭha, brāhmaṇehi vuddhehi mahallakehi ācariyapācariyehi saddhiṃ kathāsallāpo hoti, yathayidaṃ caraṃ tiṭṭhaṃ nisinnena mayā kiñci kiñci kathaṃ sāraṇīyaṃ vītisāretī’’ti?  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘evaṃ    不変 このように、かくの如き  
      nu    不変 〜かどうか、〜ではないか  
      te,    代的 あなた  
      ambaṭṭha,    a 人名、アンバッタ  
      brāhmaṇehi  bṛh a 婆羅門  
      vuddhehi  vṛdh 過分 a 年長の、増上の  
      mahallakehi    a 老練、高齢の  
      ācariya ā-car a 師、阿闍梨  
      pācariyehi  pra-ā-car a 師中の師、大阿闍梨、  
      saddhiṃ    不変 共に、一緒に(具格支配)  
      kathā   ā 語、論、話  
      sallāpo  saṃ-lap a 語ること →会話  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      hoti,  bhū ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      yathā   不変 〜のごとくに、〜のように  
      idaṃ    代的 これ  
      caraṃ    現分 a 歩く  
      tiṭṭhaṃ    現分 a 立つ  
      nisinnena  ni-sad 過分 a 坐った  
      mayā    代的  
      kiñci    不変 何者か、何でも  
      kiñci    不変 何者か、何でも  
      kathaṃ    ā 話、説、論  
      sāraṇīyaṃ  saṃ-raj 未分 a 相慶慰すべき、喜ぶべき  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      vītisāretī’’ vi-ati-sṛ 使 交わす、交換する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti?   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「アンバッタよ、あなたは、こう歩いたり止まったりしつつ、坐った私になにやら慶賀の言葉を交わすように、年長の婆羅門たち、老練なる師や大師たちと会話するのでしょうか」と。  
                       
                       
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