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     Ajātasattuupāsakattapaṭivedanā  
      語根 品詞 語基 意味  
      Ajātasattu  a-jan u 依(具) 人名、アジャータサットゥ  
      upāsakatta upa-ās a 依(属) 優婆塞たること、信士位  
      paṭivedanā prati-vid ā 知らせること、述べること  
    訳文                
     【阿闍世の優婆塞宣言】  
    メモ                
     ・paṭivedanāは辞書類にないが、paṭivedetiの名詞化したものと判断した。  
                       
                       
                       
    250-1.                
     250. Evaṃ vutte, rājā māgadho ajātasattu vedehiputto bhagavantaṃ etadavoca –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Evaṃ    不変 このように、かくの如き  
      vutte,  vac 受 過分 a 男中 いわれた  
      rājā    an  
      māgadho    a マガダ国の  
      ajātasattu  a-jan u 人名、アジャータサットゥ  
      vedehi   ī 依(属) 人名、ヴェーデーヒー  
      putto    a 息子  
      bhagavantaṃ    ant 世尊  
      etad   代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      avoca –  vac いう  
    訳文                
     このようにいわれて、マガダ国の王、ヴェーデーヒーの息子アジャータサットゥは世尊へこういった。  
                       
                       
                       
    250-2.                
     ‘‘abhikkantaṃ, bhante, abhikkantaṃ, bhante.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘abhikkantaṃ,  abhi-kram 名過分 a 偉なるかな、奇なるかな、希有なり、素晴らしい  
      bhante,  bhū 名現分 ant(特) 大徳よ  
      abhikkantaṃ,  abhi-kram 名過分 a 偉なるかな、奇なるかな、希有なり、素晴らしい  
      bhante.  bhū 名現分 ant(特) 大徳よ  
    訳文                
     「尊者よ、素晴らしい、尊者よ、素晴らしい。  
                       
                       
                       
    250-3.                
     Seyyathāpi, bhante, nikkujjitaṃ vā ukkujjeyya, paṭicchannaṃ vā vivareyya, mūḷhassa vā maggaṃ ācikkheyya, andhakāre vā telapajjotaṃ dhāreyya ‘cakkhumanto rūpāni dakkhantī’ti;   
      語根 品詞 語基 意味  
      Seyyathā   不変 たとえば、その如き  
      pi,    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      bhante,  bhū 名現分 ant(特) 大徳よ  
      nikkujjitaṃ    過分 a 倒れた、転倒した  
          不変 あるいは  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ukkujjeyya,    起こす、直立させる  
      語根 品詞 語基 意味  
      paṭicchannaṃ  prati-chad 使 過分 a 覆われた、隠された  
          不変 あるいは  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      vivareyya,  vi-vṛ 開く、解明する、あきらかにする  
      語根 品詞 語基 意味  
      mūḷhassa  muh 過分 a 男中 愚昧の、迷った  
          不変 あるいは  
      maggaṃ    a  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ācikkheyya,  ā-khyā 強 告げる、述べる、説く  
      語根 品詞 語基 意味  
      andha   a 依(属) 盲目、愚昧  
      kāre  kṛ a 行為、所作、字、文字、作者 →暗黒  
          不変 あるいは  
      tela   a 依(具)  
      pajjotaṃ    a 灯火、光明  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      dhāreyya  dhṛ 使 もたせる、差し出す  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘cakkhumanto    ant 眼ある  
      rūpāni    a 色、物質、肉体、形相、容姿、像、相、画、人形  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      dakkhantī’ dṛś 見る  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti;    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     尊者よ、たとえばまた、倒れたものを起こすように、覆われたものをあきらかにするように、迷ったもののために道を教えるように、あるいは『眼あるものが諸々の形相を見る〔ことができるように〕』といって暗闇に灯明を差し出すように、  
                       
                       
                       
    250-4.                
     evamevaṃ, bhante, bhagavatā anekapariyāyena dhammo pakāsito.   
      語根 品詞 語基 意味  
      evam   不変 このように、かくの如き  
      evaṃ,    不変 このように、かくの如き  
      bhante,  bhū 名現分 ant(特) 大徳よ  
      bhagavatā    ant 世尊  
      aneka   代的 一つならぬ、多数の  
      pariyāyena  pari-i a 法門、理由、方便、順序  
      dhammo  dhṛ a  
      pakāsito.  pra-kāś 使 過分 a 説明された、あきらかにされた、知らされた  
    訳文                
     尊者よ、まさしくそのように、世尊によって多くの法門により法があきらかにされました。  
                       
                       
                       
    250-5.                
     Esāhaṃ, bhante, bhagavantaṃ saraṇaṃ gacchāmi dhammañca bhikkhusaṅghañca.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Eso   代的 これ、彼  
      ahaṃ,    代的  
      bhante,  bhū 名現分 ant(特) 大徳よ  
      bhagavantaṃ    ant 世尊  
      saraṇaṃ  sṛ a 帰依処  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      gacchāmi  gam 行く →帰依する  
      語根 品詞 語基 意味  
      dhammañ dhṛ a  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      bhikkhu bhikṣ u 依(属) 比丘、(特に男性の)出家者  
      saṅghañ saṃ-hṛ a 僧伽、(特に仏教の)教団  
      ca.    不変 と、また、そして、しかし  
    訳文                
     尊者よ、この私は、世尊へ、法へ、また比丘僧伽へ帰依いたします。  
                       
                       
                       
    250-6.                
     Upāsakaṃ maṃ bhagavā dhāretu ajjatagge pāṇupetaṃ saraṇaṃ gataṃ.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Upāsakaṃ  upa-ās a 優婆塞  
      maṃ    代的  
      bhagavā    ant 世尊  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      dhāretu    持たせる、保持する、憶持する、着る,与える、 差し出す  
      語根 品詞 語基 意味  
      ajja   不変 今日、今  
      agge    a 第一、最高、最上、首位、頂点 →今日以降  
      pāṇa pra-an a 依(対) 生類、生命  
      upetaṃ  upa-i 過分 a 副対 そなえた、具備した →命ある限り  
      saraṇaṃ  sṛ a 帰依処  
      gataṃ.  gam 過分 a 行った →帰依した  
    訳文                
     世尊は私を、今日以降、命ある限り、帰依をなした優婆塞であるとご記憶下さい。  
    メモ                
     ・この命令形が三人称なのは敬語表現。目上に対して直接二人称をを使わないという作法。水野文法§71-13.  
     ・比丘になるには受戒が必要だが、優婆塞になるには自己申告で良いのであろうか。そうでなく、釈尊なり比丘なりの承認が必要なのであれば、「ご記憶下さい」という訳はやや不適切か。『原始』、『パーリ』のように「お認め下さい」と意訳すべきか。  
                       
                       
                       
    250-7.                
     Accayo maṃ, bhante, accagamā yathābālaṃ yathāmūḷhaṃ yathāakusalaṃ, yohaṃ pitaraṃ dhammikaṃ dhammarājānaṃ issariyakāraṇā jīvitā voropesiṃ.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Accayo  ati-i a 死去、経過、征服、超越、罪、過失  
      maṃ,    代的  
      bhante,  bhū 名現分 ant(特) 大徳よ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      accagamā  ati-gam 過ぎゆく、超える、勝る  
      語根 品詞 語基 意味  
      yathā   不変 〜のごとく  
      bālaṃ    a 愚かな、無知の  
      yathā   不変 〜のごとく  
      mūḷhaṃ  muh 過分 a 愚昧の、迷った  
      yathā   不変 〜のごとく  
      akusalaṃ,    a 不善の  
      yo   代的 (関係代名詞)  
      ahaṃ    代的  
      pitaraṃ    ar 父、父祖  
      dhammikaṃ  dhṛ 名形 a 如法の  
      dhamma dhṛ a 依(属)  
      rājānaṃ    an  
      issariya   a 自在、主権  
      kāraṇā  kṛ a 原因、根拠、罰、所作  
      jīvitā  jīv 名過分 a 命、生命  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      voropesiṃ.  ava-ruh 使 奪う、殺す →命を奪う、殺す  
    訳文                
     尊者よ、私は罪を犯しました。私は無知のまま、愚昧のまま、不善のまま、国権〔の簒奪〕という理由から如法の法王たる父を殺したのです。  
    メモ                
     ・Accayo maṃ accagamāについてPTS辞書はhas been committed by me (in confession formula) と述べているので、「罪が私を超過した」という直訳でなく、上記のようにした。  
                       
                       
                       
    250-8.                
     Tassa me, bhante bhagavā accayaṃ accayato paṭiggaṇhātu āyatiṃ saṃvarāyā’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Tassa    代的 それ、彼  
      me,    代的  
      bhante  bhū 名現分 ant(特) 大徳よ  
      bhagavā    ant 世尊  
      accayaṃ  ati-i a 死去、経過、征服、超越、罪、過失  
      accayato  ati-i a 死去、経過、征服、超越、罪、過失  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      paṭiggaṇhātu  prati-grah 受けとる、受領する、受納する  
      語根 品詞 語基 意味  
      āyatiṃ    i 副対 未来に、将来に  
      saṃvarāyā’’ saṃ-vṛ a 防護  
      ti.   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     尊者よ、世尊は未来の〔悪の報いからの〕防護となるよう、この私の罪を罪としてお受け取り下さい」と。  
    メモ                
     ・これもPTS辞書によればaccayaṃ accayato paṭiggaṇhātuto accept (the confession of) the faultという意味とのことなので、そのように訳した。どうもこれらは罪の告解における定型文のようである(安居の時などもこれをやるのであろうか。要確認)。  
                       
                       
                       
    251-1.                
     251. ‘‘Taggha tvaṃ, mahārāja, accayo accagamā yathābālaṃ yathāmūḷhaṃ yathāakusalaṃ, yaṃ tvaṃ pitaraṃ dhammikaṃ dhammarājānaṃ jīvitā voropesi.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Taggha    不変 たしかに  
      tvaṃ,    代的 あなた  
      mahā   ant 大きい、偉大な  
      rāja,    an  
      accayo  ati-i a 死去、経過、征服、超越、罪、過失  
      accagamā yathābālaṃ yathāmūḷhaṃ yathāakusalaṃ, (250-7.)  
      yaṃ    代的 (関係代名詞)  
      tvaṃ    代的 あなた  
      pitaraṃ dhammikaṃ dhammarājānaṃ jīvitā (250-7.)  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      voropesi.  ava-ruh 使 奪う、殺す →命を奪う、殺す  
    訳文                
     「大王よ、確かにあなたは罪を犯しました。あなたは無知のまま、愚昧のまま、不善のまま、如法の法王たる父を殺したのです。  
                       
                       
                       
    251-2.                
     Yato ca kho tvaṃ, mahārāja, accayaṃ accayato disvā yathādhammaṃ paṭikarosi, taṃ te mayaṃ paṭiggaṇhāma.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Yato    不変 そこから、それゆえ  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      tvaṃ,    代的 あなた  
      mahā   ant 大きい、偉大な  
      rāja,    an  
      accayaṃ  ati-i a 死去、経過、征服、超越、罪、過失  
      accayato  ati-i a 死去、経過、征服、超越、罪、過失  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      disvā  dṛś 見る  
      語根 品詞 語基 意味  
      yathā   不変 〜のごとくに、〜のように  
      dhammaṃ  dhṛ a 副対 法 →如法に  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      paṭikarosi,  prati-kṛ 懺悔する、修復する、対策をなす  
      語根 品詞 語基 意味  
      taṃ    代的 それ、彼、彼女、そのとき(副対)  
      te    代的 あなた  
      mayaṃ    代的 私たち  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      paṭiggaṇhāma.  prati-grah 受けとる、受領する、受納する  
    訳文                
     じつに大王よ、しかしながら、あなたは罪を罪として認識して、如法に懺悔された。それゆえ我々は、あなたのその〔告解〕を受け取りましょう。  
    メモ                
     ・accayaṃ accayato passati to recognise a breach of the regulation とするPTS辞書にしたがって訳した。  
     ・受け取る主体が複数形なのは謙譲のニュアンスであろう。  
                       
                       
                       
    251-3.                
     Vuddhihesā, mahārāja, ariyassa vinaye, yo accayaṃ accayato disvā yathādhammaṃ paṭikaroti, āyatiṃ saṃvaraṃ āpajjatī’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Vuddhi    i 増大、繁栄  
      hi   不変 じつに、なぜなら  
      esā,   代的 これ、彼女  
      mahā   ant 大きい、偉大な  
      rāja,    an  
      ariyassa    名形 a 聖なる  
      vinaye,  vi-nī a  
      yo    代的 (関係代名詞)  
      accayaṃ  ati-i a 死去、経過、征服、超越、罪、過失  
      accayato  ati-i a 死去、経過、征服、超越、罪、過失  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      disvā  dṛś 見る  
      語根 品詞 語基 意味  
      yathā   不変 〜のごとくに、〜のように  
      dhammaṃ  dhṛ a 副対 法 →如法に  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      paṭikaroti,  prati-kṛ 懺悔する、修復する、対策をなす  
      語根 品詞 語基 意味  
      āyatiṃ    i 副対 未来に、将来に  
      saṃvaraṃ  saṃ-vṛ a 防護  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      āpajjatī’’ ā-pad 来る、合う、至る  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     なぜなら大王よ、あるものが罪を罪として認識し、如法に懺悔し、未来の防護へ至るならば、それは聖者の律における〔善の〕増大であるからです」と。  
    メモ                
     ・諸訳は「律の繁栄(『南伝』)」「戒律の繁栄(『原始』)」とするが、律そのものの増大・繁栄がいわれているのではないはずである。そうであればvinayeでなくvinayassaという属格が用いられていたはずだからである。ここは、律という善悪の尺度にてらして、懺悔するものには、しない場合よりも善(の比率)が増大するということがいわれていると解すべきであろう(むろんその結果として、律という価値体系の社会的受容度が増大するのも確かではあるが)。  
                       
                       
                       
    252-1.                
     252. Evaṃ vutte, rājā māgadho ajātasattu vedehiputto bhagavantaṃ etadavoca –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Evaṃ vutte, rājā māgadho ajātasattu vedehiputto bhagavantaṃ etadavoca – (250-1.)  
    訳文                
     このようにいわれて、マガダ国の王、ヴェーデーヒーの息子アジャータサットゥは世尊へこういった。  
                       
                       
                       
    252-2.                
     ‘‘handa ca dāni mayaṃ, bhante, gacchāma bahukiccā mayaṃ bahukaraṇīyā’’ti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘handa    不変 いざ  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      dāni    不変 いま、いまや  
      mayaṃ,    代的 私たち  
      bhante,  bhū 名現分 ant(特) 大徳よ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      gacchāma  gam 行く  
      語根 品詞 語基 意味  
      bahu   u 有(持) 多くの  
      kiccā  kṛ 未分 a なされるべき、所作、作用、行事、義務  
      mayaṃ    代的 私たち  
      bahu   u 有(持) 多くの  
      karaṇīyā’’ kṛ 名未分 a 中→男 作されるベき、所作、義務、必須  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「いざ尊者よ、いまや我々はおいとまいたします。我々には多くの所用、多くの仕事がございます〔ゆえ〕」と。  
                       
                       
                       
    252-3.                
     ‘‘Yassadāni tvaṃ, mahārāja, kālaṃ maññasī’’ti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Yassa   代的 (関係代名詞)  
      dāni    不変 いま、いまや  
      tvaṃ,    代的 あなた  
      mahā   ant 大きい、偉大な  
      rāja,    an  
      kālaṃ    a  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      maññasī’’ man 考える  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「大王よ、あなたが今、時を〔辞去の適時だと〕お考えならば、そのために〔これでお別れとしましょう〕」と。  
    メモ                
     ・PTS辞書はyassa kālaṃ maññasifor what you think it is time (to go), i. e. goodbyeとする。  
                       
                       
                       
    252-4.                
     Atha kho rājā māgadho ajātasattu vedehiputto bhagavato bhāsitaṃ abhinanditvā anumoditvā uṭṭhāyāsanā bhagavantaṃ abhivādetvā padakkhiṇaṃ katvā pakkāmi.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      rājā    an  
      māgadho    a マガダ国の  
      ajātasattu  a-jan u 人名、アジャータサットゥ  
      vedehi   ī 依(属) 人名、ヴェーデーヒー  
      putto    a 息子  
      bhagavato    ant 世尊  
      bhāsitaṃ  bhāṣ 名過分 a 語った、説いた、言説、所説  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      abhinanditvā  abhi-nand 歓喜する  
      anumoditvā  anu-mud 随喜する  
      uṭṭhāya ud-sthā 立つ  
      語根 品詞 語基 意味  
      āsanā  ās a  
      bhagavantaṃ    ant 世尊  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      abhivādetvā  abhi-vad 敬礼する、礼拝する  
      語根 品詞 語基 意味  
      padakkhiṇaṃ    a 右回り、有繞、幸福な、器用な  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      katvā  kṛ なす  
      pakkāmi. pra-kram 進む、出発する  
    訳文                
     ときにマガダ国の王、ヴェーデーヒーの息子アジャータサットゥは世尊の言葉に歓喜し、随喜して座より立ち、世尊へ礼拝し、右繞をなして立ち去った。  
                       
                       
                       
    253-1.                
     253. Atha kho bhagavā acirapakkantassa rañño māgadhassa ajātasattussa vedehiputtassa bhikkhū āmantesi –   
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      bhagavā    ant 世尊  
      acira   a 依(奪) ひさしからず  
      pakkantassa  pra-kram 過分 a 属絶 出発した、進んだ  
      rañño    an 属絶  
      māgadhassa    a 属絶 マガダ国の  
      ajātasattussa  a-jan u 属絶 人名、アジャータサットゥ  
      vedehi   ī 依(属) 人名、ヴェーデーヒー  
      puttassa    a 属絶 息子  
      bhikkhū  bhikṣ u 比丘、(特に男性の)出家者  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      āmantesi –  ā-mant 呼びかける、話す、相談する  
    訳文                
     ときに世尊は、マガダ国の王、ヴェーデーヒーの息子アジャータサットゥが立ち去ってより間もなく、比丘たちに語りかけられた。  
                       
                       
                       
    253-2.                
     ‘‘khatāyaṃ, bhikkhave, rājā.   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘khato khaṇ 過分 a 掘り出された  
      ayaṃ,    代的 これ  
      bhikkhave,  bhikṣ u 比丘  
      rājā.    an  
    訳文                
     「比丘たちよ、かの王〔の徳〕は、傷つけられいます。  
                       
                       
                       
    253-3.                
     Upahatāyaṃ, bhikkhave, rājā.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Upahato upa-han 過分 a 害された  
      ayaṃ,    代的 これ  
      bhikkhave,  bhikṣ u 比丘  
      rājā.    an  
    訳文                
     比丘たちよ、かの王〔の徳〕は、害されています。  
    メモ                
     ・(追記)この二文についてこれまで、「「比丘たちよ、かの王は〔懺悔によって、煩悩の根を〕掘り出されています。比丘たちよ、かの王は〔しかし、父殺しの罪に〕害されています。」としてきたが、他の諸経での用例や、『増支部』3-58「ヴァッチャゴッタ経」に対する『註』のKhato ca hotīti guṇakhananena khato hoti. Upahatoti guṇupaghāteneva upahato. といった記述などを踏まえ、訳を改めた。  
                       
                       
                       
    253-4.                
     Sacāyaṃ, bhikkhave, rājā pitaraṃ dhammikaṃ dhammarājānaṃ jīvitā na voropessatha, imasmiññeva āsane virajaṃ vītamalaṃ dhammacakkhuṃ uppajjissathā’’ti.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Sace   不変 もし  
      ayaṃ,    代的 これ  
      bhikkhave,  bhikṣ u 比丘  
      rājā    an  
      pitaraṃ    ar 父、父祖  
      dhammikaṃ  dhṛ 名形 a 如法の  
      dhamma dhṛ a 依(属)  
      rājānaṃ    an  
      jīvitā  jīv 名過分 a 命、生命  
      na    不変 ない  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      voropessatha,  ava-ruh 使 奪う、殺す →命を奪う、殺す  
      語根 品詞 語基 意味  
      imasmiññ   代的 これ  
      eva    不変 まさに、のみ、じつに  
      āsane  ās a  
      virajaṃ    a 離塵の  
      vīta vi-i 過分 a 有(持) はなれた  
      malaṃ    a  
      dhamma dhṛ a 依(属)  
      cakkhuṃ    us  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      uppajjissathā’’ ud-pad 起こる、生ずる、発生する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     比丘たちよ、もし、かの王が、父たる如法の法王を殺していなければ、まさにこの座において離塵離垢の法眼を生じていたであろうに」と。  
    メモ                
     ・珍しい条件法が使われている。未来形二人称複数と同形なので、誤読に注意。  
                       
                       
                       
    253-5.                
     Idamavoca bhagavā.   
      語根 品詞 語基 意味  
      Idam   代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      avoca  vac いう  
      語根 品詞 語基 意味  
      bhagavā.    ant 世尊  
    訳文                
     こう、世尊は仰った。  
                       
                       
                       
    253-6.                
     Attamanā te bhikkhū bhagavato bhāsitaṃ abhinandunti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Attamanā    a 適意の、可意の  
      te    代的 それら、彼ら  
      bhikkhū  bhikṣ u 比丘、(特に男性の)出家者  
      bhagavato    ant 世尊  
      bhāsitaṃ  bhāṣ 名過分 a 語った、説いた、言説、所説  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      abhinandun abhi-nand 歓喜した  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     彼ら比丘たちは悦意し、世尊の言葉に歓喜した。  
    メモ                
     ・このtiは、語り手(阿難尊者?)のEvaṃ me sutaṃ –を受けるtiである。  
                       
                       
                       
     Sāmaññaphalasuttaṃ niṭṭhitaṃ dutiyaṃ.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Sāmañña śram a 依(属) 沙門性、沙門位、沙門法  
      phala phal a 依(属) 果、果実  
      suttaṃ  sīv a 経、糸  
      niṭṭhitaṃ  nih-sthā 過分 a 完了した、終わった  
      dutiyaṃ.   名形 a 男→中 第二  
    訳文                
     〔『長部』「戒蘊篇」〕第二〔経〕「沙門果経」おわり。  
                       
                       
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