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     Namo tassa bhagavato arahato sammāsambuddhassa  
      語根 品詞 語基 意味  
      Namo nam as 南無、礼拝  
      tassa   代的 それ、かれ  
      bhagavato    ant 世尊  
      arahato arh 名現分 ant 阿羅漢、応供  
      sammā   不変 正しい、正しく  
      sambuddhassa saṃ-budh 名過分 a 等覚者  
    訳文                
     かの阿羅漢にして正等覚者(ブッダ)たる世尊に礼拝いたします  
    メモ                
     ・「戒蘊篇」のための帰依文。直訳すれば「かの世尊、阿羅漢、正等覚者のための礼拝が〔ある〕」となろうか。  
                       
                       
                       
     Dīghanikāyo  
      語根 品詞 語基 意味  
      Dīgha   a 依(属) 長い  
      nikāyo   a 部、部類  
    訳文                
     『長部〔経典〕』  
    メモ                
     ・「長」というが、じつはテキストの総量でいうなら『長部』は五ニカーヤの中で最も短い。ゆえにこれは持業釈の「長い部」でなく、属格依主釈で「長い〔経〕の部」と解するべきものと見なした。PTS辞書のNikāyaの項のassemblage, class, groupという語義からしても妥当と考え、『中部』以降でもそのように統一したが、これでよいかどうか。要検討。  
                       
                       
                       
     Sīlakkhandhavaggapāḷi  
      語根 品詞 語基 意味  
      Sīla   a 依(属)  
      khandha   a 依(属) 蘊、集まり  
      vagga   a 品、章、篇  
      pāḷi   i 聖典、線  
    訳文                
     「戒蘊篇」なる聖典  
    メモ                
     ・「戒蘊篇(戒に関する集成の篇)」のタイトル。  
                       
                       
                       
     1. Brahmajālasuttaṃ  
      語根 品詞 語基 意味  
      Brahma bṛh 名形 an(特) 依(属) 梵、梵天、尊貴、神聖  
      jāla   a 依(属)  
      suttaṃ sīv a 経、糸  
    訳文                
     「梵網経」(『長部』1  
    メモ                
     ・この経のタイトル。  
     ・brahmabrahmā)は特殊な曲用をみせる語。  
     ・「梵網に関する経」という属格依主釈としたが、「梵網という〔名の〕経」という持業釈と解すべき可能性も高い。  
                       
                       
                       
     Paribbājakakathā  
      語根 品詞 語基 意味  
      Paribbājaka pari-vraj a 依(属) 遍歴行者、遊行者  
      kathā   ā 論、説、話、物語  
    訳文                
     【遍歴行者の物語】  
    メモ                
     ・チャプタータイトル。  
                       
                       
                       
    1-1.                
     1. Evaṃ me sutaṃ –  
      語根 品詞 語基 意味  
      Evaṃ   不変 このように  
      me   代的  
      sutaṃ śru 名過分 a 聞かれた、所聞  
    訳文                
     このように私は聞いた。  
    メモ                
     ・直訳すれば「このように私によって聞かれたものが〔ある〕」。  
                       
                       
                       
    1-2.                
     ekaṃ samayaṃ bhagavā antarā ca rājagahaṃ antarā ca nāḷandaṃ addhānamaggappaṭipanno hoti mahatā bhikkhusaṅghena saddhiṃ pañcamattehi bhikkhusatehi.  
      語根 品詞 語基 意味  
      ekaṃ    代的 副対 一、とある  
      samayaṃ    a 副対 時、集会  
      bhagavā    ant 世尊  
      antarā    名形 a 副奪 途中、中間  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      rājagahaṃ    a 地名、王舎城、マガダ国の首都  
      antarā    名形 a 副奪 途中、中間  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      nāḷandaṃ    a 地名、王舎城付近の村  
      addhāna   a 依(与) 時間、世、行路、旅行  
      magga   a 依(対) 道 →道路、旅路  
      paṭipanno  prati-pad 過分 a 目的に向かって歩いた、進んだ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      hoti  bhū ある、存在する  
      語根 品詞 語基 意味  
      mahatā    ant 大きな、偉大な  
      bhikkhu bhikṣ u 依(属) 比丘、(特に男性の)出家者  
      saṅghena  saṃ-hṛ a 僧伽、(特に仏教の)教団  
      saddhiṃ    不変 共に、一緒に(具格支配)  
      pañca    
      mattehi    a 量、だけ、のみ、程度  
      bhikkhu bhikṣ u 比丘  
      satehi.   a  
    訳文                
     ある時世尊は、五百〔人〕ほどの比丘たちからなる大比丘僧伽とともに、王舎城とナーランダーの間の街道を進んでおられた。  
    メモ                
     ・addhānamaggaは、『註』では「行路と称される道」と解される。  
     ・ナーランダーという地名に関して、PTS辞書や水野辞書はnāḷandāの語を出さない。モニエル辞書や『梵和』にはnālandaという男性名詞で掲載されているが、ここでは『長部』11「ケーヴァッタ経」におけるnāḷandāyaṃという形から、nāḷandāという女性名詞であるとした。  
                       
                       
                       
    1-3.                
     Suppiyopi kho paribbājako antarā ca rājagahaṃ antarā ca nāḷandaṃ addhānamaggappaṭipanno hoti saddhiṃ antevāsinā brahmadattena māṇavena.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Suppiyo   a 人名、スッピヤ(「よく愛されるもの」の意)  
      pi    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      paribbājako  pari-vraj a 遍歴行者、遊行者  
      antarā    a 副奪 途中、中間  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      rājagahaṃ    a 地名、王舎城  
      antarā    a 副奪 途中、中間  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      nāḷandaṃ    a 地名、ナーランダー、王舎城付近の村  
      addhāna   a 依(与) 時間、世、行路、旅行  
      magga   a 依(対)  
      paṭipanno  paṭi-pad 過分 a 目的に向かって歩いた、進んだ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      hoti  bhū ある、存在する  
      語根 品詞 語基 意味  
      saddhiṃ    不変 共に、一緒に(具格支配)  
      antevāsinā  ante-vas in 内住者、住み込み弟子、近侍  
      brahmadattena  bṛh, dā a 人名、ブラフマダッタ(「梵よりの施ある者」の意)  
      māṇavena.   a 学童、青年、若いバラモン  
    訳文                
     じつに、遍歴行者スッピヤもまた、内弟子のブラフマダッタ青年とともに、王舎城とナーランダーの間の街道を進んでいた。  
                       
                       
                       
    1-4.                
     Tatra sudaṃ suppiyo paribbājako anekapariyāyena buddhassa avaṇṇaṃ bhāsati, dhammassa avaṇṇaṃ bhāsati, saṅghassa avaṇṇaṃ bhāsati;  
      語根 品詞 語基 意味  
      Tatra    不変 そこで、そこに、そのとき、そのなかで、  
      sudaṃ    不変 じつに、まさに  
      suppiyo    a 人名、スッピヤ  
      paribbājako  pari-vraj a 遍歴行者、遊行者  
      aneka   代的 一つならぬ、多くの  
      pariyāyena  pari-i a 法門、理由  
      buddhassa  budh 名過分 a 仏、仏陀、覚者  
      avaṇṇaṃ    a 不称賛、誹謗  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      bhāsati,  bhāṣ 語る、話す、言う  
      語根 品詞 語基 意味  
      dhammassa  dhṛ a 男中 法、仏法  
      avaṇṇaṃ    a 不称賛、誹謗  
      bhāsati,  同上  
      saṅghassa  saṃ-hṛ a 僧、僧伽  
      avaṇṇaṃ    a 不称賛、誹謗  
      bhāsati;  同上  
    訳文                
     まさにそのとき、遍歴行者スッピヤは多くの理由から、仏を誹謗して語り、法を誹謗して語り、僧を誹謗して語った。  
    メモ                
     ・dhammaはまれに中性。vaṇṇaは男性だがavaṇṇaは中性。  
                       
                       
                       
    1-5.                
     suppiyassa pana paribbājakassa antevāsī brahmadatto māṇavo anekapariyāyena buddhassa vaṇṇaṃ bhāsati, dhammassa vaṇṇaṃ bhāsati, saṅghassa vaṇṇaṃ bhāsati.  
      語根 品詞 語基 意味  
      suppiyassa    a 人名、スッピヤ  
      pana    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      paribbājakassa  pari-vraj a 遍歴行者、遊行者  
      antevāsī  ante-vas in 内住者、住み込み弟子、近侍  
      brahmadatto  bṛh, dā a 人名、ブラフマダッタ  
      māṇavo    a 学童、青年、若いバラモン  
      aneka   代的 一つならぬ、多くの  
      pariyāyena  pari-i a 法門、理由  
      buddhassa  budh 名過分 a 仏、仏陀、覚者  
      vaṇṇaṃ    a 称賛(vaṇṇaṃ bhāsatiのとき) 、色  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      bhāsati,  bhāṣ 語る、話す、言う  
      語根 品詞 語基 意味  
      dhammassa  dhṛ a 男中 法、仏法  
      vaṇṇaṃ    a 称賛 、色  
      bhāsati,  同上  
      saṅghassa  saṃ-hṛ a 僧、僧伽  
      vaṇṇaṃ    a 称賛 、色  
      bhāsati. 同上  
    訳文                
     しかし、遍歴行者スッピヤの内弟子ブラフマダッタ青年は、多くの理由から、仏を称賛して語り、法を称賛して語り、僧を称賛して語った。  
                       
                       
                       
    1-6.                
     Itiha te ubho ācariyantevāsī aññamaññassa ujuvipaccanīkavādā bhagavantaṃ piṭṭhito piṭṭhito anubandhā [anubaddhā (ka. sī. pī.)] honti bhikkhusaṅghañca.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Itiha    不変 じつに、このように  
      te    代的 それ、彼  
      ubho    二人  
      ācariya ā-car a 師、阿闍梨  
      antevāsī  ante-vas in 内住者、住み込み弟子、近侍  
      aññamaññassa    代的 相互、他と他  
      ujuvipaccanīka   a 有(持) 正反対の  
      vādā  vad a 説、語、論  
      bhagavantaṃ    ant 世尊  
      piṭṭhito    i, ī 女(中) 副奪 背、後方、頂点、上方  
      piṭṭhito    i, ī 女(中) 副奪 背、後方、頂点、上方  
      anubaddhā anu-bandh 過分 a 随結する、従う、追跡するもの  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      honti  bhū ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      bhikkhu bhikṣ u 依(属) 比丘  
      saṅghañ saṃ-hṛ a 僧伽  
      ca.   不変 と、また、そして、しかし  
    訳文                
     このように、彼ら二人の師弟は、互いに正反対に主張しながら、世尊と比丘僧伽に、後からずっとついていった。  
    メモ                
     ・VRI版のanubandhāは「束縛された」の意。なおubhoは、梵語ubhaの両数ubhau相当の語の反映か。  
     ・piṭṭhitoは女性名詞なので-iyāという形になるはずだが。副詞的奪格として中性化しているということか。  
                       
                       
                       
    2-1.                
     2. Atha kho bhagavā ambalaṭṭhikāyaṃ rājāgārake ekarattivāsaṃ upagacchi [upagañchi (sī. syā. kaṃ. pī.)] saddhiṃ bhikkhusaṅghena.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      bhagavā    ant 世尊  
      ambalaṭṭhikāyaṃ   ā 地名、アンバラッティカー(マンゴーの若木ある)  
      rāja   an 依(属)  
      āgārake    a 男中 家の、在家の  
      eka   代的  
      ratti   i 依(属)  
      vāsaṃ vas a 家、住まい、住居  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upagañchi upa-gam 近づく、接近する、着手する  
      語根 品詞 語基 意味  
      saddhiṃ    不変 共に、一緒に(具格支配)  
      bhikkhu bhikṣ u 依(属) 比丘、(特に男性の)出家者  
      saṅghena. saṃ-hṛ a 僧伽、(特に仏教の)教団  
    訳文                
     ときに世尊は、比丘僧伽とともに、アンバラッティカーにある王の邸宅において、一夜の住まいをとられた。  
    メモ                
     ・「一夜の住まいに近づいた」とでもすべきだが、意訳した。  
                       
                       
                       
    2-2.                
     Suppiyopi kho paribbājako ambalaṭṭhikāyaṃ rājāgārake ekarattivāsaṃ upagacchi [upagañchi (sī. syā. kaṃ. pī.)] antevāsinā brahmadattena māṇavena.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Suppiyo    a 人名、サッピヤ  
      pi   不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      paribbājako  pari-vraj a 遍歴行者、遊行者  
      ambalaṭṭhikāyaṃ    ā 地名、アンバラッティカー(マンゴーの若木ある)  
      rāja    an 依(属)  
      āgārake   a 男中 家の、在家の  
      eka   代的  
      ratti   i 依(属)  
      vāsaṃ vas a 家、住まい、住居  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upagañchi upa-gam 近づく、接近する、着手する  
      語根 品詞 語基 意味  
      antevāsinā  ante-vas in 内住者、住み込み弟子、近侍  
      brahmadattena  bṛh, dā a 人名、ブラフマダッタ  
      māṇavena.   a 学童、青年、若いバラモン  
    訳文                
     じつに、遍歴行者サッピヤも、内弟子のブラフマダッタ青年とともに、アンバラッティカーにある王の邸宅に、一夜の住まいをとった。  
    メモ                
     ・この文にはsaddhiṃ の語がないが、なくても具格は「〜とともに」の意味を持つ。  
                       
                       
                       
    2-3.                
     Tatrapi sudaṃ suppiyo paribbājako anekapariyāyena buddhassa avaṇṇaṃ bhāsati, dhammassa avaṇṇaṃ bhāsati, saṅghassa avaṇṇaṃ bhāsati;  
      語根 品詞 語基 意味  
      Tatra    不変 そこで、そこに、そのとき、そのなかで、  
      pi   不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      sudaṃ    不変 じつに、まさに  
      suppiyo paribbājako anekapariyāyena buddhassa avaṇṇaṃ bhāsati, dhammassa avaṇṇaṃ bhāsati, saṅghassa avaṇṇaṃ bhāsati; (1-4.)  
    訳文                
     まさにそのときにも、遍歴行者スッピヤは多くの理由から、仏を誹謗して語り、法を誹謗して語り、僧を誹謗して語った。  
                       
                       
                       
    2-4.                
     suppiyassa pana paribbājakassa antevāsī brahmadatto māṇavo anekapariyāyena buddhassa vaṇṇaṃ bhāsati, dhammassa vaṇṇaṃ bhāsati, saṅghassa vaṇṇaṃ bhāsati.  
      語根 品詞 語基 意味  
      suppiyassa pana paribbājakassa antevāsī brahmadatto māṇavo anekapariyāyena buddhassa vaṇṇaṃ bhāsati, dhammassa vaṇṇaṃ bhāsati, saṅghassa vaṇṇaṃ bhāsati. (1-5.)  
    訳文                
     しかし、遍歴行者スッピヤの内弟子ブラフマダッタ青年は、多くの理由から、仏を称賛し、法を称賛し、僧を称賛して語った。  
                       
                       
                       
    2-5.                
     Itiha te ubho ācariyantevāsī aññamaññassa ujuvipaccanīkavādā viharanti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Itiha te ubho ācariyantevāsī aññamaññassa ujuvipaccanīkavādā (1-6.)  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      viharanti vi-hṛ 住する、ある  
    訳文                
     このように、彼ら二人の師弟は、互いに正反対に主張して住した。  
                       
                       
                       
    3-1.                
     3. Atha kho sambahulānaṃ bhikkhūnaṃ rattiyā paccūsasamayaṃ paccuṭṭhitānaṃ maṇḍalamāḷe sannisinnānaṃ sannipatitānaṃ ayaṃ saṅkhiyadhammo udapādi –  
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      sambahulānaṃ    a 属絶 多くの、衆多の  
      bhikkhūnaṃ  bhikṣ u 属絶 比丘  
      rattiyā    i  
      paccūsa   a 依(属) 早朝  
      samayaṃ    a 副対  
      paccuṭṭhitānaṃ  paṭi-ud-sthā 過分 a 属絶 立ち上がった、起立した  
      maṇḍala   a 円い、曼荼羅  
      māḷe    a 房、天幕  
      sannisinnānaṃ  saṃ-ni-sad 過分 a 属絶 ともに座った  
      sannipatitānaṃ  saṃ-ni-pat 過分 a 属絶 集合した  
      ayaṃ    代的 これ  
      saṅkhiya saṃ-khyā 未分 a 考慮されるべき  
      dhammo  dhṛ a 法 →話題、話柄  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      udapādi  ud-pad 生じた  
    訳文                
     さて、多くの比丘たちが、夜明け時に起き上がり、円房にともに座し、集合したとき、この話題が生じた。  
                       
                       
                       
    3-2.                
     ‘‘acchariyaṃ, āvuso, abbhutaṃ, āvuso, yāvañcidaṃ tena bhagavatā jānatā passatā arahatā sammāsambuddhena sattānaṃ nānādhimuttikatā suppaṭividitā.  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘acchariyaṃ,    a 希有の  
      āvuso,    不変 友らよ(同輩、下輩に)  
      abbhutaṃ,  a-bhū a 未曾有の  
      āvuso,    不変 友らよ  
      yāva   不変 〜だけ、〜まで、〜の限り  
      ca   不変 と、また、そして、しかし  
      idaṃ    代的 これ  
      tena    代的 それ、かれ  
      bhagavatā    ant 世尊  
      jānatā  jñā 現分 ant 知者、知りつつあるもの  
      passatā  paś 現分 ant 見者、見つつあるもの  
      arahatā  arh 名現分 ant 阿羅漢  
      sammā   不変 正しい  
      sambuddhena  saṃ-budh 名過分 a 等覚者  
      sattānaṃ    a 衆生、有情  
      nānā   不変 種々の  
      adhimuttikatā  adhi-muc ā 信解性、勝解性、教法を理解し信じること  
      suppaṭividitā. su-prati-vid 過分 a よく知られた、よく確知された  
    訳文                
     「希有なり、友らよ、未曾有なり、友らよ。これほどに、かの世尊・知者・見者・阿羅漢・正等覚者によって、衆生たちの様々な信解性がよく知られたものとなるとは。  
    メモ                
     ・は抽象名詞をつくる接尾辞。suは「よく」を意味する接頭辞。  
     ・漢訳語にならって「信解性」としたが、「〔仏教的な理解や価値観への〕傾倒度合い」というニュアンスか。『原始』、『パーリ』は「意向」とする。  
     ・諸訳は信解性を知る主体を世尊とする(『南伝』「世尊が……よく透見し給える」、『原始』「世尊が……よく見通す」、『パーリ』「世尊が……よく見抜いておられる」)が、それでは意味が通らない。比丘たちが、世尊に付いてきたスッピヤたちの議論を聞いて、信解性に優劣のあることを知ったと解すべきではないか。であればこそ、次文の「なぜなら」hiの意味も了解できるし、異学者による毀誉褒貶に心惑わされるなという訓誡にも話が通じて行くはずである。  
     ・(追記)上のように考えたが『中部』12「大獅子吼経」では、衆生の信解性の了知が仏の十力の一つとして挙げられているので、やはり知る主体は釈尊であるのか。とすれば次文以降のhiは虚辞とすべきであろうか。  
                       
                       
                       
    3-3.                
     Ayañhi suppiyo paribbājako anekapariyāyena buddhassa avaṇṇaṃ bhāsati, dhammassa avaṇṇaṃ bhāsati, saṅghassa avaṇṇaṃ bhāsati;   
      語根 品詞 語基 意味  
      Ayaṃ    代的 これ  
      hi   不変 じつに、なぜなら  
      suppiyo paribbājako anekapariyāyena buddhassa avaṇṇaṃ bhāsati, dhammassa avaṇṇaṃ bhāsati, saṅghassa avaṇṇaṃ bhāsati; (1-4.)  
    訳文                
     なぜなら、かの遍歴行者スッピヤは、多くの理由から、仏を誹謗して語り、法を誹謗して語り、僧を誹謗して語った。  
                       
                       
                       
    3-4.                
     suppiyassa pana paribbājakassa antevāsī brahmadatto māṇavo anekapariyāyena buddhassa vaṇṇaṃ bhāsati, dhammassa vaṇṇaṃ bhāsati, saṅghassa vaṇṇaṃ bhāsati.  
      語根 品詞 語基 意味  
      suppiyassa pana paribbājakassa antevāsī brahmadatto māṇavo anekapariyāyena buddhassa vaṇṇaṃ bhāsati, dhammassa vaṇṇaṃ bhāsati, saṅghassa vaṇṇaṃ bhāsati. (1-5.)  
    訳文                
     しかし、遍歴行者スッピヤの内弟子ブラフマダッタ青年は、多くの理由から、仏を称賛して語り、法を称賛して語り、僧を称賛して語った。  
                       
                       
                       
    3-5.                
     Itihame ubho ācariyantevāsī aññamaññassa ujuvipaccanīkavādā bhagavantaṃ piṭṭhito piṭṭhito anubandhā honti bhikkhusaṅghañcā’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Itiha   不変 じつに、このように  
      ime   代的 これ  
      ubho ācariyantevāsī aññamaññassa ujuvipaccanīkavādā bhagavantaṃ piṭṭhito piṭṭhito anubandhā honti bhikkhusaṅghañcā’’ (1-6.)  
      ti.   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     このように、彼ら二人の師弟は、互いに正反対に主張しながら、世尊と比丘僧伽に、後からずっとついてきたのだから」と。  
    メモ                
     ・itihameitiha-imeととった。スッピヤは地の文ではso(かれ)といわれるが、台詞内ではimam(この)といわれているため、不当ではあるまい。  
     ・ここでは他版からの補いはないが、やはり1-5.のように、anubandhāではなくanubaddhāと解した。  
                       
                       
                       
    4-1.                 
     4. Atha kho bhagavā tesaṃ bhikkhūnaṃ imaṃ saṅkhiyadhammaṃ viditvā yena maṇḍalamāḷo tenupasaṅkami; upasaṅkamitvā paññatte āsane nisīdi.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Atha    不変 ときに、また  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      bhagavā    ant 世尊  
      tesaṃ    代的 かれら  
      bhikkhūnaṃ  bhikṣ u 比丘たち  
      imaṃ    代的 これ  
      saṅkhiyadhammaṃ  saṃ-khyā, dhṛ a 話題  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      viditvā  vid 知って  
      語根 品詞 語基 意味  
      yena    代的 (関係代名詞)  
      maṇḍalamāḷo    a 円房  
      tena   代的 (関係代名詞)  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      upasaṅkami;  upa-saṃ-kram 近づいた  
      upasaṅkamitvā  upa-saṃ-kram 近づいて  
      語根 品詞 語基 意味  
      paññatte  pra-jñā 使 過分 a 準備、用意、告知された  
      āsane  ās a  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      nisīdi. ni-sad 坐った  
    訳文                
     ときに世尊は、彼ら比丘たちのこの話題を知って、円房へ近づいた。近づいて、用意された座に坐られた。  
    メモ                
     ・yena A(主格) tenupasaṅkami で、「Aに近づいた、やってきた」という定型句。  
                       
                       
                       
    4-2.                
     Nisajja kho bhagavā bhikkhū āmantesi –   
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      Nisajja  ni-sad 坐って  
      語根 品詞 語基 意味  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      bhagavā    ant 世尊  
      bhikkhū  bhikṣ u 比丘たち  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      āmantesi – ā-mantra 呼びかける、話す、相談する  
    訳文                
     坐って、世尊は比丘たちへ話しかけられた。  
                       
                       
                       
    4-3.                
     ‘‘kāyanuttha, bhikkhave, etarahi kathāya sannisinnā sannipatitā, kā ca pana vo antarākathā vippakatā’’ti?   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘kāya   代的 何、どのような  
      nu    不変 〜かどうか、〜であろうか  
      ettha,   不変 ここに  
      bhikkhave,  bhikṣ u 比丘  
      etarahi    不変  
      kathāya    ā 説、話、論、物語  
      sannisinnā  saṃ-ni-sad 過分 a ともに座った  
      sannipatitā,  saṃ-ni-pat 過分 a 集合した  
          代的 何、どのような  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      pana    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      vo    代的 おまえたち  
      antarākathā    ā 中間の話 →談話  
      vippakatā’’ vi-pra-kṛ 過分 a 中断された  
      ti?    不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     「比丘たちよ、いまここに、どのような話のため、ともに坐り、集まっているのでしょうか。また、いかなる談話が、あなたがたに中断されたのでしょうか」 と。  
    メモ                
     ・antarākathāantarāとはantaraの副詞的奪格。  
                       
                       
                       
    4-4.                
     Evaṃ vutte te bhikkhū bhagavantaṃ etadavocuṃ –  
      語根 品詞 語基 意味  
      Evaṃ    不変 このように  
      vutte  vac 受 過分 a いわれた  
      te    代的 かれら  
      bhikkhū  bhikṣ u 比丘たち  
      bhagavantaṃ    ant 世尊  
      etad   代的 これ  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      avocuṃ –  vac いった  
    訳文                
     このようにいわれて、彼ら比丘たちは、世尊にこのようにいった。  
                       
                       
                       
    4-5.                
     ‘‘idha, bhante, amhākaṃ rattiyā paccūsasamayaṃ paccuṭṭhitānaṃ maṇḍalamāḷe sannisinnānaṃ sannipatitānaṃ ayaṃ saṅkhiyadhammo udapādi –   
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘idha,    不変 ここに、この世で  
      bhante,  bhū 名現分 ant(特) 大徳よ  
      amhākaṃ    代的 属絶 我々  
      rattiyā paccūsasamayaṃ paccuṭṭhitānaṃ maṇḍalamāḷe sannisinnānaṃ sannipatitānaṃ ayaṃ saṅkhiyadhammo udapādi – (3-1.)  
    訳文                
     「尊者よ、ここで我々が夜明け時に起き上がり、円房にともに座し、集合したとき、この話題が生じました。  
                       
                       
                       
    4-6.                
     ‘acchariyaṃ, āvuso, abbhutaṃ, āvuso, yāvañcidaṃ tena bhagavatā jānatā passatā arahatā sammāsambuddhena sattānaṃ nānādhimuttikatā suppaṭividitā.  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘acchariyaṃ, āvuso, abbhutaṃ, āvuso, yāvañcidaṃ tena bhagavatā jānatā passatā arahatā sammāsambuddhena sattānaṃ nānādhimuttikatā suppaṭividitā. (3-2.)  
    訳文                
     『希有なり、友らよ、未曾有なり、友らよ。これほどに、かの世尊・知者・見者・阿羅漢・正等覚者によって、衆生たちの様々な信解性がよく知られたものとなるとは。  
                       
                       
                       
    4-7.                
     Ayañhi suppiyo paribbājako anekapariyāyena buddhassa avaṇṇaṃ bhāsati, dhammassa avaṇṇaṃ bhāsati, saṅghassa avaṇṇaṃ bhāsati;  
      語根 品詞 語基 意味  
      Ayañhi suppiyo paribbājako anekapariyāyena buddhassa avaṇṇaṃ bhāsati, dhammassa avaṇṇaṃ bhāsati, saṅghassa avaṇṇaṃ bhāsati; (3-3.)  
    訳文                
     なぜなら、かの遍歴行者スッピヤは、多くの理由から、仏を誹謗し、法を誹謗し、僧を誹謗して語った。  
                       
                       
                       
    4-8.                
     suppiyassa pana paribbājakassa antevāsī brahmadatto māṇavo anekapariyāyena buddhassa vaṇṇaṃ bhāsati, dhammassa vaṇṇaṃ bhāsati, saṅghassa vaṇṇaṃ bhāsati.  
      語根 品詞 語基 意味  
      suppiyassa pana paribbājakassa antevāsī brahmadatto māṇavo anekapariyāyena buddhassa vaṇṇaṃ bhāsati, dhammassa vaṇṇaṃ bhāsati, saṅghassa vaṇṇaṃ bhāsati. (3-4.)  
    訳文                
     しかし、遍歴行者スッピヤの内弟子ブラフマダッタ青年は、多くの理由から、仏を称賛し、法を称賛し、僧を称賛して語った。  
                       
                       
                       
    4-9.                
     Itihame ubho ācariyantevāsī aññamaññassa ujuvipaccanīkavādā bhagavantaṃ piṭṭhito piṭṭhito anubandhā honti bhikkhusaṅghañcā’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Itihame ubho ācariyantevāsī aññamaññassa ujuvipaccanīkavādā bhagavantaṃ piṭṭhito piṭṭhito anubandhā honti bhikkhusaṅghañcā’ti. (3-5.)  
    訳文                
     このように、彼ら二人の師弟は、互いに正反対に主張しながら、世尊と比丘僧伽に、後からずっとついてきたのだから』と。  
                       
                       
                       
    4-10.                 
     Ayaṃ kho no, bhante, antarākathā vippakatā, atha bhagavā anuppatto’’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Ayaṃ    代的 これ  
      kho    不変 じつに、たしかに  
      no,    代的 我々  
      bhante,  bhū 名現分 ant(特) 大徳よ  
      antarākathā    ā 中間の話 →談話  
      vippakatā,  vi-pra-kṛ 過分 a 中断された  
      atha    不変 ときに、また  
      bhagavā    ant 世尊  
      anuppatto’’ anu-pra-āp 過分 a 到達した、得た  
      ti.   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     尊者よ、じつにこれが、世尊が到着されたときに、我々に中断された談話です」  
    メモ                
     ・逐語訳するなら、我々が談話を中断したとき、世尊がきた、という順になるが、意訳した。  
                       
                       
                       
    5-1.                
     5. ‘‘Mamaṃ vā, bhikkhave, pare avaṇṇaṃ bhāseyyuṃ, dhammassa vā avaṇṇaṃ bhāseyyuṃ, saṅghassa vā avaṇṇaṃ bhāseyyuṃ, tatra tumhehi na āghāto na appaccayo na cetaso anabhiraddhi karaṇīyā.  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Mamaṃ    代的  
      vā,    不変 あるいは  
      bhikkhave,  bhikṣ u 比丘  
      pare    代的 他の、異学の  
      avaṇṇaṃ    a 不称賛、誹謗  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      bhāseyyuṃ,  bhāṣ 語る、話す、言う  
      語根 品詞 語基 意味  
      dhammassa  dhṛ a 男中  
          不変 あるいは  
      avaṇṇaṃ    a 不称賛、誹謗  
      bhāseyyuṃ,  同上  
      saṅghassa  saṃ-hṛ a  
          不変 あるいは  
      avaṇṇaṃ    a 不称賛、誹謗  
      bhāseyyuṃ,  同上  
      tatra    不変 そこで、そこに、そのとき、そのなかで、  
      tumhehi    代的 おまえたち  
      na    不変 ない  
      āghāto    a 敵意、恨み  
      na    不変 ない  
      appaccayo  a-prati-i a 中(男) 不満、不機嫌  
      na    不変 ない  
      cetaso  cit as  
      anabhiraddhi  an-abhi-rādh i 不満  
      karaṇīyā. kṛ 名未分 a 中→女 なされるべき  
    訳文                
     「比丘たちよ、異学のものたちが、あるいは私を誹謗して語り、あるいは法を誹謗して語り、あるいは僧伽を誹謗して語ったとしても、そのとき、あなたがたは、敵意、不機嫌、心の不満をなすべきではありません。  
                       
                       
                       
    5-2.                 
     Mamaṃ vā, bhikkhave, pare avaṇṇaṃ bhāseyyuṃ, dhammassa vā avaṇṇaṃ bhāseyyuṃ, saṅghassa vā avaṇṇaṃ bhāseyyuṃ, tatra ce tumhe assatha kupitā vā anattamanā vā, tumhaṃ yevassa tena antarāyo.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Mamaṃ vā, bhikkhave, pare avaṇṇaṃ bhāseyyuṃ, dhammassa vā avaṇṇaṃ bhāseyyuṃ, saṅghassa vā avaṇṇaṃ bhāseyyuṃ, (5-1.)  
      tatra    不変 そこで、そこに、そのとき、そのなかで、  
      ce    不変 もし  
      tumhe    代的 おまえたち  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      assatha  as ある、なる  
      語根 品詞 語基 意味  
      kupitā  kup 過分 a 怒った  
          不変 あるいは  
      anattamanā  an-atta-man a 不適意、不快  
      vā,    不変 あるいは  
      tumhaṃ    代的 おまえたち  
      yeva   不変 まさに、のみ、じつに  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      assa as ある、なる  
      語根 品詞 語基 意味  
      tena    代的 それ  
      antarāyo.   a 障害、妨害  
    訳文                
     比丘たちよ、異学のものたちが、あるいは私を誹謗して語り、あるいは法を誹謗して語り、あるいは僧伽を誹謗して語ったとして、そのとき、もしあなたがたが、あるいは怒り、あるいは不愉快であるならば、あなたがたには、そのことによる妨げがあることでしょう。  
                       
                       
                       
    5-3.                
     Mamaṃ vā, bhikkhave, pare avaṇṇaṃ bhāseyyuṃ, dhammassa vā avaṇṇaṃ bhāseyyuṃ, saṅghassa vā avaṇṇaṃ bhāseyyuṃ, tatra ce tumhe assatha kupitā vā anattamanā vā, api nu tumhe paresaṃ subhāsitaṃ dubbhāsitaṃ ājāneyyāthā’’ti?   
      語根 品詞 語基 意味  
      Mamaṃ vā, bhikkhave, pare avaṇṇaṃ bhāseyyuṃ, dhammassa vā avaṇṇaṃ bhāseyyuṃ, saṅghassa vā avaṇṇaṃ bhāseyyuṃ, tatra ce tumhe assatha kupitā vā anattamanā vā, (5-2.)  
      api    不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      nu    不変 〜かどうか、〜ではないか  
      tumhe    代的 おまえたち  
      paresaṃ    代的 他の、異学の  
      subhāsitaṃ  su-bhāṣ 過分 a 善く説かれた  
      dubbhāsitaṃ  dur-bhāṣ 過分 a 誤って説かれた  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      ājāneyyāthā’’  ā-jñā よく知る、了知する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti?   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
      比丘たちよ、異学のものたちが、あるいは私を誹謗して語り、あるいは法を誹謗して語り、あるいは僧伽を誹謗して語ったとしても、そのとき、もしあなたがた が、あるいは怒り、あるいは不愉快であるならば、いったいあなたがたは、異学のものたちの善説・誤説を了知できるでしょうか」  
    メモ                
     ・api nu で「いったい、〜であろうか」。  
                       
                       
                       
    5-4.                 
     ‘‘No hetaṃ, bhante’’.  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘No    不変 ない、否  
      hi   不変 じつに、なぜなら  
      etaṃ,    代的 これ  
      bhante’’. bhū 名現分 ant(特) 大徳よ  
    訳文                
     「尊者よ、それは否です」  
                       
                       
                       
    5-5.                 
     ‘‘Mamaṃ vā, bhikkhave, pare avaṇṇaṃ bhāseyyuṃ, dhammassa vā avaṇṇaṃ bhāseyyuṃ, saṅghassa vā avaṇṇaṃ bhāseyyuṃ, tatra tumhehi abhūtaṃ abhūtato nibbeṭhetabbaṃ –  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Mamaṃ vā, bhikkhave, pare avaṇṇaṃ bhāseyyuṃ, dhammassa vā avaṇṇaṃ bhāseyyuṃ, saṅghassa vā avaṇṇaṃ bhāseyyuṃ, (5-1.)  
      tatra    不変 そこで、そこに、そのとき、そのなかで、  
      tumhehi    代的 おまえたち  
      abhūtaṃ  a-bhū 名形 a 不実の、虚偽の  
      abhūtato  a-bhū 名形 a 不実の、虚偽の  
      nibbeṭhetabbaṃ –  nir-veṣṭ 未分 a 解明・排除されるべき、言い逃れられるべき  
    訳文                
     「比丘たちよ、異学のものたちが、あるいは私を誹謗して語り、あるいは法を誹謗して語り、あるいは僧伽を誹謗して語ったとしても、そのとき、あなたがたは、虚偽を虚偽として解明すべきです。  
    メモ                
     ・異論に対しては、派閥意識的な感情論でなく、理にのっとってその誤謬を明らかにせよという趣旨であろう。  
                       
                       
                       
    5-6.                
     ‘itipetaṃ abhūtaṃ, itipetaṃ atacchaṃ, natthi cetaṃ amhesu, na ca panetaṃ amhesu saṃvijjatī’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘iti   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      pi   不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      etaṃ    代的 これ  
      abhūtaṃ,  a-bhū 名形 a 不実の、虚偽の  
      iti   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      pi   不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      etaṃ    代的 これ  
      atacchaṃ,    a 不如実、虚偽  
      na   不変 ない  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      atthi  as ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      etaṃ    代的 これ  
      amhesu,    代的 我々  
      na    不変 ない  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      pana   不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      etaṃ    代的 これ  
      amhesu    代的 我々  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      saṃvijjatī’ saṃ-vid 見られる、存在する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ti.   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     『かくゆえに、これは虚偽である。かくゆえに、これは不如実である。そしてこれ(この見解)は我々にはない、そしてまたこれ(この見解)は我々には存在しない』と。  
    メモ                
     ・saṃvijjatiは語根saṃ-vidの現在形「驚怖する、宗教心を起こす」としても読めなくはない。  
                       
                       
                       
    6-1.                 
     6. ‘‘Mamaṃ vā, bhikkhave, pare vaṇṇaṃ bhāseyyuṃ, dhammassa vā vaṇṇaṃ bhāseyyuṃ, saṅghassa vā vaṇṇaṃ bhāseyyuṃ, tatra tumhehi na ānando na somanassaṃ na cetaso uppilāvitattaṃ karaṇīyaṃ.  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘‘Mamaṃ    代的  
      vā,    不変 あるいは  
      bhikkhave,  bhikṣ u 比丘  
      pare    代的 他の、異学の  
      vaṇṇaṃ    a 称賛  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      bhāseyyuṃ,  bhāṣ 語る、話す、言う  
      語根 品詞 語基 意味  
      dhammassa  dhṛ a  
          不変 あるいは  
      vaṇṇaṃ    a 称賛  
      bhāseyyuṃ,  同上  
      saṅghassa  saṃ-hṛ a  
          不変 あるいは  
      vaṇṇaṃ    a 称賛  
      bhāseyyuṃ,  同上  
      tatra    不変 そこで、そこに、そのとき、そのなかで、  
      tumhehi    代的 おまえたち  
      na    不変 ない  
      ānando  ā-nand a 歓喜  
      na    不変 ない  
      somanassaṃ  su-man a 喜悦  
      na    不変 ない  
      cetaso  cit as  
      uppilāvitattaṃ  ud-plu a うわつき、得意、幸福  
      karaṇīyaṃ. kṛ 名未分 a なされるべき  
    訳文                
     比丘たちよ、異学のものたちが、あるいは私を称賛して語り、あるいは法を称賛して語り、あるいは僧伽を称賛して語ったとしても、そのとき、あなたがたは歓喜、喜悦、うわつきをなすべきではありません。  
    メモ                
     ・5-1. の逆。uppilāvitattaṃ uppilāvita(語根ud-plu「浮く」の過去分詞)に、抽象名詞語尾-ttaが付いたものと解した(『南伝』は「愉逸」、『原始』は「得意」、『パーリ』は「小躍り」とする)。辞書類ではubbilāvitaの項をみよ。  
                       
                       
                       
    6-2.                 
     Mamaṃ vā, bhikkhave, pare vaṇṇaṃ bhāseyyuṃ, dhammassa vā vaṇṇaṃ bhāseyyuṃ, saṅghassa vā vaṇṇaṃ bhāseyyuṃ, tatra ce tumhe assatha ānandino sumanā uppilāvitā tumhaṃ yevassa tena antarāyo.  
      語根 品詞 語基 意味  
      Mamaṃ vā, bhikkhave, pare vaṇṇaṃ bhāseyyuṃ, dhammassa vā vaṇṇaṃ bhāseyyuṃ, saṅghassa vā vaṇṇaṃ bhāseyyuṃ, (6-1.)  
      tatra    不変 そこで、そこに、そのとき、そのなかで、  
      ce    不変 もし  
      tumhe    代的 おまえたち  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      assatha  as あるならば、あるだろう、あるべし  
      語根 品詞 語基 意味  
      ānandino  ā-nand in 歓喜ある
 
      sumanā  su-man a 善き意、幸福の  
      uppilāvitā  ud-plu 過分 a 浮いた、飛んだ  
      tumhaṃ    代的 おまえたち  
      yeva   不変 まさに、のみ、じつに  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      assa  as あるならば、あるだろう、あるべし  
      語根 品詞 語基 意味  
      tena    代的 それ  
      antarāyo.   a 障害、妨害  
    訳文                
     比丘たちよ、異学のものたちが、あるいは私を称賛して語り、あるいは法を称賛して語り、あるいは僧伽を称賛して語ったとしても、そのとき、もしあなたがたが、歓喜し、得意になり、浮ついているならば、あなたがたには、それによる妨げがあることでしょう。  
                       
                       
                       
    6-3.                 
     Mamaṃ vā, bhikkhave, pare vaṇṇaṃ bhāseyyuṃ, dhammassa vā vaṇṇaṃ bhāseyyuṃ, saṅghassa vā vaṇṇaṃ bhāseyyuṃ, tatra tumhehi bhūtaṃ bhūtato paṭijānitabbaṃ –  
      語根 品詞 語基 意味  
      Mamaṃ vā, bhikkhave, pare vaṇṇaṃ bhāseyyuṃ, dhammassa vā vaṇṇaṃ bhāseyyuṃ, saṅghassa vā vaṇṇaṃ bhāseyyuṃ, (6-1.)  
      tatra    不変 そこで、そこに、そのとき、そのなかで、  
      tumhehi    代的 おまえたち  
      bhūtaṃ  bhū 過分 a あった、なった、真実の  
      bhūtato  bhū 過分 a あった、なった、真実の  
      paṭijānitabbaṃ –  prati-jñā 未分 a 認められるべき、自称・公言されるべき  
    訳文                
     比丘たちよ、異学のものたちが、あるいは私を称賛し、あるいは法を称賛し、あるいは僧伽を称賛して語ったとしても、そのとき、あなたがたは真実を真実として認めねばなりません。  
                       
                       
                       
    6-4.                
     ‘itipetaṃ bhūtaṃ, itipetaṃ tacchaṃ, atthi cetaṃ amhesu, saṃvijjati ca panetaṃ amhesū’ti.  
      語根 品詞 語基 意味  
      ‘iti   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      pi   不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      etaṃ    代的 これ  
      bhūtaṃ,  bhū a 真実の  
      iti   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
      pi   不変 〜もまた、けれども、たとえ  
      etaṃ   代的 これ  
      tacchaṃ,    a 如実の  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      atthi  as ある  
      語根 品詞 語基 意味  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      etaṃ    代的 これ  
      amhesu,    代的 我々  
      述語 語根 品詞 活用 人称 意味  
      saṃvijjati  saṃ-vid 見られる、存在する  
      語根 品詞 語基 意味  
      ca    不変 と、また、そして、しかし  
      pana    不変 また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて  
      etaṃ   代的 これ  
      amhesū’   代的 我々  
      ti.   不変 と、といって、かく、このように、ゆえに  
    訳文                
     『かくゆえに、これは真実である。かくゆえに、これは如実である。そしてこれ(この見解)は我々にある、そしてまたこれ(この見解)は我々に存在する』と。  
                       
                       
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